原型ポケモン
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しとしとと降り続く雨を窓越しに見つめて、◯◯はため息をついた。何もこのタイミングで降らなくてもいいのに。忌々しげに窓をにらみつける◯◯の背後で、ネイティオがぼそっとつぶやいた。
『雨』
「そう。あーあ、出かけようと思ったのになあ」
せっかく咲いたのに。小さくこぼし、ため息をもう一つ。◯◯の視線の先を追うように、ネイティオも窓の外に目を向ける。相も変わらず雨は窓をたたく。
『◯◯』
「なあに?」
『出かけよう』
「……えええ」
◯◯は振り返ってネイティオの顔を見つめた。冗談を言っているようには見えないし、そもそも彼は冗談を言ったりするような性格ではない。それは彼のトレーナーである◯◯が誰よりも知っていた。
「今から?」
『ああ』
「外、雨降ってるよ?」
『知っている』
じいっと空のかなたを凝視しながらネイティオは尚出かけようと繰り返す。彼は頭がいい。きっと何か理由があるのだろう。そう考えた◯◯は薄く微笑んでうなずいた。\゜\、\・、\、\・。゜、\・
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傘の端からのぞく視界は薄紅色に染まっていた。リズミカルに傘を打つ雨音だけが辺りに響いている。隣にいるネイティオは、視線を宙に定めたまま微動だにしない。彼は何を見ているのだろうか。何が見えているのだろうか。きっとそれは、誰にもわからない。ほんの少し心細くなって、◯◯はうつむいた。地面には頭上と同じ色が広がっていた。
『◯◯』
不意に声をかけられ、はじかれたように顔を上げる。◯◯がうつむいていた間に幾分か雨脚は弱まり、やがて消えた。雲の切れ間から漏れ始めた光を浴びて、木が草が花が、きらきらと輝いている。世界が一瞬にして生まれ変わったようだった。
しばしそれに見とれていた◯◯だったが、ネイティオが翼についた水滴を振り払う音を聞いて我に返った。
「あ、ネイ、」
『ほら、出たぞ』
「え?」
ついっと彼が翼で指し示した空。つられるように目をやれば、さくらの花びらの向こう側に、大きな七色の橋が架かっていた。あまりの美しさに声も出ない。そして、はっとする。彼はわかっていたに違いない。じきに雨が上がること、虹が出ること、◯◯が今日花見をしようとしていたことも、すべて。
普段何を考えているのかさっぱりなネイティオだけど、これだけは断言できる。彼は落ち込んでいた自分を元気づけようとしてくれたのだ。◯◯は何だか心がとてもほっこりした気分になったので、とりあえず差しっぱなしだった傘を閉じ、それからネイティオに抱きついてみることにした。多分これもお見通しだろうけど。翼を広げ抱き止める気満々のネイティオを見てふとそう思った、とある春の日。
君と見上げた花の雨
(20140404/25*la)