原型ポケモン
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◯◯ちゃんがポケモントレーナーになるらしい。パートナーを1体選んで、このシッポウシティから旅立つんだそうだ。◯◯ちゃんとは彼女が幼いころから一緒に遊んだ仲だけど、ぼくみたいな平凡なポケモンではきっと彼女のパートナーにはなれないんだろうなあ。
「ねえねえミネズミくん。パートナーポケモンってどういう子がいいのかなあ」
うーん、そうだなあ……。ぼくみたいな弱っちくないやつ、かな。◯◯ちゃんを守ってあげられるような……例えばそう、かくとうタイプのポケモンとか。
「この近くに住んでるかくとうタイプっていったら──ドッコラー?」
ぼくと◯◯ちゃんはドッコラーに会うため、ヤグルマのもりに行った。そして、ためしの岩の近くにいたドッコラーを呼び止めた。
「ドッコラーさん、強いかくとうタイプのドッコラーさん。どうかわたしのパートナーになってくれませんか?」
◯◯ちゃんがそう頼むと、ドッコラーは照れたように頬をかきながら「嬉しいけど、おれよりももっと強いポケモンがいるぜ」と答えた。
それは誰とぼくが聞けば、ドッコラーは「ひこうタイプの奴らさ。あいつらにゃどうやったって勝てやしねえ」と苦笑いした。
ぼくらがひこうタイプのポケモンを探してずんずん歩いていると、大きな橋の上でコアルヒーと出会った。なんてグッドタイミング!
「コアルヒーさん、強いひこうタイプのコアルヒーさん。どうかわたしのパートナーになってくれませんか?」
◯◯ちゃんがそう頼むと、コアルヒーはふわふわ空を飛びながら残念そうに笑った。そして「私よりももっと強いポケモンがいますよ」と答えた。
それは誰とぼくが聞けば、「でんきタイプのポケモンですよ。彼らの攻撃には何度痛い目にあったことか……」とコアルヒーはため息をついた。
「でんきタイプかあ」
◯◯ちゃんは笑ってる。彼女が弱音をはかないんだったら、ぼくも諦めるわけにはいかないや。
ぼくらがまたずんずん進んでいくと、不思議な洞窟を見つけた。電気を帯びているからか、そこらじゅうに大きな岩が浮いている。ここならたくさんでんきタイプのポケモンがいそうだ。
そしてバチュルを見つけた。◯◯ちゃんはドッコラーたちと同じように、バチュルにパートナーになってくれないか頼んだ。だけどバチュルは悲しげに、「ありがたいけど、ぼくよりももっと強いポケモンがいるよ」と答えた。
それは誰とぼくが聞けば、「ほのおタイプのポケモンだよ。ぼく、会ったらすぐ逃げるようにしてるんだ」と小さな体をふるわせた。
「なかなか決まらないねえ」
◯◯ちゃんは変わらず笑顔だった。大丈夫、次こそいいパートナーが見つかるよ!
ぼくらは歩き続けた。途中、変わった一本橋があった。◯◯ちゃんは面白そうに遊んでいたけど、ぼくは彼女が落っこちちゃうんじゃないかって内心ヒヤヒヤした。
やがて目の前に大きな塔が見えてきた。入り口にあった看板には、『タワーオブヘブン』って書いてある。
「……ポケモンのお墓だ」
どうやら頂上には鐘があるみたいで、◯◯ちゃんはせっかく寄ったんだからとそれを鳴らしにいくことにした。塔の中は迷路みたいになってて、不謹慎だけどちょっと楽しかった。
突然◯◯ちゃんが歩みを止めた。一つの墓石の後ろで、何かがうずくまっているみたいだ。おそるおそるぼくが覗いてみると、そこにいたのはヒトモシだった。お、おどかさないでよ!
「ヒトモシって、ほのおタイプだよね?」
◯◯ちゃんの言葉にハッとした。そうだよ、とぼくがうなずけば、◯◯ちゃんはヒトモシに話しかけた。今度こそうまくいきますように……。
「ヒトモシさん、強いほのおタイプのヒトモシさん。どうかわたしのパートナーになってくれませんか?」
◯◯ちゃんがそう頼むと、ヒトモシは悩みだした。それからぼくの方をちらりと見て、「僕は強くなんかないよ」と言った。それから「確かに僕はほのおタイプだけど、同時にゴーストタイプでもあるんだ」と続けた。それがどうしたのだろう。タイプが2つあるのはいいことじゃないの? 理解できないぼくに向けて、ヒトモシは「だから、君みたいなノーマルタイプには僕のゴースト技はきかないんだよ」と呆れたように言った。
ぼくらが塔の頂上についたころには、すでに日が沈み始めていた。橙色に染まった空を見ながら、◯◯ちゃんはぽつりとつぶやく。
「ノーマルタイプって、すごいんだねえ」
◯◯ちゃんは嬉しそうに、にこにこ笑っていた。それからぼくのほうを向いて「これからも一緒に旅しようね、ミルホッグくん」と優しく抱きしめてくれた。
ぼくと◯◯ちゃんはふたりで鐘を鳴らすと、手を繋ぎながら塔をあとにした。ぼくなんかでいいのなら、ずっとずーっとそばにいるよ、◯◯ちゃん。今日も
明日も
明後日も
そうして少女は長旅の末、無事パートナーとなるポケモンを見つけることができたとさ。めでたし、めでたし。
(20130301/25*la)
元ネタはねずみの嫁入り