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「勝己の馬鹿ッッ!!!もう知らない!!」
土曜日の夜
1-A ハイツアライアンスに響き渡る声
そしてエレベーターが1階につくと
1人の少女がズカズカと
共同スペースのソファーで
談笑しているグループに向かって
歩いてきた
「聞いてよ!!勝己ありえないんだよ!!」
彼女の名前は豊香
1-A所属で
半年前から爆豪と付き合っている
「はいはい。今度は何があったの豊香ちゃん?」
ソファーには
瀬呂、耳郎、常闇、佐藤の4人がおり
その中の瀬呂が事情を察して
自身の空いている隣に
豊香を招き入れる
サッと座った豊香は
今にも溢れそうなぐらい
目に涙をうかべ
事のあらましを伝えた
「明日、うちらが付き合って半年の記念なのに、勝己忘れてたって言うの!!ちゃんと先週の金曜日に念まで押しておいたのに〜泣」
うわーんと瀬呂に抱きつき
泣き始める豊香
瀬呂は小さな子供をあやすように
頭を撫でながら
そうかそうかと相槌をする
周りの3人は苦笑いを浮かべ
瀬呂に目線を送る
目線に気づいた瀬呂は
同じように苦笑いして
静かに頷くと片手をあげ
3人を見送った
これはいつもの事で
爆豪と喧嘩をした豊香を慰めるのは
瀬呂の役目なのだ
そんな事とはつゆ知らず
その後も延々と
爆豪に対する愚痴を言い続けた豊香
時刻は夜11時30分
他のクラスメイトは寝ついたのか
聞こえるのは豊香の声と
瀬呂の優しい声だけだった
「はぁ・・・なんで、あたし勝己と付き合ってるんだろ?」
喧嘩をしたあとのお決まりのセリフ
豊香は瀬呂の用意してくれた
ホットココアを飲みながら
ため息とともに出てくる愚痴を
並べていった
瀬呂は冷めてしまった
ハーブティーを片手に
豊香の愚痴を聞く
「てか、彼女が怒って出ていったのに、追いかけもしない彼氏ってどうなの!?・・・はぁ。あーぁ、瀬呂君が彼氏なら良かったのに・・・。こんなに優しいんだもん、絶対幸せだよね、瀬呂君の彼女になる人は。美味しいホットココアも飲めるし!」
豊香はとびきりの笑顔で
瀬呂に微笑む
一瞬動きの止まった瀬呂だが
すぐに動き出すと
手に持っていたカップを
テーブルに置き
両手を頭の後ろで組んだ
「またまた〜。褒めてもセロファンしか出ないよ笑?彼女は・・・まぁそのうちなんじゃないかな?」
意味深な発言
豊香はおぉー!と言うと
その発言の意味を詳しく聞きたいと
瀬呂にせがんでくるが
上手くはぐらかされて
聞くことは出来なかった
「さて、豊香ちゃん。そろそろいい子は寝る時間じゃないの?明日、朝早いんじゃない?」
瀬呂は壁にかけてある時計を指さし
豊香に時刻を知らせる
だが豊香は首を左右に振ると
瀬呂の膝を枕にして
ソファーに寝転がった
「やだ〜!!まだ瀬呂君と話してる。どうせなんにも準備してないだろうから、勝己とは出かけられそうにないし・・・。1人の部屋に帰りたくない・・・。」
豊香はムスッと頬をふくらませ
顔を瀬呂のお腹に向けると
ギュッと腰に手を回して抱きついた
「あの、豊香ちゃん?俺も男だから、さすがにそれは誘われてるのかと誤解するぜ?」
瀬呂は苦笑いしながら
降参と言うかのように
両手を開いたまま
顔の横に並べる
豊香はえ〜と言いながら
腰にまわした手を離したが
膝枕はやめる気はなさそうだった
そして瀬呂の目を見ると
ふふっと笑い
目を閉じた
「瀬呂君、男の子かぁ〜。なんか話しやすすぎて、そんな感じしないかな?てか、瀬呂君が万が一手を出してきたら、勝己に殺されちゃうよ笑?」
きっと私も殺されるけどと
冗談交じりに話すと
大きなあくびが出てきた
瀬呂は自身の手を
豊香の頭に置くと
一定方向にゆっくりと撫で始めた
「間違いない。命はまだ大切にしたいから、豊香ちゃんに手を出すのは、また今度にしようかな。」
瀬呂も冗談で返すと
豊香も笑い
その場は温かな空気に包まれた
そして他愛のない話をしているうちに
共同スペースには
規則正しい寝息が聞こえてきた
時刻は11時55分
瀬呂は愛おしそうに撫でている手とは
反対の手をそっと伸ばすと
気持ちよさそうに寝ている
豊香の顔に添える
「豊香・・・。」
切なくなるような
胸の締めつけられるような声
そして添えた手の親指を
豊香の唇に這わせると
そっと口を開けさせる
赤くぷっくりとした唇の中に
同じように赤い舌が見え隠れする
瀬呂は前かがみになり
豊香の顔に自身の顔を近づけると
一瞬止まったあと
おでこにチュッとキスをした
元の姿勢に戻った瀬呂は
這わせていた手を離し
自身の顔を隠した
「何やってんだよ、俺は・・・。友達の彼女なのに・・・。」
後悔の念に押しつぶされそうになる瀬呂
これ以上はまずいと思い
起こさないように
そっと豊香をお姫様抱っこして
立ち上がる
あまりの軽さに
ちゃんと食事してるのか?と
母親のような心配をしている自分に
苦笑すると
エレベーターに向かって歩いていく
するとエレベーターの
階数を示す表示が
1階に向かってきていた
『チンッッ』
エレベーターが1階につき
扉が開く
「はいよ、お預かりしてたお子様は無事にお返ししますよ?」
瀬呂はエレベーター内にいる人物に
腕の中にいる豊香を見せ
受け取るように促した
瀬呂から豊香を受け取った人物こと
爆豪は怪訝そうな顔をしながらも
腕の中ですやすやと眠る姿に
少しだけ頬が緩んでいた
「悪りぃな、いつも・・・。」
爆豪は短くお礼を言うと
階数ボタンを押して
エレベーターの奥に立った
瀬呂は何も言わず
フッと笑うと
片手を上げて
爆豪達を見送る
ゆっくりと閉まる扉
すると爆豪は
一瞬豊香を見ると
瀬呂に視線を移し
力強く言葉を発する
「例えお前が豊香を好きでも、遠慮もしねぇし、渡す気もねぇから。」
言い終わると同時に扉が閉まり
静かな空間が辺りを包む
「なんだよそれ笑言い逃げかよ。・・・やっぱ気づくんだな。でもそう言われると・・・。」
瀬呂は1人残された空間で
残っていたハーブティーを
喉に流し込むと
少し残ったホットココアと共に
キッチンへと消えていった
「あれ?爆豪と豊香はお出かけ〜?いいなぁー、あたしも恋したい!!」
朝の共同スペースでは
芦戸率いる女性陣が
朝早く出ていった
爆豪と豊香の話題で
盛り上がっている
「くかぁァァ!!いいよな〜彼女いるやつは!!俺もデートしてぇぇぇ!!」
女性陣の会話を聞いて
近くにいた男性陣も
口々に話し始める
そんな中
共同スペースのソファーで
本を読みながら
コーヒーを飲む瀬呂
「お〜い!さっきコンビニに行ったら、駅前のカラオケ店の割引チケットもらったから、みんなで行こうぜー!!」
朝の自主練の帰りか
ジャージ姿の切島が
割引チケット片手に
寮に入ってきた
「カラオケ〜!?行く行く!!みんな行こうー!」
早くー!と急いで
部屋に戻って支度をする面々
だが瀬呂は動くことなく
本に目をやっていた
「おい!瀬呂!!お前も行くぞ!!」
支度を終えた上鳴が
瀬呂の頭をヘッドロックするかのように
脇に抱えると
ズルズルと引きずっていく
「わ、分かったから!!ちょっと待てって。」
瀬呂はゲホゲホ咳をすると
手に持っていた本を
ソファー前のテーブルに置き
上鳴と共に
玄関に向かっていった
本のタイトル
『片思いの相手を落とす方法』