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とある町のビル街
白いTシャツにジーパン
ニットのつば付き帽子を被って
一人の女性が颯爽と歩く
彼女の名前は豊香
一見見た目は
どこにでもいる女性だが
世間ではこう呼ばれている
『妖艶の蝶 バタフライナイフ』
彼女はヒーロー2年目という経歴ながら
数々の実績を残し
今年のヒーロービルボードチャートJPで
3位に入った実力者だ
そんな彼女は顔なじみである
小さな喫茶店のドアをくぐる
そこには高齢のマスター
バイトの高校生と数人の客
そして黙々とコーヒーを作る
バリスタの姿があった
チャリンチャリンと
ドアにつけてあるベルが鳴ると
マスターに軽く挨拶をして
バリスタの目の前である
カウンターに座る
「カプチーノ、ホットで。」
目の前にいるバリスタに
そう伝えると
バリスタからの返事はないが
手際よくカップを用意して
コーヒーを作り始めていた
彼の名前は死柄木弔
2ヶ月前からこの店で
バリスタとして働いている
無口な彼は
誰に対しても挨拶はなく
目元まで伸びた
くすんだ水色の髪のせいで
近寄り難い雰囲気を
醸し出している
だが彼のいれたコーヒーを飲めば
彼が一流のバリスタであることは
明白であった
『カチャッ』
小指を立てて握ったカップを
死柄木は無言でカウンターに置く
豊香は両手でカップを取ると
そこにはフワフワのミルクの上に
イタリア語で
『Carina farfalla(可愛い蝶)』
という言葉が書かれていた
「クスッ・・・ありがとう。」
豊香はそっとカップに口をつけ
苦味のあるコーヒーと
少しづつ混ざり合う甘いミルクを
ゆっくりと味わっていた
弔との交際が始まったのが
2ヶ月前
いつものように喫茶店を出た後
近道である店の横の裏路地を進むと
数名の敵に囲まれた
だがたまたま店の裏口が開き
助けてくれたのが弔であった
そこからお互いに
会う回数が増え
交際に発展するまでには
時間はかからなかった
「・・・16時。」
ボソッと聞こえるか
聞こえないかぐらいの声量で
死柄木が呟いた
豊香は自身の腕についている時計で
時刻を確認すると
16時まであと10分
そして10分が経つと
ごちそうさまと言い
豊香は席を立った
「ついに来たか、妖艶の蝶 バタフライナイフ!!お前らやっちまえ!!」
お約束のように
店の横の裏路地に行くと
数名の敵が待ち構えていた
「はぁ・・・この後デートなのに。」
豊香は身につけていた帽子を取ると
バサりと腰まで伸びた髪がでてきた
その髪は頭部から肩までが黒く
その先は若草色そしてピンクと
グラデーションが
かかっていた
豊香はスっと自身の毛に
手ぐしを入れると
その手を腰ベルトにつけていた
ポーチに伸ばし
中から細いナイフを取りだすと
自身の髪に擦りつけた
そしてそのナイフを
敵目がけて勢いよく放つと
1本が敵の太ももに当たり
次の瞬間敵はその場に崩れ落ち
寝始めてしまった
『鱗粉』
髪の毛から様々な鱗粉が出る
頭頂部であれば痺れ
側頭部(右)であれば眠り
側頭部(左)であれば毒 など
様々な効果がある
普通に生活している分には鱗粉は飛ばないが
擦りつけたり、激しく動くと
鱗粉が飛んでしまう
「早くしないと、弔が来ちゃう。」
豊香は残りのナイフの数に
気をつけながら投げ
目の前の敵は残り一人となり
足元には夢の中へと消えた敵達がいた
漂う緊張感
豊香は最後の一人から
目を離すことなく
手をポーチに入れてまさぐる
しかしいくら探せど
ナイフは見つからない
一瞬だけ豊香は
敵から目を離すと
次の瞬間身体に強い衝撃を受け
後ろに飛んだ
「ははッッ、ナイフがなきゃ、ただの蝶だな。それともその鱗粉を辺り一体に撒くのか?あ?」
形勢逆転した敵は
挑発するように話す
豊香の鱗粉はとても軽いため
風が吹いた時に撒くと
辺りに舞ってしまう
この辺りは人が多く
二次被害を起こしてしまう可能性がある
豊香はギリっと奥歯をかみ締め
身を低くして
犯人の隙を伺った
すると豊香のすぐ後ろで
バタンと扉の開く音がした
豊香も敵も
扉の方を見ると
そこには無表情の死柄木が立っていた
そしてゆっくりと近づいてくると
豊香の頭にポンポンと手を置き
手に持っていた
持ち帰り用のコーヒーを渡した
「君だけの王子、参上。待ってて、お姫様。すぐ終わらせるから・・・。」
死柄木はイタズラに笑うと
スっと表情を変え
ジリジリと敵に近づいていく
「お前ッッ、死柄木とmッッ・・・!?!?」
敵が死柄木の名前を言うよりも早く
死柄木が敵の顔を手で掴んだ
その手はまだ1本だけ触れずにある
豊香の所には聞こえないぐらいの
小さな声で何かを話す死柄木
するとすぐに掴んでいた手を離し
豊香の方に歩いてくる
その後ろでは
敵がズルりと腰から崩れ
うなだれる様にして
座り込んでいた
「お待たせ。終わったよ・・・。今日はどこに行こうか!」
そう言う死柄木の顔は微笑み
手を差し出すものの
差し込んだ西日が逆光となり
何か背筋から一筋の汗が
流れるような感覚に襲われた
豊香は一瞬手を止めるも
死柄木に微笑み返し
差し出された手を掴んだ
───────────────────
おまけ
公園のベンチにて
「ねぇ、なんでコーヒー1つなの?」
「豊香はさっき飲んでたから・・・いらないだろ?」
「えー、弔のコーヒーなら、いくらでも飲むよ!」
「チュッ・・・また来たら入れてあげるよ。」
「・・・/////・・・ズルいよ。」
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