82、デジャブ

─あなた方！─








｢全く･･･なんなのあの態度！いい気になって！｣


｢私達がわざわざ挨拶までしてあげてるのに、足も止めずに行ってしまうだなんて！｣


｢お得意先のお嬢様だから挨拶に行ってるけど、お父様達にお願いされなければ、挨拶なんてしないわよ！！｣


｢隣にいた人、お姉様って言われていたけど、今までお会いしたことなんてなかったわ。本当に姉なのかしら？｣

｢案外、隠し子だったりして〜笑｣



デジャブのような
女性特有の話


そしてきつい香水の香りと
カチャカチャと
化粧品を取り出す音が聞こえる


豊香は
はぁとため息をつくと
ここからどうやって出ようか

このまま出ていくと
後々面倒くさそうだな

いっその事
反撃できないぐらいに
怒鳴ってやろうかなど

出ていった時の
シュミレーションが
浮かんでは消え
浮かんでは消えを
繰り返していた


すると
また1人女性の声が
聞こえたと思ったら
辺りは静かになった







｢あなた方！そんな話をしていて恥ずかしくないのですか！？失礼ですよ！こんなところでコソコソ話しているのなら、正々堂々ご本人にお話したらよろしいのでは無いのですか！！｣







清々しいぐらい
ストレートな返し

トイレのドアで見えないが
きっと言われている女性陣は
アタフタしてるんだろうなぁと
少しだけスッキリした豊香

するとカサカサと
女性の集団が出て行く音がした


｢全く･･･。｣


注意をした女性は
ため息をつくと
豊香のひとつ隣りの
個室に入っていった音がした

豊香は隣の個室に
手を合わせると
スっと個室を出て手を洗い
披露宴会場に戻っていった