74、帰宅

─ ヒーロースーツを洗濯して干さないと ─







｢たくさんのご購入ありがとうございます〜♡確認のため、購入リストをお持ちしますね〜♡｣



結局、用意されたドレスの中から
比較的シンプルなものを
選ぶことに成功した豊香


豊香はどっと疲れが出たせいか
トイレに行きたくなり
そっと特別サロンを抜け出した












｢トイレ、トイレ、トイ｢まじ、あのガキウザイんだよね〜。｣｣











特別サロンを抜け
トイレを向かう途中
従業員控え室らしき所の前を通ると
女性の集団特有のお話が聞こえてきた


｢分かる〜笑何様だよって感じ！！｣


｢お店の上客だから我慢してるけど、ただの客だったら、追い返してやるのに笑｣


｢店長も必死だよね〜！あんな猫なで声で接客とかwwまぁ1回で大量に買うから、仕方ないよね！｣


｢どっかの資産家の娘なんでしょ〜？いいよねー、金持ちの娘ってだけでチヤホヤされて。｣


｢でも、あんなひねくれた性格じゃ、誰からも相手にされないよね〜笑｣



アハハハと
控え室外まで聞こえる高笑い

豊香は
グッと手を握りしめ
その場を後にした







｢どこ行ってたの？｣






特別サロンに戻ると
テーブルの上に
たくさんの貴金属と
黒のファイルが並べられていた

豊香は言葉を濁し
すっと紙織の横に座った


｢じゃ、これで買い物は終わり。帰るわ。｣


紙織はそう言うと
黒のファイルを開き
サインをした

そのファイルには
購入したと思われる物の
明細が書かれており
合計のところには
恐ろしい数字が
書かれていた

豊香はギョッとして
紙織と千代を見るが
2人とも特に気にすることなく
帰りの支度をしていた




｢またお越しくださ〜い♡従業員一同心よりお待ちしております〜♡｣



店長と精鋭部隊に
見送られる豊香達

店の前につけられた車に
颯爽と乗り込み
ブティックを後にした








｢紙織さんはいつもあの店であんなに買い物を？｣


帰りの車の中
千代の紅茶とおやつを
嗜みながら
豊香は紙織に
先程の店のことを聞いてみた


｢そうね･･･まぁあのお店だけでは無いけど、いつもあんな感じよ。｣


今日は疾風の分があるから
少し多めだけどと付け加え
紙織はおやつに手を伸ばした


｢お嬢様、疾風様。そろそろご自宅に着きますので、お茶はまた後でご用意致します。｣


千代の声で
話は終わり
目の前の紅茶やお菓子は
片付けられた

ふと豊香は
車のカーテンを少しだけめくり
外を見てみると
見知らぬ住宅街が見えた

ここはどのあたりなんだろ
事務所で報告書書いて
家に帰ったら
ヒーロースーツを洗濯して干さないと
明日も着れないな
そもそも駅近いのかななど
ぼんやりと考えていた


｢疾風様。お部屋に着替え等ご用意致しました。本日お召になっている服はこちらでクリーニング致しますのでご心配なく。｣


ん？
着替え？
クリーニング？
え？俺、泊まりなの？

千代の説明に
ハテナがたくさん浮かんできた
豊香だったが
車は真っ直ぐ
書記宅へ向かっていた