101、結末
─この事件は幕を下ろした─













｢豊！！豊！！返事しろ！！豊！！おい！！｣


















｢豊香！！ねぇ！！疾風ｯｯ！！返事しなさいｯｯ！！｣

















何度も呼ばれる豊香の名前


だが
それに答える声は
帰ってこない











爆豪は撃たれた瞬間
豊香の手から力が抜けるのを感じ
すぐさま豊香の身体を引き寄せ
抱きしめた



爆豪の胸越しにも感じられる程の
傷口付近の熱と痛み



何度も何度も豊香の名前を叫ぶも
返事がない爆豪は
猛スピードで落ちていく
自分達の身体の速度を
少しでも落とすべく
器用に2人を抱いたまま
下に向かって爆発を繰り返していた






















｢ごめ･･･ｯｯ･･･俺もやる･･･。｣


























返事の無かった豊香だったが
気がついたのか
弱々しくも声を出すと
怪我をしていない左手で
下に向かって最大火力の風を起こした




落ちるスピードが少し和らいではいるが
依然としてすごい勢いで落ちていく3人


もう11階のガーデンエリアまであと少し


2人を抱きしめる爆豪の腕にも
さらに力が込められた
















だが次の瞬間
下に見えていたガーデンエリアと
飛び込み台が見えるガラスが
一瞬にして緑に覆われ
その緑は爆豪達の方にも迫り来る














｢｢｢ｯｯｯｯ･･･うｯｯ！！！！あｯｯ！！うｯｯぷｯｯ｣｣｣









一瞬にして視界が緑に覆われる

緑の正体は
メキメキ伸びてきた木のようで
枝に全身をぶつけながら
3人は冷たいプールに飛び込んでいった


幸いにも枝が
クッション代わりに
なってくれたおかげで
最小限のスピードで
プールに飛び込んだ3人



爆豪は身体の痛みに耐え
2人を離すことなく
足をばたつかせると
プールの水面を目指す














｢ぷはｯｯ･･･ハァハァ･･･ｯツｯ･･･おい･･･生きてるか、豊、チビ･･･！！｣


















水面まで出られた爆豪は
腕の中の2人の安否を確認する












｢プハァｯｯ･･･ハァハァ･･･ゲホｯｯ･･･ハァハァ･･･私は･･･チビ･･･じゃなくて･･･紙織･･･よ･･･。｣








紙織は濡れて顔に張りついた髪を
かき分けながら
爆豪の言葉に返事をする
















｢ハァｯｯ･･･ハァｯｯ･･･ありが･･･とう･･･勝己･･･。｣















豊香も肩で息をしながら
疲れの見える笑顔で答えた


すぐに救助に来た他のヒーロー達に
無事に助けられた3人は
プールからあがり
それぞれ治療を受けるため
ホテルを後にした



















その後
このホテルでの騒動は
プロヒーローの活躍で
人質全員が解放されたと報道され
爆豪達の活躍は日の目を見ることは無かった




また20階のトイレで
拘束されている犯人及び
近隣の山中で
着陸したヘリコプターの中に
拳銃で打たれ重症の犯人の
計2人が逮捕された


















だがヘリコプターの中にあった
現金の入ったアタッシュケースも
犯人である綾の姿もなく









また爆豪とともにトイレに行った
人質の姿も見つからないまま
この事件は幕を下ろした