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帰りの電車にて、まだふわふわとした気持ちに揺られながら、ぼんやりと考える。
今までなかったこの”好き”と言う気持ちがいかに不思議なものかと言うこと。
テニスは好きで、おそらく今後自分の人生にこれ以上好きなものはないと思っていた。だから全国で負けたのは悔しくて、辛くて、今だってヒリヒリとした気持ちが燻っている。でも本当に好きだから、その気持ちとも向き合ってるつもりだし、これからも向き合うつもりだ。多分テニスじゃなきゃとっくに辞めていたとも思う。それくらい好きだ。
ただ、今俺が持っている彼女に対する好きという気持ちは近いようで、全く違う気がする。大切にしたいようで壊してしまいたいような、なんでも言うことを聞いてあげたいようで自分の気持ちを押し付けたいような、矛盾だらけの気持ちだ。
だから彼女にも俺のことをもっと見て欲しいと思うし、受験にも集中してもらいたいと思う。なんとも噛み合わない感情である。
せめて彼女が受験生でなければ、なんて思ったところで、真剣に取り組む姿を見なければ好きになっていなかったかもしれない。また矛盾だ。
それにしても推薦で落ちてしまったと言っていたが、よっぽど難しい学校を受けているのだろうか。9月に推薦試験なんて随分気の早い高校なんだな…高校?
さっきまでのふわふわとした感覚徐々に消えていく。
彼女はとても幼そうな顔をしている。のんびりと話す姿も正直同じ学年ともは思えないくらい幼く感じることだってあるくらいだ。
でも考えれば考えるほど、あのたまに見せる大人びた雰囲気も、顔に似合わず少し短いスカートの丈も納得が行く気がする。
彼女はおそらくー…
「図書館の君が高校生?」
そう言ったのは前の席に腰掛けた蓮二だ。
「ああ。そうなんだ。雰囲気も見た目も幼いから気づかなかったんだけど。」それに彼女を知るのに必死だったから、というのは頭をよぎったが口には出さなかった。
「なるほど、9月末には推薦試験を受けて、昨日には合否がわかったということは高校受験ではなかなかないな。」
「だろう?まあ彼女が中学生でも高校生でも俺としてはあまり変わりはないんだけど。」
「ほう。やっと自覚したのか。」
「ふふ。自覚せざるを得なくなっちゃってね。」
「なるほどな。俺はどちらでも応援するが、相手が高校生で、こちらが中学生ということを知らないのが厄介だな。」
「そうなんだ。正直ギリギリまで伝えたくない。今の関係はあまり変えたくないし。」
中学生と気づかれたらよっぽどのことがない限り恋愛対象にはならないだろう。少なくとも今みたいな接し方はしてもらえないかもしれない。
「もうあまり時間がないし、あえて伝えないようにしようと思うよ。」
「そうだな、その方がいいかもな。」
「ああ。」
それに、好きになってもらえたら歳とか、学年とかそんなの関係なくなるだろうしね。
本当、恋って矛盾だらけだ。相手には誠実でありたいけど、打算的にもなってしまう。
でも一つわかったことがある。彼女に好きになってもらえるなら、どちらにでもなれる。
それだけは確固たる事実のようだ。
***
明くる金曜日。
この前の水曜日は図書館にはいなかったが、今日はどうだろうか。
彼女は立ち直れたのか、なんて心配をしながら自習室に向かうと、そこにはいつものように勉強する彼女がいた。どうやら余計な御世話だったようだ。
とても真剣そうな表情だが、やはりあどけない見た目で高校生には申し訳ないが見えなかった。
斜め前の席に腰を下ろそうと向かうと、パッと顔を上げた彼女と目が合う。
「少しいい?」
珍しく到着するなりいつもの休憩スペースに向かうことになったので、俺は荷物だけ置いて席を立った。
「昨日は、ありがとう。」
少しうつむきがちに彼女が言う。照れているのか耳がほんのり赤くなっていた。
「幸村くんが来てくれて、すごく助かった。一人だったら今日もきっと落ち込んで、勉強もできなければ前に進めなかったと思う。」
そう言ってパッと顔を上げた彼女は照れ臭そうに微笑んだ。
「どういたしまして。少しでも役に立てたようならよかった。」
本当にそうだった。自分の過去の経験が他人を助けることがあるんだと、自分まで救われた気分だ。
すると、彼女が安堵のため息を漏らしながら伸びをする。
「は〜〜〜〜〜〜っ、今日ここ来るのすごく緊張したんだよー。あんなに泣いて恥ずかしいとこ見せちゃって、もう本当ごめんねー」
どうやら恥ずかしさのあまり緊張していたようだ。俺のことでそんなに緊張するなんて、その可愛さは反則だよ?
「ふふ。気にしなくていいのに。」
泣き顔も十分可愛かったからね、とは心の中で付け加えた。
「気にするよー。でも来てくれたのが幸村くんで本当に良かった。」
「何で?」
「だって、一緒にいてほっとするもん。」
いつものようにニカッとはにかむ。
彼女の言動は常にストレートだが、好きになった後に改めて聞くとどうも自分の行動を抑えられなくなりそうで怖くなる。
「ふふ、そう玲奈に言ってもらえて光栄だよ。」
何とか答えるも自分の理性の限界を垣間見た気がした。
そして今はこの関係を絶対壊したくないと、やっぱり中学生であることは黙っていようと、強く確信した。
「さあて、今日もバリバリ勉強するぞー!本番は2月だ!」
「ふふ、応援してるよ。」
そう話しながら自習室に戻る。
やっぱり恋は矛盾だらけだ。彼女には目標を達成してもらいたいし、好きになってももらいたい。でもその矛盾をどうしようかと考えるのもわくわくする。
同時に全国大会の時から失いかけていたモチベーションが戻った気がした。テニスも頑張りたいし、もっと強くなりたい。もっと勝ちたい。
何だか急に人生が色を取り戻して華やいでいるようだ。
暖かな気持ちを胸にそっとしまって、一昨日手付かずの課題に取り組む。
その日のうちに課題が終わったのも、恋のおかげだろうか?
今までなかったこの”好き”と言う気持ちがいかに不思議なものかと言うこと。
テニスは好きで、おそらく今後自分の人生にこれ以上好きなものはないと思っていた。だから全国で負けたのは悔しくて、辛くて、今だってヒリヒリとした気持ちが燻っている。でも本当に好きだから、その気持ちとも向き合ってるつもりだし、これからも向き合うつもりだ。多分テニスじゃなきゃとっくに辞めていたとも思う。それくらい好きだ。
ただ、今俺が持っている彼女に対する好きという気持ちは近いようで、全く違う気がする。大切にしたいようで壊してしまいたいような、なんでも言うことを聞いてあげたいようで自分の気持ちを押し付けたいような、矛盾だらけの気持ちだ。
だから彼女にも俺のことをもっと見て欲しいと思うし、受験にも集中してもらいたいと思う。なんとも噛み合わない感情である。
せめて彼女が受験生でなければ、なんて思ったところで、真剣に取り組む姿を見なければ好きになっていなかったかもしれない。また矛盾だ。
それにしても推薦で落ちてしまったと言っていたが、よっぽど難しい学校を受けているのだろうか。9月に推薦試験なんて随分気の早い高校なんだな…高校?
さっきまでのふわふわとした感覚徐々に消えていく。
彼女はとても幼そうな顔をしている。のんびりと話す姿も正直同じ学年ともは思えないくらい幼く感じることだってあるくらいだ。
でも考えれば考えるほど、あのたまに見せる大人びた雰囲気も、顔に似合わず少し短いスカートの丈も納得が行く気がする。
彼女はおそらくー…
「図書館の君が高校生?」
そう言ったのは前の席に腰掛けた蓮二だ。
「ああ。そうなんだ。雰囲気も見た目も幼いから気づかなかったんだけど。」それに彼女を知るのに必死だったから、というのは頭をよぎったが口には出さなかった。
「なるほど、9月末には推薦試験を受けて、昨日には合否がわかったということは高校受験ではなかなかないな。」
「だろう?まあ彼女が中学生でも高校生でも俺としてはあまり変わりはないんだけど。」
「ほう。やっと自覚したのか。」
「ふふ。自覚せざるを得なくなっちゃってね。」
「なるほどな。俺はどちらでも応援するが、相手が高校生で、こちらが中学生ということを知らないのが厄介だな。」
「そうなんだ。正直ギリギリまで伝えたくない。今の関係はあまり変えたくないし。」
中学生と気づかれたらよっぽどのことがない限り恋愛対象にはならないだろう。少なくとも今みたいな接し方はしてもらえないかもしれない。
「もうあまり時間がないし、あえて伝えないようにしようと思うよ。」
「そうだな、その方がいいかもな。」
「ああ。」
それに、好きになってもらえたら歳とか、学年とかそんなの関係なくなるだろうしね。
本当、恋って矛盾だらけだ。相手には誠実でありたいけど、打算的にもなってしまう。
でも一つわかったことがある。彼女に好きになってもらえるなら、どちらにでもなれる。
それだけは確固たる事実のようだ。
***
明くる金曜日。
この前の水曜日は図書館にはいなかったが、今日はどうだろうか。
彼女は立ち直れたのか、なんて心配をしながら自習室に向かうと、そこにはいつものように勉強する彼女がいた。どうやら余計な御世話だったようだ。
とても真剣そうな表情だが、やはりあどけない見た目で高校生には申し訳ないが見えなかった。
斜め前の席に腰を下ろそうと向かうと、パッと顔を上げた彼女と目が合う。
「少しいい?」
珍しく到着するなりいつもの休憩スペースに向かうことになったので、俺は荷物だけ置いて席を立った。
「昨日は、ありがとう。」
少しうつむきがちに彼女が言う。照れているのか耳がほんのり赤くなっていた。
「幸村くんが来てくれて、すごく助かった。一人だったら今日もきっと落ち込んで、勉強もできなければ前に進めなかったと思う。」
そう言ってパッと顔を上げた彼女は照れ臭そうに微笑んだ。
「どういたしまして。少しでも役に立てたようならよかった。」
本当にそうだった。自分の過去の経験が他人を助けることがあるんだと、自分まで救われた気分だ。
すると、彼女が安堵のため息を漏らしながら伸びをする。
「は〜〜〜〜〜〜っ、今日ここ来るのすごく緊張したんだよー。あんなに泣いて恥ずかしいとこ見せちゃって、もう本当ごめんねー」
どうやら恥ずかしさのあまり緊張していたようだ。俺のことでそんなに緊張するなんて、その可愛さは反則だよ?
「ふふ。気にしなくていいのに。」
泣き顔も十分可愛かったからね、とは心の中で付け加えた。
「気にするよー。でも来てくれたのが幸村くんで本当に良かった。」
「何で?」
「だって、一緒にいてほっとするもん。」
いつものようにニカッとはにかむ。
彼女の言動は常にストレートだが、好きになった後に改めて聞くとどうも自分の行動を抑えられなくなりそうで怖くなる。
「ふふ、そう玲奈に言ってもらえて光栄だよ。」
何とか答えるも自分の理性の限界を垣間見た気がした。
そして今はこの関係を絶対壊したくないと、やっぱり中学生であることは黙っていようと、強く確信した。
「さあて、今日もバリバリ勉強するぞー!本番は2月だ!」
「ふふ、応援してるよ。」
そう話しながら自習室に戻る。
やっぱり恋は矛盾だらけだ。彼女には目標を達成してもらいたいし、好きになってももらいたい。でもその矛盾をどうしようかと考えるのもわくわくする。
同時に全国大会の時から失いかけていたモチベーションが戻った気がした。テニスも頑張りたいし、もっと強くなりたい。もっと勝ちたい。
何だか急に人生が色を取り戻して華やいでいるようだ。
暖かな気持ちを胸にそっとしまって、一昨日手付かずの課題に取り組む。
その日のうちに課題が終わったのも、恋のおかげだろうか?