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「おかえり、幸村くん」
懐かしい彼女の笑顔はとびきり可愛く、やっと日本に帰ってこれた実感が今更になって湧いてきた。
***
オーストラリアから帰ってきた次の日、俺は彼女に会いに向かっている。
メールで連絡をしてから行こうかなとも思ったが、その日は学校もあったし、久しぶりに部活にも出る予定で図書館に何時に向かえるかもわからなかったからだ。もちろん、彼女の驚く顔が見たかった、というのもあるが。
久しぶりに出た部活では、いろんな質問を後輩から受けたり合宿の話をしていたらいつのまにか18時半を回っていた。思っていたよりも遅くなってしまってが、後輩と過ごせる残りの時間を考えるとなんとなく離れづらくてこんな時間になってしまった。
そこから片付けをして、図書館に向かう。途中に通る商店街はクリスマス一色に色づき、どこもかしこも煌びやかな雰囲気が漂っていた。
ケーキ屋さんの目の前にはホールケーキを外で販売していて、なんとも幸せな雰囲気で包まれていた。
そんな幸せな雰囲気に圧倒されつつ、図書館に到着する。
実は今日は彼女に伝えたいこともあって来ている。なので少し緊張もしていた。
久しぶりに会う彼女は元気だろうか。
図書館の前にあるベンチに腰掛けて、19時になるのを待つ。いつもの休憩時間の時間になったら会いに行こう。
はあ、と吐き出す息は白くいよいよ冬本番に差し掛かっているようだった。オーストラリアの暑さが嘘のようだ。
携帯を見ると時刻は18時50分に変わったところだった。そろそろいつもの休憩場所に移動するかと図書館の方を見ると、図書館から閉館のアナウンスが聞こえてきた。
よく見ると張り紙が貼ってあり、今日は19時までと書いてある。どうやら閉館時間が早まっているようだった。
ということは今日は彼女は図書館に来ていない可能性もあるのだろうか。ふと思ったが、焦っても仕方がないのでとりあえず19時まで座って待つことにした。
そう思って5分ほど経ったぐらいだろうか。
見慣れた背格好の小柄な女の子がマフラーを巻きながら出て来た。以前会った時より少し痩せたようにも見えたが、くりっとした目と柔らかな雰囲気はこの一ヶ月半ずっと会いたかった彼女に間違いない。
彼女が俺を見つけて近づく。
「えっ、幸村くん…?」
目を大きく見開いて、こちらを見つめる。驚いているようだ。
それもそのはず、何も言わずに訪れたのだから無理もないだろう。
「ただいま、玲奈。」
すると彼女の表情が一気に華やいだ。待ち焦がれていた彼女の微笑みに、抱きしめたくなる衝動を抑えて微笑み返す。
「おかえり、幸村くん」
大会中彼女を何度も思い出すことはあったが、現実の彼女は想像していたよりも可愛かった。
「12月に帰るとは聞いてたけど、いつ帰って来たの??」
彼女が質問する。
そういえば帰る具体的な日も伝えいなかったようだ。
「昨日帰って来たばかりなんだ。日本は寒いね。」
「そっか、オーストラリアは夏だったんだっけ。不思議だな、季節が違うなんて。」
そう彼女は微笑む彼女の目元にクマができているのを見逃さなかった。それに少しほっそりとしたようで、このひと月でかなり無理をしたのが見えた。
「玲奈はこの二ヶ月元気だった?メールでは元気そうだったけど。」
「うん、元気だったよ。…って言いたいところだけど、結構勉強が煮詰まっちゃって。ちょっと疲れぎみ。でも…幸村くんに会えたら疲れが吹っ飛んじゃった。」
そう言ってニコニコするものだから、高鳴る胸をなだめるのに精一杯だ。
「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいよ。でも体を壊すような無理だけは絶対にしないで欲しいな。」
俺の言葉に、うん、と頷く。
今が正念場なのはわかるが、体を壊すのだけ避けて欲しかった。
「心配してくれてありがとう。体調管理には気をつけるね。」
こういうなんでもない反応にやっぱり好きだなと思うあたり、俺はぞっこんなんだと確信してしまう。
そのあとも合宿やU17大会の話、彼女の図書館での話を一通りした。少し久しかったが、緊張や気まずさなどはなく、自然に会話ができるのがとても心地よかった。彼女は彼女で、興味を持って俺の話を聞いてくれるし、彼女のくるくると変わる表情にこちらも見ていて飽きなかった。
「そういえば、今日は何でここに来てくれたの?」
普段だったら彼女のこのストレートな質問に動揺してしまうところだが、実は今日は彼女に会うのに2つ理由があった。そしてそれを伝えるのにとても緊張していた。
「玲奈に会って伝えたいことがあったんだ。」
さっきまでの和やかな空気に少しだけ緊張感が走る。彼女はすっと顔を向けてこちらを見つめた。彼女の表情に少しだけ恐れの感情が見えた気がした。
「これからなんだけど…残りの学生生活、もっとテニスとしたいと思ってるんだ。だから前のように図書館には来れないと思う。約束を守れなくて、ごめん。」
そう言って彼女を見ると、今まで見たことのないような表情をしていた。しかしそれは前のような悲む表情ではなく、少しホッとしているようだった。
「…話してくれてありがとう。幸村くんがあんまり神妙な顔してたから何を話し出すのかすごく不安だったんだよー。それなら大丈夫だよ、私もあと少しで試験で今のペースは崩したくなかったから。」
そうあっさり言うので、俺は胸をなで下ろした。
「本当は玲奈と一緒に居たかったんだけど…テニスも大事にしたくて。」
「いいんだよ、私もテニスを大切にしてる幸村くんのことが、その、とてもいいと思うし。」
ちょっと言葉につまる彼女を不思議に思いつつ、ありがとう、と答える。
「あ、でも…メールは今まで通りしてもいい?」
彼女が不安そうにこちらを見る。
「もちろんだよ。むしろこれからもメールはして欲しいし、テニスがない時は図書館には来る予定だよ。」
そう言った途端、先ほどのように彼女がパッと明るくなる。
「よかったー!嫌われたのかと思ったよー」
「そんな、玲奈を嫌うのなんて俺にはできないよ。」
つられてこちらも微笑んでしまう。
さっきまでの雰囲気に戻ったところで、カバンから紙袋を取り出す。
彼女はどうしたの?と言わんばかりにこちらを不思議そうに見つめていた。
「そういえば、明日はクリスマスだね。メリークリスマス玲奈。」
そう言っててカバンに忍ばせていたプレゼントを手渡すと、彼女の丸い目が驚いたように見開いた。
「私に?」
「そう。喜んでもらえるといいのだけれど。」
「…とっても嬉しい!ありがとう、幸村くん!」
そう言って彼女が目を輝かせるものだから、心底
準備しておいて良かったと思った。これが彼女に会いにきた二つ目の理由だった。
「これ、今開けてみてもいい?」
「もちろん、どうぞ。」
とても嬉しそうに包みを丁寧に開ける。開けるとともにローズの香りがあたりに広がり、最後に可愛らしい小花のドライフラワーがあしらわれたキャンドルが現れた。どんな反応かと彼女の表情を覗き込むと、彼女はとても嬉しそうに目を潤ませていた。
「ありがとう、幸村くん…とっても嬉しい。」
「どういたしまして。喜んでもら得たようで良かった。」
「これ、もしかしてオーストラリアで買ってきてくれたの?」
「ふふ。そうだよ。受験勉強で疲れてる時にいいかなと思って。」
「…ありがとう、本当にありがとう。大事にするね。」
そう言って包み紙に戻して入れると、大切そうカバンにしまったかと思うと今度は悩ましそうな表情でこちらを向き直した。
「幸村くん、私幸村くんに何も用意してない。ごめん…何か欲しいものある?」
「いいんだよ、本当に玲奈にあげたかっただけだから。」
「でも、こんなに素敵なものをいただいたのに、貰いっ放しは嫌だな…」
「でも欲しいものは特にないしな。」
彼女は少しうーんと考えると、そうだ!と言う。
「それじゃ、欲しいものじゃなくてお願い事を1つなんでも聞いてあげる!」
そう目をキラキラとさせながら我ながらいいアイディアと言わんばかりに言うものだから、思わず笑いそうになってしまう。それ以上にあまりにも無防備なプレゼントで驚いてしまいそうだったが、こんなに願っても無いプレゼントはないので、いつもの表情で答える。
「お願い事か…そうしたら少し考えさせてくれる?」
「もちろん!あ、受験の後だとなお助かります。」
「そうしたら、そうさせてもらおうかな。」
そう答えると彼女がありがと、と言ってにこっと笑う。
無邪気に笑っているが、本人は自分がなかなか凄いこと言ったことに気づいてはいないだろう。
こんなに信頼されているのは嬉しいが、彼女が俺のことをどう思っているのか少しだけ気になった。
「外も寒いし、そろそろ帰ろうか。」
彼女を連れ立って歩き出すと、うん、と言って後を歩き出す。
「幸村くん」
名前を呼ばれたので振り向くとそこには少し照れながらこちらを見上げる彼女がいた。
「メリークリスマス。素敵なクリスマスイブがありがとう」
本日2度目の今すぐにでも抱きしめたくなる衝動を抑えて彼女に言う。
「メリークリスマス玲奈。こちらこそありがとう。」
そう言って二人で並んで帰り道を歩いた。
そして先ほど通った商店街の雰囲気以上に幸せであることに気づいたのは、彼女と別れて電車に乗ってからだった。
その事実に気づいだ時、なんだかおかしくてマフラーで口元を隠しながらふっと笑ってしまう。
幸せな気持ちに揺られて、その日は家路に着いたのだった。
懐かしい彼女の笑顔はとびきり可愛く、やっと日本に帰ってこれた実感が今更になって湧いてきた。
***
オーストラリアから帰ってきた次の日、俺は彼女に会いに向かっている。
メールで連絡をしてから行こうかなとも思ったが、その日は学校もあったし、久しぶりに部活にも出る予定で図書館に何時に向かえるかもわからなかったからだ。もちろん、彼女の驚く顔が見たかった、というのもあるが。
久しぶりに出た部活では、いろんな質問を後輩から受けたり合宿の話をしていたらいつのまにか18時半を回っていた。思っていたよりも遅くなってしまってが、後輩と過ごせる残りの時間を考えるとなんとなく離れづらくてこんな時間になってしまった。
そこから片付けをして、図書館に向かう。途中に通る商店街はクリスマス一色に色づき、どこもかしこも煌びやかな雰囲気が漂っていた。
ケーキ屋さんの目の前にはホールケーキを外で販売していて、なんとも幸せな雰囲気で包まれていた。
そんな幸せな雰囲気に圧倒されつつ、図書館に到着する。
実は今日は彼女に伝えたいこともあって来ている。なので少し緊張もしていた。
久しぶりに会う彼女は元気だろうか。
図書館の前にあるベンチに腰掛けて、19時になるのを待つ。いつもの休憩時間の時間になったら会いに行こう。
はあ、と吐き出す息は白くいよいよ冬本番に差し掛かっているようだった。オーストラリアの暑さが嘘のようだ。
携帯を見ると時刻は18時50分に変わったところだった。そろそろいつもの休憩場所に移動するかと図書館の方を見ると、図書館から閉館のアナウンスが聞こえてきた。
よく見ると張り紙が貼ってあり、今日は19時までと書いてある。どうやら閉館時間が早まっているようだった。
ということは今日は彼女は図書館に来ていない可能性もあるのだろうか。ふと思ったが、焦っても仕方がないのでとりあえず19時まで座って待つことにした。
そう思って5分ほど経ったぐらいだろうか。
見慣れた背格好の小柄な女の子がマフラーを巻きながら出て来た。以前会った時より少し痩せたようにも見えたが、くりっとした目と柔らかな雰囲気はこの一ヶ月半ずっと会いたかった彼女に間違いない。
彼女が俺を見つけて近づく。
「えっ、幸村くん…?」
目を大きく見開いて、こちらを見つめる。驚いているようだ。
それもそのはず、何も言わずに訪れたのだから無理もないだろう。
「ただいま、玲奈。」
すると彼女の表情が一気に華やいだ。待ち焦がれていた彼女の微笑みに、抱きしめたくなる衝動を抑えて微笑み返す。
「おかえり、幸村くん」
大会中彼女を何度も思い出すことはあったが、現実の彼女は想像していたよりも可愛かった。
「12月に帰るとは聞いてたけど、いつ帰って来たの??」
彼女が質問する。
そういえば帰る具体的な日も伝えいなかったようだ。
「昨日帰って来たばかりなんだ。日本は寒いね。」
「そっか、オーストラリアは夏だったんだっけ。不思議だな、季節が違うなんて。」
そう彼女は微笑む彼女の目元にクマができているのを見逃さなかった。それに少しほっそりとしたようで、このひと月でかなり無理をしたのが見えた。
「玲奈はこの二ヶ月元気だった?メールでは元気そうだったけど。」
「うん、元気だったよ。…って言いたいところだけど、結構勉強が煮詰まっちゃって。ちょっと疲れぎみ。でも…幸村くんに会えたら疲れが吹っ飛んじゃった。」
そう言ってニコニコするものだから、高鳴る胸をなだめるのに精一杯だ。
「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいよ。でも体を壊すような無理だけは絶対にしないで欲しいな。」
俺の言葉に、うん、と頷く。
今が正念場なのはわかるが、体を壊すのだけ避けて欲しかった。
「心配してくれてありがとう。体調管理には気をつけるね。」
こういうなんでもない反応にやっぱり好きだなと思うあたり、俺はぞっこんなんだと確信してしまう。
そのあとも合宿やU17大会の話、彼女の図書館での話を一通りした。少し久しかったが、緊張や気まずさなどはなく、自然に会話ができるのがとても心地よかった。彼女は彼女で、興味を持って俺の話を聞いてくれるし、彼女のくるくると変わる表情にこちらも見ていて飽きなかった。
「そういえば、今日は何でここに来てくれたの?」
普段だったら彼女のこのストレートな質問に動揺してしまうところだが、実は今日は彼女に会うのに2つ理由があった。そしてそれを伝えるのにとても緊張していた。
「玲奈に会って伝えたいことがあったんだ。」
さっきまでの和やかな空気に少しだけ緊張感が走る。彼女はすっと顔を向けてこちらを見つめた。彼女の表情に少しだけ恐れの感情が見えた気がした。
「これからなんだけど…残りの学生生活、もっとテニスとしたいと思ってるんだ。だから前のように図書館には来れないと思う。約束を守れなくて、ごめん。」
そう言って彼女を見ると、今まで見たことのないような表情をしていた。しかしそれは前のような悲む表情ではなく、少しホッとしているようだった。
「…話してくれてありがとう。幸村くんがあんまり神妙な顔してたから何を話し出すのかすごく不安だったんだよー。それなら大丈夫だよ、私もあと少しで試験で今のペースは崩したくなかったから。」
そうあっさり言うので、俺は胸をなで下ろした。
「本当は玲奈と一緒に居たかったんだけど…テニスも大事にしたくて。」
「いいんだよ、私もテニスを大切にしてる幸村くんのことが、その、とてもいいと思うし。」
ちょっと言葉につまる彼女を不思議に思いつつ、ありがとう、と答える。
「あ、でも…メールは今まで通りしてもいい?」
彼女が不安そうにこちらを見る。
「もちろんだよ。むしろこれからもメールはして欲しいし、テニスがない時は図書館には来る予定だよ。」
そう言った途端、先ほどのように彼女がパッと明るくなる。
「よかったー!嫌われたのかと思ったよー」
「そんな、玲奈を嫌うのなんて俺にはできないよ。」
つられてこちらも微笑んでしまう。
さっきまでの雰囲気に戻ったところで、カバンから紙袋を取り出す。
彼女はどうしたの?と言わんばかりにこちらを不思議そうに見つめていた。
「そういえば、明日はクリスマスだね。メリークリスマス玲奈。」
そう言っててカバンに忍ばせていたプレゼントを手渡すと、彼女の丸い目が驚いたように見開いた。
「私に?」
「そう。喜んでもらえるといいのだけれど。」
「…とっても嬉しい!ありがとう、幸村くん!」
そう言って彼女が目を輝かせるものだから、心底
準備しておいて良かったと思った。これが彼女に会いにきた二つ目の理由だった。
「これ、今開けてみてもいい?」
「もちろん、どうぞ。」
とても嬉しそうに包みを丁寧に開ける。開けるとともにローズの香りがあたりに広がり、最後に可愛らしい小花のドライフラワーがあしらわれたキャンドルが現れた。どんな反応かと彼女の表情を覗き込むと、彼女はとても嬉しそうに目を潤ませていた。
「ありがとう、幸村くん…とっても嬉しい。」
「どういたしまして。喜んでもら得たようで良かった。」
「これ、もしかしてオーストラリアで買ってきてくれたの?」
「ふふ。そうだよ。受験勉強で疲れてる時にいいかなと思って。」
「…ありがとう、本当にありがとう。大事にするね。」
そう言って包み紙に戻して入れると、大切そうカバンにしまったかと思うと今度は悩ましそうな表情でこちらを向き直した。
「幸村くん、私幸村くんに何も用意してない。ごめん…何か欲しいものある?」
「いいんだよ、本当に玲奈にあげたかっただけだから。」
「でも、こんなに素敵なものをいただいたのに、貰いっ放しは嫌だな…」
「でも欲しいものは特にないしな。」
彼女は少しうーんと考えると、そうだ!と言う。
「それじゃ、欲しいものじゃなくてお願い事を1つなんでも聞いてあげる!」
そう目をキラキラとさせながら我ながらいいアイディアと言わんばかりに言うものだから、思わず笑いそうになってしまう。それ以上にあまりにも無防備なプレゼントで驚いてしまいそうだったが、こんなに願っても無いプレゼントはないので、いつもの表情で答える。
「お願い事か…そうしたら少し考えさせてくれる?」
「もちろん!あ、受験の後だとなお助かります。」
「そうしたら、そうさせてもらおうかな。」
そう答えると彼女がありがと、と言ってにこっと笑う。
無邪気に笑っているが、本人は自分がなかなか凄いこと言ったことに気づいてはいないだろう。
こんなに信頼されているのは嬉しいが、彼女が俺のことをどう思っているのか少しだけ気になった。
「外も寒いし、そろそろ帰ろうか。」
彼女を連れ立って歩き出すと、うん、と言って後を歩き出す。
「幸村くん」
名前を呼ばれたので振り向くとそこには少し照れながらこちらを見上げる彼女がいた。
「メリークリスマス。素敵なクリスマスイブがありがとう」
本日2度目の今すぐにでも抱きしめたくなる衝動を抑えて彼女に言う。
「メリークリスマス玲奈。こちらこそありがとう。」
そう言って二人で並んで帰り道を歩いた。
そして先ほど通った商店街の雰囲気以上に幸せであることに気づいたのは、彼女と別れて電車に乗ってからだった。
その事実に気づいだ時、なんだかおかしくてマフラーで口元を隠しながらふっと笑ってしまう。
幸せな気持ちに揺られて、その日は家路に着いたのだった。