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ジェイドリーチと男装監督生の秘密

私たちは、あのシャワー室の日から半年間、密かによく話すようになっていた。
2人の心の距離は確実に縮まっていた。
けれど、その微かな心の変化に最初に気づいた第三者は、アズールだった。

「ジェイド、最近よくあの監督生と話していますね」

寮の談話室。香り高い紅茶の湯気の向こうで、アズールが何気なく切り出した。
彼の声は柔らかいが、決して気を抜いてはいけない。

「ええ、学業の話などを」

「…それにしては、ずいぶん距離が近くないか?」

「……少し、彼に対して興味が湧いているだけですよ」

アズールは笑う。メガネの奥の瞳が光を拾う。

「 それにしては、お前の目が優しすぎるように見えるな」

彼は、気づいていた。確信はないが、疑っている。そして揺さぶってくる。
ジェイドはその挑発には乗らず、ただ紅茶を一口。
けれど、その時点で、アズールの中で答えは出ていた。

「まあ……どんな結果になっても、業務に影響しなければ許しましょう」

そう笑って、アズールは話を切り上げた。


次に動いたのは、フロイドだった。

「ねえ、ジェイド〜」

昼休み、ジェイドが一人で廊下を歩いている時、不意にフロイドが背後から肩に腕を絡めてきた。

「ジェイドさ〜、小エビちゃんのこと、本気で気に入ってるでしょ」

「おやおや、突然何を言っているんですか、フロイド」

「あはっ♡ だってぇ、ジェイド、小エビちゃんといるとき、すっごく楽しそうじゃん」

フロイドは笑っていたけれど、目だけは笑っていなかった。勘が鋭く、他者の感情の変化には気づくようだ。

「オレ、小エビちゃんのこともっと気になってきちゃった…ぜったい面白いじゃん♡」

そして、耳元で囁いた。

「…女の子でしょ、あれ」

ジェイドは一瞬、目を伏せた。
否定しなかった。それが答えだった。

けれどフロイドはそれ以上、何も言わなかった。
ただ、不敵な笑みを浮かべながら、背中を小突いて颯爽と去っていった。


そして、ある日。

私が学園の中庭で本を読んでいると、ジェイドがふと声をかけてきた。

「少し、いいですか」

並んで歩きながら、彼は唐突に言った。

「貴方が女性である事実に、僕はもう驚きません」

私は何も返さない。

「僕は今、貴方を“監督生”としてではなく、一人の“女性”として見ています」

風が吹いた。
ひやりと肌をなでる風の中、彼の言葉だけが熱かった。

「感情的な関係は、煩わしいと思っていました。でも今は…」

彼は急に立ち止まった。私は少し追い越してしまい、後ろを振り返る。
彼の顔は見たことないほど柔らかい笑みを浮かべていた。

「僕は、貴方となら、それも悪くないと思っています」


私たちは恋人になった。誰にも知られずに。
勘づいているのはアズールとジェイドだけだったが、その2人も追求はしてこなかった。

ジェイドは、ふと私の髪に触れるとき、指先でそっと撫でるような仕草をする。
それはまるで、壊れものを扱うように優しく、それでも内なる熱を帯びているのが感じられた。

彼の瞳は、もう“観察者”ではなく、“恋人”としての眼差しになっていた。


夜。オクタヴィネルの廊下で、二人並んで歩く。

「これから先も、秘密のままで?」

と私が聞くと
ジェイドは、微笑んでこう答えた。

「ふふ、秘密は、守られるからこそ価値があるのです」

そして、静かに手を繋いだ。
誰にも見えない場所で。誰にも知られないままで。
でも、確かに実在している、二人だけの恋だった。
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