告白しました






「好きです」と。


「ありがとうございます」

彼のそれは、愛想笑いなのは明確だった。
口角をうっすらと引き、感謝を述べただけでそれ以上の言葉を発することなく微笑んだまま。



「ご用件はお済みのようなので、失礼致しますね」

それでは、と表情を崩さずに去ろうとするところを「待って下さい!」と呼び止めてしまった。



「他に何かございましょうか?」

不思議そうな顔で振り返った彼に言葉を出せなくなる。振られる前提での告白だったとは言え、まさかありがとうございますで終わるなんて考えてもなかった。



「サインでしたら構いませんが、お写真の場合は……」
「違います!」

サインをいただけるなら欲しいし、写真禁止なのは知ってるけどそうじゃない。



「付き合って貰えませんか?」
「それは無理でございますね、申し訳ございません」

その答えが欲しかったんですよ!

好きです、としか言わなかった自分が悪いんだけれども。


アイドルと付き合いたいなんて本気で思ってない。

自分のエゴだけど伝えたかっただけ。

伝えて振られたかっただけ。

彼からすれば、数居るファンの中の一人でしかない名前すら知られていないただのモブ如きが彼女の座になれるわけがない。

彼女になりたい!なんて一ミリも思ってなかった。

なのに……



「ですが、いくつかのご条件を飲んでいただけるのでしたら可能ではございます」

そんなワンチャンありますよ、みたいな事を笑顔で言われたら心はしっかり揺らぐぐらいには現金な為に条件を聴いてみた。



「……と、なりますが、それでもよろしければお付き合い致しましょう」

そのいくつかの条件というのは彼の環境や立場から考えると、凄く真っ当ではあったけれども何かが引っ掛かるような内容でもあった。


だけど、それでも。


「分かりました!飲みます!よろしくお願いします!」

手を取るほかないでしょう。

現金過ぎて自分で自分がおかしくなる。



「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

そう言って向けられた表情は、テレビや雑誌で良く見かけるアイドルとしての笑顔だった。

この関係の辿り着くところは、どこにもない。

だけど、彼の人生の一部に存在出来るのなら……


それでもいい、と思ったんだ。






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