続かない
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「あぁ~~っ、もう!全然、分かんないんだけど!ヒロくんはどう?」
「僕も分からないよ。なまえは?」
「私も……」
教室で、男の子二人と机を囲んで教科書とにらめっこしていた昼休み。三人して数学の同じ問題が解けなくて、うんうん頭を捻っていた。
「これを当て嵌めるところまでは合ってると思うんだけどぉ~……」
「あ、私もそうだと思った」
「だよね!でも、そうしちゃうとさ……」
「詰まってしまうね」
「そうなんだよぉ~!」
もう降参ー!と机に突っ伏しちゃう白鳥藍良くん。
僕もお手上げだ、と両手を胸元まで上げている天城一彩くん。
二人とは、席替えで近くなったのがきっかけで藍良くんから話し掛けられるようになり、自然と一彩くんとも会話するようになっていつの間にか名前で呼び合う仲に。
「タッツン先輩とマヨイ先輩に聞いても自分で解く事に意味があるとか言ってさぁ……全然、教えてくんないんだよぉ……誰かヒントだけでもくれないかな……考えるの疲れちゃったよぉ~……」
風早先輩と礼瀬先輩は、優しそうな見た目と反して意外と厳しいんだな。
机に突っ伏したまま、目を閉じてやだやだぁとゴネながら滝のようにだぁーっと涙を流してる藍良くん。机の上に湖が出来つつある。確かに疲れたよね。あとまだ二時間も授業があるのに、もう何も考えたくない。
「よぉ、ヒヨコちゃん達が寄って集まってピヨピヨ言っちゃって何してんだ?」
いきなり、頭にドサッと重さが掛かると「兄さん!」と一彩くんの顔が明るくなる。続いて「燐音先輩!?」と藍良くんが驚いて顔を上げた。
「丁度、良いところに来てくれたね!」
「この際、燐音先輩でもいいや!」
希望の光が差したと言わんばかりに目を輝かせる藍良くんと、大好きなお兄さんがやって来たのが嬉しそうな一彩くん。二人とも私の頭が先輩の顎置きにされている事に関しては、何も追求してくれない。
「俺っちに何か用か?」
「この問題が解けなくて困ってるんだ。是非とも、教えて欲しい!」
「見せてみろよ」
「これなんですけど」
藍良くんが教科書を見せると身を乗り出すから、ふわっと香水の匂いが漂って、ついでに私まで前のめりに。
「これくらい自力で解けないようじゃ、立派なニワトリさんになれねぇぜ?」
「どうか、燐音先輩の力でおれ達をニワトリにして下さい」
「ま、どうしてもってんなら教えてやってもいいけどよ……真面目ちゃんが、可愛くお願いしてくんねぇとな?」
私の肩に腕を回して目線を合わせるようにしゃがんで、ニヤリと笑う先輩。とても悪そうな顔をしている。
可愛くお願いって……
可愛いとは無縁な容姿な私が色々と試したところで、それはもうただ悲惨な事になるだけ。先輩の事だから、面白がってそうなる事を望んでいるのかもしれない。
可愛いと言えば、見た目からして女の子な藍良くんの方が断然にお願いが効くと思い、目線を送れば「頑張って!ここはなまえに掛かってるから!」と、一彩くんからは「僕達が立派なニワトリになるにはなまえの力が必要なんだ!」と応援されてしまった。
「どうすればいいのか分かんないんんですけど……」
「分かんねぇなりにやってみろよ」
「ねぇ、燐音先輩♡おねがーい、教えてぇ♡ってうるうるの上目遣いとかはどう?」
祈りのポーズで目を潤ませて、手本を見せてくれる藍良くん。それ凄く難しい気がする。私には至難の業だ。
目なんか藍良くんみたいに潤んでないし、寧ろ澱んでる気がするし、上目遣いなんてすれば睨んでるだけ。まだ辛うじて、目薬さえあれば何とかうるうるは達成出来そうだけど残念ながら持ってないし……
困ったなぁ。
どうにかして、うるうるの目だけでもを作り上げないと駄目かもしれない。何か良い方法はないか、と少し考えて閃いてしまった。
「ん?」
先輩の方に顔を向けて、見つめる。
先輩は一瞬だけ不思議そうな顔をするも、直ぐに柔らかく口角を上げた。
「なぁに、うるうるの上目遣いしてくれんの?」
「とりあえず、うるうるにはしようかと」
「とりあえず?」
じーっと先輩を見続ける。
目に力を入れて、何が何でも先輩を見つめる。何故か、先輩も余裕そうな顔で目線を外さなくてお互いに見つめ合った状態。
「ねぇ……おれ達、何を見せられてるんだろうね」
「兄さんとなまえのにらめっこかな?」
「いや、うん……確かにそれもそうなんだけど、そうじゃなくて……」
「でも、兄さんは微笑んでいるからにらめっこではなさそうだね。にらめっこなら、最初から兄さんの負けだ」
「うん……だから、そうじゃなくてね?あれはね、いちゃついてるって言うの」
「いちゃついてる……とは?」
「仲良ししてるって事だよぉ!」
藍良くんと一彩くんが、そんな会話を繰り広げてる間も先輩と私は見つめ合ったままお互いに視線を外そうとはしない。
私には理由があるとして、なんで先輩まで見つめる必要があるのか?
「あんさ、真面目ちゃん……眼力凄過ぎっしょ。目、かっぴらいて瞬きもしてねぇからすげー怖ぇんだけど」
「こうすれば、涙目になるかと」
生憎、目薬なんて持ってないから瞬きしなければ自然と涙で潤むかと思ったのに「なるほどな……」とニヤリ笑った先輩は、フーッと思いっきり私に息を吹きかけた。
「っ……!」
先輩の息で目がシパシパして反射的に目を擦る。
そんな私を見て、キャハハと笑ってる。酷い。
「バーカ。そんなんでうるうるになるかってーの」
「ちょっとはなりますし……」
「へー……じゃあ、見せてみろよ」
グイッと近付く顔が、目が楽しそうに笑ってる。
「なってねぇけど?」
「気持ち潤んでます」
「分かんねーな。もうちょい良く見せてくんねぇと」
「ほら、瞼の淵を見て下さい。涙が溜まってるはずです」
今度は、自分から顔を近付けて下瞼を指で軽く下ろして天井へと目線を上げる。
「溜まってませんか?」
「見えねぇから、俺っちを見てくんね?」
「はい」
言われた通り、指を瞼から離して目線を下ろすと先輩の顔がいつの間にかお互いの鼻先に触れそうなところにあって驚いて顔を背けたかったけど「隙有り過ぎなんだよ」と急に後頭部を押さえ込まれて更に顔が近付く。
「おりゃあーっ!」
何が起きていたのか状況が全く分からなくて先輩を見つめたままで居ると、スパンと勢い良く間に割り込んだ藍良くんの手刀が先輩の鼻を直撃した。
「ってぇ……!んだよ、カノジョくん。痛ぇな」
「こんな大勢の前でキスなんかさせないから!!」
「キ、キス!?そんな事しないよ!?」
藍良くんの発言にびっくりして否定したのに「燐音先輩はする気満々だからねっ!!」と言われて、更にびっくりして先輩を見たら「バレちゃあ仕方ねぇな」と笑ってた。
「あと、もうちょいだったのによ……邪魔してくれちゃって」
「兄さん、強引に接吻するのは良くない」
「いやいや……接吻ってお前」
「するなら、先に言っておくべきだよ!」
「んんっ!?ちょっとちょっと、ヒロくん!?そういう問題じゃないんだけど!?」
確かに、そういう問題じゃない。
そもそもなんでキスという展開になってるのか。
涙目の確認だったはずなのに。
「もうっ!ほんと油断ならないんだから!ほらっ、なまえから離れて!」
「おっ、出たな?真面目ちゃんセコム一号め」
「そりゃあセコムにもなるでしょ!どっかの先輩がなまえに直ぐちょっかいかけるから!」
シッシッ、と手を上下に払う藍良くんを揶揄うような感じで笑う先輩に対して、ぷんぷん怒っている藍良くんの後ろから「どうしたんや?ラブはん、そないに怒って」と、桜のような色をした髪色の男の子が顔を覗かせた。
「こはくっち!良い所に来てくれた!もぉ、聞いてよ!燐音先輩がまたなまえに……」
「よぉ、こはくちゃん。さっきぶりだな。メルメルとのデートはもう良いのか?」
「デートちゃうわ、ぼけ。購買にお互い用事があったから一緒に行ってただけや。とりあえず、燐音はんはみょうじはんから今すぐ離れぇ」
「セコムが、また増えちまったか?」
クククッ、と笑いながら「嫌なこった」と私の肩を組む。
「おんどれ……その小汚らしい手をどかさんっち言うなら、約束しとったやつナシにすんで」
「おっと、それは困るな。アレがない事には何も始まらねぇからよ」
仕方ねぇな、とすんなり先輩が離れると藍良くんが駆け付けて来て「もうっ!なまえは隙あり過ぎだから!流されてちゃあダメだよ!」と怒られてしまった。
別に流されてた訳ではないんだけど……
「燐音はん、ほんま相変わらずやな」
「諦めワリィのが俺っちだしよ」
「せや言うても、望みあらへんやろ」
「ばーか。これからだよ、これから」
「さよか。まぁ、どうなってもわしは知らんで」
「心配してくれんの?優しいねぇ、こはくちゃんは」
桜河くんの頭をくしゃくしゃして「んじゃあ、またな~」とひらひら手のひらを振りながら教室を出て行ってしまった先輩。
「兄さん、行ってしまったね」
「これで平和になっ……てなくないっ!?おれ達はまだひよこのままなんだけどっ!?」
「ごめんね……私がうるうるの上目遣いでお願いしてないから……」
「あれは燐音先輩が悪いから……あっ、そうだ!こはくっち、この問題分かった?」
藍良くんが教科書を見せると「なんやまだ解けてなかったんか」とふと柔らかく笑う。
「良かったら教えて欲しいんだけど……」
「わしやなくてもそこに解け……」
「よろしくお願いするよ、桜河くん!!」
一彩くんが急に声を張り上げるから、藍良くんも桜河くんも私も驚いた。
「ちょっと、ヒロくん!声デカ過ぎ!おれ達以外もびっくりしてるでしょ?」
「ごめん」
「まぁ……ヒロくんが声の加減間違えるのは今に始まった事じゃないから良いけど。あっ、でね、こはくっちの力でおれ達を立派なニワトリにして欲しいの!」
「ニワトリ?なんやよう分からんけどえぇよ」
「ほんとに!?やっぱり持つべき友は違うよねェ~♡」
藍良くんが桜河くんの両手を取り、ありがとぉ~♡ときゃっきゃっしてる。藍良くんの声って、聞けば聞くほど可愛く思えてくる。最早、女の子なのでは?とも思ってしまう。
「せやけど、タダでとはいかんで」
「えぇっ!?こはくっちが燐音先輩みたいな事言ってる!!」
「僕達は、どんな条件を飲めばいいのだろうか」
燐音先輩に染まっちゃったよぉ~!!と騒いでる藍良くんの横に一彩くんが立つ。
一彩くんは、見た目の可愛さと反して声が低め。
喋り方も古風な感じで、チャラそうに話す先輩とは真逆なのに、赤毛や猫目はとても似ていて兄弟らしさが垣間見える。
「三人居るから……三つ、わしのお願い聞いて貰わんとな」
「三つも!?こはくっち、そんな強欲だった!?」
やっぱり燐音先輩と普段から一緒に居るからだぁ~!!と喚いてる藍良くんに「わしは元から強欲や」と両腕を胸の前で組み、コッコッコッとかなり特徴的な笑い方をする桜河くん。
そんな桜河くんも、藍良くんや一彩くん同様可愛らしい見た目で、優しい声で話す京都弁が印象的。藍良くんと仲良しで天城先輩とも良く一緒に居る。それくらいの情報しかないクラスメイト。
「じゃあ、先ずは一つ目やな」
真剣な顔をするから、何をお願いされるのか構えていると「わしも、ラブはん達の仲間に入れてくれへんかな」と数秒前の真剣な顔が、にっこり微笑んだ。
「僕達の仲間?」
理由を聞けば、普段はほぼ先輩達としか関わらない上に同学年の友達が藍良くんしか居なくて、その藍良くんは一彩くんと私とでわいわい騒いでるから羨ましかった、らしい。
「そんなのお願いされなくても、こはくっちはもうとっくにおれ達の仲間だよぉ!」
「藍良の言う通り……友達の友達は僕達の友達でもあり仲間なんだ」
「なまえは?」
「桜河くんが嫌じゃないなら私も友達になりたい!」
先輩と会話してるところを見たりしていて、前から仲良くなりたいと思ってたから嬉しい。桜河くんは私達の返答が意外だったのか、目を真ん丸にして驚いていたけども「なんや恥ずかしいな」と頬を少し赤くさせて照れ笑いを浮かべた。
「こはくっち、ちょーらぶーい♡」
「友達が増えて嬉しいよ!早速、兄さんに報告しないと!」
「その前にヒロくんとなまえは、こはくっちと連絡先交換しなよぉ~」
「そうだね。いいかな?桜河くん」
「えっ、あ、うん。かまへんよ」
一彩くんがスマホを出すと桜河くんもスマホを出したのだけど、二人ともスマホを持ったまま動かない。
「……すまない、交換のやり方が分からないんだ」
「……ごめん、わしもやねん」
「ちょっとちょっと、三人とも~!おれが教えるから覚えて!」
二人の間を割り込み、連絡先交換の仕方を教える藍良くん。そんな可愛い光景を見て、頬が自然と緩るませていると昼休み終了のチャイムが鳴った。
「くれーぷっちゅうのが気になってて食べたいねんけど、燐音はんの前で食べたら馬鹿にされそうでな」
藍良くんの教えのもと、連絡先を交換しあった一彩くんと桜河くん。必然的に私のところに"知り合いかも?"と、桜河くんの名前とアイコンの三色団子のイラストが表示された。
直ぐ様、友達に追加すると藍良くんから"マブダチ!!"というグループ招待されて参加する。よろしく~という挨拶からの流れで普通の会話が始まり、放課後に四人で何処か行こう!という話になった。
スイーツを食べに行こうか、カラオケに行こうか、ゲーセンに行こうか、アイドルショップに行こうか、とか藍良くんが色々提案しながらもスイーツやカラオケやゲーセンを知らないという桜河くんに説明しつつ会話を誘導してくれて、クレープを食べたいと桜河くんの希望で偶に三人で寄ったりするカフェへ行く事になった。
「ニキはんがバイトしとるとこにあるやつやねん」
「えっ、ちょっと待って。椎名先輩、バイトしてるの?」
「そうだよ」
「待って待って。なんでヒロくんが知って……あ、燐音先輩か」
「うむ。椎名さんのバイト先へ兄さんに何度か連れて行って貰った事もあるよ。椎名さんの手作りプリンがとても美味しいんだ」
「手作りプリン……」
食べてみたい、かも。
甘いモノが大好きだからちょっと気になるな、椎名先輩の手作りプリン。
「だったらさ、椎名先輩のバイト先へ食べに行かない?なまえ、めちゃくちゃ食べたそうにしちゃってるし、椎名先輩の働いてるところおれ見てみたいかも!」
「ラブはんらがかまへんねんやったら」
「手作りプリン、メニューにあるかな?」
「あるはずだよ。なければ、椎名先輩に頼んでみよう」
「じゃあ、決定~!」
こうして、椎名先輩のバイト先へと向かう事になったのだけど道中……桜河くんと一彩くんに手作りプリンの話をされて増々興味が湧いてしまい、何が何でも食べたくなってしまった。
「兄さんも好きみたいだよ。椎名さんが遊びに来る時は必ず持って来てくれているからね」
「え~っ!燐音先輩って甘いの食べるの~?」
意外~!と驚いてる藍良くんに同意。
甘いモノ苦手そうなイメージがあるから。
一彩くん曰く、好き嫌いはないみたいで甘いモノも割と好きだとかで家でもちょくちょくクッキーやらマシュマロやら甘いモノを口にしているらしい。
それを聞いた桜河くんからも、ドーナツとか菓子パンとかしょっちゅう食べているといった情報が出て「しょっちゅう!?」とびっくりする藍良くん。
気付いたら、なんかしら口がもぐもぐしてる事が椎名先輩の次に多いらしい。間食しまくっているのに、それであんな細いの!?とまたもや藍良くんが驚く。
食べてもあまり身にならないとは聞いてるよ、と一彩くんが更に先輩の情報を提供するものだから「ヒロくんもだよね!?どうなってんの!?天城兄弟は!!」と藍良くんの声が辺りに響いた。
「いいなぁ……おれなんて食べた分だけしっかりとつくのに……」
「私もだよ、藍良くん……」
羨ましい限りだ。甘いモノも含め、計画的に食べないとつかなくていいところについてしまうから我慢しなければならない事の方が多い。
かと言って、ちゃんと我慢出来てるかと聞かれたらノーと即答。
目の前にあると、どうも誘惑に勝てないというか凄く意思が弱い。美味しいと聞いたら直ぐに食べたくなっちゃうし、期間限定なんて言葉が付いてきたら何が何でも食べてやる!ってなってしまうんだ。食い意地張ってるだけかもしれないけど。
「椎名さんの手作りプリンを食べたら、もう他のプリンは食べられないかもしれないね!」
一彩くんが笑顔で、こんな事を言うから絶対に食べてやるぞ!って火がついてしまった。
