しきうつり、紡ぐ。5
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ボカン!
儀式が始まって数分経ったくらいの頃、捕まえたサバイバーをフックに吊ったと同時にそれほど遠くない小屋から爆発音が聞こえてきた。恐らく発電機の修理をしていたサバイバーが修理ミスをした音だろう。俺はしゃがむと、気配を消して小屋の様子を見に行く。
見るとそこには二人の男女のサバイバーが居た。一緒に発電機を修理していたらしい。女サバイバーが慌てて男サバイバーに謝っていた。
「ほんとにごめんね、ジェイク」
「もう気にするな。…それにしてもお前が修理ミスをするなんてらしくないんじゃないか?」
「ふふ、私だってたまにはミスくらいするよ。…でも、ちょっと集中力が足りてなかったかな」
「…疲れてるんだろ。たまにはゆっくり休んだ方がいいな。救助は俺が行くから華紗音はそのまま修理を続けてくれ」
「あ、救助なら私が…」
「いい。お前はいつも無理し過ぎだ。こういうのは本来、男が行くべきだ」
男が立ち上がって小屋から出ていこうとするのを不安そうに見ながら彼女は呟くように言った。
「…そんなの気にしなくていいのに」
「……気にするに決まってるだろ。お前は確かに一人で何でも上手くこなせるから自分がやった方がいいと思っているのかもしれないが、それじゃ俺たちが納得出来ないんだよ」
「……?」
「……兎に角、お前は極力危ないことをするな」
それだけ言うと走って小屋を出ていくサバイバーの背中を見つめながら女は「気をつけて」と呟いた。
俺は発電機を修理する女に気付かれないように近付くと攻撃を仕掛けた。
カキン!
ナイフは女に当たらず、ギリギリで躱されて発電機にぶつかり金属音が響く。
「…やるね。今のもやっぱり避けてくるか」
「……気配がわかりづらいと思ったらゴスフェさんだったんですね」
「そうだよ。久しぶりに俺に会えて嬉しいでしょ?」
「ええ、お久しぶりですね。とても嬉しいですよ」
彼女は膝をついていた体勢から立ち上がると、パレットの前まで即座に移動して笑った。
やっぱり、抜かりないか。
手袋越しにナイフの刃に触れると僅かに刃溢れしてしまっていた。お気に入りのタクティカルナイフだったが、そろそろ替え時かとため息を吐いた。
「……本当に嬉しいと思ってる?そろそろ俺に飽きたんじゃない?」
「まさか、飽きる訳ないじゃないですか。変わらずにあなたのことを考えてましたよ?」
「……そう。さっきの彼とは何もないの?何か良い雰囲気だったぽいけど」
「…さっきの彼?……ああ、ジェイクのことですか。彼はただのサバイバー仲間ですよ。何もありません」
「のわりにはやけに大事にされてるように感じたけどね」
「あの人は優しいから誰にでもあんな感じです。まあ、確かに少し心配性っぽいところはありますね」
華紗音は考える仕草をしながら淡々と男について述べる。彼女の態度から見ても確かに特別な感情を抱いているようには見えないが、彼女自身、やけに心配していたように見えた。が、それ以上に男は彼女に特別な感情を抱いているように思える。
「……彼も苦労してそうだね」
「そうですね。責任感が強いから余計に疲れちゃいそうです。…そういう意味でもジェイクはちょっと心配になるんですよねぇ」
自分の言っている意味が全く伝わっていなくて、少しだけあの男に同情する。彼女は人をよく見て分析するタイプだから鋭いかと思っていたが意外と天然っぽいというか鈍いタイプなのかもしれない。
「…君たち意外とお似合いなんじゃない?」
「…なんてこと言うんですか。ジェイクは私なんかに興味はないし、私はゴスフェさんにしか興味はありません」
「…そっか、報われないね。……にしても君って今まで好きになった相手にはそんな一方的に告白してたの?」
いくら相手のことが好きだろうが、こんなに断られ続ければ、流石に諦めるのが普通だろう。だけど彼女は一切、諦める気配がない。正直、こんなに好意を伝えられ続けた経験はないし、俺以外にも彼女の被害にあっていた男がいたなら気の毒だ。…まあ、この女に告白されるなら大抵の男は嫌な気はしないだろうけど。