しきうつり、紡ぐ。1
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「あなたのことがすきです。付き合って下さい」
女は俺の前に現れると、そう告げた。
この女は儀式中にも関わらず、前にも自分にそんな浮わついたことを言ってきた可笑しなサバイバーだ。勿論、その時は急にそんな訳のわからないことを言われても迷わず処刑したが。
今も俺は躊躇なく、彼女の言葉なんか聞こえなかったようにナイフを取り出すと、腹にナイフを突き刺す。
彼女は自分の攻撃に気付いて躱そうとしたが、避けるには少し遅すぎた。僅かに後ろに下がって抵抗したつもりだろうが俺は更にナイフを深く突き刺し、グリグリと肉に食い込ませる。彼女は口から血を流すと、痛そうに顔を歪めた。
「……で、何だって?悪いけど聞こえなかったからもう一回言ってほしいな」
そんな俺の意地悪な返しに彼女は僅かに口許を緩めた。
……この状況でそんな顔をするか。
俺に殺されても本望だとでも思っているのだろうか?その顔が気に食わない。
女は肩で息をしながら、額に脂汗を浮かべて何とか言葉を発した。
「……すき、です…。……ただ、今はそのナイフを、…抜いてくれると…ありがたい、です…」
「無理なお願いだね。どちらにせよ君は死ぬし」
「…もう一回刺さないと、…私は死にま、せんよ…?」
女はまだ、余裕だと言わんばかりに笑ってみせた。
…確かに気に入らないけど、彼女の言う通り、この刺し方では致命傷にはならない。彼女を完全に殺す為には一度ナイフを引き抜き、もう一度刺さなければならない。仕方ないから今度はその煩わしい言葉を発する喉にナイフを突き刺してやろう。
ゆっくりとナイフを引き抜くと、血がボタボタと流れ落ちる。喉にナイフを刺そうとナイフを握り直すと、咄嗟に彼女は走り出した。腹から流れる血を手で押さえながら、よろよろと走っていく後ろ姿を見て、ため息を吐いた。
「…無駄な抵抗を」
俺のことを好きだなんてふざけた事を言っても、大人しく俺に殺される気は更々ないらしい。まあ、あの怪我では早く走るのは不可能だし逃げてもすぐに捕まえられる。俺は近くのパレットに向かって走っていく彼女を追った。
彼女がパレットの前まで来たときには既にナイフが背中に届く位置にいた。パレットを倒されるよりも早く、ナイフで背中を斬りつければ、女は声を上げて地面に倒れ込んだ。
「…俺に告白とかする前に君はもっとチェイスが出来るように練習した方がいいかもね」
ナイフについた血を拭うと、地面に這いつくばっている女を見下ろして皮肉を言ってやる。自分のことをどんな奴だと思って好意を伝えてきているのかはわからないが、こんな風に言われれば嫌な気分になるだろう。
内心、嘲笑いながら女を担ぐと小さく呻いた後、女はぽつりと言葉を吐いた。
「……じゃあ、…もっとチェイスが、上手くなったら、…検討して、ください…」
フックの前で足を止め、女をフックに吊るせば肩を貫かれた女が声を上げる。
肉フックの上からエンティティの蜘蛛脚のような鋭い爪が現れると容赦なくそれは女の腹を貫いた。
「…考えとくよ」
女が天に召されるのを見届けることもせずに、背を向けてそう言うと嗤った。