ハロウィンの季節
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ついにこの霧の森にハロウィンの季節のイベントがやってきた。気付けば儀式のマップ外でもジャックオランタンやおばけ、コウモリなどのハロウィンらしい飾り付けがされていた。
通常の儀式でたまにゴスフェさんに会うことはあってもサバイバー達が増えたせいか滅多に会うことはない。それ以外でも私達は自由時間にさえ、会うことが禁止されてるから実質、恋人として過ごせる時間なんてなかった。だけど、このイベントの期間中だけは彼と会ってゆっくりと一緒の時間を過ごせる。それだけで私は嬉しくてイベントの飾りを見る度に心が弾んだ。
サバイバーの間ではどんなコスプレ衣装を着るか盛り上がっていた。男性陣は限られた人達しかコスプレはしないけど、女性陣は大盛り上がりでお互いに着た衣装を褒め合ったり、その衣装で儀式に行く人達もいる。
「ねぇ、華紗音はどんな衣装着るの?今回はエンティティに頼めばただで衣装くれるらしいよ!」
「え、私は…どうしようかな」
コスプレに興味津々のミリに対して私はあまり気乗りしなかった。私はコスプレなんて今まで一度もしたことがないし、露出が多い格好もしたことはない。コスプレ衣装となると可愛い系、セクシー系と色んなコスチュームがあるけど、どの衣装も肌の露出が多いのばかりだ。極力、露出のない魔女のコスチュームが目につく。これでいいような気がしてきた。きっとゴスフェさんに会うとなるともしかしたら可愛らしいコスプレをしてくると期待されてるかもしれないけれど、私にはそんな衣装を着る勇気もない。それに変に気合い入れた衣装で会って引かれるのも嫌だ。
「衣装、決まった?」
「うん。私はこの魔女のコスプレにしようかな」
「これはまた無難なの選んだね。華紗音らしいけど、せっかくだからもっと露出が多いのにしてゴスフェのこと悩殺しちゃえばいいのに」
「無理だよ、気恥ずかしいし。ミリはどれにしたの?」
「私はこの小悪魔コス!ジウン、絶対こういうの好きだから反応見るの楽しみ!」
ミリが指差したカタログの衣装を見て、これを着る勇気があるのが羨ましいと思ってしまった。確かにミリはこんな露出が多い小悪魔系ファッションでも難なく着こなせそうだ。それにコスプレを見せた彼氏の反応を見るのを楽しみにしてるのも私とは全く真逆の考えだった。
「そういえば、これエンティティにどうやって衣装頼むの?」
「それはこのカタログの衣装の番号とサイズ、名前を紙に書いてこのエンティティのポストに入れておけばいいみたい」
「エンティティのポスト?」
「そう。ここに入れておくとすぐにエンティティが要望を叶えてくれて、部屋に戻ると衣装が置いてあるらしいよ」
「へぇ、なんかすごい面白いシステムだね」
私は言われた通りに要望を書いた紙をエンティティのポストに入れた。こんなポストがあったことも知らなかったし、あのエンティティがイベントの為に私達にここまでしてくれるなんて少し信じられなかった。だけど、彼女も恋人が共に過ごせる期間を与えてくれたり、イベントを開催してくれたりと良い方向に変わった一面もあるのだろう。優しいとは言いづらいけれど、素直に感謝はしている。
私とミリは衣装に着替える為にお互い部屋に戻った。部屋に戻ると本当にミリが言った通り、先ほど頼んだ衣装がベッドに置かれていた。すごい、仕事が早い。…案外エンティティはイベント事を仕方無くやっているというよりは乗り気なのかもしれない。
さっそく頼んだ魔女のコスチュームに袖を通してみる。似合ってるかどうかは置いといてサイズも私にぴったりだ。それからハロウィン風メイクをして、髪をセットして帽子を被ると鏡の前に立ってみる。こんな格好したのは初めてだし、何だか自分じゃないみたいだ。少し気恥ずかしい気持ちになったところで大事なことを思い出す。そういえば、ハロウィンといえばお菓子を用意しないといけない。飴やチョコやキャラメルなんかは売店に売ってるだろうけど、それだけだと味気ないだろう。せっかく時間もある訳だし手作りお菓子を作ることにした。
必要な材料と器具を用意するとエプロンをする。
作るのはマドレーヌ。わりと時間もかからずに簡単にできるからちょうどいいだろう。材料をボウルに入れて、手早くかき混ぜていく。ゴスフェさんは甘い物、好きかな。あんまり得意じゃないとかだったらあれだから甘さ控えめで作ろうか。いい感じに混ざった生地を型に流し込んで時間を設定するとオーブンで焼く。お菓子なんて久し振りに作ったから美味しく出来てるか少し自信がない。…昔はよく作ってたから多分、大丈夫だとは思うけど。
後はマドレーヌが焼き上がるの待つ間にゴスフェさんに会いに行こうかな。儀式中じゃなければいいんだけれど。
私は軽く身だしなみを整えてゴスフェさんに会いに行くことにした。別に決めた訳ではないけれど、いつの間にか私とゴスフェさんが会う場所となっていた森の中心にある切り株があるところまで行く。すると、切り株に座って本を読んでるゴスフェさんが居た。
…これはもしかして待たせてしまっていたかもと思い、慌てて駆け寄る。
「ごめんなさい。ゴスフェさん、もしかして結構待ってました?」
「本呼んでたから時間とか気にしてなかったな」
「本当ですか?それなら良かったですけど」
本から顔を上げたゴスフェさんは私のことを上から下までじっと見てくる。そういえば忘れていたけれど、魔女のコスプレ衣装を着ていたんだった。それを思い出しては少し恥ずかしくなる。
「ドえろいコスプレしてくるのかと思ってたけど、思ったより普通のコスプレしてきたね」
「ふふ、残念でした。私がそんなコスプレすると思います?」
「まあ、確かにそんなイメージないな。でも良く似合ってるね。露出すればいいってものでもないし、華紗音らしくて好きだな」
「ありがとうございます。ゴスフェさんも何かコスプレしてくれば良かったのに」
「俺がコスプレってこれ以上何すればいいの?」
「うーん、ネコ耳とか?」
「俺のネコ耳、見たい?」
「0.1%くらい興味あります」
「それって、つまりないじゃん」
ネコ耳姿のゴスフェさんを想像してしまったのと、彼の反応が可笑しくて二重の意味でくすくすと笑っていれば、ゴスフェさんが両手を広げてこっち向いていた。
「失礼します」
「失礼されます」
断りを入れてそっと彼の胸に寄りかかれば抱き締められる。その瞬間、信じられないくらい安心してしまって心地良く感じた。この幸せな瞬間を味わう為に生きてるんじゃないかとさえ思う。しばらくお互いの温もりを実感するように抱き合っていれば、ふと思い出す。
「そういえば、ゴスフェさん、お菓子作ったんですけど食べませんか?」
「お菓子?食べたい」
「わかりました。今急いで持ってくるんで、少しだけここで待っててもらえますか?」
「そういうことなら手間だし俺が華紗音の部屋に行くよ」
「わかりました。ゴスフェさんが嫌じゃなければ私はいいですよ」
ゴスフェさんもそれで喜んで了承してくれたので、私達はサバイバー仲間には見つからないように部屋に向かう。別にキラー立ち入り禁止ではないから怒られたりはしないけれど、他のサバイバーにキラーがいるところを見付かると面倒なので極力見つかるのは避けたい。