しきうつり、紡ぐ。23
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あれから半年ぐらい月日が流れた。
相変わらず、どんなに頑張っても邪神は俺が本当に望む褒美をくれたことはなかった。新しい武器や服、備品をくれたりする程度。俺が本当に望むものをわかっていながらそうしてるのだから、わざわざ何かを言う気にもなれなかった。言ったところで、これは正式な条件で交わされた約束だったからどうにもならないことくらいわかっていたけど。
半年。流石にこれだけの月日が経てば、彼女に対する気持ちなんて消えるかと勝手に思っていたけど、そんなことはなかった。会えなくても華紗音が好きだ。会えないのに好きで居続けることが苦しいとわかっていながらずっと苦しみ続けている。それでもこの苦しみを彼女と共有しているとずっと馬鹿みたいに信じているからだ。
トリックスターや華紗音の友達のミリからはそれとなく、彼女のことは聞かされていた。特に聞いたりした訳でもないけど、彼女は変わらずに元気だと。それから前より少しだけ、自分のことを大事にするようになったらしい。それはとても大きな成長のように思える。あんなに自分がどうなっても他人が幸せならどうでもいいと考えていたような子が。…最初は誰からも愛されて育てられていたと思っていたけど、本当は違うのかもしれない。俺は彼女のことを何も知れなかった。もし、また会える日が来るなら色んなことを教えてほしいし、今は自分のことも知ってもらいたいと思う。なんてありもしないことを考えた。
最近は何故かこの世界のサバイバーの人数が前よりも倍に増えた。勿論キラーも増えたけど、サバイバーの方が圧倒的に増えている。確かに儀式に必要なサバイバーは四人だから多い方がいいんだろうけど、それにしたって急に増えすぎだ。最近の儀式に当たるサバイバーは知らない顔ばかりになっていた。
儀式の回転率も上がって、キラーはかなり忙しい日々だ。まあ、そうすることによって恋愛に現を抜かしている場合じゃなくさせたいのかもしれない。
そろそろ儀式に呼ばれるころだろうと察して身仕度を整えていれば、全キラーがエンティティに儀式とは別で呼び出された。そこでエンティティにされた話はまたしても儀式のルール変更だった。
内容は、これからの儀式はキラーとサバイバーをなるべく同じ実力同士で儀式に当てるというものだ。今までは例えキラーやサバイバーが来たばかりの新人だとしても、ベテランと同じ儀式にしていた。故にどちらかが一方的に勝つめちゃくちゃな儀式もあった。それ以外にも上手く儀式に立ち回れないキラーやサバイバーが居るのも事実で同じ実力同士で合わせるというものは確かにいい制度だ。エンティティとしても一方的な儀式よりも、見応えがある儀式が出来上がると考えたのだろう。個々の実力はエンティティの直属の部下の管理者が殺傷率、脱出率の統計からとり、今日の儀式からそれを行なうとのことだった。サバイバーの人数を急に増やしたのもこのシステムの為だというのなら納得だ。一方的に勝つ儀式も悪くはないが、最近は勝率が良すぎてマンネリ化してたこともあり、骨のある奴らと儀式に当たるようになるならそれは魅力的だ。
適正レートの儀式が導入されてから、日々の儀式がまた楽しくなってきた。正直、レベルが高い奴ら四人を相手にするのはかなり疲れるけど、作戦を考えてじわじわ相手を追い詰めて勝ったときの快感は堪らないものだった。前までは適当にやってても負けることなんてあまりなかったが、今では少しのミスでサバイバーに脱出されることもある。悔しいけど、それさえ次の目標になるから楽しく感じた。