しきうつり、紡ぐ。18
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彼女の望み通りキラーとサバイバーの恋愛を許可してほしいともう一度エンティティに頼みに行った。エンティティは渋々といった感じではあったが、その条件の元、それを許可した。その日から俺と 華紗音が同じ儀式に当たることは無くなった。
エンティティが儀式を監視している間を狙って気付かれないようにサバイバーの拠点に忍び込もうとしたものの、エンティティにブロックされて行けないように阻止されていた。かれこれ数十回は試してみたが、どのタイミングでも悉く閉ざされている。キラーとサバイバーの恋愛が許可された以上、普段は行き来できるようになっているはずだし、自分が行くタイミングだけブロックされているのは明白だ。そこまでしてエンティティが徹底的に監視しているのかと思うと気持ちが悪い。
もしかしたらここまでするのも 華紗音も自分と同じ行動を取ったからなのかもしれない。とはいえ、よくここまで面倒なことをするなと感心する。まあ、エンティティにとっては俺達がこんなことすることぐらいお見通しだったんだろうけど。
キラーとサバイバーの恋愛が許可されてからは興味無い奴らは今まで通りだし、二股したりうざいほどイチャついたりして滅茶苦茶してる奴らもいる。
それのせいもあるのか浮かれて儀式中に「後でヤらせてあげるから見逃して」と色仕掛してくる馬鹿なサバイバーも居るし、興味本位で付き合おうと言ってくる奴らもいる。 華紗音に会う前だったらその馬鹿達と遊んでやるのもありだっただろうけど、今は全くそんな気は起きずに見逃すふりをしてちゃんと殺してやった。
彼女の願いだったとはいえ自分で頼んだことではあるが面倒なことになったものだ。……自分がこんな状況になるくらいだから 華紗音なんてキラーからもっと好かれていても可笑しくはない。はっきりした性格だから告白されたぐらいでは簡単には靡かないとしてもキラーに無理矢理されたらとか想像したら殺意が沸いてきた。それこそキラーに限った話でもなく、サバイバーの間でも何かある可能性もある。特にあのジェイクとかいう奴はヘタレそうだけど彼女に気があったのは明らかだった。何もないなんて言っていたが、もう会えなくなってしまった今となっては気が変わっていたとしても不思議ではない。
殺人鬼の自分なんかと居るよりは普通の男と幸せになった方が彼女の為だなんて思っていたけど、やはりそんな柄じゃない。好きになってしまった以上、変な虫は寄せ付けたくないし、誰にも渡したくない。
どうしようもないとわかっていながらそう考えずにはいられなくなっていた。エンティティの約束通り彼女の傷痕が消えただけでもこの取り引きには意味があったと思ってないとどうにかなりそうだった。
あの日、 華紗音と儀式は如何なるときも手を抜かないと約束をしたことを今でも馬鹿みたいに守って儀式に挑んでいる。それからキラーとサバイバーの恋愛が許可されてから新しいルールが追加された。
・キラーとサバイバーが恋愛関係になったとしても儀式では一切、私情を挟まないこと。もし、キラーがわざとサバイバーを逃がすことがあればお互いに罰則を与える。
・エンドゲームコラプス。ゲートを開けたときやハッチを閉じたときに制限時間を設けてその間にサバイバーが脱出できなかった場合、強制的にエンティティが処刑することになる。これは恋人同士が儀式最後に無駄な時間を過ごすことがないように新しく導入されたシステムだ。
別にどちらも自分には関係ないことだけど、エンドゲームコラプスに関しては楽になったところもあるから良いシステムだと言える。
華紗音と会えなくなってから恐らく、一ヶ月くらいは経っただろうか。たった一ヶ月。それでも彼女の顔を見ることも出来なければ声を聞くことも出来ない期間はとてつもなく長く感じた。
彼女のことを考えれば考える程、時間が長く感じて苦しくなるからエンティティに頼んでは儀式を増やしてもらう日々が続いた。それでも儀式で前みたいな楽しさは感じなくなり、ただひたすらエンティティの望む結果を出す奴隷になり果てた気分だった。ひたすら儀式を行い、疲れて帰ってきては死んだように寝る。それだけを淡々と繰り返す。 華紗音に会う前からもずっと同じ日々を送ってきたはずなのに、たった一人の人間に会えなくなっただけでこんなに毎日が辛くなるなんて思いもしなかった。
彼女は今、何を思っているのだろうか?
どうしようも出来ない世界で負の感情ばかりが連鎖し続ける。