しきうつり、紡ぐ。15
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
……大変だ、一睡も出来ない。
寝なくてはとベッドに入り、布団を被ったはいいものの何度寝ようと目を瞑っても眠気はやってこなかった。寝なくては儀式に支障が出るとわかっていても、"寝なきゃ"という気持ちが余計に私を寝させてはくれない。寝れない理由はわかっていて、さっきまで想い人と儀式外で会ってからいつもと違うことをしたせいだ。思い出す度、現実味が無くて恥ずかしくて動揺してしまう。
私がゴスフェさんとキスしたなんて信じられない。しかもあんな恋人同士がするようなキスなんて…。
無意識に触れた自分の唇の感触に、先ほど触れ合っていた彼の唇の感触を思い出しては死にそうな程、恥ずかしくなって身体が熱くなる。私も私で我慢出来ずに彼を求めてあんなキスをしてしまったが、はしたなかったのではなんて今更考える。だから最後あんなに素っ気なかったのかな、とか色々心配になってきた。
どうして彼が私にキスをしてきたのか、なんてことは考えるだけ無駄なことだとは思う。彼は気分屋の自由人で意地悪な人だ。あの様子からもわかるように異性なら誰とでもキスもそれ以上のことも、気持ちが無くても出来るのだろう。それでも私は彼と触れ合えたことを嬉しいと思ってしまいそうで、必死にその気持ちを押し殺そうとする。それを認めたら本当に彼の都合のいい女になってしまう。
私はベッドから出ると、洗面所で顔を洗った。意味のないことだけど少しでも火照った顔の熱を冷ましたかった。そして自室から出ると外のいつもサバイバーの焚き火がある場所に向かった。
どうせ寝れないなら外に居ようと思ったのだ。
この時間だし、もうみんな自室で寝ている頃だろうと思って来てみれば、サバイバーの女子達ほぼ全員が集まっていてびっくりする。焚き火を囲うようにみんなは楽しそうにお喋りをしながらお酒を飲んでいた。
今日って何か重要な集まりなんかあったっけ?と内心焦りながらみんなの方に近付いていくと、私に気付いたケイトが声を掛けてくる。
「あ!華紗音も来たわ!もう、遅いじゃない!」
「……え?ごめん、今日って何かあったっけ?」
ケイトにグイグイ背中を押されながら、みんなの所に来ると、メグがそれに答える。
「もう、華紗音は今日はみんなで女子会するから来れる人は来てって言ってたの忘れたの?」
メグのその言葉でやっと思い出した。そういえば、一昨日くらいに「女子会やるから来れたら来て!」なんて雑にケイトに誘われていたことを思い出す。そんなことはゴスフェさんとの約束で完全に私の記憶から忘れ去られていた。とは言ってもゴスフェさんとの約束の方が大事だし、彼女達は事あることにサバイバーの親睦会を開いている。恐らく月に二回くらいはあって、女子会だったり、男女混合会だったりと色んな会が開かれている。これもサバイバーの親睦を深めるのに大切なことだけど、私は月に一回ぐらいしか参加しない。理由は無理にお酒を飲まされたりするのが嫌だからだ。
「華紗音は何飲む?」
「ん、私はジュースかな」
「え~、たまにはハメ外してパーっと飲みなよ!」
「ううん、いい。お酒飲んだ状態で儀式に呼ばれたりすると大変だから」
「ほんと、真面目だよね~!その時はその時で一緒にキラーに殺されようよ!」
すでに結構、酔ってるネアは私の肩を抱きながら笑ってそんな事を言ってくる。私はもう、と笑い返した。
そうは言っても、こんな飲み会を開いてる時でも関係無しに儀式に呼ばれるからサバイバーが全員、酔っていたりすると儀式がめちゃくちゃになるのだ。エンティティにとってはキラーに有利な状況が出来るからサバイバーの飲酒を止める理由はないのだろうが、介護する側は相当大変だったりする。その中でも生真面目なクローデットや儀式に対しての意識が違うミンは絶対にお酒を飲んだりはしないけど。私もそんな理由もあってお酒は飲みたくなかった。ネアから貰ったりんごジュースが入ったグラスでみんなと軽く乾杯をする。
「みんな今日はよく飲んでるけど、何の話してたの?」
「今日はね~、恋バナ!今日こそ華紗音の恋愛事情についてもいっぱい聞くわよ~!」
「いいね~!華紗音ってば全然、そういう浮わついた話しないから未知なんだよね。好きな人とか居ないの?」
ケイト、ネア、メグに詰めよってそんな事を聞かれて私は笑って誤魔化す。私の恋愛事情は特殊だから一番、仲の良いミリ以外にはそんな話は一切したことはない。それどころか、普段からそういう話を振られた時は興味ないからの一点張りで切り抜けてきた。でも何だか今日はみんな酷く酔っているのもあってそう簡単には切り抜けられなさそうな気がする。