しきうつり、紡ぐ。13
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……何とか儀式を終わらせられた。もう少し早く終わらせるつもりだったのに中々、手強いサバイバーの相手をさせられた為に思いの外、時間がかかってしまった。まあ、二試合とも全滅取れたから良かったけど。かなり疲れきってるが、自室に戻ると急いでシャワーを浴びてサバイバーの拠点へと向かった。
森に入ると、切り株に座って月を眺めて待つ華紗音が居た。その横顔があまりにも愛おしく思えて写真に収めたい衝動に駆られる。…ただ生憎、今はカメラを持ってきていない為に出来る手段は自分の眼に焼き付けることぐらいだ。
「ごめん、結構待った?」
「あ、ゴスフェさん!全然、待ってませんでしたよ?早く会いたいなあって思ってたから時間が長く感じちゃいましたけど」
そうやって嬉しそうに笑う華紗音を見て、自分と同じ気持ちだったということを知れて、こっちも嬉しくなる。まるで、用意されたようにある彼女が座る隣の切り株に腰掛ける。キラーとサバイバーの恋愛は禁止しているはずなのに、サバイバーとキラーの拠点の中間地点にこんな物が用意されてるなんて不思議だ。
「…会うの結構、久しぶりだよね」
「そうですね。前より一緒に当たる儀式が減った気がします。…これって仕組まれているんですかね?」
「…まあ、そうだろうね。仕方ないのかもしれないけど」
「…そっか。……でも、ゴスフェさんが儀式外で私と会ってくれたの、すっごく嬉しかったです。ミリから聞いたとき、泣きそうになっちゃった」
「……そんなに?大袈裟過ぎない?」
「大袈裟じゃないです!…ゴスフェさんにはこんなに好きな人に会いたいなんて気持ち、わからないんでしょうけど」
寧ろ、わかりすぎて辛いから約束を取り付けたのに未だに自分だけ一方的な片想いをしていると思っている華紗音が可笑しくて静かに笑う。
「…あ、今笑ったでしょ?私のこと馬鹿にしましたよね…!?」
「…まさか、してないよ。可愛いこと言ってくれるなあって思っただけ」
「……す、すぐそういう思ってもないこと言うんですから…」
華紗音は恥ずかしくなったのか、照れてそっぽを向いてしまった。折角、久しぶりに会えたんだからもっと、こっちを見ててほしいのに。
「俺、思ってないこと言うの苦手だからそれはないよ」
「それは嘘です!ゴスフェさんみたいな人は思ってもいないことを平気で言えちゃうタイプなんです。…それならいっそのこと嘘でも私に好きって言ってくれてもいいのに…」
「……嘘でも、俺の口から聞きたいの?」
そう言えば、華紗音は少し悩んで考える素振りを見せた後に首を横に振る。その表情は悲しそうに笑っていた。
「……いいえ、嘘ではダメですね。そんなの余計、虚しくなるだけですよね…」
「…そうだね。上辺だけなら何とでも言えることだけどやっぱり気持ちが籠ってないと意味ないからね」
肯定すると華紗音はあからさまにしゅんとしてしまった。女の子って難しいなあ。
だけど、すぐに切り換えるように華紗音はぱっと顔を上げると、それならと少しもじもじしながら別の提案をしてくる。
「……あの、それなら手、繋いでくれませんか…?」
「…手?」
「はい。…勿論、嫌なら断ってもらってもいいですけど…」
また、唐突な提案だな。
別に手を繋ぐぐらいなら全然、構わないけど俺は少しだけ、そうだなと考える素振りをする。その間も彼女がどんな面持ちで俺の返事を待っているのか盗み見る。期待と不安を孕ませた瞳でじっと俺を見つめている。
……こうもあからさまに求められてると実感すると堪らないな。
「…いいよ」
「……ほ、本当ですか…!?」
「うん、はい」
喜んでいる華紗音にはい、と手袋をしたまま手を差し出す。……あ、露骨に拗ねた顔した。面白いなあ。
「…出来れば、手袋を取って欲しいのですが」
「なんで?手、繋ぐ意味なら一緒でしょ?」
「…違います…!私はゴスフェさんの手の体温を感じたいんです…!手袋越しじゃわかりません」
「へぇ、俺の体温を感じたいんだ?」
「そうです!……いや、へ、変な意味はないですよ?人の体温を感じるとこんな暗い場所でも安心するというか、一人ではないと感じれるので勇気が出るんですよ…!」
華紗音の勢いある大胆発言に俺はニヤニヤする。
真っ赤な顔をしながら慌てて必死に言い訳を考えて熱弁している彼女が可愛くてしょうがない。
馬鹿正直な故に自滅していくタイプだ。
「…俺の体温を感じたいって見掛けに寄らず、華紗音はエッチだねぇ?実はもっとそれ以上のこともしてみたいと思っていたり?」
「なっ、なな何言ってるんですか…!?ど、どうして体温を感じたいって言っただけでえ、えっちとか言われなきゃいけないのかわかりませんっ、そんなこと言ったらすぐそういう発想になるゴスフェさんの方がずっとえっちです…!!」
「そりゃそうでしょ、男なんだし。…何なら、手を繋ぐよりももっとお互いの体温を感じれて尚且つ、気持ち良くなれることする?」
あまりにも彼女の動揺し具合いが面白すぎて、悪ふざけで彼女の顎を掴んで、顔を近付けてみる。
「…か、からかうのはやめてください…!それに、恋人じゃないのに、そんなことをするなんてだめです!」
「ピュアだねえ」
日本人はお堅いなんていうけど、みんな彼女みたいな人ばかりなのだろうか。付き合ってからじゃないとダメなんて思考だと恋愛するのも一苦労なんじゃないかと思う。もう少し虐めたい気持ちを押さえて笑って彼女と距離を取る。そして手袋を取ると、彼女の手をぎゅっと握った。急なことに華紗音はびっくりして俺を見る。