君に殺される為に生きている。
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※君の死体を飾りたい。と繋がってます。
恋をすると人は愚かになると私は思っている。それは人類みんなそう。今まで当たり前に考えられたことがわからなくなって、正しい判断さえ鈍らせる。だけど、それに気付かずに私たちは幸せそうに笑う。世界が明るくなって、その人の為に生きていると錯覚し続ける。
この世界は元いた世界より地獄だった。人が毎日死ぬのが当たり前。それが自分だったり、仲間だったり。死の恐怖を味わい、目の前で仲間を救えない無力さを知る。そんな逃げられない毎日を送らされて強制的に生かされている。次第に痛みにも死の恐怖にも少しずつ慣れていって当たり前の人としての感覚を少しずつ失っていく。
この世界にはサバイバー以外にキラーという私たちを殺そうとする存在がいて、好き好んで殺しをしているキラーばかりじゃないことを知った。
こんな世界で何度も儀式を行っている内に私は恋をした。それは仲間であるサバイバーではなく、私たちの敵であるキラーだった。最初はその想いは内に秘めておこうと思い、誰にもそんな話を打ち明けたりはしなかった。だけど、日が経つに連れて儀式の回数をこなす度、私はキラーである彼と仲良くなってしまった。私から声をかけることはしなかったけど、彼はキラーとサバイバーという敵対関係を気にすることなく、私との距離を縮めていく。私はそれが嬉しかった。敵対関係であったとしても、彼らと心を通わせられることを知れたから。彼は初めて見たときから狂気に満ち溢れていて、それでいていつでもキラキラと眩しかった。元の世界で彼は人気アーティストだったらしく、その曲を聞かせてもらったり、私の為に曲を作って唄ってくれたりした。話せば話す程、広い知識を持っていて色々な経験を積んできたことがわかった。私はますます彼に興味を引かれた。彼も私に興味を持ってくれて、部屋に遊びに行くような間柄になった。
丁度、その少し後くらいにもう一人、仲良くなったキラーがいた。仲良いと言っていいのかわからないけど、他のキラーとは違って彼は普通に儀式中でも私に話をかけてくる。あるとき彼は私以外のサバイバーを殺した後、質問を投げ掛けてきた。
「前の儀式のときに煽ってきたサバイバーが居たけど、何であの時、あんな事言ったの?俺たちとは敵同士なのにさ」
彼に言われて前の儀式を思い出す。それまでは必死で脱出する為に儀式をやっていたはずなのに、通電して確実に脱出できるとわかった途端、キラーを煽り出したサバイバーがいた。そのサバイバーに対して私は「彼は今回、わざと手を抜いていただけだよ?例え敵だとしてもどんな感情を抱えてるかなんてわからないんだし対戦相手には敬意を払うべき」と言ったのだ。何であんな事を言ったのと聞かれても正直困る。私は私の考えをただ言っただけだから。少し考え込んだ後、結局そのまま言葉にする。
「私は私の考えを言っただけだよ。何か変なこと言ってたかな?」
「変だよ。普通、キラーに対してそんな風に考える奴はいない。わざわざキラーの気持ちとか考えていたり、敬意を払うべきだなんてこと言わないでしょ」
「この世界では好き好んで人を殺してる殺人鬼ばかりじゃないと思う。それに、もしかしたら私がそっち側の立場になってることだってあったかもしれない。私はただ、殺人をしなくて済んだだけ。…相手の立場になって考えるってそんなに変なことじゃないと思うんだけどなあ」
彼が何故そんなに不思議に思ってるのか、わからない。…ああ、もしかしたら余計なお世話だったということなのかなと考え直す。しかし、彼はそんな不安になった私の気持ちを払い退けるように笑った。
「…ハハ、やっぱそれでも俺には理解出来ないし、本当に君が変な子なだけなんだろうね」
「失礼だね。…それよりあの後、煽ってた彼とはマッチした?」
「してないけど」
「ふふ、そっか。それなら次あったときはメメントでもして少し痛い目に合わせてあげた方がより反省するかもね?」
私は調子乗ってた彼がメメントされる姿を想像して悪戯にニヤリと笑う。それを聞いたゴーストフェイスは数秒、間を空けた後、吹き出して笑う。
「…ぷっ、アハハ、何それ?仮にも仲間のサバイバーに対して普通そんなこと言う?」
「いいの、いいの。どうせこの世界じゃ死ねないんだし。…ただし、私がそんなこと言ってたって内緒にしてね?」
唇の前に人差し指を当ててそう笑えば、彼はどうしよっかな~なんて楽しそうに笑っていた。
彼と儀式で会う度にすごくどうでもいい話から、面白いジョークを交えた話、それからこの世界の少し真面目な話をした。彼は人懐っこいおちゃらけた性格のサイコパスかと思っていたけど、博識で思慮深く、用心深い性格であった。彼もジウンとは少しサイコパスな部分は似ていたものの、違う良さがあった。上手く言えないけど、話していて飽きないというか、彼となら一晩寝ずにずっと話ができるだろうなと感じていた。
このときの私の心情はジウンに対して恋心を持ち、ゴーストフェイスには人として好意を抱いていたというのが正しいだろう。
それからまた少しくらい経ったとき。
ジウンの部屋に遊びにいけば、ただ話をしたり、美味しい物を一緒に食べたりするだけの良くわからない関係を続けていた。お互いが両想いだと認識していたが、付き合おうという会話は一切、してなければ恋人同士のスキンシップも無い。私はこの友人みたいな距離感の関係も心地好く感じていた為に、そのままの関係で満足していた。
だけど、ある日、ジウンは私と性行為をしたいと言ってきた。私は彼のことは好きだったのでそれを受け入れた。その日から、私たちの中で何かが変わった。彼が好きだと言って私を抱く度に、何か私の中では違和感が生まれる。
「雪葉、好きだよ」
そうやって私の頬を撫でて、ジウンは優しくキスをする。それから自然と性行為をする。彼はとても優しいし、営みも上手だけど、私は何故か彼に好きだと言えなかった。これは一般的には付き合っているという関係になるのかもしれない。だけど、私は私たちの関係は曖昧であり、はっきりしないものだと感じていた。だから、私は彼に尋ねた。
「…ねぇ、ジウン、私たちの関係って何なんだろうね?」
「何って恋人でしょ?」
当然のように返ってくる答え。私には何故かそれがしっくり来ない。もう一度、好きだよと囁かれたとき、その違和感の正体がわかった。彼は何度だって私に好きだと伝えてくれるのに、私は一度だって彼に好きだと言ったことはなかった。それに対して彼は何も疑問を抱かない。普通なら好きな相手には好きだと言ってほしいはずだ。だけど、彼は私からの好きという言葉を一度も求めたことはない。
「…まだ、付き合ってないことに出来ないかな?」
「…え?急に何を言ってるの?」
私はベッドから降りると、床に落ちた服を集める。勿論、私のその言葉が納得できないジウンは私の腕を掴んで引き留めた。勝手かもしれない。…勝手だから、ずっと言えなかった。だけど、今はそんな言いづらいことも言わなきゃいけないときだ。このまま、こんな関係を続けるのはジウンに対しても失礼になる。
「…君を好きかわからなくなっちゃった」
「……それってどういうこと?」
「……私、ジウンと仲良くしたいって思ってたし、最初はきっと恋愛感情の好きだと思ってた。…でも、あの日、初めて行為したとき、何か違うって思った」
「…何か嫌なことした?気に入らなかった?」
彼は不安そうに聞いてくる。私は首を横に振った。
違う、そうじゃない。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。わかっていたけど、彼はちゃんと私のことを好きでいてくれていた。
「…そうじゃないよ。ジウンに対する不満じゃなくて、これは私のジウンに対する感情の問題なの。…君のことはすごく好きだったけど、恋愛感情の好きじゃなかったみたい。行為なんてしなくても、ただ一緒に居るだけで満足してたから」
ずっとそれを言えなかったのは、彼が私と両想いだと信じていたからかもしれない。あの日、私がジウンに抱いている感情が恋心じゃないと気付いていたら、性行為を受け入れなければ良かった。そしたら私を好いてくれていた彼を傷付けずに済んだのに。ジウンは間違いなくショックを受けていて、傷付いていた。私が悪かった。
私はごめんなさい、と彼の頬を撫でる。
「……狡いよ。そんなの。ここまで僕を本気にさせて、僕から離れるなんて許さない」
彼の言葉はあまりにも重くて、簡単に私を放してくれはしない。自分が彼の立場だったら本当に好きな人がそんな簡単に離れていくのを許せるかと言われたら迷ってしまう。ぎゅっと掴まれた手首が痛んで、彼の気持ちが痛いほどに伝わってくる。どうしたら良かったんだろう。
「…お願い、雪葉。僕から離れないで。誰よりも君を愛してるよ」
言葉通りの想いを籠めるようにジウンは後ろから私を強く抱き締めた。私はもっと苦しくなる。
これは私の責任だった。浅はかで、すぐに彼に真実を伝える勇気もなかった愚かな私の。
私とジウンの関係は恋人なんて綺麗なものではなく、身体だけの関係となる。彼は恋人じゃなくてもいいし、好きになってくれなくていいからと言った。そうして歪な関係は続いた。
恋をすると人は愚かになると私は思っている。それは人類みんなそう。今まで当たり前に考えられたことがわからなくなって、正しい判断さえ鈍らせる。だけど、それに気付かずに私たちは幸せそうに笑う。世界が明るくなって、その人の為に生きていると錯覚し続ける。
この世界は元いた世界より地獄だった。人が毎日死ぬのが当たり前。それが自分だったり、仲間だったり。死の恐怖を味わい、目の前で仲間を救えない無力さを知る。そんな逃げられない毎日を送らされて強制的に生かされている。次第に痛みにも死の恐怖にも少しずつ慣れていって当たり前の人としての感覚を少しずつ失っていく。
この世界にはサバイバー以外にキラーという私たちを殺そうとする存在がいて、好き好んで殺しをしているキラーばかりじゃないことを知った。
こんな世界で何度も儀式を行っている内に私は恋をした。それは仲間であるサバイバーではなく、私たちの敵であるキラーだった。最初はその想いは内に秘めておこうと思い、誰にもそんな話を打ち明けたりはしなかった。だけど、日が経つに連れて儀式の回数をこなす度、私はキラーである彼と仲良くなってしまった。私から声をかけることはしなかったけど、彼はキラーとサバイバーという敵対関係を気にすることなく、私との距離を縮めていく。私はそれが嬉しかった。敵対関係であったとしても、彼らと心を通わせられることを知れたから。彼は初めて見たときから狂気に満ち溢れていて、それでいていつでもキラキラと眩しかった。元の世界で彼は人気アーティストだったらしく、その曲を聞かせてもらったり、私の為に曲を作って唄ってくれたりした。話せば話す程、広い知識を持っていて色々な経験を積んできたことがわかった。私はますます彼に興味を引かれた。彼も私に興味を持ってくれて、部屋に遊びに行くような間柄になった。
丁度、その少し後くらいにもう一人、仲良くなったキラーがいた。仲良いと言っていいのかわからないけど、他のキラーとは違って彼は普通に儀式中でも私に話をかけてくる。あるとき彼は私以外のサバイバーを殺した後、質問を投げ掛けてきた。
「前の儀式のときに煽ってきたサバイバーが居たけど、何であの時、あんな事言ったの?俺たちとは敵同士なのにさ」
彼に言われて前の儀式を思い出す。それまでは必死で脱出する為に儀式をやっていたはずなのに、通電して確実に脱出できるとわかった途端、キラーを煽り出したサバイバーがいた。そのサバイバーに対して私は「彼は今回、わざと手を抜いていただけだよ?例え敵だとしてもどんな感情を抱えてるかなんてわからないんだし対戦相手には敬意を払うべき」と言ったのだ。何であんな事を言ったのと聞かれても正直困る。私は私の考えをただ言っただけだから。少し考え込んだ後、結局そのまま言葉にする。
「私は私の考えを言っただけだよ。何か変なこと言ってたかな?」
「変だよ。普通、キラーに対してそんな風に考える奴はいない。わざわざキラーの気持ちとか考えていたり、敬意を払うべきだなんてこと言わないでしょ」
「この世界では好き好んで人を殺してる殺人鬼ばかりじゃないと思う。それに、もしかしたら私がそっち側の立場になってることだってあったかもしれない。私はただ、殺人をしなくて済んだだけ。…相手の立場になって考えるってそんなに変なことじゃないと思うんだけどなあ」
彼が何故そんなに不思議に思ってるのか、わからない。…ああ、もしかしたら余計なお世話だったということなのかなと考え直す。しかし、彼はそんな不安になった私の気持ちを払い退けるように笑った。
「…ハハ、やっぱそれでも俺には理解出来ないし、本当に君が変な子なだけなんだろうね」
「失礼だね。…それよりあの後、煽ってた彼とはマッチした?」
「してないけど」
「ふふ、そっか。それなら次あったときはメメントでもして少し痛い目に合わせてあげた方がより反省するかもね?」
私は調子乗ってた彼がメメントされる姿を想像して悪戯にニヤリと笑う。それを聞いたゴーストフェイスは数秒、間を空けた後、吹き出して笑う。
「…ぷっ、アハハ、何それ?仮にも仲間のサバイバーに対して普通そんなこと言う?」
「いいの、いいの。どうせこの世界じゃ死ねないんだし。…ただし、私がそんなこと言ってたって内緒にしてね?」
唇の前に人差し指を当ててそう笑えば、彼はどうしよっかな~なんて楽しそうに笑っていた。
彼と儀式で会う度にすごくどうでもいい話から、面白いジョークを交えた話、それからこの世界の少し真面目な話をした。彼は人懐っこいおちゃらけた性格のサイコパスかと思っていたけど、博識で思慮深く、用心深い性格であった。彼もジウンとは少しサイコパスな部分は似ていたものの、違う良さがあった。上手く言えないけど、話していて飽きないというか、彼となら一晩寝ずにずっと話ができるだろうなと感じていた。
このときの私の心情はジウンに対して恋心を持ち、ゴーストフェイスには人として好意を抱いていたというのが正しいだろう。
それからまた少しくらい経ったとき。
ジウンの部屋に遊びにいけば、ただ話をしたり、美味しい物を一緒に食べたりするだけの良くわからない関係を続けていた。お互いが両想いだと認識していたが、付き合おうという会話は一切、してなければ恋人同士のスキンシップも無い。私はこの友人みたいな距離感の関係も心地好く感じていた為に、そのままの関係で満足していた。
だけど、ある日、ジウンは私と性行為をしたいと言ってきた。私は彼のことは好きだったのでそれを受け入れた。その日から、私たちの中で何かが変わった。彼が好きだと言って私を抱く度に、何か私の中では違和感が生まれる。
「雪葉、好きだよ」
そうやって私の頬を撫でて、ジウンは優しくキスをする。それから自然と性行為をする。彼はとても優しいし、営みも上手だけど、私は何故か彼に好きだと言えなかった。これは一般的には付き合っているという関係になるのかもしれない。だけど、私は私たちの関係は曖昧であり、はっきりしないものだと感じていた。だから、私は彼に尋ねた。
「…ねぇ、ジウン、私たちの関係って何なんだろうね?」
「何って恋人でしょ?」
当然のように返ってくる答え。私には何故かそれがしっくり来ない。もう一度、好きだよと囁かれたとき、その違和感の正体がわかった。彼は何度だって私に好きだと伝えてくれるのに、私は一度だって彼に好きだと言ったことはなかった。それに対して彼は何も疑問を抱かない。普通なら好きな相手には好きだと言ってほしいはずだ。だけど、彼は私からの好きという言葉を一度も求めたことはない。
「…まだ、付き合ってないことに出来ないかな?」
「…え?急に何を言ってるの?」
私はベッドから降りると、床に落ちた服を集める。勿論、私のその言葉が納得できないジウンは私の腕を掴んで引き留めた。勝手かもしれない。…勝手だから、ずっと言えなかった。だけど、今はそんな言いづらいことも言わなきゃいけないときだ。このまま、こんな関係を続けるのはジウンに対しても失礼になる。
「…君を好きかわからなくなっちゃった」
「……それってどういうこと?」
「……私、ジウンと仲良くしたいって思ってたし、最初はきっと恋愛感情の好きだと思ってた。…でも、あの日、初めて行為したとき、何か違うって思った」
「…何か嫌なことした?気に入らなかった?」
彼は不安そうに聞いてくる。私は首を横に振った。
違う、そうじゃない。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。わかっていたけど、彼はちゃんと私のことを好きでいてくれていた。
「…そうじゃないよ。ジウンに対する不満じゃなくて、これは私のジウンに対する感情の問題なの。…君のことはすごく好きだったけど、恋愛感情の好きじゃなかったみたい。行為なんてしなくても、ただ一緒に居るだけで満足してたから」
ずっとそれを言えなかったのは、彼が私と両想いだと信じていたからかもしれない。あの日、私がジウンに抱いている感情が恋心じゃないと気付いていたら、性行為を受け入れなければ良かった。そしたら私を好いてくれていた彼を傷付けずに済んだのに。ジウンは間違いなくショックを受けていて、傷付いていた。私が悪かった。
私はごめんなさい、と彼の頬を撫でる。
「……狡いよ。そんなの。ここまで僕を本気にさせて、僕から離れるなんて許さない」
彼の言葉はあまりにも重くて、簡単に私を放してくれはしない。自分が彼の立場だったら本当に好きな人がそんな簡単に離れていくのを許せるかと言われたら迷ってしまう。ぎゅっと掴まれた手首が痛んで、彼の気持ちが痛いほどに伝わってくる。どうしたら良かったんだろう。
「…お願い、雪葉。僕から離れないで。誰よりも君を愛してるよ」
言葉通りの想いを籠めるようにジウンは後ろから私を強く抱き締めた。私はもっと苦しくなる。
これは私の責任だった。浅はかで、すぐに彼に真実を伝える勇気もなかった愚かな私の。
私とジウンの関係は恋人なんて綺麗なものではなく、身体だけの関係となる。彼は恋人じゃなくてもいいし、好きになってくれなくていいからと言った。そうして歪な関係は続いた。