Delete
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※マップはオリジナルで作った設定なので原作には存在しません。
今日の儀式のマップは最近できたばかりの初めて来たマップだった。わりと広めのマップで遊園地をモチーフにしたようなマップだ。遊園地といっても観覧車やメリーゴーランドといった定番のアトラクション等があるものの、薄暗く錆びれたどこか物悲しい雰囲気が漂う場所だ。
そんな初めての場所で儀式を行なった訳だけど、なんと全滅が取れてしまった。今は這いずり放置した最後のサバイバーを探しているけど、面倒なことに這いずって何処かに移動しているようだ。最初に放置した場所の近くを探したけどサバイバーの呻き声がすることもなければ、姿もない。面倒だと思いながらため息を吐く。こんな明らかな敗北なんだから大人しく殺されればいいものの、無駄に足掻こうとするんだから馬鹿みたいだ。ハッチ逃げされないように先に見付けたハッチを閉じると、コラプスが発動する。こうなれば見付からなくても時間が立てばエンティティが勝手にサバイバーを殺してくれる。
僕はサバイバー探しなんてつまらない作業をやめて新マップの探索を開始することにした。ゆっくりマップ内を見たくても忙しくてそんな時間は取れなかった為に、色んな場所を見るなら今だけだ。観覧車、ジェットコースター、コーヒーカップ。少し見ただけでもサバイバーが隠密できそうな場所はいっぱいあって見てて飽きないけれどうんざりする。それから楽しげな音楽と共に、何頭かの白馬がぐるぐると回っているメリーゴーランド。装飾のランプはチカチカと点滅をしていて今にも消えてしまいそうだ。明るい雰囲気を醸し出しているのが逆に寂しさを感じさせる。こんな場所に一人でいるからだろうか。何気無くメリーゴーランドの周りをぐるりと一周したとき、奇妙なものが目に入った。メリーゴーランドの柵の近くに人が立っていたのだ。
真っ白なロリータドレスを身に纏った少女が瞬きをせずに此方を見ていた。一瞬、サバイバーかと思ってしまったけど、サバイバーはダウン放置したサバイバー以外は処刑している。…なら、ただのマネキンか。僕は内心、ほっとしてそのマネキンに近付いた。ドレスとお揃いの白のヘッドドレスにキラキラと輝く緩く巻かれたプラチナブロンドの髪。陶器のような真っ白な肌にプラチナブルーの瞳。それとは対照的に小さな形良い唇には真っ赤なリップグロスが塗られていた。その美しさはまさに人工的に造られた人形のようだった。アトラクションや他のオブジェクトは薄汚れていたり、錆びついていたりと欠陥があるのに対してこのマネキンは汚れ一つない所かあまりにも綺麗過ぎてこの場所にそぐわない不自然さを感じた。…何だか不自然だ。不気味というのとは違うけど。そう思いながらも僕はその美しい人形に触れてみたくなり、そっと頬を撫でた。
「…えっ?」
何気無く触れた頬の感触に驚いて慌てて手を引っ込めた。人形だと思って触れたその頬には作り物のような硬さはなく、温かかった。触れた感触はまるで人間の頬に触れた感覚と変わらない。不気味に感じてじっとその人形を穴が空くほど見つめてみたが、ぴくりとも動かない所か瞬きすらしない。
「……人形、だよね?」
恐る恐る問い掛けてみたものの、勿論、返事はない。安堵のため息を吐いたけど、やはり不自然な感覚がどうにも残ってモヤモヤする。違和感の正体を確かめたくてもう一度、人形の頬に触れた。肌の体温は普通の人間と変わらない温かさがある。人差し指でゆっくりと頬を押してみる。ふにっと人の頬の柔さが感じれた。……やっぱり勘違いじゃなく、この人形は人間みたいだ。
「……ねぇ、」
自分でも人形に話しかけるなんて馬鹿げてると思いながら、彼女の正体を知りたくなってまた声をかけた。それでも彼女は何も反応しない。…それなら、本当に彼女が人間かどうか簡単に確認する術がある。胸に手を当てて心臓が動いているか確認すればいい。…もし本当に人間だった場合、初対面の女の子にとんでもないセクハラをしていることになるけど、そうなっても仕方無い。話しかけても反応しない彼女が悪いんだ。そもそもこんなところにサバイバー以外の人間がいるなんてこと自体、おかしい訳だし、きっと人形のはずだ。そう自分に言い聞かせて彼女の胸に手を伸ばして触れようとした。そのとき、「くしゅん!」と可愛らしいくしゃみの音が聞こえてきた。勿論、僕ではなくそれは紛れもなく目の前の人形から発生したものだった。驚いて、触れようとした手が止まって彼女を見る。
「…あーあ、やっちゃった」
イメージ通りの透き通るように綺麗な声が彼女から発されて、彼女はおかしそうにくすりと小さく笑った。さっきまでぴくりとも動かなかった表情が柔らかくなったとき、あまりにも可憐すぎて一瞬、言葉を発するのも忘れて見惚れてしまっていた。
「……君、喋れたの?」
はっと思い出したように疑問を口にすると、彼女はこくんと頷いた。それから少しだけ恥ずかしそうに自分の髪を撫でた。
「本当は喋るつもりなかったんだけど。…つい、くしゃみが出ちゃってね」
「…くしゃみって…やっぱり人間ってこと?」
「……貴方から見て私って人間に見えるの?」
質問したつもりが質問で返される。だけど僕が一番、聞きたかったその答えは彼女の質問だけで、ほぼ答えが出ている気がする。人間だったら普通はそんな質問はしない。僕は改めて美しすぎる彼女を下から上までまじまじと眺めて首を横に振った。
「…人形に見えるかな」
「…そう」
「……そうって正解は?」
「…うーん、何だろうね。人間ではないけど人形と言われると…でも、造られたモノだから人形が合ってるのかな?」
考えるように曖昧に答えた少女も自分自身が何者かわかっていないみたいだった。こうなってくると益々、彼女の存在が気になってくる。彼女ははっきりと自分が"人間ではない"と認めた。それから"造られたモノ"だと言ったのだ。つまるところ最初に僕が思った通りだった訳だけど、そうなると不自然な点がたくさんある。
「…君は誰に造られたの?」
「それは勿論、この世界を造った神様だよ」
この世界を造った神様と言えば思い当たる人物は一人しか居ない。エンティティかと問えば、彼女は微笑んで頷いた。更に気になったことを聞いていく。
「さっき人間じゃないって言ったけど、君に触れたとき明らかに人間に触れた感触と同じだった。体温だって感じた。…それはどういうこと?」
「…残念だけど貴方の疑問には答えられないかな。私自身、私がどうやって造られて何者であるかわからないから」
そう淡々と説明した彼女は少しだけ寂しそうに笑った。自分自身がわからないとなると余計に謎は深まっていく。質問すればするほど、不思議なところばかり出てくる。他にも気になることがたくさんあった為に立て続けに質問しようと口を開いた。しかし、そんな僕を構うことはなく、彼女は僕の斜め後ろを指差した。彼女が指差した先に目を向ければ、いつの間にか勝手に開かれたゲートがあった。最後のサバイバーが死んだ為にエンティティがゲートを開けたのだ。エンティティによってゲートのブロックが解除されるのは儀式が終了した合図だ。要するに僕もゲートから出ればこの儀式は終了する。
「…貴方、もう帰る時間でしょう?」
「…そうだけど。君はどうするの?」
「私はこのまま、ここに残る」
「…残ってどうするの?」
「どうもしないよ。ただ、じっと待つだけ」
"ただ、じっと待つ。"
…一体、何を?帰る場所もないってことなのか?何もしないでじっと待つなんて理由はわからないけど酷じゃない?彼女は淡々と説明しているけど、何故か聞いているこっちが苦しくなってくる。
「…家とかは?」
「さっきも言ったけど私は造られたモノだよ。貴方とは違う。ここが私の場所だから帰る場所なんてないの」
「……」
「ばいばい」
何も言えなくなってしまった僕に彼女は無表情で手を振った。そのまま帰るのも無性に心苦しく感じて咄嗟に尋ねる。
「君、名前は?」
「…名前?そんなものないよ?」
彼女は名前すら持っていない。造られたモノならそれもしょうがないのかもしれない。だけどそれでは名前を呼ぶときに困ってしまうだろう。何となく顎に手を当てて考えてみた。……彼女の名前は…
「…雪葉。…うん、ぴったりの名前だ」
「…雪葉?」
「そう、今日から君の名前は雪葉だよ」
「…わかった」
「僕の名前はジウン」
「…ジウン?」
「そうだよ」
「わかった」
「またね、雪葉」
そう言って笑って手を振ると雪葉はびっくりしたような表情で僕を見つめ返した。
「…またねってまた、会えるってこと?」
「勿論、会えるよ」
僕の返事を聞いて驚いていた表情は途端に変わって彼女の大きな目はキラキラと輝く。そして彼女は嬉しそうに目を細めて笑った。
「またね、ジウン。名前、ありがとう」
そう言って笑顔で手を振り返した彼女を見て、僕は言い知れぬ感覚を持った。知りたいことがたくさんあってまだ話していたかった気持ちを抑えて、僕も微笑んで手を振った。
今日の儀式のマップは最近できたばかりの初めて来たマップだった。わりと広めのマップで遊園地をモチーフにしたようなマップだ。遊園地といっても観覧車やメリーゴーランドといった定番のアトラクション等があるものの、薄暗く錆びれたどこか物悲しい雰囲気が漂う場所だ。
そんな初めての場所で儀式を行なった訳だけど、なんと全滅が取れてしまった。今は這いずり放置した最後のサバイバーを探しているけど、面倒なことに這いずって何処かに移動しているようだ。最初に放置した場所の近くを探したけどサバイバーの呻き声がすることもなければ、姿もない。面倒だと思いながらため息を吐く。こんな明らかな敗北なんだから大人しく殺されればいいものの、無駄に足掻こうとするんだから馬鹿みたいだ。ハッチ逃げされないように先に見付けたハッチを閉じると、コラプスが発動する。こうなれば見付からなくても時間が立てばエンティティが勝手にサバイバーを殺してくれる。
僕はサバイバー探しなんてつまらない作業をやめて新マップの探索を開始することにした。ゆっくりマップ内を見たくても忙しくてそんな時間は取れなかった為に、色んな場所を見るなら今だけだ。観覧車、ジェットコースター、コーヒーカップ。少し見ただけでもサバイバーが隠密できそうな場所はいっぱいあって見てて飽きないけれどうんざりする。それから楽しげな音楽と共に、何頭かの白馬がぐるぐると回っているメリーゴーランド。装飾のランプはチカチカと点滅をしていて今にも消えてしまいそうだ。明るい雰囲気を醸し出しているのが逆に寂しさを感じさせる。こんな場所に一人でいるからだろうか。何気無くメリーゴーランドの周りをぐるりと一周したとき、奇妙なものが目に入った。メリーゴーランドの柵の近くに人が立っていたのだ。
真っ白なロリータドレスを身に纏った少女が瞬きをせずに此方を見ていた。一瞬、サバイバーかと思ってしまったけど、サバイバーはダウン放置したサバイバー以外は処刑している。…なら、ただのマネキンか。僕は内心、ほっとしてそのマネキンに近付いた。ドレスとお揃いの白のヘッドドレスにキラキラと輝く緩く巻かれたプラチナブロンドの髪。陶器のような真っ白な肌にプラチナブルーの瞳。それとは対照的に小さな形良い唇には真っ赤なリップグロスが塗られていた。その美しさはまさに人工的に造られた人形のようだった。アトラクションや他のオブジェクトは薄汚れていたり、錆びついていたりと欠陥があるのに対してこのマネキンは汚れ一つない所かあまりにも綺麗過ぎてこの場所にそぐわない不自然さを感じた。…何だか不自然だ。不気味というのとは違うけど。そう思いながらも僕はその美しい人形に触れてみたくなり、そっと頬を撫でた。
「…えっ?」
何気無く触れた頬の感触に驚いて慌てて手を引っ込めた。人形だと思って触れたその頬には作り物のような硬さはなく、温かかった。触れた感触はまるで人間の頬に触れた感覚と変わらない。不気味に感じてじっとその人形を穴が空くほど見つめてみたが、ぴくりとも動かない所か瞬きすらしない。
「……人形、だよね?」
恐る恐る問い掛けてみたものの、勿論、返事はない。安堵のため息を吐いたけど、やはり不自然な感覚がどうにも残ってモヤモヤする。違和感の正体を確かめたくてもう一度、人形の頬に触れた。肌の体温は普通の人間と変わらない温かさがある。人差し指でゆっくりと頬を押してみる。ふにっと人の頬の柔さが感じれた。……やっぱり勘違いじゃなく、この人形は人間みたいだ。
「……ねぇ、」
自分でも人形に話しかけるなんて馬鹿げてると思いながら、彼女の正体を知りたくなってまた声をかけた。それでも彼女は何も反応しない。…それなら、本当に彼女が人間かどうか簡単に確認する術がある。胸に手を当てて心臓が動いているか確認すればいい。…もし本当に人間だった場合、初対面の女の子にとんでもないセクハラをしていることになるけど、そうなっても仕方無い。話しかけても反応しない彼女が悪いんだ。そもそもこんなところにサバイバー以外の人間がいるなんてこと自体、おかしい訳だし、きっと人形のはずだ。そう自分に言い聞かせて彼女の胸に手を伸ばして触れようとした。そのとき、「くしゅん!」と可愛らしいくしゃみの音が聞こえてきた。勿論、僕ではなくそれは紛れもなく目の前の人形から発生したものだった。驚いて、触れようとした手が止まって彼女を見る。
「…あーあ、やっちゃった」
イメージ通りの透き通るように綺麗な声が彼女から発されて、彼女はおかしそうにくすりと小さく笑った。さっきまでぴくりとも動かなかった表情が柔らかくなったとき、あまりにも可憐すぎて一瞬、言葉を発するのも忘れて見惚れてしまっていた。
「……君、喋れたの?」
はっと思い出したように疑問を口にすると、彼女はこくんと頷いた。それから少しだけ恥ずかしそうに自分の髪を撫でた。
「本当は喋るつもりなかったんだけど。…つい、くしゃみが出ちゃってね」
「…くしゃみって…やっぱり人間ってこと?」
「……貴方から見て私って人間に見えるの?」
質問したつもりが質問で返される。だけど僕が一番、聞きたかったその答えは彼女の質問だけで、ほぼ答えが出ている気がする。人間だったら普通はそんな質問はしない。僕は改めて美しすぎる彼女を下から上までまじまじと眺めて首を横に振った。
「…人形に見えるかな」
「…そう」
「……そうって正解は?」
「…うーん、何だろうね。人間ではないけど人形と言われると…でも、造られたモノだから人形が合ってるのかな?」
考えるように曖昧に答えた少女も自分自身が何者かわかっていないみたいだった。こうなってくると益々、彼女の存在が気になってくる。彼女ははっきりと自分が"人間ではない"と認めた。それから"造られたモノ"だと言ったのだ。つまるところ最初に僕が思った通りだった訳だけど、そうなると不自然な点がたくさんある。
「…君は誰に造られたの?」
「それは勿論、この世界を造った神様だよ」
この世界を造った神様と言えば思い当たる人物は一人しか居ない。エンティティかと問えば、彼女は微笑んで頷いた。更に気になったことを聞いていく。
「さっき人間じゃないって言ったけど、君に触れたとき明らかに人間に触れた感触と同じだった。体温だって感じた。…それはどういうこと?」
「…残念だけど貴方の疑問には答えられないかな。私自身、私がどうやって造られて何者であるかわからないから」
そう淡々と説明した彼女は少しだけ寂しそうに笑った。自分自身がわからないとなると余計に謎は深まっていく。質問すればするほど、不思議なところばかり出てくる。他にも気になることがたくさんあった為に立て続けに質問しようと口を開いた。しかし、そんな僕を構うことはなく、彼女は僕の斜め後ろを指差した。彼女が指差した先に目を向ければ、いつの間にか勝手に開かれたゲートがあった。最後のサバイバーが死んだ為にエンティティがゲートを開けたのだ。エンティティによってゲートのブロックが解除されるのは儀式が終了した合図だ。要するに僕もゲートから出ればこの儀式は終了する。
「…貴方、もう帰る時間でしょう?」
「…そうだけど。君はどうするの?」
「私はこのまま、ここに残る」
「…残ってどうするの?」
「どうもしないよ。ただ、じっと待つだけ」
"ただ、じっと待つ。"
…一体、何を?帰る場所もないってことなのか?何もしないでじっと待つなんて理由はわからないけど酷じゃない?彼女は淡々と説明しているけど、何故か聞いているこっちが苦しくなってくる。
「…家とかは?」
「さっきも言ったけど私は造られたモノだよ。貴方とは違う。ここが私の場所だから帰る場所なんてないの」
「……」
「ばいばい」
何も言えなくなってしまった僕に彼女は無表情で手を振った。そのまま帰るのも無性に心苦しく感じて咄嗟に尋ねる。
「君、名前は?」
「…名前?そんなものないよ?」
彼女は名前すら持っていない。造られたモノならそれもしょうがないのかもしれない。だけどそれでは名前を呼ぶときに困ってしまうだろう。何となく顎に手を当てて考えてみた。……彼女の名前は…
「…雪葉。…うん、ぴったりの名前だ」
「…雪葉?」
「そう、今日から君の名前は雪葉だよ」
「…わかった」
「僕の名前はジウン」
「…ジウン?」
「そうだよ」
「わかった」
「またね、雪葉」
そう言って笑って手を振ると雪葉はびっくりしたような表情で僕を見つめ返した。
「…またねってまた、会えるってこと?」
「勿論、会えるよ」
僕の返事を聞いて驚いていた表情は途端に変わって彼女の大きな目はキラキラと輝く。そして彼女は嬉しそうに目を細めて笑った。
「またね、ジウン。名前、ありがとう」
そう言って笑顔で手を振り返した彼女を見て、僕は言い知れぬ感覚を持った。知りたいことがたくさんあってまだ話していたかった気持ちを抑えて、僕も微笑んで手を振った。