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ここに来てから助けて、と何度叫んだことだろうか。恐怖に震えて眠れない日々に悩まされて、涙が止まらなくて。恐くて、痛くて、辛くて、苦しくて。私の心を支配するのはいつだって負の感情だ。
ここにいる数人のサバイバー仲間達はいつもいつも、平然とこんな頭の可笑しくなるような儀式をこなし、儀式以外は普通に過ごしている。私には正直、正気とは思えない。殺されたり、仲間が殺されるのを見たりしたらそんなのトラウマになるに決まっている。
儀式じゃなくても私は夢の中でさえ、キラーに追われる夢を見る始末だ。本当にこんな毎日を終わらせてくれる人がいるならそれが例え、悪人だとしてもすがってしまいたくなる。
そして、私はとある変わったキラーに会った。
毎日、怯えるだけの私の元に現れた不思議なキラーだった。不気味なマスクをつけたキラーではあるけど、何故か他のキラーとは違って饒舌で、おちゃらけた人だ。
今までサバイバーの仲間にすら怯えていたのに、何故だか彼には普通の本心を打ち明けることが出来た。
「…もう、無理だよ。こんな世界で生きてくの。どうして毎日、毎日怯えて暮らさなきゃいけないの?私が何をしたって言うの」
「…まあ、可哀想だけどエンティティに呼ばれちゃった以上、従うしかないよね」
こうして毎回、答えが出ないネガティブな愚痴を溢しても彼は私を責めたりはしなかった。彼がどうしてわざわざ私に会ってこんな意味もなく愚痴を聞いてくれるのかわからない。わからないけど、考える意味もないことだと思った。
「…貴方はエンティティの言葉がわかるんでしょう。こんな儀式辞めてって言ってよ」
「ふっ、何それ。エンティティがそんなこと聞いてくれる訳ないでしょ。君、面白いこと言うね」
私の真剣に出した提案を彼は面白いと笑いながら流す。冗談のつもりじゃないし、私は全く面白くないんだけど。
「ちゃかさないでよ。私は真剣なのに」
「ごめん、ごめん。だってあまりにも可愛いお願いだなって思ってさ」
「…はあ、もういいよ。なら、他に考えてよ。私がこの世界を過ごしやすくなる方法を」
急に無茶なことをキラーである彼に考えさせる。だけど、彼は何で俺が?なんて言いながらも考える素振りを見せる。やっぱり、この人、怒ったりしないし実は優しい人なのではないかと錯覚してしまう。
本当は違うんだろうけど。
「生きたいって思う楽しいこと見付けるとか。儀式の中で目標を立てるとかは?」
「…うーん、楽しいこと、ね」
何かないかしばらく考えてみたけど悲しいことに微塵も思い浮かばない。生きたいって思う程楽しいことってなんだろう。私は前の世界で何を生き甲斐に生きてきたんだっけ。思い出そうとしても記憶に靄がかかったみたいに思い出せない。
「…例えば、俺と会うのを楽しみにがんばるとか」
「…別に貴方と会うのは当たり前になりつつあるけど、楽しみにはならないかな」
「……流石にそんなストレートに言われると傷付くんだけど。本当、君って冷たい子だよね」
「…それは、ごめん。悪気はないんだけど、冷たいって言われるとなあ」
本心を言っただけなのに何故か彼は傷付いたみたいでちょっと焦る。確かに私も無情なとこはあるけど、冷たいって言われる程かな。優しくなろうとするけど、どうしたらいいかわからない。
「もっと俺に優しくしてくれていいんだよ?」
「何それ。…そもそもどうやって優しくしたらいいかわからないんだけど」
「…例えば、ほら、こうやってくっついて背中ぽんぽんして慰めてくれたりさ」
ゴーストフェイスは急に距離を縮めて、ぴったりと私の隣に座ると背中をぽんぽん叩いてみた。
…そこまでして慰める程のことかと思いつつも、まあそういうのが優しさなのかと納得する。まさか、キラーに優しさを教えてもらえる日がくるなんて思いもしなかったけど。なんて思っていたら彼は名案を思い付いた、と手を叩いた。
「君が生きたいと思えるように出来るかもしれない」
「何?」
「…これから毎日、セックスしよう」
「……は?」
名案と言うものだからどんなことだと期待して待てば言われたことはとんでもないことで、一瞬、何を言われてるのかわからなかった。
「だって、俺と会って話すだけじゃ楽しくないんだよね?ならもっと、刺激的で愉しいことしなくちゃ」
「…え?どうしてそんな発想になったのか理解出来ないよ」
「いいよ、その内、理解していけば。…因みに君、そういう経験は?」
「……え、あ、あるよっ、…もちろん」
聞かれたからノリと言うか勢いで強がって言ってしまったけど、前の世界ではそんな経験はしたことないはず。記憶は曖昧だけど、流石にそんな経験を忘れることはないと思う。見栄を張ったことに気付いているのか彼はふーん?と面白そうに笑う。
「…の割には、そんな話をしただけで顔を真っ赤にするくらいピュアなんだね」
「…うっ、」
ゴーストフェイスに多分、あからさまに赤くなっている頬をつつかれて益々恥ずかしくなってくる。
何これ、頬だけじゃなく、身体全体が熱くなってきた。こんな経験をしたのは初めてだ。これだけで、こんな風になっているのに性行為をするなんて絶対、無理に決まっている。