哀しみの終焉
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もう、いいやって思った。
何度も何度も繰り返される日々に。
死んでも生きても一緒だ。
楽しいことがひとつもなく、恐い痛い辛い思いしかない。いっそ、キラーには本当の意味で殺して欲しいと何度思ったことか。
いくら本当に死なないとは言え、仲間と共に脱出を目指す儀式で一人、諦めて何もしない訳にはいかないのでみんなが脱出出来るようには努力する。それでも、みんなが死ぬか脱出すればもう、関係ないので間抜けなサバイバーのふりをしていつも自らキラーに殺されにいく。
痛いし、恐くないと言えば嘘になるけど、こうして何度も何度も殺されればいずれ本当に死ねるのではないかと信じているからだ。
みんなが殺されてしまった儀式で運悪く最後まで残ってしまった。こういう一人、取り残されたり、みんな死んでしまうのを見るのが嫌だから極力、残りたくないのに。恐らくハッチを探しているであろうキラーを私は探していた。今回のキラーはゴーストフェイスだから見付けづらいだろうけど、堂々と歩いていれば殺しにきてくれるだろう。
案の定、ハッチが閉じた音がして背後に気配を感じた。
いつもなら抵抗せずに殺されるところだけど、今日は違った。
「ちょっと待って」
刺される前に急いでキラーに声をかける。
それでも無視して殺されてしまうかもしれないけど、聞くだけ聞いてみたいことがあった。
対面したゴーストフェイスは今まさに振り上げようとしていたナイフをぴたり、と止めた。何とか話は聞いてくれるみたいで一先ず安心した。
「ゴーストフェイス、あなたにお願いがあるの」
「……お願い?それを俺が叶えるとでも?」
「別に。ダメ元で聞いてみようかなってだけだよ」
「…いいよ。聞くだけ聞いてあげるよ」
思ったより乗り気なゴーストフェイスに私は希望を抱く。彼なら本当に私の願いを叶えてくれるんじゃないかと思わずにはいられない。
「私を殺してほしいの」
「……」
私の発言にゴーストフェイスはまさに何を言ってるんだコイツと言わんばかりの空気を醸し出すものだから面白くなって吹き出す。
「…ふふ、最初からそのつもりだよって?」
「…まあ、そりゃね。言われなくてもそうするつもりだったし」
「そうだよね。ごめん、言い方が悪いよね。この儀式でも殺してほしいんだけど、この儀式が終わった後にも殺してほしいんだ」
「……どういうつもり?」
ゴーストフェイスからはさっきとは別の戸惑った雰囲気を感じる。なんか表情は一切見えないというのにわかりやすい人だなあ。そんなこと言ったら怒られそうなので、言わずに話を進めるけど。時間がないわけだし。
「私、この儀式にもう出たくないの。だから考えたんだけど、儀式外で殺してもらえば本当に死ねるんじゃないかと思ったんだ」
「…確かに、エンティティは儀式外での殺しは禁止してるね」
「うん、その理由って本当に死ぬからだと思う。…だから、あなたに殺してほしい」
「……本当に君が死ぬとしたらサバイバーが一人減るってことでしょ?そんなことしたら俺、エンティティにめちゃくちゃ怒られそうなんだけど」
ゴーストフェイスの反応を見る限り、意外に渋っているみたいだ。
確かに、拷問を受けてるキラーもいるらしいし、その反応も納得だけどゴーストフェイスなら喜んで受けてくれると思ったのに。
「…それはなんとも言えないけど、キラーもそうだけどサバイバーだって次々と新しい人が入ってくるでしょ?だから私が消えたとしてもまた別の人を呼べばいいやぐらいにしか思わないんじゃないかな」
「……それ、悲しくない?」
「…えっ?」
ゴーストフェイスに言われるとも思っていなかったことを言われて、言葉につまる。
……悲しい?
なにそれ、キラーが言う台詞なの?そんな感情、微塵も感じさせないゴーストフェイスが?
そんな風に考えたこともなかった。
悲しい、なんて感情、今は生きた屍みたいな私にあるはず、ない。それでも、何故かすぐに否定する言葉が出てこなかった。
そんな私を見てゴーストフェイスは続ける。
「……死ぬってことは、君は完全に誰からも忘れられて、消えるんだよ」
「……それでも、私は…」
「時間だ」
もう、コラプスが終わろうとしていたタイミングでお腹に痛みを感じて、目の前が真っ暗になった。