放課後、居残り授業
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私は弱い。泣き虫で、いつも大事なことから逃げ続けてきた。そんな風に人生を送ってきたことを今になって後悔をしていた。
深い森の中、私は私の意思と関係無く、闇に導かれた。
今まで生きてきた世界とは違って閉鎖されたどこか狭苦しい空間。そこには数人の男女たちが居た。聞くとその人たちは突如、この世界に引きずり込まれたと言っていた。そしてこの世界では殺人鬼と生存者で恐ろしい儀式をすると聞いたのは二週間前の話だ。
私はその間に数回の儀式に参加していた。仲間のサバイバーたちはみんな優しくて儀式にどう立ち回ったらいいかを丁寧に教えてくれた。それでも私は未だに恐ろしくて基本的に隠密しながら発電機を修理することくらいしか出来ない。儀式中に気絶することがなくなったのは大きな進歩だとは思うが。
今日も自分の意思と関係無く、儀式に呼ばれ、地獄の時間が始まった。今日の場所は前に一度来た場所で少しだけホッとする。ただ、キラーにもよるし、油断は一切出来ないけれど。他のサバイバーに導かれ、一緒に発電機を修理する。寒い訳じゃないのに恐怖と緊張で手が震える。何とか集中しなくてはと思っていたのに、手元が狂って修理ミスをし、発電機が大きな音を立てて煙が上がる。
「ああ!ご、ごめんなさい!」
「大丈夫。気にしないで」
よりにもよって仲間と一緒に修理してるときに限ってミスをしてしまうなんて最悪だ。慌てて謝ると、気にしないでと彼女は安心させるように笑った。ただ、ただ、申し訳なかった。もう、失敗しませんようにと無責任な思いで発電機の修理に急いでいたが、突如、仲間のサバイバーの背後に真っ黒な格好をした者が立っていた。
あっ!と声を上げたときには既に遅く、彼女は肩を斬りつけられた。
まずい!どうすればいいの!?
動揺して私は慌ててその場から走って逃げた。ただ、殺されないようにと必死だったが、キラーが彼女の方に行ってしまったのを見たときは罪悪感しかなかった。怪我している仲間を見捨てて逃げるなんて自分はなんて最低な奴なんだろう。今からでも庇いに行けば彼女はキラーに捕まらなくて済むかもしれない。そう思っても恐怖で足は動かずに、私は発電機を修理することぐらいしか出来なかった。
捕まった彼女を他のサバイバーが走って助けにいくのを見た。私がキラーに見付かって斬られそうになったときには他のサバイバーが私を庇って怪我を負った。怪我を負ったサバイバーのかわりに他のサバイバーが自分でキラーの注意を引き付けるのを見た。
私は怪我の手当てか、発電機しか修理することが出来ない自分が情けなくて仕方なかった。みんなが頑張ってもキラーは相当、やり手のようで通電する前にみんな、次々と処刑されていく。
残りのサバイバーが私ともう一人だけとなった。たまたま一緒に合流して残りの一台を直していく。キラーが来なければいいと思い、修理をしていくが、そう上手くはいかない。キラーが来る気配がすると、彼が忠告してくれたので一旦、発電機から離れて近くの木の後ろに隠れて様子を伺う。予想通りキラーが発電機の修理を食い止め、何気無く此方に目を向けた。キラーの様子を伺ってた私と目が合った気がした。案の定、キラーに見付かってしまって、キラーが此方に近付いてくるのがわかっているのに恐怖で足が動かない。もう、死ぬしかない。キラーが私に向かってナイフを振り上げた瞬間、目の前に誰かが現れて、斬られた。別の場所で隠れていた仲間が見かねて私を庇って斬られたのだ。
「…ぁ、ああ…」
倒れた仲間を目の前にしてさっきも私を庇ってくれた彼女がフラッシュバックした。
まただ。どうしてみんなはこんなに何も出来ない私を庇ってくれるのか。私は目の前で怪我して倒れている彼をどうすることも出来ないのに。呆然とする私を置いて、キラーは彼を担いでフックに吊るし、処刑した。
そうしてキラーは再び、動けない私の前に現れた。
ただ、動けずに涙を流す私にキラーは呆れているようだった。恐いという感情より、情けなくて、悔しくて、涙が止まらなかった。
「……何故、逃げない?」
キラーは私に問い掛けた。
何故、なんて逃げたってどうせ殺されるから。私には何も出来ないから。そう思ってもそれは声になることはなく、ただ、嗚咽が漏れるだけ。そんな私を見てキラーはあからさまにため息を吐いた。
「…今回の儀式、全滅したのは誰のせいだと思う?」
……それは、貴方のせいだと言いたかった。
でも、きっと違う。キラーがサバイバーを殺さなくてはいけないのはこの世界で当たり前のルール。彼はもっと別の誰かのせいだと言いたいのだ。それを私に分からせる為に。
「……」
「…分からないかい?それとも答えたくない?」
「……」
「俺から見て今回のサバイバーたちって中々、いい動きしてたと思うんだ。……あんたを除いてね」
何も答えない私に痺れを切らしてキラーは言う。知りたくもないし、言われなくたって分かっている事実を態々、私に突き付ける。自分の愚かさを問い詰められ、更に涙が溢れてくる。
「……そんなのっ、言われなくたって、…」
「分かってたって?…まあ、流石にあんなあからさまに足引っ張ってて気付かなかったら滑稽だよね」
馬鹿にするようにクスッと笑う。
悔しくて仕方なかった。全部、本当のことで、否定出来ないからだ。
「……」
「…俺らにとっては、あんたみたいなクズサバイバーが居てくれると全滅しやすくて助かるけどさ、サバイバー側すると堪ったもんじゃないよなそれって」
他人事のように両手を頭の後ろに組むキラー。
早く殺して儀式を終わらせればいいのにこのキラーは私を殺しもしないし、ハッチを閉じる訳でもない。一体、何が目的なのだろうか。