高校生活最後の一年
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霧森高校に入学して最近まで新入生だったはずなのに、私はあっという間に3年生になっていた。最初は友達ができるかとかクラスに馴染めるかとか勉強についていけるかなんて色んな不安を抱えていたけれど、なんだかでやってこれた。幸運にも共通の趣味を持つ、気の合う金木研くんとも友達になれて2年間楽しく過ごせた。
今までは高校生活を楽しむことに集中していたけれど、今年はそうはいかない。大学受験という一大イベントがあるからだ。それによって今後の私の人生が大きく変わっていくから絶対に合格しなければならない。
改めて自分のなりたい職業を思い描く。真っ先に私の頭に浮かんだ光景は教師として生徒に囲まれている大人の私の姿だった。やっぱり私の夢はずっと変わらない。私のなりたい職業は小学校の教師だった。可愛い生徒達に囲まれて毎日楽しく授業をする。良い行ないはきちんと褒めて、ときには厳しく叱る。そして、生徒に尊敬してもらえるような立派な先生になりたい。その為に私はもっともっと頑張らなくてはいけない。
高校生活はかけがえのないもので、ずっと続けばいいと思いながらも私は早く大人になりたくて仕方なかった。両親のように立派な尊敬できる大人になりたい。これから始まる最後の高校生活一日、一日、全てに感謝して大事にしようと思った。
最後のクラス替えも無事に友達の金木くんと同じクラスになれて私はほっとしていた。勿論、これから初めて喋るような人達とも仲良くするつもりだけど、良く見知った友達がクラスに居るのと居ないのでは大分違う。
「最後のクラスも金木くんと一緒で良かった。改めてよろしくね」
「本当に僕もほっとしてるよ。こちらこそよろしく」
柔らかく微笑む金木くんを見て、私の心も穏やかになる。彼と一緒に居ると本当に安心する。優しい声も、優しい表情も全てが落ち着く。それから彼と高槻泉の最新作が出るという話で盛り上がって談笑をしていると、担任の先生が教室に入ってくる。私達は慌てて席につき、これから新しく担任になる先生に顔を向けた。
「今日からこのクラスの担任になるジェド・オルセンです。これからこのクラスのみんなと素敵な思い出を作っていきたいと思ってます。よろしく」
ジェド・オルセン先生。彼は去年、この霧森高校に赴任してきた新しい先生だ。去年来たことや、担当学年が違ったのもあり、私はオルセン先生と関わるのは初めてだった。それはきっとこのクラスメイトの殆どがそうだと思う。オルセン先生の第一印象は一言で言うならモデルさんみたいな人。背が高くて、スラっとしていて色白で顔が整っている。優しそうで生徒からの人気も高そうだ。先生の挨拶が終わると今度はクラスメイトの自己紹介が順々に始まっていく。3年にもなると関わったことがなくても見知った顔が多い。みんなの自己紹介を聞きながら、どんなことを言おうか考えていたけれど、結局無難なことしか言えなかった。
それからクラスの係や委員長などを決めた。そのときにクラス委員長をやりたがる人が居なくて何故か私が先生に名指しでクラス委員長をやらないかと問われて、断れずに受けてしまった。本当はそういうことは得意ではないけど、将来教師になりたいと思っている訳だし、こういうことは積極的に引き受けていかなくてはいけない。やるからには責任を持って頑張ろう。
HRが終わる頃、黒板の上に飾ってある校訓に自然と目がいく。『信じる心』というのがこの学校の校訓だ。私がこの学校に入学したのはこの校訓に惹かれたのが理由だった。人は誰も信じられなくなったら人と共には生きていけない。だから、私は信じてもらえる人間になりたいと思うし、人を信じていたいと強く思う。
先生の話を聞きつつ、新しいクラスの風景を眺めながら私はこれから素敵な1年が始まると信じてやまなかった。