ぬけがらに愛を囁く6
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ゴーストフェイスに拒まれた。それはここに来てから初めてのことだった。酷く悲しいと思うのに私は彼に何も言う気が起きなかった。どうしてと尋ねる気さえ。元々、私が一方的にゴーストフェイスと仲良くしたがっていただけで、彼の迷惑は考えないようにしていた。本当は嫌だと思っていても、彼は変に優しいところがあったから今までは私を拒まなかっただけかもしれない。
彼はとても温かった。冷酷な殺人鬼で私の最も嫌うようなことを平気でしてきた人のはずなのに。私にとってはすごく優しく感じた。デリカシーは無いし、人のことを馬鹿にするし、口は悪いし、嘘つきで、意地悪。悪いところばかり思いつくけれど、変な優しさがあった。突き放すような言い方をしながらも私のことをいつも心配してくれていた。私が欲しい言葉を口に出さなくてもわかって言ってくれた。いつも本当は自分のことを優先したかったとしても、私のことを考えて行動してくれていたと思う。
だから、私は彼と居るとすごく安心できて、楽しかったんだ。恐怖も不安も痛みも全て忘れさせてくれた。まるで私にとっての精神安定剤みたいな人。私には彼が必要だったけれど、彼にとってはそうではなかったという一方通行の想いが理解させられて胸が苦しかった。頭では冷静に彼に愛想を尽かされても仕方がないとわかっているのに、彼との楽しかった日々を思い出すと涙が止まらなかった。
私はまた一人になってしまった。また一人でこの痛みに耐えていかなければいけない。後、何年も、何十年も。この世界に年を取るという概念があるかわからないから寿命がくるのかもわからない。それは途方もないような時間に思えた。この長い年月を共にできる人がずっと居てくれたら良かったのに。
ゴーストフェイスのことを再び考えそうになって頭を横に振る。何を思っても、もうどうしようもない。
ある日、エンティティは力の暴力で拷問することをやめた。その代わりになったのは精神的に追い詰めること。私の過去のトラウマになった映像を観せてきた。それも何時間も手錠をかけられて、椅子に座らされて私が人を殺すシーンを何度も繰り返した。
エンティティは言う。
お前のせいだ。お前が殺した。お前がお前自身の手で父親を殺したと。お前の母親はお前を望んでいなかった。お前は愛されていなかった。だから、お前を産み落としたその日から彼女は死のうとしていたんだ。せめてもの優しさで母親はお前と心中をしようとした。お前から逃れたかったから。それでもお前は母との心中を拒んだ。母親を自由に楽にさせてやる選択を奪った。お前は父親の命を奪い、母親の人生を潰した。父親がお前に暴力を振るったのはお前が憎かったからだ。母親に暴力を振るったのはお前を生んだことを恨んでいたから。お前さえ生まれなければ、あの二人が不幸になることはなかった。お前は必要のない人間だ。人を殺せないのなら、この場所にさえ、居る意味はない。
サバイバーを殺せ。
あの日、父親に目掛けてナイフを振るったように。
本当かどうかわからないことをずっと言われ続けた。それは目を閉じて睡眠を取ることさえ、妨げられた。
毎日毎日言われ続けるとそれは事実だと私は思った。泣いて泣いて、吐いて、辛くなったら痛みで誤魔化すように何度もナイフで自分の腕を突き刺した。私は必要ないからと自害しようとすれば、何故かエンティティにそれを止められる。
そして、私はエンティティの暗い部屋に閉じ込められた。身動きさえとれない場所で、延々とサバイバーを殺すように洗脳された。
閉じ込められて何日経ったかわからない。
舌を噛んで死のうとしたけれど、舌を噛んでも人は死ねないということをしった。
もう、空腹も眠気も痛みの感覚も曖昧になってきた。私はなんなのか。どうして、ここに存在するのか。意識がぼんやりしてきて、脳が正常に機能しなくなってきている。こんな状況なのに、何故か朧げに彼の姿が脳裏に浮かぶ。私は今さら無意味なことを考えて馬鹿みたいだ。そう、久しぶりに口元が緩んだ。
あいたい、なんてかんがえてはだめ。
はやく、おわればいいと、それだけをねがった。