ぬけがらに愛を囁く2
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「ねぇ、これ美味しくない?」
「ああ、美味しいね」
ルイは勝手に俺のベッドに寝転がってスナック菓子を口に運んでいる。自分でわざわざお菓子を持参までしてきて。
彼女と初めて喋った日から彼女は俺に懐いて暇さえあれば俺の部屋に遊びに来るようになった。最初は彼女の距離感にうんざりしていたが、今ではそれが当たり前の日課のようになってしまった。お菓子を食べながら下らない話をしたり、映画を一緒に観たり、ご飯を食べたり。根が真面目な彼女とは性格的には合わないかと思っていたが、意外と温度感とかは近いと感じる。殺しのこととなると話が合わないからそういう彼女が嫌がる話しは全くしないけれど、一般的な考え方は似てると思った。お互いが気を使い過ぎない適度の関係。それが心地よかった。俺達には男女の関係とかは全く無く、ただの気の合う友達のような感じだった。
今日は暑いからとキャミソールとホットパンツというラフな格好している身体に目がいく。別に変な目線ではない。露出の多さから布で隠れていない部分の肌。そこには痛々しい程の拷問の痕が残っていた。皮膚が再生する前に次々と新しい傷痕が重なっていく。赤や青紫の痣、刺し傷、肉の抉れた痕、爪が剥がされた指先、火傷の痕。本人はそんな傷痕だらけの身体でも気にせずにストローでジュースを啜りながら雑誌のページをめくっているが、見ていても気分がいいものではない。
「…相変わらず拷問受けてるの?」
「…ん?うん」
何食わぬ顔でそう返ってきた。あれからニヶ月が経とうとしているけれど、彼女はあのとき言った通り、一切サバイバーを殺していないらしい。彼女も彼女だが、エンティティも良くも飽きずにそんな色々な拷問をするものだなと思う。
「いい加減諦めればいいのに」
「絶対いや」
「女なのにそんなにボロボロになってよく抵抗する気になるよね」
「…だめ?」
「ダメではないけど、見てていい気はしない」
「じゃあゴーストフェイスが私の身体を見なければ解決する話だね」
「見たくなくても自然と視界に入るんだよ」
「うわ〜、やらしー」
茶化すようにジト目を向けられて若干、イラッとする。俺がそんな目で見てないことぐらいわかってる癖に。
「ルイにそんな目線向けるほど欲求不満じゃないから」
「はいはい、わかってますよ〜。…逆にゴーストフェイスは拷問されたこととかないの?」
「ないよ。俺、優等生だし」
「ぷっ、ゴーストフェイスが優等生とか笑う!」
「そういう君は劣等生だけど」
「いいよ、それで。ねぇ、それより優等生くん、ホラー映画観ようよ!」
気分を変えるようにそういうとルイはウキウキで俺の腕に抱き着いてきた。自分もホラーが観たい気分だったから丁度いい。ポップコーンを用意して部屋を暗くすると、二人仲良く並んでホラー映画を観る。今回はスプラッター系ではなく、日本風のホラーだった為に見終わった後、二人して恐くなっていた。
「ねぇ、ゴーストフェイス。今日はちょっと恐いだろうし、一緒に寝てあげようか?」
「俺は別に全く恐くないけど、ルイがどうしてもって言うなら一緒に寝てもいいよ」
「はあ?ゴーストフェイスだって絶対恐がってたじゃん。あのシーンになったら私に抱き着いてきたのはどこの誰?」
「そんなこと言うならあのシーンのとき、君だってクッションで顔隠してただろ」
「あれは唐突にクッションの匂いが嗅ぎたくなっただけ」
「何でホラー映画観てて唐突にクッションの匂いが嗅ぎたくなるんだよ」
そんなどっちの方が恐がっていたかなんて下らない口論をしていれば、突然、部屋の扉が開いた。ホラーを観た後の特有の神経が過敏になっている状態のせいで物凄く驚いた。
「お前ら何二人で抱き合ってんだよ」
部屋を訪ねてきたトラッパーにそう言われてお互いが無意識に抱き合っていたことに気付いて慌てて離れる。
「ねぇ、トラッパー、今、ゴーストフェイスの方が先にびびって私に抱き着いてたよね!?」
「いや、ルイの方が先でしょ?」
「知らねぇよ。そこまで見てねーよ。…そんなことよりナースがルイに用があるみたいだぞ」
「え?ほんと?それじゃ仕方無いね。ゴーストフェイス、一人でお留守番できる?怖くない?大丈夫?」
「君と違って恐くないから。早く行けば?」
面倒になって追い払う仕草をすると楽しそうに笑いながら彼女は居なくなった。…少しだけ背後が気になって落ち着かない。彼女が居ない間にシャワーを浴びようかと思ったけれど、戻ってきてからにしよう。何も言わずともルイが戻ってくるだろうと思っていたら案の定戻ってきた。恐くて一人で寝れないのはルイの方じゃないか。暑いとか言いながらも俺に抱き着いて安心して寝息を立てているのを見たら何だか笑ってしまった。