ぬけがらに愛を囁く15
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目隠しをされているかのように目の前が真っ暗だ。…いや、目隠しをされているというより、一切光がない暗い場所に閉じ込められているみたい。空気が冷たくて静寂だけが支配する。ここは酷く息苦しい。エンティティの拷問部屋に似ている。何もせずにずっと待っているのが嫌で出口がどこかもわからない場所をひたすら歩いた。そもそも、この暗闇には出口なんてあるのだろうか。出口が最初から無くて出られないようにできているのなら、私は一生ここから出られない。無駄なことをしている。
―ねぇ、どうしてまだ生きているの?
不意に何処からともなくそんな声が聴こえた気がした。誰の声かもわからないけど、子供のような幼い声。クスクスと小馬鹿にするように笑っている。「どうしてまだ生きてるの?」なんて私が聞きたいくらい。
―生きる価値なんてない癖に。
わかってるよ。わかってるけど、そんなことわざわざ言わないで。私だって本当はあのときに死んでしまって早く楽になりたかった。でも、それができなかった。どんなに辛くても生きていたらいつか良いことがあると馬鹿みたいに信じていたから。お母さんを救いたかった訳でも、お父さんを助けたかった訳でもない。私は誰よりも私の為に生きて、いつか私を救い出したかったんだ。私はいつだって自分の為に生きてきた。それはきっと間違っていたんだろうけど。間違っていたから今も私は私自身を救えずに苦しんでる。
ずっと、ずっと、苦しい。酸素が薄い場所に閉じ込められて、死にそうになったら少量の酸素が注ぎ込まれる。そうやってギリギリのところで生かされているみたいだった。早く楽になりたいなら自分自身で息するのをやめてしまえばいい。
―まだ、抗うの?
…うん、そのつもりだったけど、もういい加減諦めてもいいかな。疲れたから休みたいんだって言ったら許してくれる?
もう嫌なの。意味のないことをするのは。
雑音が聴こえる。
雑音に混じって微かに何かが聴こえてきてはいるのに、はっきりと何かを聴き取ることができない。何かが視えてきそうなのに、目の前に靄あるみたいにはっきりと視認できない。今のその何もできない苦しい状態を放棄してしまえば簡単に楽になれるとわかっているのに、何故か私はそれを手放そうとしなかった。足掻くことをやめられたらどれだけ良かっただろうか。…諦めたいのに、諦めきれなかった。私は確かに『幸せ』という私がずっと求めていたものを知ってしまったから。
…わかってる。戻っても彼はもう側にいないって。また苦しみの毎日が連鎖するだけだって。それでも、私は望んでしまう。幸せな夢を願ってしまう。
頑張って起きたら、隣に彼が居てほしい。
私、頑張るから。
もう嫌われないように頑張るから。
嫌なこともがんばるから。
君が望む人であり続けるから。
どんなに辛くてもがんばるから。
ずっと、がんばるから、…もう私から離れていかないで。
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