ぬけがらに愛を囁く10
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日記は彼女が完全にエンティティに洗脳されて自我が無くなる寸前まで毎日書かれていたようだった。ノートの処々インクが水で滲んで読みづらくなっている箇所があった。きっと泣きながら書いていたんだろう。
彼女の日記に綴られているほとんどがエンティティの拷問による痛みと俺のことばかりだった。彼女にとってはその2つが中心になって生活していたことがわかる。そう思うと無性に胸の奥が痛んだ。
エンティティにそれだけ恐怖や痛み、苦しみを植え付けられていたこと。それだけ苦しんでいたのに俺には一切、弱いところを見せずに笑っていたこと。そんな彼女が唯一の心のよりどころにしていたのが俺だったというのに、俺はそこまで深く考えずにルイを突き放した。自分がした残酷なことに今さら気付かされる。
××××
もし、ゴーストフェイスとまだなかよしのままでいれたら、なにかかわったかな。ごめんね、ありがとうってちゃんといいたかったな。それから、ほんとはだいすきだよって
彼女の自我が壊れる寸前に書かれていた言葉に胸が締め付けられて呼吸が苦しくなった。ルイにとっては俺だけが唯一の救いだった。ただ、俺が一緒に居るだけで良かったんだ。今まで、どんな辛い拷問にも耐えてきたルイの心が死んでしまったのは俺と関わることができなくなったからなのかもしれない。…逆に考えれば、俺とずっと一緒に居たら今でもルイは拷問に耐え続けていたのだろうか。どちらにしたってそれでは本当の意味でルイを救うことはできなかった。…関わるべきじゃなかった。こんなに自分自身までも苦しんでしまうくらい情が移るなら。今更後悔したって遅いとわかっているのに。
……ルイの本当の気持ちなんて知りたくなかった。…知りたくなかった。俺は今どうしたらいいかわからないのに、兎に角なんとしてもルイを救いたいと思っている。本当の意味で。もう、ルイには苦しんでほしくない。ただ、俺の隣でずっと馬鹿みたいに笑ってくれてるだけでいい。…そう、俺も一緒だ。ルイと同じ気持ちだった。気付くのが遅くなってしまったけれど。ルイがこんな姿にならないとわからなかったけれど、好きだったんだ。ずっと友達のような感覚で側に居たから当たり前のように感じていた。こんな楽しくて心地良い毎日が続くと思い込み続けていた。いつかは絶対に終わる日が来るとわかっていたというのに。
彼女にとって俺が必要だったように、俺だって彼女が必要だった。
今はずっと、ルイのことしか考えられない。他のことなんてどうでもよくなってしまうくらいに。ルイが横になっているベッドに一緒に入る。目をつむって寝ようとしたが、色々な考えが巡って寝れそうにない。
これは元をたどると、ルイがエンティティに従わずに反抗していたことが原因で起こったことだ。彼女が早くにエンティティに屈してさえいれば、自我を失うことも無かった。とはいえ、ルイはどんなに辛く苦しい思いをしても自分の意見を変えたりすることはなかったから、どちらにしろ避けようがない事態だっただろう。
確かにルイはキラーとしての責務を果たせなかったかもしれないが、ルイがここまでされなくてはいけない理由なんてない。こんなに風に物のように扱われることがおかしい。
エンティティは使えないキラーでさえ処分する気はなかった。ヤツを崇拝している馬鹿ならお優しい方だと言うだろうが、彼女がやってることは殺すよりも残酷なことだ。強制的に連れてきた上で殺しをしたくないと拒めば拷問する。拷問が辛くて死にたいと訴えれば、楽にしてやる訳ではなく、心を殺してまで生ける屍として操る。エンティティがやってることは飼い殺しだ。
今まではその理不尽さに疑問を抱くこともなく、従ってきたが、自分の大切な存在が壊されて初めてエンティティに対して怒りを覚えた。しかし、エンティティに直接怒りをぶつけたところでどうにもならないことはわかっていた。冷静になって考えたことはエンティティと交渉をすることだった。交渉が上手くいけば確実ではないが、ルイが戻ってくる可能性が広がる。
…やれることは全部やろう。
ルイには血で汚れた姿なんて似合わない。