酒が紡ぐ絆
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今日はデススリンガーとの約束の日だ。だいぶ前にトラッパーとどうすれば仲良くなれるかデススリンガーに相談したところ、一緒に酒を飲めば仲良くなれるとアドバイスしてくれた。そのアドバイスに従ってトラッパーを誘ってみたところ、きっぱりと断られてしまった。しかも2回とも。ただ一緒にお酒が飲みたいだけだと言ってもトラッパーは私が何かを企んでいると警戒していてとてもじゃないけど、誘える感じではなかった。という訳で、頼みのデススリンガーにその話をしたら彼がトラッパーを誘ってくれることになった。
デススリンガーの話では、まず最初に彼がトラッパーを飲みに誘い、そのときに私が来るというのは伏せておいて、後から私がたまたま合流したという感じにするらしい。最初から私が居るとわかっていたらトラッパーが断るからだろうけど、それでも私が来たらトラッパーは帰ってしまうんじゃないかと思う。その話もしてみたら、取り敢えず露出しとけとデススリンガーが言っていた。私をなんだと思っているんだろう?夜職の女じゃないんだぞと言いたくなる。何ならトラッパーはきっとそういう露骨な色仕掛けみたいなことは嫌いだと思う。私自身もするのは好きじゃない。…きっと露出はデススリンガーの好みだろう。前に珍しい格好してきたのが良くなかったかもしれない。結局、迷った挙げ句、いつも通りの格好で約束の時間にバーに向かった。
バーの扉の奥からデススリンガーとトラッパーの楽しげな話し声が聴こえてくる。その良い雰囲気のところに今から私が乱入して雰囲気を壊してしまうと思うと少しだけ気が引ける。偶然を装うにしても私は芝居じみたことは得意ではないし、嘘も苦手だ。どうしようか考えてみたものの、良い案が浮かばずに取り敢えず自然体を意識することにした。
「あら、デススリンガーにトラッパー。仲良さそうでいいね」
「ああ、リフ。ちょうどいいところに来てくれた。いつもは野郎共で淋しく飲んでるから、お前がいたら更に酒が美味く感じそうだ」
デススリンガーはさり気なく私にアイコンタクトをしつつ、トラッパーの肩に手を乗せて「なっ、トラッパー」と楽しそうに笑う。私は微笑みながらデススリンガーの隣に座った。途端にトラッパーから笑みは消え失せて、分かりやすく仏頂面に変わった。そして彼はスッと立ち上がる。
「悪いな、デススリンガー。俺にとってはこの女と飲む酒が一番不味いと思ってる」
「待て待て!それはまだ一緒に飲んでみないとわからないだろ?」
案の定、すぐさまバーから出て行こうとするトラッパーをデススリンガーが慌ててが引き止めた。やはりこうなるかと私は苦笑いを溢す。
「一緒に飲まなくたってわかってる。俺はこの女の顔も見たくないレベルで嫌いだからな」
「おい、流石に本人を目の前にその言い草はないだろ。お前はリフの何を嫌ってるって言うんだ?彼女のことは何も知らないだろ?」
「…十分にわかってるからそう言ってるんだ。コイツはエンティティに忠誠を誓っていてキラーに拷問を与えている。俺達のことはただのエンティティのご機嫌取りをする道具だとしか思っていない。お前だって、わざわざそんなこと言わなくてもわかってるだろうが」
「…確かに仕事としてることはそうかもしれないが、リフが実際に俺達をそんな風に思ってるかなんてわからないぜ?」
「ハッ、めでたい奴だな。お前がそこまで馬鹿な男だとは思わなかった。…キラーの癖にこの女に絆されるなんてな」
「…そういうことじゃなくてだな…」
2人の私に対する思いから意見が食い違っている為に言い合いがエスカレートしていく。デススリンガーとしては私の性格を知りもしないで勝手なことを言うなと言いたいんだろうけど、トラッパーからすればそんなことはどうでもいいことでしかない。せっかく2人は普段は良き理解者として仲良くしてるのに、こんな意見の食い違いで仲違いしてほしくはない。見兼ねて私は間に入る。
「もういいよ、デススリンガー。私の普段の仕事を知ってればトラッパーが私に嫌な感情を抱くのは当然のことだし、この話に決着はつかないよ」
「…でもなあ、お互いちゃんと話したことなんてないんだろ?それなのに、コイツはこんな奴だと勝手に決めつけて好き嫌いするのは勿体ないと思うんだよ俺は」
「確かにそれもわかるよ。私ももしかしたらトラッパーとちゃんと話せる機会があるなら今よりも良好な関係を築けるかもとは思う。だけど、嫌がる人に無理をさせるのも気が引けるの。トラッパーに嫌な思いをしてほしい訳じゃないから」
「……」
「…だとよ。トラッパー、あとはお前次第だ」
「…トラッパー、もし今日は少しだけ我慢してもいいって思えるなら、少し話してみない?それでもやっぱり私と関わりたくないと思うなら、もう仕事以外では絶対に話し掛けたりなんてしないから」
ややあって私に背を向けてバーから出て行こうとしていたトラッパーから大きなため息が吐き出された。そして次に聞こえてきたのはチッという舌打ちだった。彼は振り返るとさっきまで自分が座っていた椅子にもう一度ドカッと乱暴に腰を下ろした。かなり不器用な態度だったが、それだけで彼が仕方なく私と話してやるという気分になったのだとわかって自然と頬が緩む。