甘いものと隠し切れない真実
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三人のサバイバーをきっちりと処刑して、最期の一人は自らの手で殺害したトリックスターの上機嫌な笑い声が画面越しに聴こえてくる。驚くほど手際が良かったし、思わず魅入ってしまうような儀式だった。トリックスターの儀式の成績が良いのは勿論のこと、最近は魅せる儀式を意識している気がする。儀式を観ている人なんてエンティティ様か私しかいないというのに、彼はまるで大勢の観客の前でパフォーマンスをするかのように振る舞う。それは、かつて彼が大人気スターとして活躍していた頃を彷彿とさせる。この世界に来ても彼の輝きは途絶えるどころかそれは更に眩しくなっているように感じさせられた。きっと、こんな儀式を見せられたらエンティティ様も心底、愉しんでいるに違いない。トリックスターにご褒美をあげよう。後回しにすると忘れてしまうかもしれないから、今すぐにあげに行こうと部屋を出た。すると、廊下の向こう側からトリックスターが嬉しそうな表情を浮かべて此方に近付いてきた。
「あ、トリックスター。ちょうど良かった。今から君に会いに行こうと思ってたんだ」
「ああ、そうなんだ。やっぱり、リフに呼ばれた気がしてね」
私の目の前に来るなり「運命だね」と言いながら私の両手を包み込むトリックスター。大袈裟過ぎるし、相変わらず彼の気持ちは心変わりすることなく、私に向けられていることを再確認した。一時期、部屋によく来ていたトリックスターは私が面倒くさそうにあしらっていたら、いつしか全く部屋に来なくなった。だから、とっくの昔にそんな気持ちは途絶えたのかと勝手に思っていた。
「最近は全く会いに来なくなったから飽きたのかと思ってたけど、相変わらずなんだね」
「僕がリフに飽きるはずないよ。部屋に行かなくなったのは、リフが部屋に来るのを嫌がっているのがわかったから行くのをやめただけ。本当は会いたいのを我慢してたんだよ?」
「そうだったんだ。気持ちを汲んでくれてありがとう」
はっきりと頻繁に部屋に来るのはやめてと言わないとやめてくれない人達が居る中で、彼は何も言わずに察していたから意外と気を遣える人なんだろう。
私の部屋が近かったので、そのままトリックスターには部屋に入ってもらう。椅子に座るように促すと、彼は小さな箱をテーブルの上に置いた。
「何これ?」
「開けてみて」
言われて箱のラッピングを解くと、箱の中にはカラフルなマカロンが綺麗に入っていた。私はこのマカロンに心当たりがあった。
「これ、エンティティ様の特別報酬のもの?」
「あーあ、バレちゃったか。そうだよ、さっきの儀式で貰ったんだ」
「ふふ、まさか儀式の特別報酬がマカロンだなんて可愛らしいね」
「ね、他にも何種類かお菓子があるみたい。僕も別にマカロンが好きな訳じゃないんだけど、折角だからリフと食べようと思って」
「そういうことだったんだ。ありがとね。それなら紅茶用意するから少し待ってて」
彼にどんな紅茶を飲みたいか聞くと、今日は柑橘系の気分と返ってきたので、ライム、オレンジ、レモンが混ざったシトラスティーにする。お湯を沸かして、ティーバックを浸しながら蒸らす。一定の時間が経ったらティーバックを取り、カップに注いで最後に蜂蜜を入れる。紅茶が入ったカップをトリックスターの前に置くと、彼は香りを楽しみながら、カップに口をつけた。私も同じように紅茶を一口飲んで、ピンクのマカロンを口に入れる。甘酸っぱいストロベリーの味がした。
「美味しい」
「それは良かった。リフは甘い物が好きだから喜んでくれるかなって思ったんだ」
トリックスターは水色のマカロンを取って食べる。その様子を眺めながら何気なく彼が言った一言に疑問を持つ。甘い物が好き?私が一度でもそんなことを言っただろうか。記憶を探ってみても彼どころか誰にもそんな話をした覚えはない。
「私、甘い物が好きなんて言ったことあった?」
「あれ?好きじゃなかったの?いつも見る度に甘い物食べてるし、甘い飲み物を好んで飲んでるみたいだから勝手にそう思ってたんだけど」
「ああ、そう言うこと。…よく見てるね。確かに私は甘い物好きなんだけど、隠してるつもりだったんだよね」
「え、何で?」
隠してるつもりというよりは、バレてないと私が思い込んでいただけなんだろう。確かに私はいつも甘い物を食べてるし、紅茶にも必ず砂糖を入れる。それは別にそこまで彼に見られていたという自覚が無かっただけかもしれない。私が甘党だということを隠したかった理由はひとつだけ。単純に私の性格で甘党というのがちょっと変というか恥ずかしいと思っていたからだ。私みたいなタイプはきっと、本来ならお酒だって強いだろうし、好んで飲むのはブラックコーヒー。甘い物は滅多に食べない。そんなイメージが理想としてはあるけれど、実際の私は真逆だ。お酒も苦手だし、コーヒーも砂糖とミルクを淹れないと飲めない。そして、甘い物が大好き。子ども舌の自覚はあるけれど、それがなんだか子供っぽすぎて恥ずかしかった。ただの見栄でしかない。知られてしまったなら、別にそこまで隠すことでもないのだけど。