悩みは尽きない
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仕事が一段落してため息を吐く。最近、すごく困っていることがある。悩みといえば悩みではあるけど、私はそれを誰にも話せずにいた。そもそも私は誰かの相談を聞いたりする側の立場であって私の悩みを聞いてくれる人なんていないことに気づく。それでも自分で何とか対処しないとずっとストレスが溜まるだけだから対処しなくてはいけない。
まあ今は一旦、その悩みは置いておくことにして遅めの昼食を摂ろう。あんまり本格的な料理をするのも面倒に感じて適当に冷蔵庫に入っている具材でサンドイッチを作ろうと考えた。
ゆで卵を潰してマヨネーズとブラックペッパーを入れて混ぜる。それを切ったパンに挟んで簡単に一品出来上がる。それ以外にも、ハムとチーズとレタスを挟んだものと、クリームをパンに塗っていちごとキウイとオレンジを挟んだフルーツサンドを作った。それから簡単なコンソメスープを作って完成だ。
さっそく食べようと一番最初に作ったタマゴサンドを一口食べる。シンプルだけどマヨネーズとブラックペッパーの味加減が丁度よくて美味しい。細やかなものではあるけど、こうして一人でゆっくりとご飯を食べる瞬間が幸せだと感じる。ご飯の一口目をじっくり味わうのも、自分の作った物を美味しいと自画自賛するのも好きだったりする。
「美味しそうだね」
だけど、この細やかな幸せな時間を邪魔する厄介者もいる。鍵が掛かっているはずなのに何食わぬ顔で勝手に部屋に入ってきたのはゴーストフェイスだ。私は再びため息を吐きたくなった。
「何勝手に人の部屋に入ってきてるの?そもそも鍵掛かっているんだけど」
「でも入れたし、また鍵掛け忘れてたんじゃない?」
「そんなはずない。君にこの前、寝込み襲われてからは絶対に鍵を掛けたか確認してるし、その後にもピッキングされたから鍵は替えたばかりなの」
「そうなんだ。良い心掛けだね。だけど、鍵を替えても俺に数分で開けられちゃうような鍵掛ける意味ないんじゃない?」
「それは君のピッキングの技術がおかしいと思う」
彼には何を言っても屁理屈で逃げられるのはわかっていることだから、こんなやり取りは不毛だとは思う。だけど、不毛だとわかっていたって言わずにはいられないくらい私はストレスが溜まっていた。そう最近の悩み事とストレスの原因は目の前にいるこの男のせいだ。優雅に昼食を摂っていた私の邪魔をし、それでもなお図々しく私の前に勝手に座っている。
不用心の私が常時、部屋に鍵を掛けるようになったのは彼のせいだ。ゴーストフェイスは前に私の就寝中に部屋に侵入し、寝込みを襲うという大罪を犯した。そのときは何とか追い返したけど、彼が言うには鍵を掛け忘れる方が悪いということだった。そのとき私は鍵を掛けたか確認はしなかったけど、確かに掛けていたとは思う。ただ忘れた可能性もあって明確に掛けたとは言い切れなかった。それからは鍵を掛けたかを確実にチェックするようにした訳だけど、その後も何回か勝手に部屋に侵入されている。だから鍵を替えたのに、今の話を聞く限りでは彼はたったの数分でまたピッキングして部屋に侵入することに成功していた。エンティティ様に無理を言って鍵を替えてもらったのに、もうどうしたらいいかわからない。いよいよ部屋の入り口にトラバサミでも設置するしかないかもしれない。それ以外にも彼は勝手にシャワー中に入ってきたこともあるし、仕事を邪魔しに度々、私の部屋に訪れては嫌がらせをしてくる。彼のせいで私のストレスは尽きなくなっていた。
「何度も言ってるけど、用も無いのに私の部屋に来ないで。早く帰って」
「君に会いたいから来た」
「そういうのは用とは言わない。嫌がらせって言うの」
「嫌がらせな訳ないじゃん。君は君のことが好きで会いにきた男に対しても嫌がらせって言って追い返すの?」
「もし、仮に好きだとするなら好きな女が嫌がることをする男を快く迎えようとは思わないかな」
「でもリフは俺に会いに来てくれないし、会えないと儀式頑張れないんだけど」
「それは頑張って。今はご飯食べてるから兎に角、話は後にしてよ」
「邪魔しないから食べてていいよ」
邪魔しかしてないのに何を言ってるんだろうと思ったけれど、それを言ったらまた会話しなくてはいけなくなる。仕方無く諦めてご飯を食べることに集中した。サンドイッチの色んな味を交互に食べていく。味は確かに美味しいけど、目の前に座るゴーストフェイスが必要以上に私の食べてる所を見ている気がして落ち着かない。しかも、邪魔しないと言ったからなのか無言で食べるのを見られる続けるから余計に。スープをスプーンで掬って口に入れると少し冷めてしまっていた。
けっきょく終始、落ち着かない気持ちのまま、食事を終えた。食事の片付けを済ますと、この厄介な相手をどうしようかと考える。正直、言って相手が悪過ぎる。素直に嫌なことをやめてと言って簡単にやめてくれる相手ならこんなに苦労しない。儀式外のことなのに拷問をするという手荒な真似もしたくはない。…となると、今のところ話合いで解決するしかなさそうだ。
「ゴーストフェイスはどうしたら私の部屋に頻繁に来るのをやめてくれる?」
単刀直入に聞けば彼は腕を組んでしばらく考える素振りをしてから口を開く。
「…君が俺に毎日会いに来てくれればやめるかも」
「却下。それじゃ意味ない」
「じゃあ、やめられない」
困ったことにやっぱり埒があかない気がする。エンティティ様にこんなことを相談したところでとても何とかしてくれるとは思えない。それ以前にキラーの調教師なんだからそのくらい自力で何とかしろとまで言われそうだ。