第八章 海上レストラン・バラティエ
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ミコトはバーカウンターでワインを買おうと足を向けると、サンジを見つけた。
『サンジ君!』
呼ばれて顔を上げたサンジはミコトを一瞬遅れて見止めると、気づいたように微笑した。
「……何だい? ミコトちゃん」
『ワインを一本買いたいの』
「分かったよ、リストを持ってくる」
『ありがとう!』
サンジとミコトはカウンター席でワインリストを見ている。
ミコトはページを捲り、欲しいワインを見つけて指差した。
『あった! これ!』
「銘柄はこれ? 本当に?」
『うん。 それで、お願い』
「かしこまりました。 すぐにお持ちします……プリンセス」
サンジが大きな身振りでお辞儀して、ワイン倉庫に向かう。
『大げさだな~、サンジ君は』
ミコトがクスリと笑って待っている間、サンジはひんやりした倉庫の棚から一本のワインを手に取る。
ラベルの絵柄は風に吹かれた長い髪の女の後ろ姿で、東の海産のワインで美味しい物だが、一級品ではない。
(ミコトちゃんは酒がダメって言ってたよな。 プレゼントには向いてねェし、あいつらが飲むには一本じゃ足りねェ……)
気になりながらサンジは戻ると、手にするワインの銘柄をミコトに見せて微笑した。
「おまたせしました」
『ありがとう!』
「ラッピングは?」
『ううん、紙袋とかでいいんだけど……あるかな?』
もちろん! とサンジは笑うと紙袋に入れてミコトに渡す。
「これでいいかい?」
『うん!』
ミコトは手にすると微笑した。
(……喜んでくれるといいな!)
嬉しそうなミコトをサンジは見つめていた。
知り合ったばかりのミコトは海賊で、ルフィの仲間だというが、どう見ても海賊には見えない。
美味しいとコーヒーを飲む姿も、ワインを手に喜ぶ様子も、レストランに食べにくるレディ達と何も変わらない。
白い髪というだけで——と無言になっていたサンジの視線にミコトは首を傾げた。
『サンジ君?』
見上げるミコトと目が合ったサンジの脳内はメロリーン! とやられた。
(か、可愛い~!)
「ミコトちゃ~ん!」
叫ぶと同時に抱きつこうとするサンジに、ミコトは 『え……!?』 と目を丸くして固まる。
一瞬動けないでいると、背後からルフィの元気な声がした。
「あっ! お前っ! ここにいたのか! 仲間に——」
「なるかーっ!」
速攻でサンジに蹴られたルフィは、また店の外へと飛んで行った。
「ふぅ……」
サンジは息をつくと、ミコトの姿がない事に気づく。
「ミコトちゃん? ミコトちゃん! どこだ?」
どこに行った!? とキョロキョロと探すサンジはレストランの入り口にいるミコトを発見した。
ルフィが蹴られている間に、ミコトは逃げていたのだ。
「ミコトちゃん!」
『……またね』
ミコトは紙袋に入ったワインを大切そうに持つと、サンジに小さく手を振って帰って行った。
陽は沈み、海にも夜の帳が下りた。
昼間の忙しさは去り、バラティエは静かな波の音に包まれている。
サンジが海を眺めながら甲板で一服していると、メリー号の船首にミコトが佇むのが見えた。
「あれは……ミコトちゃん。 あんなところで何を……」
ミコトはメリー号の船首に手を当てていた。
シロップ村を出航してからの日課。
今日や明日の事やこれからの事を話して挨拶をする。
『メリー……おやすみなさい。 また、明日ね』
そして、船室に戻ろうとするミコトにサンジは思わず声を掛けた。
「ミコトちゃん!」
ミコトが声の方に振り向くと、サンジの姿に微笑した。
『あ……サンジ君。 こんばんは!』
一瞬、呼び止めたサンジは昼間と同様に戸惑ってしまう。
あまりにもミコトが自然に微笑したからだ。
「ああ、こんばんは」
サンジは挨拶を返したものの、さてこれからどうしたものかと思った。
黙ってればよかったのに、何でミコトに声を掛けたのか自分でも分からなかった。
昨日、断ってから、ルフィも何度も追い返していたし、ミコトと会いにくいと感じていた。
レディに対して、そんな風に少しでも考えた自分自身に困惑していたところに、ミコトの方から呼ばれて、あまり気にしてない様子に、こんなもんかと気落ちしたりした。
恋愛感情とは違うもので、何が引っかかったのかと眉をひそめる。
心当たりはあるが、認めたくないサンジは分からない事にした。
(おれはミコトちゃんと話をしたかったんだ……それでいい)
本音をしまい込んで、 何を話すんだ——と自分に突っ込んで、いつまでもミコトを放っておくわけもいかないサンジはメリー号に近づいた。
「この船がミコトちゃんの話してたメリー号か……いい船だ」
『うん!』
船体に触れると、サンジはミコトに尋ねた。
「……乗ってもいいかな?」
『もちろん!』
サンジはメリーに掛けられている縄梯子を登り甲板に上がった。
ミコトが撫でていた船首に触れる。
「さっきは何してたんだい?」
『おやすみの挨拶をしてたの』
「そっか……」 とサンジは相槌したものの会話の糸口がつかめず、ミコトも何を話していいのか分からず黙ってしまった。
その頃、キッチンではルフィ達が話をしていた。
「ミコトは遅いわね……何してるのかしら?」
「散歩だろ」 とウソップが言えば、即座にナミが返す。
「船の上よ! ちょっと見てくる」
「ナミはミコトのことになると……」
心配しすぎだろという口調のウソップの言葉を扉に向かうナミが遮った。
「うっさいわね、ウソップ! ……あっ!」
手に掛ける扉の丸窓から、バラティエの明かりでサンジとミコトの影が見えて立ち止まる。
どうした!? とみんなが振り向いた。
「あれ」
ナミは窓から見えるサンジとミコトを指差し、ルフィ、ウソップ、ゾロも覗く。
「「「あ!?」」」
驚く三人とナミは扉に耳をすませる。
「何か話してるようだけど……聞こえないわ」
「ちょっと……扉、開けろよ」
ウソップがゾロに言われて少し開けると、二人の声がかすかに聞こえる。
「……押すなよゾロ!」
「ミコトとサンジは何してんだ? 聞いてこよう!」
即座にルフィを抑えるのはゾロとウソップ。
「止めろっ!」
「待て…! 黙って見てろ!」
「静かにしてよ……! 声が聞こえないじゃない!」
キッチンから覗かれていることも知らずに、ミコトとサンジは何を話そうかと、お互い俯いていた。
サンジが思いついたようにミコトに聞いた。
「そうだ! コーヒーに詳しい人がいるって……どんな人だったんだい?」
ミコトはサンジを見ると、少しさびしそうに答えた。
『昔、付き合ってた人が好きだったの』
「……そうだったのか」
(失敗した……何、聞いてんだおれは)
後悔するサンジにミコトは話す。
『うん。 私ね、両親を事故で亡くしていて……ショックで自分の事も周りの事も、何も見えなくなっていた時があったの。 彼はとても優しい人で慰めてくれてたけど……。 私は彼から距離をとるようになったの……友達とも。 それで、時間は掛かったけど、少しずつ立ち直り始めて、気づいたら……誰もいなくなってた』
——ミコトはこの世界に来た。
何で来たのか、いまだに分からないままだが、大事な人を失う辛さをルフィに、二度も合わせたくなった。
「…………」
サンジがどう声を掛けようかと迷っていると、ミコトは顔を上げて気にしないでと笑う。
『今は大丈夫だよ! ルフィの仲間になってからゾロやナミ、ウソップと出会って、毎日が楽しいの! これからもね、みんなといろいろな海を島を冒険したい!』
夢を話すミコトがサンジの目には輝いて見えた。
「ミコトちゃん……おれも——」 と言いかけて 「君の仲間になる」 と続きを飲み込んだ。
『……何?』
「いや……何でもないよ」
(何を言おうとしたんだ……)
サンジはミコトから目を逸らして、月明かりで光る波を見つめた。
キッチンにいるルフィ達も身動きできずにミコトの話を聞いていた。
ゾロは黙り込み、ナミは小声でルフィに尋ねる。
「ルフィは知ってたの?」
「知らね」
「あんたって、本当に……」
「しっ! ……何か話してるぞ」
ウソップは口に指を当てて、二人の話を止めた。
ミコトはサンジが目を逸らしたことに睫を伏せた。
『ごめんね……。 私の話なんて、つまらないよね……』
「違う! ……そうじゃねェよ」
サンジはすぐに顔を上げて否定して、ミコトと目が合った。
気まずさに言葉がなくて、サンジの頭の中では、いろいろな事がぐるぐる回るが、どれもいいとは思えなかった。
そして、口から出たのは恩を返したくて、追いかけるのを止めた夢だ。
「……おれの夢は “オールブルー” なんだ」
ミコトは少し驚いた顔を浮かべた。
まさか、ルフィではなく自分に話してくれるとは思わなくて、嬉しくて頷いた。
『うん……!』
サンジは話すだけならいいよなと、夢を語れる楽しさにその目は輝く。
「東西南北の全ての海の魚がいて、あらゆる海の食材が揃うと言われる幻の海…… “オールブルー” をおれは探しに行きたい! そして、見つけたい!」
サンジは黙って聞くミコトの両肩を勢いで掴んだ。
「それが、おれの夢だ!」
『!!!』
「あっ! ごめん……。 つい……」
すぐに肩から手を離すサンジに、ミコトは首を振った。
『ううん……少し驚いただけ。 “オールブルー” ……聞いたことがあるよ。 見つかるといいね!』
ミコトが微笑むとサンジの顔がパァ! と明るくなった。
そして、どんな海なのかをミコトに楽しそうに無邪気に話す姿は夢を追う少年だった。
二人の様子を覗いていたナミは息をつくと扉から離れた。
「……どうやら、いい感じじゃない」
「ああ」
「そうだな!」
ゾロとウソップも頷くと、ルフィは分からないのか聞いた。
「何がだよ!」
「あのコックが仲間になるかどうかは……お前の行動で決まるってことだルフィ!」
ウソップがルフィの肩にポン! と手を置くと、ルフィは早速とばかりにミコトとサンジの所に行こうとした。
「そうなのか! じゃあ、今、行ってくる!」
「「「今はダメだ!!」」」
ナミ、ゾロ、ウソップの三人に同時に止められたルフィは 「何でだよ!」 と口を尖らせた。
『サンジ君!』
呼ばれて顔を上げたサンジはミコトを一瞬遅れて見止めると、気づいたように微笑した。
「……何だい? ミコトちゃん」
『ワインを一本買いたいの』
「分かったよ、リストを持ってくる」
『ありがとう!』
サンジとミコトはカウンター席でワインリストを見ている。
ミコトはページを捲り、欲しいワインを見つけて指差した。
『あった! これ!』
「銘柄はこれ? 本当に?」
『うん。 それで、お願い』
「かしこまりました。 すぐにお持ちします……プリンセス」
サンジが大きな身振りでお辞儀して、ワイン倉庫に向かう。
『大げさだな~、サンジ君は』
ミコトがクスリと笑って待っている間、サンジはひんやりした倉庫の棚から一本のワインを手に取る。
ラベルの絵柄は風に吹かれた長い髪の女の後ろ姿で、東の海産のワインで美味しい物だが、一級品ではない。
(ミコトちゃんは酒がダメって言ってたよな。 プレゼントには向いてねェし、あいつらが飲むには一本じゃ足りねェ……)
気になりながらサンジは戻ると、手にするワインの銘柄をミコトに見せて微笑した。
「おまたせしました」
『ありがとう!』
「ラッピングは?」
『ううん、紙袋とかでいいんだけど……あるかな?』
もちろん! とサンジは笑うと紙袋に入れてミコトに渡す。
「これでいいかい?」
『うん!』
ミコトは手にすると微笑した。
(……喜んでくれるといいな!)
嬉しそうなミコトをサンジは見つめていた。
知り合ったばかりのミコトは海賊で、ルフィの仲間だというが、どう見ても海賊には見えない。
美味しいとコーヒーを飲む姿も、ワインを手に喜ぶ様子も、レストランに食べにくるレディ達と何も変わらない。
白い髪というだけで——と無言になっていたサンジの視線にミコトは首を傾げた。
『サンジ君?』
見上げるミコトと目が合ったサンジの脳内はメロリーン! とやられた。
(か、可愛い~!)
「ミコトちゃ~ん!」
叫ぶと同時に抱きつこうとするサンジに、ミコトは 『え……!?』 と目を丸くして固まる。
一瞬動けないでいると、背後からルフィの元気な声がした。
「あっ! お前っ! ここにいたのか! 仲間に——」
「なるかーっ!」
速攻でサンジに蹴られたルフィは、また店の外へと飛んで行った。
「ふぅ……」
サンジは息をつくと、ミコトの姿がない事に気づく。
「ミコトちゃん? ミコトちゃん! どこだ?」
どこに行った!? とキョロキョロと探すサンジはレストランの入り口にいるミコトを発見した。
ルフィが蹴られている間に、ミコトは逃げていたのだ。
「ミコトちゃん!」
『……またね』
ミコトは紙袋に入ったワインを大切そうに持つと、サンジに小さく手を振って帰って行った。
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陽は沈み、海にも夜の帳が下りた。
昼間の忙しさは去り、バラティエは静かな波の音に包まれている。
サンジが海を眺めながら甲板で一服していると、メリー号の船首にミコトが佇むのが見えた。
「あれは……ミコトちゃん。 あんなところで何を……」
ミコトはメリー号の船首に手を当てていた。
シロップ村を出航してからの日課。
今日や明日の事やこれからの事を話して挨拶をする。
『メリー……おやすみなさい。 また、明日ね』
そして、船室に戻ろうとするミコトにサンジは思わず声を掛けた。
「ミコトちゃん!」
ミコトが声の方に振り向くと、サンジの姿に微笑した。
『あ……サンジ君。 こんばんは!』
一瞬、呼び止めたサンジは昼間と同様に戸惑ってしまう。
あまりにもミコトが自然に微笑したからだ。
「ああ、こんばんは」
サンジは挨拶を返したものの、さてこれからどうしたものかと思った。
黙ってればよかったのに、何でミコトに声を掛けたのか自分でも分からなかった。
昨日、断ってから、ルフィも何度も追い返していたし、ミコトと会いにくいと感じていた。
レディに対して、そんな風に少しでも考えた自分自身に困惑していたところに、ミコトの方から呼ばれて、あまり気にしてない様子に、こんなもんかと気落ちしたりした。
恋愛感情とは違うもので、何が引っかかったのかと眉をひそめる。
心当たりはあるが、認めたくないサンジは分からない事にした。
(おれはミコトちゃんと話をしたかったんだ……それでいい)
本音をしまい込んで、 何を話すんだ——と自分に突っ込んで、いつまでもミコトを放っておくわけもいかないサンジはメリー号に近づいた。
「この船がミコトちゃんの話してたメリー号か……いい船だ」
『うん!』
船体に触れると、サンジはミコトに尋ねた。
「……乗ってもいいかな?」
『もちろん!』
サンジはメリーに掛けられている縄梯子を登り甲板に上がった。
ミコトが撫でていた船首に触れる。
「さっきは何してたんだい?」
『おやすみの挨拶をしてたの』
「そっか……」 とサンジは相槌したものの会話の糸口がつかめず、ミコトも何を話していいのか分からず黙ってしまった。
その頃、キッチンではルフィ達が話をしていた。
「ミコトは遅いわね……何してるのかしら?」
「散歩だろ」 とウソップが言えば、即座にナミが返す。
「船の上よ! ちょっと見てくる」
「ナミはミコトのことになると……」
心配しすぎだろという口調のウソップの言葉を扉に向かうナミが遮った。
「うっさいわね、ウソップ! ……あっ!」
手に掛ける扉の丸窓から、バラティエの明かりでサンジとミコトの影が見えて立ち止まる。
どうした!? とみんなが振り向いた。
「あれ」
ナミは窓から見えるサンジとミコトを指差し、ルフィ、ウソップ、ゾロも覗く。
「「「あ!?」」」
驚く三人とナミは扉に耳をすませる。
「何か話してるようだけど……聞こえないわ」
「ちょっと……扉、開けろよ」
ウソップがゾロに言われて少し開けると、二人の声がかすかに聞こえる。
「……押すなよゾロ!」
「ミコトとサンジは何してんだ? 聞いてこよう!」
即座にルフィを抑えるのはゾロとウソップ。
「止めろっ!」
「待て…! 黙って見てろ!」
「静かにしてよ……! 声が聞こえないじゃない!」
キッチンから覗かれていることも知らずに、ミコトとサンジは何を話そうかと、お互い俯いていた。
サンジが思いついたようにミコトに聞いた。
「そうだ! コーヒーに詳しい人がいるって……どんな人だったんだい?」
ミコトはサンジを見ると、少しさびしそうに答えた。
『昔、付き合ってた人が好きだったの』
「……そうだったのか」
(失敗した……何、聞いてんだおれは)
後悔するサンジにミコトは話す。
『うん。 私ね、両親を事故で亡くしていて……ショックで自分の事も周りの事も、何も見えなくなっていた時があったの。 彼はとても優しい人で慰めてくれてたけど……。 私は彼から距離をとるようになったの……友達とも。 それで、時間は掛かったけど、少しずつ立ち直り始めて、気づいたら……誰もいなくなってた』
——ミコトはこの世界に来た。
何で来たのか、いまだに分からないままだが、大事な人を失う辛さをルフィに、二度も合わせたくなった。
「…………」
サンジがどう声を掛けようかと迷っていると、ミコトは顔を上げて気にしないでと笑う。
『今は大丈夫だよ! ルフィの仲間になってからゾロやナミ、ウソップと出会って、毎日が楽しいの! これからもね、みんなといろいろな海を島を冒険したい!』
夢を話すミコトがサンジの目には輝いて見えた。
「ミコトちゃん……おれも——」 と言いかけて 「君の仲間になる」 と続きを飲み込んだ。
『……何?』
「いや……何でもないよ」
(何を言おうとしたんだ……)
サンジはミコトから目を逸らして、月明かりで光る波を見つめた。
キッチンにいるルフィ達も身動きできずにミコトの話を聞いていた。
ゾロは黙り込み、ナミは小声でルフィに尋ねる。
「ルフィは知ってたの?」
「知らね」
「あんたって、本当に……」
「しっ! ……何か話してるぞ」
ウソップは口に指を当てて、二人の話を止めた。
ミコトはサンジが目を逸らしたことに睫を伏せた。
『ごめんね……。 私の話なんて、つまらないよね……』
「違う! ……そうじゃねェよ」
サンジはすぐに顔を上げて否定して、ミコトと目が合った。
気まずさに言葉がなくて、サンジの頭の中では、いろいろな事がぐるぐる回るが、どれもいいとは思えなかった。
そして、口から出たのは恩を返したくて、追いかけるのを止めた夢だ。
「……おれの夢は “オールブルー” なんだ」
ミコトは少し驚いた顔を浮かべた。
まさか、ルフィではなく自分に話してくれるとは思わなくて、嬉しくて頷いた。
『うん……!』
サンジは話すだけならいいよなと、夢を語れる楽しさにその目は輝く。
「東西南北の全ての海の魚がいて、あらゆる海の食材が揃うと言われる幻の海…… “オールブルー” をおれは探しに行きたい! そして、見つけたい!」
サンジは黙って聞くミコトの両肩を勢いで掴んだ。
「それが、おれの夢だ!」
『!!!』
「あっ! ごめん……。 つい……」
すぐに肩から手を離すサンジに、ミコトは首を振った。
『ううん……少し驚いただけ。 “オールブルー” ……聞いたことがあるよ。 見つかるといいね!』
ミコトが微笑むとサンジの顔がパァ! と明るくなった。
そして、どんな海なのかをミコトに楽しそうに無邪気に話す姿は夢を追う少年だった。
二人の様子を覗いていたナミは息をつくと扉から離れた。
「……どうやら、いい感じじゃない」
「ああ」
「そうだな!」
ゾロとウソップも頷くと、ルフィは分からないのか聞いた。
「何がだよ!」
「あのコックが仲間になるかどうかは……お前の行動で決まるってことだルフィ!」
ウソップがルフィの肩にポン! と手を置くと、ルフィは早速とばかりにミコトとサンジの所に行こうとした。
「そうなのか! じゃあ、今、行ってくる!」
「「「今はダメだ!!」」」
ナミ、ゾロ、ウソップの三人に同時に止められたルフィは 「何でだよ!」 と口を尖らせた。