第六章 シロップ村
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クロは坂道でジャンゴとニャーバン・兄弟の不甲斐なさに軟弱だと罵っていた。
それを聞いたニャーバン・兄弟は怒り、クロに刃向かい牙をむいたが、クロは素早く “猫の手” を着ける。
“猫の手” とは黒い手袋に腕の長さはありそうな爪を五本装着した武器で、相手を切り裂く事が出来る。
クロは “抜き足” で、兄弟の攻撃を躱すと背後に回り、 “猫の手” で、抱え込んで脅した。
「五分やろう。 ……五分で、この場を片付けられねェようなら……てめェら一人残らず、おれの手で殺してやる」
瞬間、殺気に凍りつく海賊達に逃げ道は無かった。
ウソップはクロの本性を目の当たりにして、悔しくて涙を滲ませた。
「畜生ォっ! こんな奴が三年も同じ村に住んでたなんて……!」
ナミはクロの登場の隙に、ジャンゴの背後にまわり、刀に近づいていく。
海賊達はゾロを睨みつけ叫んだ。
「あいつだ! あいつさえ、ブッ殺せば! おれ達は、この坂道を抜けられるんだ!」
ニャーバン兄弟も爪をむき出して構えた。
「そうさ、さっきまで、おれらが押してた相手だ! たいして強かねェ! 五秒で切り裂いてやる!」
「ゾロ!」 とナミが叫ぶと同時に二本の刀をゾロに蹴り飛ばした。
「てめェは……! おれの刀まで足蹴に……!」
文句より言う事あるでしょとナミはゾロを見る。
「……お礼は?」
ゾロは 「あァ…」 と刀を受け取ると口端を微かに上げた。
「ありがとう!」
(助かった…!)
直後、ニャーバン・兄弟が襲い掛かる。
「シャアアアーッ! 無駄だ無駄だ! 刀三本使っても実力は同じだ!」
「わかってねェな “刀三本使う事” と “三刀流” とじゃ、意味が違う」
ゾロは三本目を口に咥えてスウ……と構えた。
眼光鋭く兄弟を見据えると一撃で決める。
「虎…狩り!」
ガシュッ!
ニャーバン兄弟の体は斬られた勢いで、一回転して飛ばされた。
「い…! 一撃っ! あのニャーバン・兄弟を!」
驚く海賊達を背にゾロはスチャ! と一刀をクロに向けた——次はお前の番だと。
クロはゾロを威圧するように薄笑いを浮かべて返す。
「心配すんな……五分も待たなくても、お前らは一人残らず、おれが始末してやる」
「やってみろ」 とクロが見下ろしたのはゾロとブチ。
口から血を吐き出すブチが立ち上がる様子にクロは何も感じないのだろう。
「生きてるぞ、ツメが甘いな……」
出た言葉は部下ではなくゾロへの冷笑だ。
ゾロは眉を寄せて、ブチを振り返る。
(タフな脂肪のおかげで助かったか……)
そして、倒せきれなかったせいで、ブチは叫ぶ。
「ジャンゴ船長、催眠をかけてくれ!」
すかさず、ジャンゴはブチに催眠術をかけた。
「ぬ゛っフーン!」
恐るべき催眠術の力。
ゾロは厄介な事になったと、奇声を上げるブチを睨む。
ナミは復活したブチに目を奪われている間にと、今度はルフィのところに走り出す。
すぐに気付いたジャンゴは余計な事はさせないと、ナミにチャクラムを投げつけた。
走るナミと迫るチャクラム——どちらが早いか。
眠るルフィをナミが思いっきり踏みつけた。
「起きろォ!」
「ぶっ!?」
潰れるルフィの声と同時に、ゾロの知らせる大声。
「ナミ、危ないよけろっ!」
風をきるチャクラムに気づいたナミが叫ぶ。
「きゃあああ!」
避けようとするが間に合わない——と誰もが思った一瞬の出来事。
「よくも顔をフンづけやがっ……!」
ルフィが起きて立ち上がった。
直後に後頭部にチャクラムがグサッ! と刺さる。
衝撃にダンッ! と足で地面を捉えるルフィは踏ん張った。
「………! いっ…てェ~っ!」
ルフィがチャクラムを取って捨てて叫ぶと、海賊達の脳裏にさっきのルフィの暴走が過る。
「あいつが復活したァ~! まずい五分以内なんて……。 ムリだ…!」
前にはキャプテン・クロ、後ろにはルフィという状態に、慌てる海賊達はどうしたらいいんだと頭を抱えた。
ルフィはナミに文句を言う。
「いてェなコノォ!」
「私じゃないわよ!」
答えた途端にガクン……と膝をつくナミにルフィは声を掛ける。
「おい!?」
「何でもない平気……。 とりあえず、私のやれることはやったわ。 後は任せる! この戦い絶対に負けるわけにはいかないものね!」
「お前…」
ルフィが感心した瞬間、ナミの瞳がキラーン! と光った。
「宝のために!」
「んん! 結果オーライ! それが、お前だ!」
ルフィはナミが大丈夫そうなので、坂道を見渡した。
手前には海賊達、坂道にはジャンゴとブチがいて、少し離れたところにゾロがいる。
そして、坂の上にはキャプテン・クロが立っていた。
「なんだ……。 わる執事が来てる……。 それにゾロ! なんでお前ここにいるんだ?」
クロはルフィの疑問など関係ないとばかりに “猫の手” を振り上げてカウントする。
「皆殺しまで……あと三分」
告げるクロの後ろに、カヤが現れた。
「クラハドール!! もうやめて!」
「カヤ! お前……何しに……!」
突然のカヤの登場で、ウソップは驚くまえに慌てた。
この戦いの中心人物であるカヤとクロ。
成り行きによっては事態が変わる。
カヤは青ざめた表情を浮かべてはいるが、しっかりとクラハドールだったクロを見た。
「メリーから全部聞いたわ」
「……ほう、あの男……生きてましたか。 ちゃんと殺したつもりでしたが……」
カヤは変わりはてたクラハドールの雰囲気に恐怖を感じた。
傷だらけのウソップを見つめる。
「ごめんなさい……。 ウソップさん…! 謝っても許してもらえないだろうけど……。 クラハドールが海賊なんて信じられなくて……」
「そんなことは、どうでもいいっ! 何でここへ来たんだ。 逃げろって言ったんだ! お前は命を狙われてるんだぞ!」
ウソップはカヤの身を案じて叫ぶと、カヤもまたウソップに叫んだ。
「あなたは戦ってるじゃない! 私達はあんなに酷い仕打ちをしたのに!」
「カヤ……おれは……!」
言い淀むウソップから、カヤは視線をクロに向けた。
「クラハドール! 私の財産が欲しいのなら全部あげる! だから、この村から出て行って!」
「違いますね。 お嬢様……。 私は金はもちろんですが…… “平穏” が欲しいのです。 ここでの三年間で信頼を築きあげてきた……その “平穏” とあなたの “財産” を手に入れて、初めて計画は成功する。 つまり、村に海賊が攻め入る事故と遺書を残し、あなたが死ぬことは絶対なのです」
クロの丁寧だが冷たい声と言葉がカヤの死を願う。
「逃げろカヤ! そいつにゃ、何言っても無駄なんだ! お前の知ってる執事じゃねェんだぞ!」
ウソップが叫ぶが、カヤは勇気を振り絞ってクロにカチャ! と銃口を向けた。
「村から出ていって!」
震える手と声で叫ぶカヤに、クロは屋敷に来てからの三年間を語りはじめた。
「共に苦しみ、共に喜び笑い……夢見るお嬢様に私は尽くし、耐えてきました」
カヤの優しい思い出をクロは容赦なく刃で切り裂いていく。
涙を溜め、唇を噛みしめて、カヤは耐えるが、クロは追い打ちをかけて止めを刺す。
「全ては、貴様を殺す今日の日のためっ!」
「!!」
カヤは力なく銃を落とした。
ウソップは悔しくて腹立たしくて、クロに傷だらけの体で殴りかかった。
「クロォオオおーッ」
ウソップの拳をクロは軽やかに躱すと、殺気を込めて睨む。
殺られる! とウソップが感じた瞬間——ドゴオン! とルフィの拳が坂の下から飛んできて、クロを殴り飛ばした。
「殴られるのがそんなに嫌なら、あと百発ぶち込んでやる!」
地面に倒れたままのクロは無言で明るくなりはじめた空を見つめた。
何年も掛けた計画は多少の支障ぐらい問題ない。
自分が培ってきたこの村での信用は揺らがない。
そう、この場にいる邪魔者達がいなくなればと、起き上がろうした時、たまねぎ達が飛び出した。
「「「今だ! ウソップ海賊団参上っ! 覚悟しろ、この羊やろおーっ!」」」
フライパン、バット、スコップを力一杯に振り上げて、クロに襲い掛かる。
「「「せえばいだ! 村の平和をみだす海賊め! くたばれ、ちくしょう!」」」
「お前ら、どうして……!」
「あなた達、来ちゃだめだって……!」
驚くウソップとカヤをよそに、三人は仰向けで微動だにしないクロを叩きまくる。
気が済むとにんじん、ピーマン、たまねぎはウソップを見た。
「「「水くさいじゃないですか!」」」
「何してんだ!? とにかく離れろ……逃げるんだ!」
ウソップは心配して逃げるように言うが、三人は聞かない。
「「「いやです! キャプテン。 おれ達だって戦います! ウソップ海賊団の名折れです!」」」
クロは無表情で立ち上がると、たまねぎ達と話しているウソップを蹴り飛ばして、ルフィを睨む。
「少々効いた……。 ずいぶん奇っ怪な技を使うもんだ。 貴様 “悪魔の実” の能力者だな…!」
「そうだ “ゴムゴムの実” を食った! ゴム人間だ!」
悪魔の実の能力者が相手ではジャンゴには荷が重過ぎたとクロは判断する。
「ジャンゴ! その小僧はおれが殺る。 お前にはカヤお嬢様を任せる。 計画通り遺書を書かせて殺せ。 ……それとアリを三匹、目障りだ」
「引き受けた」
ジャンゴが頷いて歩きだすと、仰向けに倒れるウソップが大声で命じた。
「ウソップ海賊団っ! カヤを守れ!」
「……ウソップさん…」
呟くカヤはウソップを見つめた。
「最も重要な仕事をお前達に任せる! カヤを連れて、ここを無事に離れろ! 出来ないとは言わせないぞ! これはキャプテン命令だ!」
いつも遊んでいる森はウソップ海賊団にとって庭のようなもので、逃げられる筈だ。
「は…! はいキャプテン!!」
「カヤさん、こっち!」
たまねぎ達はカヤを連れて逃げ出した。
ジャンゴはチャクラムを構えて、くるくる回しながら後を追おうとする。
これ以上、失態したらクロに殺されてしまう。
「バカが……。 おれから、逃げられるわけねェだろ……逃がすか!」
「必殺 “鉛星” っ!」
ドスッ!
ウソップの “鉛星” がジャンゴの背中に命中した。
前のめりに倒れるジャンゴは得意気なウソップを睨む。
「へへへっ! ザマァ見ろ」
「こ! ……こんの野郎めェ!」
思わぬ攻撃にジャンゴは怒りで、攻撃の矛先をウソップに向けた矢先にクロが怒鳴った。
「ジャンゴ! さっさと追わねェか!」
しまった! とジャンゴが焦って森に向かうと、クロは眉間に皺を寄せた。
坂全体を見下ろし、ルフィと目が合い睨み合うが、まだ、指示すべき事がある。
命じないと何もできない奴らともこの計画が成功すればお別れだ。
クロはウソップを一瞥し、まだ催眠状態のブチに命じた。
「ブチ、この死にぞこないを殺れ!」
「シャアアーッ!」
ブチは奇声をあげて、ウソップに向かって飛びあがる。
「まずい! あれかっ!」 とゾロがウソップを抱えて転がった。
直後、ブチの技が襲い掛かる。
「キャット・ザ・フンジャッタ!」
ボコオン! ドゴンッ!
激しく地面が割れて、亀裂が広がり崖が崩れる様をゾロは見た。
「くそっ! さっきと桁違いだ!」
ゾロが呻る間に、ブチの二発目が襲う。
「シャアーッ! キャット——!」
「「ゾロ、ウソップ!」」
ルフィとナミが叫んだ——刹那、フワッと白い風が吹くようにミコトが現れた。
飛び上るブチの一撃を空中で腕を交差させて受け止める。
「「「「ミコト!」」」」
ズドオオン! と直撃した拳。
ミコトはブチによって地面に、そのまま押し付けられるように着地した。
それを聞いたニャーバン・兄弟は怒り、クロに刃向かい牙をむいたが、クロは素早く “猫の手” を着ける。
“猫の手” とは黒い手袋に腕の長さはありそうな爪を五本装着した武器で、相手を切り裂く事が出来る。
クロは “抜き足” で、兄弟の攻撃を躱すと背後に回り、 “猫の手” で、抱え込んで脅した。
「五分やろう。 ……五分で、この場を片付けられねェようなら……てめェら一人残らず、おれの手で殺してやる」
瞬間、殺気に凍りつく海賊達に逃げ道は無かった。
ウソップはクロの本性を目の当たりにして、悔しくて涙を滲ませた。
「畜生ォっ! こんな奴が三年も同じ村に住んでたなんて……!」
ナミはクロの登場の隙に、ジャンゴの背後にまわり、刀に近づいていく。
海賊達はゾロを睨みつけ叫んだ。
「あいつだ! あいつさえ、ブッ殺せば! おれ達は、この坂道を抜けられるんだ!」
ニャーバン兄弟も爪をむき出して構えた。
「そうさ、さっきまで、おれらが押してた相手だ! たいして強かねェ! 五秒で切り裂いてやる!」
「ゾロ!」 とナミが叫ぶと同時に二本の刀をゾロに蹴り飛ばした。
「てめェは……! おれの刀まで足蹴に……!」
文句より言う事あるでしょとナミはゾロを見る。
「……お礼は?」
ゾロは 「あァ…」 と刀を受け取ると口端を微かに上げた。
「ありがとう!」
(助かった…!)
直後、ニャーバン・兄弟が襲い掛かる。
「シャアアアーッ! 無駄だ無駄だ! 刀三本使っても実力は同じだ!」
「わかってねェな “刀三本使う事” と “三刀流” とじゃ、意味が違う」
ゾロは三本目を口に咥えてスウ……と構えた。
眼光鋭く兄弟を見据えると一撃で決める。
「虎…狩り!」
ガシュッ!
ニャーバン兄弟の体は斬られた勢いで、一回転して飛ばされた。
「い…! 一撃っ! あのニャーバン・兄弟を!」
驚く海賊達を背にゾロはスチャ! と一刀をクロに向けた——次はお前の番だと。
クロはゾロを威圧するように薄笑いを浮かべて返す。
「心配すんな……五分も待たなくても、お前らは一人残らず、おれが始末してやる」
「やってみろ」 とクロが見下ろしたのはゾロとブチ。
口から血を吐き出すブチが立ち上がる様子にクロは何も感じないのだろう。
「生きてるぞ、ツメが甘いな……」
出た言葉は部下ではなくゾロへの冷笑だ。
ゾロは眉を寄せて、ブチを振り返る。
(タフな脂肪のおかげで助かったか……)
そして、倒せきれなかったせいで、ブチは叫ぶ。
「ジャンゴ船長、催眠をかけてくれ!」
すかさず、ジャンゴはブチに催眠術をかけた。
「ぬ゛っフーン!」
恐るべき催眠術の力。
ゾロは厄介な事になったと、奇声を上げるブチを睨む。
ナミは復活したブチに目を奪われている間にと、今度はルフィのところに走り出す。
すぐに気付いたジャンゴは余計な事はさせないと、ナミにチャクラムを投げつけた。
走るナミと迫るチャクラム——どちらが早いか。
眠るルフィをナミが思いっきり踏みつけた。
「起きろォ!」
「ぶっ!?」
潰れるルフィの声と同時に、ゾロの知らせる大声。
「ナミ、危ないよけろっ!」
風をきるチャクラムに気づいたナミが叫ぶ。
「きゃあああ!」
避けようとするが間に合わない——と誰もが思った一瞬の出来事。
「よくも顔をフンづけやがっ……!」
ルフィが起きて立ち上がった。
直後に後頭部にチャクラムがグサッ! と刺さる。
衝撃にダンッ! と足で地面を捉えるルフィは踏ん張った。
「………! いっ…てェ~っ!」
ルフィがチャクラムを取って捨てて叫ぶと、海賊達の脳裏にさっきのルフィの暴走が過る。
「あいつが復活したァ~! まずい五分以内なんて……。 ムリだ…!」
前にはキャプテン・クロ、後ろにはルフィという状態に、慌てる海賊達はどうしたらいいんだと頭を抱えた。
ルフィはナミに文句を言う。
「いてェなコノォ!」
「私じゃないわよ!」
答えた途端にガクン……と膝をつくナミにルフィは声を掛ける。
「おい!?」
「何でもない平気……。 とりあえず、私のやれることはやったわ。 後は任せる! この戦い絶対に負けるわけにはいかないものね!」
「お前…」
ルフィが感心した瞬間、ナミの瞳がキラーン! と光った。
「宝のために!」
「んん! 結果オーライ! それが、お前だ!」
ルフィはナミが大丈夫そうなので、坂道を見渡した。
手前には海賊達、坂道にはジャンゴとブチがいて、少し離れたところにゾロがいる。
そして、坂の上にはキャプテン・クロが立っていた。
「なんだ……。 わる執事が来てる……。 それにゾロ! なんでお前ここにいるんだ?」
クロはルフィの疑問など関係ないとばかりに “猫の手” を振り上げてカウントする。
「皆殺しまで……あと三分」
告げるクロの後ろに、カヤが現れた。
「クラハドール!! もうやめて!」
「カヤ! お前……何しに……!」
突然のカヤの登場で、ウソップは驚くまえに慌てた。
この戦いの中心人物であるカヤとクロ。
成り行きによっては事態が変わる。
カヤは青ざめた表情を浮かべてはいるが、しっかりとクラハドールだったクロを見た。
「メリーから全部聞いたわ」
「……ほう、あの男……生きてましたか。 ちゃんと殺したつもりでしたが……」
カヤは変わりはてたクラハドールの雰囲気に恐怖を感じた。
傷だらけのウソップを見つめる。
「ごめんなさい……。 ウソップさん…! 謝っても許してもらえないだろうけど……。 クラハドールが海賊なんて信じられなくて……」
「そんなことは、どうでもいいっ! 何でここへ来たんだ。 逃げろって言ったんだ! お前は命を狙われてるんだぞ!」
ウソップはカヤの身を案じて叫ぶと、カヤもまたウソップに叫んだ。
「あなたは戦ってるじゃない! 私達はあんなに酷い仕打ちをしたのに!」
「カヤ……おれは……!」
言い淀むウソップから、カヤは視線をクロに向けた。
「クラハドール! 私の財産が欲しいのなら全部あげる! だから、この村から出て行って!」
「違いますね。 お嬢様……。 私は金はもちろんですが…… “平穏” が欲しいのです。 ここでの三年間で信頼を築きあげてきた……その “平穏” とあなたの “財産” を手に入れて、初めて計画は成功する。 つまり、村に海賊が攻め入る事故と遺書を残し、あなたが死ぬことは絶対なのです」
クロの丁寧だが冷たい声と言葉がカヤの死を願う。
「逃げろカヤ! そいつにゃ、何言っても無駄なんだ! お前の知ってる執事じゃねェんだぞ!」
ウソップが叫ぶが、カヤは勇気を振り絞ってクロにカチャ! と銃口を向けた。
「村から出ていって!」
震える手と声で叫ぶカヤに、クロは屋敷に来てからの三年間を語りはじめた。
「共に苦しみ、共に喜び笑い……夢見るお嬢様に私は尽くし、耐えてきました」
カヤの優しい思い出をクロは容赦なく刃で切り裂いていく。
涙を溜め、唇を噛みしめて、カヤは耐えるが、クロは追い打ちをかけて止めを刺す。
「全ては、貴様を殺す今日の日のためっ!」
「!!」
カヤは力なく銃を落とした。
ウソップは悔しくて腹立たしくて、クロに傷だらけの体で殴りかかった。
「クロォオオおーッ」
ウソップの拳をクロは軽やかに躱すと、殺気を込めて睨む。
殺られる! とウソップが感じた瞬間——ドゴオン! とルフィの拳が坂の下から飛んできて、クロを殴り飛ばした。
「殴られるのがそんなに嫌なら、あと百発ぶち込んでやる!」
地面に倒れたままのクロは無言で明るくなりはじめた空を見つめた。
何年も掛けた計画は多少の支障ぐらい問題ない。
自分が培ってきたこの村での信用は揺らがない。
そう、この場にいる邪魔者達がいなくなればと、起き上がろうした時、たまねぎ達が飛び出した。
「「「今だ! ウソップ海賊団参上っ! 覚悟しろ、この羊やろおーっ!」」」
フライパン、バット、スコップを力一杯に振り上げて、クロに襲い掛かる。
「「「せえばいだ! 村の平和をみだす海賊め! くたばれ、ちくしょう!」」」
「お前ら、どうして……!」
「あなた達、来ちゃだめだって……!」
驚くウソップとカヤをよそに、三人は仰向けで微動だにしないクロを叩きまくる。
気が済むとにんじん、ピーマン、たまねぎはウソップを見た。
「「「水くさいじゃないですか!」」」
「何してんだ!? とにかく離れろ……逃げるんだ!」
ウソップは心配して逃げるように言うが、三人は聞かない。
「「「いやです! キャプテン。 おれ達だって戦います! ウソップ海賊団の名折れです!」」」
クロは無表情で立ち上がると、たまねぎ達と話しているウソップを蹴り飛ばして、ルフィを睨む。
「少々効いた……。 ずいぶん奇っ怪な技を使うもんだ。 貴様 “悪魔の実” の能力者だな…!」
「そうだ “ゴムゴムの実” を食った! ゴム人間だ!」
悪魔の実の能力者が相手ではジャンゴには荷が重過ぎたとクロは判断する。
「ジャンゴ! その小僧はおれが殺る。 お前にはカヤお嬢様を任せる。 計画通り遺書を書かせて殺せ。 ……それとアリを三匹、目障りだ」
「引き受けた」
ジャンゴが頷いて歩きだすと、仰向けに倒れるウソップが大声で命じた。
「ウソップ海賊団っ! カヤを守れ!」
「……ウソップさん…」
呟くカヤはウソップを見つめた。
「最も重要な仕事をお前達に任せる! カヤを連れて、ここを無事に離れろ! 出来ないとは言わせないぞ! これはキャプテン命令だ!」
いつも遊んでいる森はウソップ海賊団にとって庭のようなもので、逃げられる筈だ。
「は…! はいキャプテン!!」
「カヤさん、こっち!」
たまねぎ達はカヤを連れて逃げ出した。
ジャンゴはチャクラムを構えて、くるくる回しながら後を追おうとする。
これ以上、失態したらクロに殺されてしまう。
「バカが……。 おれから、逃げられるわけねェだろ……逃がすか!」
「必殺 “鉛星” っ!」
ドスッ!
ウソップの “鉛星” がジャンゴの背中に命中した。
前のめりに倒れるジャンゴは得意気なウソップを睨む。
「へへへっ! ザマァ見ろ」
「こ! ……こんの野郎めェ!」
思わぬ攻撃にジャンゴは怒りで、攻撃の矛先をウソップに向けた矢先にクロが怒鳴った。
「ジャンゴ! さっさと追わねェか!」
しまった! とジャンゴが焦って森に向かうと、クロは眉間に皺を寄せた。
坂全体を見下ろし、ルフィと目が合い睨み合うが、まだ、指示すべき事がある。
命じないと何もできない奴らともこの計画が成功すればお別れだ。
クロはウソップを一瞥し、まだ催眠状態のブチに命じた。
「ブチ、この死にぞこないを殺れ!」
「シャアアーッ!」
ブチは奇声をあげて、ウソップに向かって飛びあがる。
「まずい! あれかっ!」 とゾロがウソップを抱えて転がった。
直後、ブチの技が襲い掛かる。
「キャット・ザ・フンジャッタ!」
ボコオン! ドゴンッ!
激しく地面が割れて、亀裂が広がり崖が崩れる様をゾロは見た。
「くそっ! さっきと桁違いだ!」
ゾロが呻る間に、ブチの二発目が襲う。
「シャアーッ! キャット——!」
「「ゾロ、ウソップ!」」
ルフィとナミが叫んだ——刹那、フワッと白い風が吹くようにミコトが現れた。
飛び上るブチの一撃を空中で腕を交差させて受け止める。
「「「「ミコト!」」」」
ズドオオン! と直撃した拳。
ミコトはブチによって地面に、そのまま押し付けられるように着地した。