第六章 シロップ村
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カヤの部屋は一階にあり、窓の近くには丁度良い木があった。
いつも通り、ウソップは木に寄りかかり、窓辺にいるカヤに話を聞かせる。
今日は “巨大金魚” の話だ。
ウソップはどこで盛り上げようかと考えていると、たまねぎ達がルフィ達を連れて来た。
「キャープテーン!」
「げっ! お前ら何しに来たんだ!」
珍客に驚いたウソップは目を丸くした。
「この人が連れて来いって……」
「誰?」
カヤが窓から顔を覗かせた。
「あ! お前がお嬢様か!」
ルフィは笑顔を見せ、ミコトもカヤの姿に微笑した。
(わー! 可愛い、カヤさん。 元気そう!)
透けるような金髪が綺麗な少女はか弱く見えるが、芯が強く優しい。
ウソップが気に留めて励ますのも納得だとミコトは見つめた。
大勢の突然の訪問にカヤは驚いたものの、嫌な顔ひとつせず、どなたなの? とウソップに目で尋ねた。
「あー、こいつらは……おれの噂を聞きつけ遠路はるばるやってきた。 新しいウソップ海賊団の一員だ!」
ウソップは咄嗟にルフィと肩を組んで、嘘の紹介をする。
「ああ。 いや違うぞ。 おれは、お前に頼みがあって来たんだ」
ルフィに速攻で否定されたウソップは (合わせろよ……) と思うが、カヤは気にしてないようだった。
「頼み? 私に?」
カヤが不思議そうに小首を傾げた。
「ああ! おれ達はさ、でっかい船がほしいん……」
ルフィが言い掛けた時、注意する声がした。
「君達、そこで何をしている! 困るね、勝手に屋敷に入って貰っては!」
執事のクラハドールがツカツカと歩きながらやって来た。
「げっ執事!」
ウソップは神経質な執事が苦手で目を逸らた。
「あのね……。 クラハドール、この人達は……」
カヤはウソップ達を庇おうと話しかけるが、執事はピシャリと遮った。
「今は結構! 理由なら後でキッチリ聞かせて頂きます」
黒いスーツに身を包み、掛ける丸い眼鏡はキラリと反射した。
カヤお嬢様を守ると決めている執事のガードは固い。
「さあ君達、帰ってくれたまえ。 それとも何か言いたい事があるかね?」
「あのさ、おれ船が欲しいんだけど……」
「ダメだ!」
ルフィの願いをクラハドールは一言で一蹴した。
がっくりと落ち込むルフィを後にいたゾロとミコトは肩を叩いて慰めた。
クラハドールは馬鹿にしたような目つきで、ルフィ達をやウソップを一瞥する。
「君はウソップ君だね……。 君の噂はよく聞いてるよ。 村で評判だからね」
ぎくっ……! と肩を硬直させるウソップをカヤは心配そうに見守る。
「あ…ああ、ありがとう。 あんたも、おれをキャプテン・ウソップと呼んでくれてもいいぜ。 おれを称えるあまりにな」
クラハドールは俯きながら、手の平の母子球で眼鏡をクイッとあげた。
「門番が君をちょくちょく、この屋敷で見かけると言うのだが、何かようかね?」
ウソップはカヤと話をしに来ているだけだと、クラハドールにも伝説のモグラの話をしようとするが、執事は嘲笑する。
「君は所詮、ウス汚い海賊の息子だ。 何をやろうと驚きはしないが、ウチのお嬢様に近づくのだけは、やめてくれないか!」
ルフィとゾロとナミは海賊の息子と聞いて、驚いてウソップを見た。
「あいつの父ちゃん、海賊なのか」
ルフィが呟いて見つめるウソップは怒りを我慢していた。
「ウス汚いだと…!?」
低い声で聞き返すウソップをクラハドールは言葉通りだと見下ろす。
ミコトはウソップをここぞとばかりに、けなすクラハドールを黙って見ていた。
分かっているからこそ耐えると左親指の指輪を右手で握り締める。
(私が怒っちゃいけない。 ウソップはカヤさんの為に我慢してるんだから……)
クラハドールはわざと声を大きくして、罵声をウソップに浴びせた。
「君とお嬢様とでは住む世界が違う……。 目的は金か? それとも……」
「言いすぎよ、クラハドール! ウソップさんに謝って!」
カヤが叫んで止めるが、クラハドールに止める気はないようだ。
「この、野蛮な男に何に謝るのです? 私は真実をのべているだけです! 君には同情するよ……。 さぞ恨んでいることだろう」
尊大な態度と嫌味がウソップを襲い、嘲笑する口元にミコトは (この人は……) と嫌悪感を感じた。
クラハドールはウソップを怒らせようと、ウソップの父であるヤソップを批判する。
「君ら家族を捨てて、村を飛び出した “財宝狂いのバカ親父” を! どこかで、村を襲ったりしているんだろう? 海賊だからな!」
クラハドールの正体を知るミコトには、白々しい言葉で善人を装い、ウソップやヤソップを非難し中傷することに我慢がならなかった。
ミコトは肩を震わせ、声を上げた。
『黙れ!』
一斉に全員が何事かとミコトを見た。
『ヤソップさんはそんな人じゃない!』
クラハドールを睨みつける目は怒気を露わにしていた。
ルフィとゾロとナミは今までミコトが怒鳴る事なんて見た事なかっただけに驚愕して見開いた。
『だいたい、あなたなんかに海賊であることをとやかく言う資格なんてない! ウソップやヤソップさんの事をけなす事なんて出来ない! あなたの正体――!』
「おい、ミコト!」
ゾロが興奮するミコトの肩を強く抑えて止める。
瞬間、ミコトは自分が今しでかしてしまった事に、ハッとして下を向いて俯いた。
『あっ、私……』
(つい押さえられなくて、どうしよう……)
「ミコト、大丈夫?」
ナミが心配そうに顔を覗くとミコトは落ち込んだ様子で 『うん……』 と頷いた。
ルフィもミコトの様子を心配したが、違う事も気になっていた。
「なあ、ミコト。 ヤソップって……」
ミコトに尋ねた時、クラハドールがわざとらしい溜息を大きくついた。
「……何を熱くなっているんだ。 ああ、本当の事だから怒るのか」
フッ……上がる口元が 「まったく、海賊って奴らは——」 と言いかけると、ウソップが声を荒げた。
「てめェ…それ以上、親父を馬鹿にするな!」
クラハドールは眼鏡を手の平で上げると、やっと食いついたと内心で、ほくそ笑み、更にウソップを追い詰める。
「はっ……。 ……賢くないな、こういう時こそ得意の嘘をつけばいいのにな……ウソップ君」
「………! うるせェ!!」
バキッ!
ウソップはとうとう我慢が出来なくなってクラハドールを殴り倒した。
しかし、殴られたクラハドールは黙らずに、しつこく文句を言う。
「親父が親父なら息子も息子だ!」
ウソップは声を張り上げる。
「おれは、親父が海賊である事を……勇敢な海の戦士である事を誇りに思ってる! お前の言う通り、おれはホラ吹きだがな! おれが海賊の血を引いている……その誇りだけは! 偽るわけにはいかねェんだ! おれは海賊の息子だ!」
ルフィはウソップを見つめてからミコトの言った事と重ねて気付いた。
「ミコトはヤソップって言ってたな。 ……そうか、あいつ!」
クラハドールは服の埃を払いながら立ちあがり、まだウソップに難癖をつける。
「海賊が勇敢な海の戦士か……。 ずいぶんと、勝手な解釈だな。 だが、野蛮な血の証拠が君だ……!」
ミコトが (まだ、言うの!?) と顔を上げた瞬間、ゾロが飛び出しそうなミコトを抑えるように見る。
(止めろっ!)
一瞬ゾロを見たミコトは力一杯に手を握り込み堪えるが、クラハドールは止まらない。
「好き放題にホラを吹いてまわり、頭にくれば……すぐに暴力……! あげくの果ては財産目当てにお嬢様に近づく……! 何か企みがあるという理由など、君の父親が海賊である事で充分だ!」
ウソップは怒りにまかせクラハドールの襟をきつく掴んだ。
「やめてウソップさん! もう、これ以上……暴力は!」
悲痛に叫ぶカヤの止める声に、拳を止めたウソップ。
振り向く顔は悔しさが滲み、カヤは見れなくて顔を覆い隠す。
「悪い人じゃないんです。 ……ただ私の為を思って、過剰になっているだけなの……」
クラハドールは襟元を掴むウソップの手を振り払うと怒鳴った。
「……出て行きたまえ。 ここは君のような野蛮な男の来る所ではない! 二度とこの屋敷へ近づくな!」
「ああ……わかったよ。 言われなくても出てってやる。 もう二度とここへはこねェ!」
ウソップは言い放つと屋敷を後にした。
たまねぎ達はウソップを庇う様にクラハドールに文句を言っている。
その中になぜかルフィも混ざって叫んでいた。
「ばーか!!」
「何でお前も、一緒になってんだ」
ゾロはルフィの子供っぽさに呆れて、ゴン! とルフィを殴って止めるが止まらなかった。
ルフィとたまねぎ達はぎゃあぎゃあ! と庭で騒いでいる。
クラハドールは見兼ねて叫んで、ルフィ達を追い出した。
これで、ウソップは屋敷に近づかないとクラハドールは口元を上げた。
静かになった屋敷に戻る途中、今夜の計画に支障がないかと振り返る。
(それにしても、あの白い女……“おれの正体” とか言っていたな。 おれの計画が漏れているのか……。 いや、ありえない完璧なはずだ)
ミコトはカヤと変わらない普通の少女だった。
仲間に止められて言えなかったあたり、大した事なく、はったりだったのだろう。
本当に正体を知っているなら、言わない理由なんてないからだ。
しかし、とクラハドールは白い姿に嫌な感じがすると眉を寄せた。
屋敷から追い出された五人は、のどかな風が吹く道端で座っていた。
ミコトは屋敷で怒鳴ってしまった自分の行動を振り返り、溜息を漏らす。
(さっき思わず言ってしまった……大丈夫かな。 はあ……やっちゃった。 気をつけなきゃ……)
つい先日もルフィの鳥を止めてしまったりと、やらかしてると反省するミコトだ。
ナミは俯いているミコトをチラッと見てからゾロに話し掛けた。
「ねェ、ルフィはどこ行ったの?」
「さあな……。 キャプテンを追っかけてったんだろ」
「どこに?」
ナミが聞くとにんじんとピーマンが 「海岸に行ったんだ」 と言ってきた。
「あんたはどうすんの?」
ゾロは 「行かない」 と答えるとナミは 「そう」 と頷いた後、子供達が一人欠けていることに気付いた。
聞いてみると二人はまたかという表情を浮かべる。
「ああ、たまねぎ! あいつ、すぐどっかに消えちゃうんだよな」
「うん。 そして……大騒ぎしてあらわれるんだ」
噂をしていると、道の遠くから叫びながら、たまねぎが走ってくる。
「大変だーっ! う! うう後ろ向き男だあ~っ! 変な人が後ろ向きで歩いてくるんだよっ」
「「うそつけ」」
「ほんとだよ! あれ見て!」
たまねぎは自分が走って来た方を指差した。
そこには確かに一人の男がムーンウォークをしながら、近づいて来ている。
ミコトは聞こえた会話に、突如現れたジャンゴを見て、目を見開いた。
(ジャンゴ! あの顎もサングラスも……凄い変!)
帽子にハートのサングラス、顎についている縞々の物体はキノコらしいが、どうして顎にキノコが生えるのか不思議でならない。
五人の前に来たジャンゴは止まると話かけてきた。
「オイ、誰だこのおれを “変な人” と呼ぶのは! おれは変じゃねェ」
「変よ、どう見ても」
ナミは関わりたくないが、ついツッコミを入れてしまう。
「ばかを言え。 おれはただの通りすがりの催眠術師だ」
たまねぎ達は “催眠術師” という聞きなれない職業にわくわくしながら、やってくれとジャンゴにせがんだ。
「バカヤロウ……何で見ず知らずのてめェらに初対面で術を披露しなきゃ、ならねェんだ」
ジャンゴはそう言っているが、やる気満々でチャクラムを取り出した。
「やるのか」
呆れて呟くゾロをよそに、ジャンゴはチャクラムを振り子のように振りはじめる。
たまねぎ達は揺れるチャクラムを凝視した。
「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる。 いいか、いくぞ…ワーン…ツー…ジャンゴ」
——バタン……。 バタン……。 バタン……。 バタン!
そこにはすやすや眠る三人の子供とジャンゴ。
ミコトは気持ちよさそうに眠る四人の顔を何とも言えずに見た。
ゾロは呆れ果ててイラついて怒鳴った。
「おい、こいつ何なんだ!」
「……はあ。 もう、どうでもいいわ」
ナミは付き合ってられないと溜息をついて、ミコトに声を掛けた。
「ミコト、ここに来る途中に本屋さんあったわよね? メモの事調べようと思って、手伝ってくれる?」
『うん。 分かった! 行こっか』
「じゃあ、ゾロ……」 とナミは視線を眠る四人に向けて 「あとはお願いね」 と笑う。
「はあ? これをどうするってんだよ! おい」
「行きましょミコト」
ナミはゾロに面倒事を押し付けると、片手を振ってミコトを連れて去って行った。
困惑するゾロは気持ち良さそうに眠っている四人を見て呟く。
「……おれも、寝よ」
地面に腕を組んで座って目を閉じた。
いつも通り、ウソップは木に寄りかかり、窓辺にいるカヤに話を聞かせる。
今日は “巨大金魚” の話だ。
ウソップはどこで盛り上げようかと考えていると、たまねぎ達がルフィ達を連れて来た。
「キャープテーン!」
「げっ! お前ら何しに来たんだ!」
珍客に驚いたウソップは目を丸くした。
「この人が連れて来いって……」
「誰?」
カヤが窓から顔を覗かせた。
「あ! お前がお嬢様か!」
ルフィは笑顔を見せ、ミコトもカヤの姿に微笑した。
(わー! 可愛い、カヤさん。 元気そう!)
透けるような金髪が綺麗な少女はか弱く見えるが、芯が強く優しい。
ウソップが気に留めて励ますのも納得だとミコトは見つめた。
大勢の突然の訪問にカヤは驚いたものの、嫌な顔ひとつせず、どなたなの? とウソップに目で尋ねた。
「あー、こいつらは……おれの噂を聞きつけ遠路はるばるやってきた。 新しいウソップ海賊団の一員だ!」
ウソップは咄嗟にルフィと肩を組んで、嘘の紹介をする。
「ああ。 いや違うぞ。 おれは、お前に頼みがあって来たんだ」
ルフィに速攻で否定されたウソップは (合わせろよ……) と思うが、カヤは気にしてないようだった。
「頼み? 私に?」
カヤが不思議そうに小首を傾げた。
「ああ! おれ達はさ、でっかい船がほしいん……」
ルフィが言い掛けた時、注意する声がした。
「君達、そこで何をしている! 困るね、勝手に屋敷に入って貰っては!」
執事のクラハドールがツカツカと歩きながらやって来た。
「げっ執事!」
ウソップは神経質な執事が苦手で目を逸らた。
「あのね……。 クラハドール、この人達は……」
カヤはウソップ達を庇おうと話しかけるが、執事はピシャリと遮った。
「今は結構! 理由なら後でキッチリ聞かせて頂きます」
黒いスーツに身を包み、掛ける丸い眼鏡はキラリと反射した。
カヤお嬢様を守ると決めている執事のガードは固い。
「さあ君達、帰ってくれたまえ。 それとも何か言いたい事があるかね?」
「あのさ、おれ船が欲しいんだけど……」
「ダメだ!」
ルフィの願いをクラハドールは一言で一蹴した。
がっくりと落ち込むルフィを後にいたゾロとミコトは肩を叩いて慰めた。
クラハドールは馬鹿にしたような目つきで、ルフィ達をやウソップを一瞥する。
「君はウソップ君だね……。 君の噂はよく聞いてるよ。 村で評判だからね」
ぎくっ……! と肩を硬直させるウソップをカヤは心配そうに見守る。
「あ…ああ、ありがとう。 あんたも、おれをキャプテン・ウソップと呼んでくれてもいいぜ。 おれを称えるあまりにな」
クラハドールは俯きながら、手の平の母子球で眼鏡をクイッとあげた。
「門番が君をちょくちょく、この屋敷で見かけると言うのだが、何かようかね?」
ウソップはカヤと話をしに来ているだけだと、クラハドールにも伝説のモグラの話をしようとするが、執事は嘲笑する。
「君は所詮、ウス汚い海賊の息子だ。 何をやろうと驚きはしないが、ウチのお嬢様に近づくのだけは、やめてくれないか!」
ルフィとゾロとナミは海賊の息子と聞いて、驚いてウソップを見た。
「あいつの父ちゃん、海賊なのか」
ルフィが呟いて見つめるウソップは怒りを我慢していた。
「ウス汚いだと…!?」
低い声で聞き返すウソップをクラハドールは言葉通りだと見下ろす。
ミコトはウソップをここぞとばかりに、けなすクラハドールを黙って見ていた。
分かっているからこそ耐えると左親指の指輪を右手で握り締める。
(私が怒っちゃいけない。 ウソップはカヤさんの為に我慢してるんだから……)
クラハドールはわざと声を大きくして、罵声をウソップに浴びせた。
「君とお嬢様とでは住む世界が違う……。 目的は金か? それとも……」
「言いすぎよ、クラハドール! ウソップさんに謝って!」
カヤが叫んで止めるが、クラハドールに止める気はないようだ。
「この、野蛮な男に何に謝るのです? 私は真実をのべているだけです! 君には同情するよ……。 さぞ恨んでいることだろう」
尊大な態度と嫌味がウソップを襲い、嘲笑する口元にミコトは (この人は……) と嫌悪感を感じた。
クラハドールはウソップを怒らせようと、ウソップの父であるヤソップを批判する。
「君ら家族を捨てて、村を飛び出した “財宝狂いのバカ親父” を! どこかで、村を襲ったりしているんだろう? 海賊だからな!」
クラハドールの正体を知るミコトには、白々しい言葉で善人を装い、ウソップやヤソップを非難し中傷することに我慢がならなかった。
ミコトは肩を震わせ、声を上げた。
『黙れ!』
一斉に全員が何事かとミコトを見た。
『ヤソップさんはそんな人じゃない!』
クラハドールを睨みつける目は怒気を露わにしていた。
ルフィとゾロとナミは今までミコトが怒鳴る事なんて見た事なかっただけに驚愕して見開いた。
『だいたい、あなたなんかに海賊であることをとやかく言う資格なんてない! ウソップやヤソップさんの事をけなす事なんて出来ない! あなたの正体――!』
「おい、ミコト!」
ゾロが興奮するミコトの肩を強く抑えて止める。
瞬間、ミコトは自分が今しでかしてしまった事に、ハッとして下を向いて俯いた。
『あっ、私……』
(つい押さえられなくて、どうしよう……)
「ミコト、大丈夫?」
ナミが心配そうに顔を覗くとミコトは落ち込んだ様子で 『うん……』 と頷いた。
ルフィもミコトの様子を心配したが、違う事も気になっていた。
「なあ、ミコト。 ヤソップって……」
ミコトに尋ねた時、クラハドールがわざとらしい溜息を大きくついた。
「……何を熱くなっているんだ。 ああ、本当の事だから怒るのか」
フッ……上がる口元が 「まったく、海賊って奴らは——」 と言いかけると、ウソップが声を荒げた。
「てめェ…それ以上、親父を馬鹿にするな!」
クラハドールは眼鏡を手の平で上げると、やっと食いついたと内心で、ほくそ笑み、更にウソップを追い詰める。
「はっ……。 ……賢くないな、こういう時こそ得意の嘘をつけばいいのにな……ウソップ君」
「………! うるせェ!!」
バキッ!
ウソップはとうとう我慢が出来なくなってクラハドールを殴り倒した。
しかし、殴られたクラハドールは黙らずに、しつこく文句を言う。
「親父が親父なら息子も息子だ!」
ウソップは声を張り上げる。
「おれは、親父が海賊である事を……勇敢な海の戦士である事を誇りに思ってる! お前の言う通り、おれはホラ吹きだがな! おれが海賊の血を引いている……その誇りだけは! 偽るわけにはいかねェんだ! おれは海賊の息子だ!」
ルフィはウソップを見つめてからミコトの言った事と重ねて気付いた。
「ミコトはヤソップって言ってたな。 ……そうか、あいつ!」
クラハドールは服の埃を払いながら立ちあがり、まだウソップに難癖をつける。
「海賊が勇敢な海の戦士か……。 ずいぶんと、勝手な解釈だな。 だが、野蛮な血の証拠が君だ……!」
ミコトが (まだ、言うの!?) と顔を上げた瞬間、ゾロが飛び出しそうなミコトを抑えるように見る。
(止めろっ!)
一瞬ゾロを見たミコトは力一杯に手を握り込み堪えるが、クラハドールは止まらない。
「好き放題にホラを吹いてまわり、頭にくれば……すぐに暴力……! あげくの果ては財産目当てにお嬢様に近づく……! 何か企みがあるという理由など、君の父親が海賊である事で充分だ!」
ウソップは怒りにまかせクラハドールの襟をきつく掴んだ。
「やめてウソップさん! もう、これ以上……暴力は!」
悲痛に叫ぶカヤの止める声に、拳を止めたウソップ。
振り向く顔は悔しさが滲み、カヤは見れなくて顔を覆い隠す。
「悪い人じゃないんです。 ……ただ私の為を思って、過剰になっているだけなの……」
クラハドールは襟元を掴むウソップの手を振り払うと怒鳴った。
「……出て行きたまえ。 ここは君のような野蛮な男の来る所ではない! 二度とこの屋敷へ近づくな!」
「ああ……わかったよ。 言われなくても出てってやる。 もう二度とここへはこねェ!」
ウソップは言い放つと屋敷を後にした。
たまねぎ達はウソップを庇う様にクラハドールに文句を言っている。
その中になぜかルフィも混ざって叫んでいた。
「ばーか!!」
「何でお前も、一緒になってんだ」
ゾロはルフィの子供っぽさに呆れて、ゴン! とルフィを殴って止めるが止まらなかった。
ルフィとたまねぎ達はぎゃあぎゃあ! と庭で騒いでいる。
クラハドールは見兼ねて叫んで、ルフィ達を追い出した。
これで、ウソップは屋敷に近づかないとクラハドールは口元を上げた。
静かになった屋敷に戻る途中、今夜の計画に支障がないかと振り返る。
(それにしても、あの白い女……“おれの正体” とか言っていたな。 おれの計画が漏れているのか……。 いや、ありえない完璧なはずだ)
ミコトはカヤと変わらない普通の少女だった。
仲間に止められて言えなかったあたり、大した事なく、はったりだったのだろう。
本当に正体を知っているなら、言わない理由なんてないからだ。
しかし、とクラハドールは白い姿に嫌な感じがすると眉を寄せた。
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屋敷から追い出された五人は、のどかな風が吹く道端で座っていた。
ミコトは屋敷で怒鳴ってしまった自分の行動を振り返り、溜息を漏らす。
(さっき思わず言ってしまった……大丈夫かな。 はあ……やっちゃった。 気をつけなきゃ……)
つい先日もルフィの鳥を止めてしまったりと、やらかしてると反省するミコトだ。
ナミは俯いているミコトをチラッと見てからゾロに話し掛けた。
「ねェ、ルフィはどこ行ったの?」
「さあな……。 キャプテンを追っかけてったんだろ」
「どこに?」
ナミが聞くとにんじんとピーマンが 「海岸に行ったんだ」 と言ってきた。
「あんたはどうすんの?」
ゾロは 「行かない」 と答えるとナミは 「そう」 と頷いた後、子供達が一人欠けていることに気付いた。
聞いてみると二人はまたかという表情を浮かべる。
「ああ、たまねぎ! あいつ、すぐどっかに消えちゃうんだよな」
「うん。 そして……大騒ぎしてあらわれるんだ」
噂をしていると、道の遠くから叫びながら、たまねぎが走ってくる。
「大変だーっ! う! うう後ろ向き男だあ~っ! 変な人が後ろ向きで歩いてくるんだよっ」
「「うそつけ」」
「ほんとだよ! あれ見て!」
たまねぎは自分が走って来た方を指差した。
そこには確かに一人の男がムーンウォークをしながら、近づいて来ている。
ミコトは聞こえた会話に、突如現れたジャンゴを見て、目を見開いた。
(ジャンゴ! あの顎もサングラスも……凄い変!)
帽子にハートのサングラス、顎についている縞々の物体はキノコらしいが、どうして顎にキノコが生えるのか不思議でならない。
五人の前に来たジャンゴは止まると話かけてきた。
「オイ、誰だこのおれを “変な人” と呼ぶのは! おれは変じゃねェ」
「変よ、どう見ても」
ナミは関わりたくないが、ついツッコミを入れてしまう。
「ばかを言え。 おれはただの通りすがりの催眠術師だ」
たまねぎ達は “催眠術師” という聞きなれない職業にわくわくしながら、やってくれとジャンゴにせがんだ。
「バカヤロウ……何で見ず知らずのてめェらに初対面で術を披露しなきゃ、ならねェんだ」
ジャンゴはそう言っているが、やる気満々でチャクラムを取り出した。
「やるのか」
呆れて呟くゾロをよそに、ジャンゴはチャクラムを振り子のように振りはじめる。
たまねぎ達は揺れるチャクラムを凝視した。
「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる。 いいか、いくぞ…ワーン…ツー…ジャンゴ」
——バタン……。 バタン……。 バタン……。 バタン!
そこにはすやすや眠る三人の子供とジャンゴ。
ミコトは気持ちよさそうに眠る四人の顔を何とも言えずに見た。
ゾロは呆れ果ててイラついて怒鳴った。
「おい、こいつ何なんだ!」
「……はあ。 もう、どうでもいいわ」
ナミは付き合ってられないと溜息をついて、ミコトに声を掛けた。
「ミコト、ここに来る途中に本屋さんあったわよね? メモの事調べようと思って、手伝ってくれる?」
『うん。 分かった! 行こっか』
「じゃあ、ゾロ……」 とナミは視線を眠る四人に向けて 「あとはお願いね」 と笑う。
「はあ? これをどうするってんだよ! おい」
「行きましょミコト」
ナミはゾロに面倒事を押し付けると、片手を振ってミコトを連れて去って行った。
困惑するゾロは気持ち良さそうに眠っている四人を見て呟く。
「……おれも、寝よ」
地面に腕を組んで座って目を閉じた。