第三章 海軍基地の町
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基地の中ではルフィがヘルメッポの部屋に向かって逃走中。
「撃てるものなら、撃ってみろ!」
ヘルメッポを人質に海兵達を挑発して攻撃を躱して逃げるルフィだ。
振り回されるヘルメッポは生きた心地がしない。
泡を吹いて倒れる寸前になりながら、ルフィに部屋を案内する。
辿り着いたルフィは刀がどこにあるのかヘルメッポを問いただした。
しかし、指さす場所には刀はない。
「おい、バカ息子! ねえェぞ、刀! 聞いてんのか!」
ヘルメッポはルフィにブンブンと揺すられ、とうとう気絶した。
「しょうがねェな……あ、窓が開いてる。 ……どれどれゾロは……って、あ!」
窓から磔場を見るルフィの目には、銃を構えた海兵に囲まれている三人の姿があった。
コビーの話を信じられないゾロは声を荒げた。
「何言ってやがる……! おれはバカ息子と約束を……」
「そんな約束! 初めから守る気なんて、なかったんです。 だから、ルフィさんはあなたにかわって殴ったんだ…! ミコトさんもルフィさんを止めようとしなかった……。 真剣に生き抜こうとしていたあなたを踏みにじったから!」
「……な…何だと!?」
ゾロは正義を背負っている息子が、約束を反故にするなんてと表情を浮かべる。
コビーはゾロの気持ちがよく分かるからこそ、一生懸命に説得する。
「もう、海軍はあなたの敵なんです。 ルフィさんは僕の命の恩人です。 彼の仲間に海賊になれとは言いません。 ただ……あなた達が組めば、この町から逃げることができる筈です」
一息に話すコビーに嘘をつく理由はない。
ゾロは真剣な面持ちで聞いて、口を開こうとした瞬間、 「そこまでだ!」 と止める声に顔を上げた。
「モーガン大佐への反逆につきお前たち三人を今、この場で処刑する!」
ゾロ、ミコト、コビーは銃を構える海兵達を見た。
モーガンが怒鳴って命令している。
「基地を取り囲め! あの麦わらの小僧は絶対に逃がすんじゃねェぞ!」
モーガンは土煙を上げながら歩いてきた。
右肘から下は海賊クロの戦闘で失った斧型の義手。
その腕を自らの肩に乗せて、口端を上げた。
「面白ェ事やってくれるじゃねェか……たった四人でクーデターとは。 ロロノア・ゾロ……お前の評判は聞いてたが、このおれを甘くみるなよ。 貴様の強さなど、おれの権力の前にはカス同然だ……! 構えろ!」
モーガンの命令で海兵達が一斉に銃を構えた。
コビーは涙をためて歯を食いしばる。
(ぼくは……後悔なんてしない)
ゾロは銃を構える海兵を見据えていた。
(おれは……! こんな所で死ぬ訳にはいかねェんだ……! おれには、やらなきゃいけねェ事があるんだ!)
強い思いは過去へと走る。
東の海、シモツキ村。
グランドライン後半の海にあるワノ国に縁がある村には、霜月コウシロウが開く剣術道場 “一心道場” があった。
毎日、竹刀の打ち合う音が響く。
ひと際鋭い音をさせるのは、くいなという少女と幼いゾロだ。
道場の庭で二人は皆が見守る中、今日も勝負していた。
バシッ! と額に打ち込まれ、地面に伏すゾロは 「くっ」 と顔を歪ませた。
——勝者くいな! 二刀流のゾロの敗け!
「これでゾロはくいなに0勝2000敗だぞ」
「あーあ」
生徒達の残念そうな声がゾロを余計に悔しくした。
くいながゾロを見下ろす。
「フンっ! なんて、情けないの? 相変わらず弱いわね……男のくせに!」
額を押さえながら、立ち上がるゾロが言い返す前に、生徒たちが文句を言った。
「おい! ゾロは弱くねェぞ!」
「そうだ! おれ達の道場で一番強ェんだぞ」
「大人も入れて一番だぞ!」
だから何? と竹刀を下ろして、立ち去ろうとするくいなは振り返った。
「あっそ。 でも、私より弱いじゃない。 剣二本使えようが、弱い奴は弱いのよ! 負け犬は黙ってなさい」
言い捨てて去っていくくいなの背中をゾロは 「くそ」 と睨んだ。
「また、敗けちゃったか。 ゾロ、キミは強いのにねェ」
朗らかに笑うのは師範であり、くいなの父の霜月コウシロウ。
途端に 「先生!」 と生徒達から抗議の声が上がる。
「自分の娘だからって、秘密の特訓とかしてんじゃねーのかよ!」
「ずるすんなよ!」
「いやいや、そんな事しないよ!」
否定するコウシロウの言う事は本当だ。
くいなの強さは本人の努力と才能だ。
しかし、くいなは今、高い壁にぶつかっていた。
少女から女性へと成長する体は世界一の剣士を目指すくいなには邪魔でしかない。
この壁はコウシロウが教えてどうこう出来るものではなく、自身で乗り越えなくてはいけない。
そんな焦るくいなの前に現れたのがゾロだ。
「くそォ! なんで、おれがあんな女なんかに勝てねェんだよ!」
バシッ!
地面に二本の竹刀を叩きつけるゾロは純粋に強さを求め、くいなを追い越そうと、下から押し上げる。
ゾロとくいなのライバル関係にコウシロウは微笑する。
「ゾロ、くいなは君より少し年上だし」
「おれは大人にでも勝てたんだ。 おれは将来 海へ出て世界一強い剣豪になるんだ! 今から、あんな奴に敗けてるわけには行かねェんだよ!」
必ず勝ってみせるとゾロはその日を境に更に猛特訓を始めた。
走って、筋肉をつけて、村の端の崖で昼も夜も二刀を構え、人形に打ち込む。
くいなもまた、壁を越えようと外にある打ち込み人形へ、何度も振った。
満月の夜、ゾロはくいなに真剣勝負を挑む。
「くいな! 真剣でおれと勝負だ! 真剣は持ってるんだろう!」
「私と? いいよ」
ゾロの二振りの刀は二年前に、くいなの亡くなった祖父の霜月コウ三郎から、「練習用にでも使え」 と貰ったもので“、 “ナマクラ” らしい。
コウ三郎はワノ国の名工で、くいなの刀もまた霜月コウ三郎が打った “和道一文字” だ。
——静かな月夜の晩。
「行くぞ」
「来い!」
ゾロは二刀を構え、くいなは両手で一刀を構えた。
「うあーっ」
「やーっ」
三本の刀が激しくぶつかり、研ぎ澄まされた鉄の音が響いた。
互角の打ち合いはくいながゾロの刃を弾き飛ばして、終わった。
――ザクッ!
くいなは倒れるゾロに止めを刺す。
顔の左横に和道一文字の刃が光った。
「私の……二千一勝目ね」
勝利を告げるくいなの後にゾロの二振りが地面にドス、ドス……と突き刺さった。
「畜生ォ……! くやしい……!」
涙が出る顔を片手で隠すゾロを見下ろすくいなの顔は勝利者のものではなかった。
くいなは道場の縁側の階段に、和道一文字を抱えて座った。
「本当はさ……悔しいのは私の方……」
「え!?」 とゾロは涙を擦って、立ち上がる。
「女の子はね、大人になったら、男の人より弱くなっちゃうの……。 私も、もうすぐキミ達に追い抜かれちゃうわ……。 ゾロはいつも言ってるよね……世界一の剣豪になるって。 女の子が世界一強くなんて、なれないんだって……パパが言ってた」
「…………」
いつも強気のくいなの姿しかゾロは知らなかった。
「ゾロはいいね、男の子だから……私だって、世界一強くなりたいよ!」
女の自分が夢を叶えるなんて出来るのかと悩むくいなは涙を溜める。
「胸だって膨らんできたしさ、私も男に生まれてくれば……」
男のゾロが羨ましいと語るくいなにゾロは怒鳴った。
「おれに勝っといて、そんな泣き事言うなよ! 卑怯じゃねェかよ! お前はおれの目標なんだぞ!」
「ゾロ……」 と顔を上げるくいなにゾロは続けて声を上げる。
「男だとか、女だとか! おれがいつかお前に勝った時もそう言うのか、実力じゃねェみたいに! 一生懸命、お前に勝つ為に特訓してるおれがバカみてェだろ! そんな事言うな!」
二刀を構えて、ゾロはくいなを鼓舞する。
「約束しろよ! いつか必ず、おれかお前が世界一の剣豪になるんだ! どっちがなれるか競争するんだ!」
「バカヤロー……! 弱いクセにさ」
くいなは涙をぐいっと拭いて笑い、ゾロは分かったら泣くなと手を出す。
「「約束だ」」
手を握り合った。
しかし、“約束” は永遠に果たされなくなった。
次の日、くいなが死んだからだ。
いつも通り道場に来たゾロに友人達は叫んだ。
「ゾロ! 大変だ!」
「くいなが!」
「家の階段で転んで……死んだ!」
信じられないと目を見開くゾロは顔に布を被せられて横たわるくいなを見た。
「畜生ォ! お前、昨日おれと約束したじゃねェかよ!」
大声で叫んでもくいなは起きない。
「逃げんのかよ、くいなァ!」
怒鳴るゾロにコウシロウが声を掛けた。
「人間は……なんて脆いんだろうね。 ……ゾロ」
肩を落としたコウシロウの悲しみに、ゾロは床を見つめた。
幼い頃にゾロは両親を亡くしている。
どんな慰めの言葉も悲しみはなくならない。
だから——前を見るんだと顔を上げた。
「先生、あいつの刀をおれにくれよ」
「…………」
昨夜の二人の約束をコウシロウは聞いていた。
世界一の剣豪になるにはゾロの手にある二振りの “ナマクラ” では力不足だ。
眠るくいなの隣に置いてあった和道一文字を手に取る。
「ああ、いいとも」
受け取るゾロはくいなとコウシロウに誓う。
「おれ、あいつの分も強くなる! 天国におれの名前が届くように世界一の剣豪になるからさ!」
コウシロウは止まらない涙を流すゾロの肩を掴んで微笑んだ。
(世界一になってきなさい……!)
ミコトがこの世界に来て一年経った頃の出来事だった。
「撃てるものなら、撃ってみろ!」
ヘルメッポを人質に海兵達を挑発して攻撃を躱して逃げるルフィだ。
振り回されるヘルメッポは生きた心地がしない。
泡を吹いて倒れる寸前になりながら、ルフィに部屋を案内する。
辿り着いたルフィは刀がどこにあるのかヘルメッポを問いただした。
しかし、指さす場所には刀はない。
「おい、バカ息子! ねえェぞ、刀! 聞いてんのか!」
ヘルメッポはルフィにブンブンと揺すられ、とうとう気絶した。
「しょうがねェな……あ、窓が開いてる。 ……どれどれゾロは……って、あ!」
窓から磔場を見るルフィの目には、銃を構えた海兵に囲まれている三人の姿があった。
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コビーの話を信じられないゾロは声を荒げた。
「何言ってやがる……! おれはバカ息子と約束を……」
「そんな約束! 初めから守る気なんて、なかったんです。 だから、ルフィさんはあなたにかわって殴ったんだ…! ミコトさんもルフィさんを止めようとしなかった……。 真剣に生き抜こうとしていたあなたを踏みにじったから!」
「……な…何だと!?」
ゾロは正義を背負っている息子が、約束を反故にするなんてと表情を浮かべる。
コビーはゾロの気持ちがよく分かるからこそ、一生懸命に説得する。
「もう、海軍はあなたの敵なんです。 ルフィさんは僕の命の恩人です。 彼の仲間に海賊になれとは言いません。 ただ……あなた達が組めば、この町から逃げることができる筈です」
一息に話すコビーに嘘をつく理由はない。
ゾロは真剣な面持ちで聞いて、口を開こうとした瞬間、 「そこまでだ!」 と止める声に顔を上げた。
「モーガン大佐への反逆につきお前たち三人を今、この場で処刑する!」
ゾロ、ミコト、コビーは銃を構える海兵達を見た。
モーガンが怒鳴って命令している。
「基地を取り囲め! あの麦わらの小僧は絶対に逃がすんじゃねェぞ!」
モーガンは土煙を上げながら歩いてきた。
右肘から下は海賊クロの戦闘で失った斧型の義手。
その腕を自らの肩に乗せて、口端を上げた。
「面白ェ事やってくれるじゃねェか……たった四人でクーデターとは。 ロロノア・ゾロ……お前の評判は聞いてたが、このおれを甘くみるなよ。 貴様の強さなど、おれの権力の前にはカス同然だ……! 構えろ!」
モーガンの命令で海兵達が一斉に銃を構えた。
コビーは涙をためて歯を食いしばる。
(ぼくは……後悔なんてしない)
ゾロは銃を構える海兵を見据えていた。
(おれは……! こんな所で死ぬ訳にはいかねェんだ……! おれには、やらなきゃいけねェ事があるんだ!)
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強い思いは過去へと走る。
東の海、シモツキ村。
グランドライン後半の海にあるワノ国に縁がある村には、霜月コウシロウが開く剣術道場 “一心道場” があった。
毎日、竹刀の打ち合う音が響く。
ひと際鋭い音をさせるのは、くいなという少女と幼いゾロだ。
道場の庭で二人は皆が見守る中、今日も勝負していた。
バシッ! と額に打ち込まれ、地面に伏すゾロは 「くっ」 と顔を歪ませた。
——勝者くいな! 二刀流のゾロの敗け!
「これでゾロはくいなに0勝2000敗だぞ」
「あーあ」
生徒達の残念そうな声がゾロを余計に悔しくした。
くいながゾロを見下ろす。
「フンっ! なんて、情けないの? 相変わらず弱いわね……男のくせに!」
額を押さえながら、立ち上がるゾロが言い返す前に、生徒たちが文句を言った。
「おい! ゾロは弱くねェぞ!」
「そうだ! おれ達の道場で一番強ェんだぞ」
「大人も入れて一番だぞ!」
だから何? と竹刀を下ろして、立ち去ろうとするくいなは振り返った。
「あっそ。 でも、私より弱いじゃない。 剣二本使えようが、弱い奴は弱いのよ! 負け犬は黙ってなさい」
言い捨てて去っていくくいなの背中をゾロは 「くそ」 と睨んだ。
「また、敗けちゃったか。 ゾロ、キミは強いのにねェ」
朗らかに笑うのは師範であり、くいなの父の霜月コウシロウ。
途端に 「先生!」 と生徒達から抗議の声が上がる。
「自分の娘だからって、秘密の特訓とかしてんじゃねーのかよ!」
「ずるすんなよ!」
「いやいや、そんな事しないよ!」
否定するコウシロウの言う事は本当だ。
くいなの強さは本人の努力と才能だ。
しかし、くいなは今、高い壁にぶつかっていた。
少女から女性へと成長する体は世界一の剣士を目指すくいなには邪魔でしかない。
この壁はコウシロウが教えてどうこう出来るものではなく、自身で乗り越えなくてはいけない。
そんな焦るくいなの前に現れたのがゾロだ。
「くそォ! なんで、おれがあんな女なんかに勝てねェんだよ!」
バシッ!
地面に二本の竹刀を叩きつけるゾロは純粋に強さを求め、くいなを追い越そうと、下から押し上げる。
ゾロとくいなのライバル関係にコウシロウは微笑する。
「ゾロ、くいなは君より少し年上だし」
「おれは大人にでも勝てたんだ。 おれは将来 海へ出て世界一強い剣豪になるんだ! 今から、あんな奴に敗けてるわけには行かねェんだよ!」
必ず勝ってみせるとゾロはその日を境に更に猛特訓を始めた。
走って、筋肉をつけて、村の端の崖で昼も夜も二刀を構え、人形に打ち込む。
くいなもまた、壁を越えようと外にある打ち込み人形へ、何度も振った。
満月の夜、ゾロはくいなに真剣勝負を挑む。
「くいな! 真剣でおれと勝負だ! 真剣は持ってるんだろう!」
「私と? いいよ」
ゾロの二振りの刀は二年前に、くいなの亡くなった祖父の霜月コウ三郎から、「練習用にでも使え」 と貰ったもので“、 “ナマクラ” らしい。
コウ三郎はワノ国の名工で、くいなの刀もまた霜月コウ三郎が打った “和道一文字” だ。
——静かな月夜の晩。
「行くぞ」
「来い!」
ゾロは二刀を構え、くいなは両手で一刀を構えた。
「うあーっ」
「やーっ」
三本の刀が激しくぶつかり、研ぎ澄まされた鉄の音が響いた。
互角の打ち合いはくいながゾロの刃を弾き飛ばして、終わった。
――ザクッ!
くいなは倒れるゾロに止めを刺す。
顔の左横に和道一文字の刃が光った。
「私の……二千一勝目ね」
勝利を告げるくいなの後にゾロの二振りが地面にドス、ドス……と突き刺さった。
「畜生ォ……! くやしい……!」
涙が出る顔を片手で隠すゾロを見下ろすくいなの顔は勝利者のものではなかった。
くいなは道場の縁側の階段に、和道一文字を抱えて座った。
「本当はさ……悔しいのは私の方……」
「え!?」 とゾロは涙を擦って、立ち上がる。
「女の子はね、大人になったら、男の人より弱くなっちゃうの……。 私も、もうすぐキミ達に追い抜かれちゃうわ……。 ゾロはいつも言ってるよね……世界一の剣豪になるって。 女の子が世界一強くなんて、なれないんだって……パパが言ってた」
「…………」
いつも強気のくいなの姿しかゾロは知らなかった。
「ゾロはいいね、男の子だから……私だって、世界一強くなりたいよ!」
女の自分が夢を叶えるなんて出来るのかと悩むくいなは涙を溜める。
「胸だって膨らんできたしさ、私も男に生まれてくれば……」
男のゾロが羨ましいと語るくいなにゾロは怒鳴った。
「おれに勝っといて、そんな泣き事言うなよ! 卑怯じゃねェかよ! お前はおれの目標なんだぞ!」
「ゾロ……」 と顔を上げるくいなにゾロは続けて声を上げる。
「男だとか、女だとか! おれがいつかお前に勝った時もそう言うのか、実力じゃねェみたいに! 一生懸命、お前に勝つ為に特訓してるおれがバカみてェだろ! そんな事言うな!」
二刀を構えて、ゾロはくいなを鼓舞する。
「約束しろよ! いつか必ず、おれかお前が世界一の剣豪になるんだ! どっちがなれるか競争するんだ!」
「バカヤロー……! 弱いクセにさ」
くいなは涙をぐいっと拭いて笑い、ゾロは分かったら泣くなと手を出す。
「「約束だ」」
手を握り合った。
しかし、“約束” は永遠に果たされなくなった。
次の日、くいなが死んだからだ。
いつも通り道場に来たゾロに友人達は叫んだ。
「ゾロ! 大変だ!」
「くいなが!」
「家の階段で転んで……死んだ!」
信じられないと目を見開くゾロは顔に布を被せられて横たわるくいなを見た。
「畜生ォ! お前、昨日おれと約束したじゃねェかよ!」
大声で叫んでもくいなは起きない。
「逃げんのかよ、くいなァ!」
怒鳴るゾロにコウシロウが声を掛けた。
「人間は……なんて脆いんだろうね。 ……ゾロ」
肩を落としたコウシロウの悲しみに、ゾロは床を見つめた。
幼い頃にゾロは両親を亡くしている。
どんな慰めの言葉も悲しみはなくならない。
だから——前を見るんだと顔を上げた。
「先生、あいつの刀をおれにくれよ」
「…………」
昨夜の二人の約束をコウシロウは聞いていた。
世界一の剣豪になるにはゾロの手にある二振りの “ナマクラ” では力不足だ。
眠るくいなの隣に置いてあった和道一文字を手に取る。
「ああ、いいとも」
受け取るゾロはくいなとコウシロウに誓う。
「おれ、あいつの分も強くなる! 天国におれの名前が届くように世界一の剣豪になるからさ!」
コウシロウは止まらない涙を流すゾロの肩を掴んで微笑んだ。
(世界一になってきなさい……!)
ミコトがこの世界に来て一年経った頃の出来事だった。