第三章 海軍基地の町
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ヘルメッポは嫌な笑いを浮かべながら、リカがゾロの為に作ったおにぎりを取り上げた。
そして、勝手に食べた挙句に、塩と砂糖を間違えたおにぎりを 「甘い!」 と文句を言ってドスドスと足で踏みつける。
リカの優しい気持ちを平気で踏みにじる男がいずれ――とミコトは分かってはいるが、今は許せないと睨んでしまう。
泥まみれになったおにぎりをリカは泣いて見つめていた。
「ひどい……せっかくお兄ちゃんのために作ったのに……」
ゾロは自分の足元で泣くリカに何も出来ない。
ヘルメッポを睨むことしか出来ない自分に苛つき怒りを感じた。
そんなゾロの怒りに、ヘルメッポは気付いているのかいないのか嘲り、更に追い打ちをかける。
リカが違反をして磔場に入った事を理由に、その場で投げ飛ばすように海兵に命令した。
渋々と命令に応じる海兵はリカの小さい体を抱えた。
小声で 「体を丸めるように……」 とリカに耳打ちすると、ルフィ達のいる方向にリカを投げた。
「いやああ!」
恐怖で叫び声をあげるリカの体は軽々と塀を越える。
『ルフィ! 彼女を!』
ミコトが叫ぶと 「オシ!」 とルフィは腕を伸ばし、リカをしっかりと掴んだ。
ドサッ……!
地面と衝撃から庇うようにルフィはリカを抱えて落ちた。
「きみ……大丈夫!? なんて、ひどい奴なんだ…!!」
コビーはリカとルフィを心配して、すぐに駆け寄った。
『ルフィ、ありがとう!』
ミコトが礼を言うが聞こえていないのか、ルフィは壁越しに磔場をジッ……と睨んだ。
その表情は怒っていた。
ルフィは服の土埃を払いながら、煉瓦の壁に腕をビヨンと伸ばし、軽々と飛び越えて磔場に下り立った。
磔場にヘルメッポの姿はすでになく、出て行った後のようだった。
ミコトはゾロの所に歩いて向かうルフィの背中を見つめると、後を追って磔場に飛び下りた。
ルフィの気配にゾロは気付いて顔をあげた。
「なんだ、てめェ……まだ、いたのか。 ボーッとしてると親父にいいつけられるぜ」
「まァね。 おれは今、一緒に海賊になる仲間をさがしているんだ」
「海賊だと? ハン……! 自分から悪党に成り下がろうってのか、ご苦労なこって……」
「おれの意志だ! 海賊になりたくて何が悪い!」
真剣に答えるルフィに、ゾロは口角をあげて笑った。
「――で? まさか縄をほどいてやるから、力を貸せだの言い出すんじゃねェだろうな」
「別にまだ誘うつもりはねェよ。 お前、悪い奴だって評判だからな」
ルフィはゾロを探るように見つめると麦わら帽子に手を置いた。
『ルフィ』
呼ぶ声に 「ミコト」 と振り返るルフィとニコリと笑い歩いてくるミコト。
二人に緊張感はなく、その姿はどこかの公園で待ち合わせでもしてやって来るような感じだ。
しかし、ここは殺伐とした空気に満ちた磔場で、実際にゾロは磔にされていて動けない。
にもかかわらずミコトはのんびりと白い髪を風に揺られながら、ルフィとゾロのところにやって来た。
ゾロは違和感に片眉をあげて後から来たミコトを見た。
「そういえば、女も覗いてたな……」
「ああ、ミコトはおれの仲間だ」
「あの女も海賊なのか?」
「そうだぞ」
ルフィが平然と肯定した事にゾロは驚いたが、平静を装う。
「へぇー」 と言いながら、近づくミコトをもう一度見た。
(この男も海賊に見えないが、この女は、どこをどう見ても海賊とは程遠い……一般人にしか見えェだろ)
ゾロは海賊狩りと呼ばれるだけあり、いろいろな海賊や悪人と渡り合ってきた。
実際、女の海賊は男に比べて少なく、会う事はあまりない。
いたとしても男と渡りあうのだから大抵は気が強く、いかつい女がほとんどだ。
しかし、目の前のミコトは自分より年下にしか見えないうえに、小さくて細い体は戦いとは縁がないとしか考えられない。
『ん?』
ゾロの視線に気付いたのかミコトは何で見られているのか分からず首を傾げた。
その仕草はゾロに小動物を連想させ、ゾロの思考は一瞬止まる。
(海賊? この女が、本当かよ!? 絶対ェ、ありえねェ……)
考えるゾロの内心など分からないミコトはルフィに尋ねた。
『ルフィ、どうするの?』
「ん~、なんもしねェよ。 ……仲間にするか決めてねェし」
『そうだね……』
(やっぱり、まだか……。 ヘルメッポを殴ってないからかな……)
俯くミコトの顔をルフィは不思議そうに覗き込んだ。
「どうした?」
『え?』
ミコトは一瞬、驚いてルフィを見上げた。
『な、何でもないよ』
ミコトは自分の気持ちを誤魔化したが、ルフィはというと別段気にしてないようだ。
「そっか」
ゾロが何かするわけでもないで磔場にいる二人に溜息をつく。
「てめェら、いつまでここにいんだよ。 とにかく、言っとくがどんな条件もおれはうけねェ。 おれには、やりてェ事があるんだ! おめェらに逃がしてもらわなくても、おれは自力で生きのびる! 一か月ここに生きていれば助けてやると、あのバカ息子が約束してくれた」
ルフィは手をポッケットにいれて黙ってゾロの話を聞いている。
ミコトも黙って聞いていたが、少し違う事を考えていた。
(ゾロはいつから約束にこだわるようになったんだろう……。 やっぱり、 “くいな” かな?)
自分の夢をどこまでも追いかけると決めた眼で、ゾロは黙って聞いている二人を見据える。
「なにがなんでも生きのびる。 おれはおれのやりたい事を成し遂げる!」
「……ふーん、そうか。 でも、おれなら一週間で餓死するなァ」
「おれとお前じゃ気力が違うんだ。 仲間さがしは他をあたるんだな」
ゾロは諦めろという思いをこめて言うと、戻ろうとする二人に声を掛けた。
「おい! ちょっと待て」
「ん?」
振り返るルフィに 「それ、とってくれねェか」 とゾロが足元にある泥のおにぎりを見つめた。
ルフィはしゃがむと泥のおにぎりを掴みながら聞いた。
「食うのかよこれ? もう、おにぎりじゃなくて、泥のかたまりだぞ? いくら腹減っててもこりゃあ…」
ルフィの言葉を無視して 「あ……」 とゾロは口を開けながら怒鳴った。
「ガタガタぬかすな、黙って食わせろよ! 落ちてんの全部だ!」
ルフィは仕方ねェなと、ゾロの口に泥おにぎりをいれた。
砂糖と泥のおにぎりを涙をこらえながら、スゴイ音をたてて完食するゾロ。
ミコトはその姿をジッと見つめていた。
(ゾロはやっぱり優しい……)
むせ返し咳き込むゾロにルフィは 「だから言ったろ、死にてェのか?」 と聞いた。
「ゴブッ…あ…あのガキに伝えてくれねェか……!」
「何を?」
不思議そうに見上げるルフィにゾロは俯いて一言呟いた。
「 “うまかった、ごちそうさまでした” ……ってよ」
すると目の前から思いもよらない言葉がとんできた。
『ありがとう!』
ミコトは嬉しそうに笑った。
「はっ!?」
ゾロは何を言ってるんだ? と訝し気に見れば、ミコトは薄茶色の眼を輝かせていた。
『おにぎりを食べてくれて、彼女の気持ちを受っとってくれて……ありが――』
「うるせェ! てめェら、さっさとどっか行け!」
ゾロは照れからくる動揺を隠すように、ミコトの言葉を遮って怒鳴った。
ルフィはその姿を見て 「ははははは!」 と楽しそうに笑う。
その隣でミコトは 『彼女に伝えるね』 とゾロに微笑んだ。
顔を背けることしか出来ないゾロは 「いいから、どっか行け! もう来んな!」 と叫んだ。
ルフィとミコトは町の路地で、コビーとリカにおにぎりの話をした。
リカは 「うれしいっ!」 と手を叩いて喜んだ。
そして、ルフィはゾロが捕まった理由をリカに尋ねた。
「モーガン大佐の息子が飼っている狼が野放しで町を歩き回ってて、私が危ないところを……お兄ちゃんが助けてくれて、斬っちゃったからなの。 お兄ちゃんは何も悪い事をしていないのに……」
「じゃあ、バカ息子の狼を斬ったてだけのことか」
「うん」
リカは小さくコクリと頷いた。
「そうか……! それもそうですよね。 彼の気性の恐ろしさはさておき、賞金首を狙う事が罪になるわけありませんからね」
樽の上に座るコビーは眼鏡に触れながら納得したように頷いた。
リカは膝を抱えると 「悪いのはモーガン親子よ!」 と叫んだ。
「少しでも逆らうと……すぐ死刑。 みんな、びくびくしてるの」
リカの隣にミコトは腰を下ろすと 『リカちゃん……』 と呟いて優しくリカの髪を撫でた。
(そんな生活……嫌だよね)
その時、表通りからヘルメッポの下品な笑い声が聞こえた。
町の人達はササッと通りの脇に移動して、地面に座り、頭を下げていた。
そして、ヘルメッポが通り過ぎるのをひたすら待っているという異様な光景。
「ひえっひえっ! ロロノア・ゾロみてェに磔になりてぇか!? 三日後にはゾロの奴を公開処刑にする! みせしめだ楽しみに待ってろ!」
ルフィは “三日後” の言葉を聞いて、通りに出るとヘルメッポの前に立ちはだかった。
「おい」
町の人達はルフィを見て、何が起きるのかとざわつく。
「一か月の約束はどうしたんだ!」
真剣な顔で怒鳴って聞いてくるルフィをヘルメッポは笑い飛ばした。
「なにィ? 誰だ貴様、そんな約束、ギャグに決まってんだろっ! それを本気にする奴も魔獣的にバカだけどな。 ひえっひえっ~」
ドカッ!
笑い続けるヘルメッポをルフィは思い切り殴った。
瞬間、麦わら帽子が殴った勢いで空に飛ぶ。
鼻血を出しながら倒れるヘルメッポは突然過ぎて声が出ない
町は人々の悲鳴と驚きの声があがり、同時に起き上がれないヘルメッポに急いで駆けつける海兵達と騒がしい。
ルフィの拳を咄嗟に飛びついて止めるコビーの頭上では、麦わら帽子がふわりと風に揺れて地面に落ちた。
「ルフィさん、やめて下さい、落ち着いて! ミコトさんも止めて下さい!」
『どうして?』
「どうしてって、海軍を敵に回す気ですか!」
ルフィとミコトにコビーは大きな声をあげて止める。
「こいつクズだ」
地面にへたり込むヘルメッポに、ルフィは言い捨てた後、ミコトに振り返る。
「決めたぞ、ミコト! ……おれはゾロを仲間に引き込む!」
ミコトは待ってましたとニコリと笑った。
『そうこなくっちゃなね!』
楽しそうに答えながらルフィの麦わら帽子を拾った。
ヘルメッポがルフィに向かって怒鳴り散らした。
「おれは海軍大佐モーガンの御曹司だぞ! おッ親父に言いつけてやる!」
町の人達はその言葉にビクッと体を硬直させたが、ルフィにそんな脅しは通用しない。
ヘルメッポに対して怒鳴り返す。
「お前がかかって来いよ」
「ルフィさん、やめて下さい!」
コビーが体を張って必死になってルフィを止める。
その間にヘルメッポは二人の海兵に支えらて立ちあがる。
「お前は死刑だ! 親父に殺されちまえ!」
ルフィに殴られて腫れる頬を押さえながら叫んで逃げ去って行った。
麦わら帽子をミコトから受け取りながらルフィは呟いた。
「あんな奴、これ以上殴る価値もねェ」
パサ……と帽子をかぶり、鍔に隠れる目で前を見ていた。
ヘルメッポが居なくなった通りは騒然としていたが、人々はルフィ達に関わりたくないと、急いで家に戻っていく。
次々に家の扉が閉まるなか、リカだけはルフィ達と通りに残っていた。
ルフィに話しかけようとした時、心配する母親が止めに入り連れて行った。
リカが後ろ髪を引かれる思いで振り返ると、ルフィとミコトは気にせずリカに手を振って見送った。
静まりかえり人気のなくなった通りには、ルフィとミコトとコビーの三人。
見据える先は通りの向こうに見える海軍基地だ。
「ミコト、ゾロのとこに行くぞ」
『うん』
ミコトは頷くとルフィの横を歩いていく。
町に残されたコビーは信じていた正義と程遠い海軍の姿に困惑していた。
(これが……海軍。 僕があこがれ続けていた……こんな、こんな)
夢を裏切られた気持ちを抱え、小さくなっていく二人の背中を見つめた。
そして、勝手に食べた挙句に、塩と砂糖を間違えたおにぎりを 「甘い!」 と文句を言ってドスドスと足で踏みつける。
リカの優しい気持ちを平気で踏みにじる男がいずれ――とミコトは分かってはいるが、今は許せないと睨んでしまう。
泥まみれになったおにぎりをリカは泣いて見つめていた。
「ひどい……せっかくお兄ちゃんのために作ったのに……」
ゾロは自分の足元で泣くリカに何も出来ない。
ヘルメッポを睨むことしか出来ない自分に苛つき怒りを感じた。
そんなゾロの怒りに、ヘルメッポは気付いているのかいないのか嘲り、更に追い打ちをかける。
リカが違反をして磔場に入った事を理由に、その場で投げ飛ばすように海兵に命令した。
渋々と命令に応じる海兵はリカの小さい体を抱えた。
小声で 「体を丸めるように……」 とリカに耳打ちすると、ルフィ達のいる方向にリカを投げた。
「いやああ!」
恐怖で叫び声をあげるリカの体は軽々と塀を越える。
『ルフィ! 彼女を!』
ミコトが叫ぶと 「オシ!」 とルフィは腕を伸ばし、リカをしっかりと掴んだ。
ドサッ……!
地面と衝撃から庇うようにルフィはリカを抱えて落ちた。
「きみ……大丈夫!? なんて、ひどい奴なんだ…!!」
コビーはリカとルフィを心配して、すぐに駆け寄った。
『ルフィ、ありがとう!』
ミコトが礼を言うが聞こえていないのか、ルフィは壁越しに磔場をジッ……と睨んだ。
その表情は怒っていた。
ルフィは服の土埃を払いながら、煉瓦の壁に腕をビヨンと伸ばし、軽々と飛び越えて磔場に下り立った。
磔場にヘルメッポの姿はすでになく、出て行った後のようだった。
ミコトはゾロの所に歩いて向かうルフィの背中を見つめると、後を追って磔場に飛び下りた。
ルフィの気配にゾロは気付いて顔をあげた。
「なんだ、てめェ……まだ、いたのか。 ボーッとしてると親父にいいつけられるぜ」
「まァね。 おれは今、一緒に海賊になる仲間をさがしているんだ」
「海賊だと? ハン……! 自分から悪党に成り下がろうってのか、ご苦労なこって……」
「おれの意志だ! 海賊になりたくて何が悪い!」
真剣に答えるルフィに、ゾロは口角をあげて笑った。
「――で? まさか縄をほどいてやるから、力を貸せだの言い出すんじゃねェだろうな」
「別にまだ誘うつもりはねェよ。 お前、悪い奴だって評判だからな」
ルフィはゾロを探るように見つめると麦わら帽子に手を置いた。
『ルフィ』
呼ぶ声に 「ミコト」 と振り返るルフィとニコリと笑い歩いてくるミコト。
二人に緊張感はなく、その姿はどこかの公園で待ち合わせでもしてやって来るような感じだ。
しかし、ここは殺伐とした空気に満ちた磔場で、実際にゾロは磔にされていて動けない。
にもかかわらずミコトはのんびりと白い髪を風に揺られながら、ルフィとゾロのところにやって来た。
ゾロは違和感に片眉をあげて後から来たミコトを見た。
「そういえば、女も覗いてたな……」
「ああ、ミコトはおれの仲間だ」
「あの女も海賊なのか?」
「そうだぞ」
ルフィが平然と肯定した事にゾロは驚いたが、平静を装う。
「へぇー」 と言いながら、近づくミコトをもう一度見た。
(この男も海賊に見えないが、この女は、どこをどう見ても海賊とは程遠い……一般人にしか見えェだろ)
ゾロは海賊狩りと呼ばれるだけあり、いろいろな海賊や悪人と渡り合ってきた。
実際、女の海賊は男に比べて少なく、会う事はあまりない。
いたとしても男と渡りあうのだから大抵は気が強く、いかつい女がほとんどだ。
しかし、目の前のミコトは自分より年下にしか見えないうえに、小さくて細い体は戦いとは縁がないとしか考えられない。
『ん?』
ゾロの視線に気付いたのかミコトは何で見られているのか分からず首を傾げた。
その仕草はゾロに小動物を連想させ、ゾロの思考は一瞬止まる。
(海賊? この女が、本当かよ!? 絶対ェ、ありえねェ……)
考えるゾロの内心など分からないミコトはルフィに尋ねた。
『ルフィ、どうするの?』
「ん~、なんもしねェよ。 ……仲間にするか決めてねェし」
『そうだね……』
(やっぱり、まだか……。 ヘルメッポを殴ってないからかな……)
俯くミコトの顔をルフィは不思議そうに覗き込んだ。
「どうした?」
『え?』
ミコトは一瞬、驚いてルフィを見上げた。
『な、何でもないよ』
ミコトは自分の気持ちを誤魔化したが、ルフィはというと別段気にしてないようだ。
「そっか」
ゾロが何かするわけでもないで磔場にいる二人に溜息をつく。
「てめェら、いつまでここにいんだよ。 とにかく、言っとくがどんな条件もおれはうけねェ。 おれには、やりてェ事があるんだ! おめェらに逃がしてもらわなくても、おれは自力で生きのびる! 一か月ここに生きていれば助けてやると、あのバカ息子が約束してくれた」
ルフィは手をポッケットにいれて黙ってゾロの話を聞いている。
ミコトも黙って聞いていたが、少し違う事を考えていた。
(ゾロはいつから約束にこだわるようになったんだろう……。 やっぱり、 “くいな” かな?)
自分の夢をどこまでも追いかけると決めた眼で、ゾロは黙って聞いている二人を見据える。
「なにがなんでも生きのびる。 おれはおれのやりたい事を成し遂げる!」
「……ふーん、そうか。 でも、おれなら一週間で餓死するなァ」
「おれとお前じゃ気力が違うんだ。 仲間さがしは他をあたるんだな」
ゾロは諦めろという思いをこめて言うと、戻ろうとする二人に声を掛けた。
「おい! ちょっと待て」
「ん?」
振り返るルフィに 「それ、とってくれねェか」 とゾロが足元にある泥のおにぎりを見つめた。
ルフィはしゃがむと泥のおにぎりを掴みながら聞いた。
「食うのかよこれ? もう、おにぎりじゃなくて、泥のかたまりだぞ? いくら腹減っててもこりゃあ…」
ルフィの言葉を無視して 「あ……」 とゾロは口を開けながら怒鳴った。
「ガタガタぬかすな、黙って食わせろよ! 落ちてんの全部だ!」
ルフィは仕方ねェなと、ゾロの口に泥おにぎりをいれた。
砂糖と泥のおにぎりを涙をこらえながら、スゴイ音をたてて完食するゾロ。
ミコトはその姿をジッと見つめていた。
(ゾロはやっぱり優しい……)
むせ返し咳き込むゾロにルフィは 「だから言ったろ、死にてェのか?」 と聞いた。
「ゴブッ…あ…あのガキに伝えてくれねェか……!」
「何を?」
不思議そうに見上げるルフィにゾロは俯いて一言呟いた。
「 “うまかった、ごちそうさまでした” ……ってよ」
すると目の前から思いもよらない言葉がとんできた。
『ありがとう!』
ミコトは嬉しそうに笑った。
「はっ!?」
ゾロは何を言ってるんだ? と訝し気に見れば、ミコトは薄茶色の眼を輝かせていた。
『おにぎりを食べてくれて、彼女の気持ちを受っとってくれて……ありが――』
「うるせェ! てめェら、さっさとどっか行け!」
ゾロは照れからくる動揺を隠すように、ミコトの言葉を遮って怒鳴った。
ルフィはその姿を見て 「ははははは!」 と楽しそうに笑う。
その隣でミコトは 『彼女に伝えるね』 とゾロに微笑んだ。
顔を背けることしか出来ないゾロは 「いいから、どっか行け! もう来んな!」 と叫んだ。
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ルフィとミコトは町の路地で、コビーとリカにおにぎりの話をした。
リカは 「うれしいっ!」 と手を叩いて喜んだ。
そして、ルフィはゾロが捕まった理由をリカに尋ねた。
「モーガン大佐の息子が飼っている狼が野放しで町を歩き回ってて、私が危ないところを……お兄ちゃんが助けてくれて、斬っちゃったからなの。 お兄ちゃんは何も悪い事をしていないのに……」
「じゃあ、バカ息子の狼を斬ったてだけのことか」
「うん」
リカは小さくコクリと頷いた。
「そうか……! それもそうですよね。 彼の気性の恐ろしさはさておき、賞金首を狙う事が罪になるわけありませんからね」
樽の上に座るコビーは眼鏡に触れながら納得したように頷いた。
リカは膝を抱えると 「悪いのはモーガン親子よ!」 と叫んだ。
「少しでも逆らうと……すぐ死刑。 みんな、びくびくしてるの」
リカの隣にミコトは腰を下ろすと 『リカちゃん……』 と呟いて優しくリカの髪を撫でた。
(そんな生活……嫌だよね)
その時、表通りからヘルメッポの下品な笑い声が聞こえた。
町の人達はササッと通りの脇に移動して、地面に座り、頭を下げていた。
そして、ヘルメッポが通り過ぎるのをひたすら待っているという異様な光景。
「ひえっひえっ! ロロノア・ゾロみてェに磔になりてぇか!? 三日後にはゾロの奴を公開処刑にする! みせしめだ楽しみに待ってろ!」
ルフィは “三日後” の言葉を聞いて、通りに出るとヘルメッポの前に立ちはだかった。
「おい」
町の人達はルフィを見て、何が起きるのかとざわつく。
「一か月の約束はどうしたんだ!」
真剣な顔で怒鳴って聞いてくるルフィをヘルメッポは笑い飛ばした。
「なにィ? 誰だ貴様、そんな約束、ギャグに決まってんだろっ! それを本気にする奴も魔獣的にバカだけどな。 ひえっひえっ~」
ドカッ!
笑い続けるヘルメッポをルフィは思い切り殴った。
瞬間、麦わら帽子が殴った勢いで空に飛ぶ。
鼻血を出しながら倒れるヘルメッポは突然過ぎて声が出ない
町は人々の悲鳴と驚きの声があがり、同時に起き上がれないヘルメッポに急いで駆けつける海兵達と騒がしい。
ルフィの拳を咄嗟に飛びついて止めるコビーの頭上では、麦わら帽子がふわりと風に揺れて地面に落ちた。
「ルフィさん、やめて下さい、落ち着いて! ミコトさんも止めて下さい!」
『どうして?』
「どうしてって、海軍を敵に回す気ですか!」
ルフィとミコトにコビーは大きな声をあげて止める。
「こいつクズだ」
地面にへたり込むヘルメッポに、ルフィは言い捨てた後、ミコトに振り返る。
「決めたぞ、ミコト! ……おれはゾロを仲間に引き込む!」
ミコトは待ってましたとニコリと笑った。
『そうこなくっちゃなね!』
楽しそうに答えながらルフィの麦わら帽子を拾った。
ヘルメッポがルフィに向かって怒鳴り散らした。
「おれは海軍大佐モーガンの御曹司だぞ! おッ親父に言いつけてやる!」
町の人達はその言葉にビクッと体を硬直させたが、ルフィにそんな脅しは通用しない。
ヘルメッポに対して怒鳴り返す。
「お前がかかって来いよ」
「ルフィさん、やめて下さい!」
コビーが体を張って必死になってルフィを止める。
その間にヘルメッポは二人の海兵に支えらて立ちあがる。
「お前は死刑だ! 親父に殺されちまえ!」
ルフィに殴られて腫れる頬を押さえながら叫んで逃げ去って行った。
麦わら帽子をミコトから受け取りながらルフィは呟いた。
「あんな奴、これ以上殴る価値もねェ」
パサ……と帽子をかぶり、鍔に隠れる目で前を見ていた。
ヘルメッポが居なくなった通りは騒然としていたが、人々はルフィ達に関わりたくないと、急いで家に戻っていく。
次々に家の扉が閉まるなか、リカだけはルフィ達と通りに残っていた。
ルフィに話しかけようとした時、心配する母親が止めに入り連れて行った。
リカが後ろ髪を引かれる思いで振り返ると、ルフィとミコトは気にせずリカに手を振って見送った。
静まりかえり人気のなくなった通りには、ルフィとミコトとコビーの三人。
見据える先は通りの向こうに見える海軍基地だ。
「ミコト、ゾロのとこに行くぞ」
『うん』
ミコトは頷くとルフィの横を歩いていく。
町に残されたコビーは信じていた正義と程遠い海軍の姿に困惑していた。
(これが……海軍。 僕があこがれ続けていた……こんな、こんな)
夢を裏切られた気持ちを抱え、小さくなっていく二人の背中を見つめた。