第二章 大渦へ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
酒樽が海岸に着いた時、ルフィは波に揺られていないことに気付いて起きていた。
大渦から無事なことは理解したものの、これからどうしようかと考え始めていた矢先、ゴロゴロと転がされ、目が回りそうだった。
「な、なんだ、なんだ!?」
抜け出そうと、樽の中で腕を動かし、やっとのとこで蓋を手で押すが出れない。
「ミコト……がっちり閉めすぎじゃねェのか?」
一言漏らし、本当にどうにかならないのかと動かせない首を捻ったところで、樽が立てられたようだった。
そして、外が騒がしいことに耳をすませた。
すると蓋がギシギシと音を立てながら開き始める。
「やったぞ! 誰だか分かんねェけど、早く開けてくれ……!」
ルフィは手足を伸ばす準備をする。
光がサーッと差し込むと、後は自分で開けられると、思いっきり体を突っ張り伸ばした。
叫んで樽の周囲を 「ん?」 と見回すルフィの目の前には、驚いて口を開けるコビーと睨む海賊達。
「だれだ、お前ら」
「「「てめェが誰だ!」」」
海賊達の揃ったツッコミの直後、飛んでき来たのはアルビダの金棒と怒鳴り声。
「さぼってんじゃないよ!」
ドゴォン!
酒蔵が大破した勢いにルフィは樽ごと飛ばされ、森を転がっていった。
ドスドスと歩くアルビダは青ざめた顔をするヘッポコ達を睨む。
「このアタシにたてつこうってのかい?」
「え!? と、とんでもない……何の事だか!」
ペッポコは知らないとブンブンと首を振った。
「船まで聞こえる大声で、 “よく寝た” って叫びやがったのはどいつだい!?」
アルビダに聞かれたポッポコはそっちかと、 「は!」 と思いつく。
「お頭っ! 侵入者です!」
「そう!」 と頷くのはヘッポコでルフィと、ここにいないコビーのせいにする。
「コビーの奴が変なヤツを連れて来やがって……!」
「何……? まさかアタシの首を狙った賞金稼ぎじゃないだろうねェ……? コビーめ! あのガキ、裏切りやがったね!」
金棒を握り込むアルビダにペッポコが髪を掻きながら話す。
「しかし、この辺りで名を聞く賞金稼ぎといやあ」
「バカな! あの男は今、海軍に捕まってると聞いたぞ!」
名前を言うのも聞くのも恐ろしいとヘッポコが否定すると、アルビダが真っ赤な唇を上げた。
「本物なら逃げだすくらいわけないさ。 あの悪名高いロロノア・ゾロならね!」
アルビダ達の話をコビーは草むらに隠れて聞いていた。
怖くて震える手と足を抑えて、森の中へと行った。
(あの人は大丈夫かな……)
鳥の声がする森で、ルフィが入った樽が転がっていた。
「ここどこだ?」
見回していると、コビーが歩いて来た。
「あの……大丈夫ですか? 怪我は? ずいぶん吹き飛ばされちゃいましたけど」
「はははは! ああ、大丈夫。 なんか、びっくりしたけどな。 おれはルフィ、ここはどこだ?」
「ここは――」 とコビーが現在地と自己紹介をしている間に、ルフィは樽から抜け出た。
「ふーん、そうか。 実はどうでもいいんだけどな、そんなこと」
ルフィの人の話を聞かない様子に、コビーは怒るよりも諦めたように 「はあ……」 と応じる。
長い間海賊の下で雑用していて、反抗しない事が身についてしまっている。
「小船とかねェかな。 おれのやつは渦巻にのまれちゃって」
「渦巻に遭ったんですか!?」
(まさか、あの大渦!?)
驚くコビーにルフィは腕を組んで溜息をついた。
「あー、あれはびっくりしたよ。 仲間ともはぐれてよー」
「え、それは……」
コビーは何て声を掛けていいのか分からない。
大渦に巻き込まれたなら、もう命は――と気の毒で顔を俯かせていると、ルフィは 「ミコトは生きてるぞ」 と言う。
「……いや、でも」
「ミコトは無事だ! 大丈夫って言ってたしな」
自信満々のルフィにコビーはつい口から本音が零れてしまう。
「ふつう、死ぬんですけどね……」
「おれは生きてるぞ」
話が微妙に噛み合ってない事にコビーは話題を変える。
「ま、まあ、そうみたいですね。 それで、小船ですが――」
「持ってんのか!?」
喜ぶルフィに、コビーは 「ない事もないですが……」 と森の奥に案内した。
しばらく行くと、辿り着いた場所には一目で手作りと分かる小船とオールがあった。
「なんだこりゃ、棺桶か?」
ルフィがそう聞いても仕方ないくらい壊れそうでボロボロだ。
これでミコトを探しに行けるかと 「うーん」 と見ていると、コビーが弱々しく笑い、少しずつ材料や道具を集めて作った小船に触れる。
「一応、ぼくが造った船です。 二年掛かってコツコツ……」
「二年かけて? で……いらねェのか?」
尋ねるルフィにコビーは首を横に振った。
「はい……いりません。 この船はここから逃げ出したくて、造ったんですが……結局、ぼくにはそんな勇気ないし、どうせ一生雑用の運命なんです。 一応……本当はやりたい事もあるんですけど」
「じゃ、逃げればいいじゃねェか、これで」
「ムリ、ムリです!」
ブンブンと激しく首を振って否定するコビー。
「もし、アルビダ様に見つかったらって考えると、足がすくんで……!」
怖くてとてもじゃないが無理が過ぎる。
コビーは初めてアルビダに会った恐ろしい日を思い出して声が震えた。
「ぼくはただ、釣りに行こうとしただけなのに、間違って乗り込んでしまったのが、なんと海賊船! あれから二年。 殺さないかわりに航海士兼雑用係として働けと……!」
「お前、ドジでバカだなーっ。 そのうえ、根性なさそうだしなー。 おれ、お前、キライだなー」
笑ってダメ出しするルフィに、コビーは (そんなハッキリ……) とガクリと肩を落とす。
「え…へへへへ……! でも、その通りです……。 ぼくにも樽で海を漂流するくらいの度胸があれば……」
情けないやら悲しいやらで笑うコビーをルフィはジッと見ながら、小船の縁に腰かける。
「…………」
「あの……ルフィさんはそこまでして、海に出て何をするんですか?」
「おれはさ、海賊王になるんだ!」
ルフィはにぃっとコビーに夢を言って笑う。
「え……! か、海賊王ってゆうのは、この世の全てを手に入れた者の称号ですよ! つまり富と名声と力の “ひとつなぎの大秘宝” ……あの “ワンピース” を目指すって事です!?」
信じられないと叫ぶコビーは笑っているルフィが心配になった。
「死にますよ!? 世界中の海賊がその宝を狙ってるんです!?」
「おれも狙う」
当然という態度のルフィに、コビーは頭がおかしいとムリムリと頭を振った。
「無理に決まってますよ! 海賊王なんて、この大航海時代の頂点に立つなんて、出来るわけないですよ! ムリムリっ!」
ムリムリ大王となったコビーの額をルフィはガツーン! と殴って転がした。
「痛いっ! どうして殴るんですか!」
「なんとなくだ!」
言い切るルフィにコビーは文句を言い返さないで立ち上がる。
「でも、いいや……慣れてるから。 えへへへ……」
自虐めいて笑うコビーからルフィは視線を外して、被る麦わら帽子を掴む。
七歳の時に仲間を集めて、海賊王になると言って、シャンクスから預かった大切な帽子だ。
「おれは死んでもいい」
「え?」
「おれがなるって決めたんだから、その為に戦って、死ぬんなら、別にいい」
ルフィの覚悟の強さにコビーはハッ! として目を見開いて呟いた。
「……死んでもいい!?」
「それに、おれはやれそうな気がするんだけどなー。 もう、仲間は一人いんだけどなー。 やっぱ、難しいのかなー」
帽子を被り直すルフィをコビーは見つめた。
アルビダに殺されるかもしれないと思っていたけど、死んでもいいなんて考えた事なかった。
ずっと自分の不幸に甘えてたのかもしれない。
「ぼくにもやれるでしょうか……! し、死ぬ気なら……」
コビーの目から涙が勝手に出てきて、声が震える。
「ん? 何が?」 と振り返るルフィにコビーは問いかける。
「ぼくでも海軍に入れるでしょうか……!」
「海軍?」
「ルフィさんとは敵ですけど! 海軍に入って、偉くなって、悪い奴を取り締まるのが、ぼくの夢なんです! 小さい頃からの! やれるでしょうか!?」
「そんなの知らねェよ!」
素っ気ないルフィの答えだが、コビーは気にならなかった。
(自分が決めたんならいいんだ!)
「やりますよ!」
目を輝かせるコビーはルフィが目に入っていないのか、両手を握り込み足に力を入れる。
「どうせ、このまま雑用で一生を終えるくらいなら! 海軍に入る為、命を懸けて、ここから逃げ出すんです! そして、アルビダ様……アルビダだって、捕まえてやるんです!」
叫んだ瞬間、怒号と金棒がコビーを襲う。
「誰を捕まえるって!? コビー!」
「うわあ!」
寸でのところで避けたが、小船は突如現れたアルビダの金棒でドカン! と木っ端微塵にされた。
「ぼくの船……」
「このアタシから逃げられると思ってんのかい!?」
アルビダの恐ろしさに、さっきまでのコビーのやる気が消沈していく。
(あ……)
立ち向かおうと顔を上げれば、アルビダと大勢の海賊達がコビーとルフィを囲おうとしていた。
「そいつかい、お前の雇った賞金稼ぎってのは……ロロノア・ゾロじゃなさそうだねェ」
完全に勘違いしているアルビダの言葉にルフィは反応した。
「ぞろ?」 という疑問には誰も答えない。
アルビダはコビーを見下ろし、機会をやると圧を掛けて問いかける。
「最後に聞いてやろうか……この海で一番美しいものは何だい? コビー!」
「え…へへ、それは……」
恐怖で固まるコビーはいつもの様に笑って答えようとしたが、先にルフィが指差して尋ねた。
「誰だ、このイカついおばさん」
ずどーん! と言ってはいけない言葉に、その場の空気が張り詰める。
アルビダの目が怒りで血走り、眉が吊り上がった。
このままでは見境なしに暴れて、あの金棒で殴られてしまうと海賊達は慌てた。
「こいつ、何て事を!」
コビーはルフィの肩を掴む。
「ルフィさん! 訂正して下さい! この方はこの海で一番——」
言いかけた言葉をルフィの目を見て飲み込んだ。
ついさっき、何て言ってたのか過ぎって、歯を食いしばって大声で叫んだ。
「一番イカついクソババアですっ!」
森に響く声にコビーは 「は!」 と我に返り、怒れるアルビダを見た。
海賊達がコビーは死んだと思った瞬間、ルフィの笑い声。
「あっはっはっはっはっ!」
「このガキャーっ!」
アルビダの怒声にコビーは声にならない叫び声を上げた。
「っアアアアーっ!」
(悔いはない! 悔いはない! ぼくは言ったんだ! 戦った! 夢の為に戦ったんだ!)
「よく言った。 下がってなコビー!」
「ルフィさん……!」
ルフィがコビーを背に庇い、金棒を振り上げるアルビダの前に出る。
「同じ事さ! 二人共……生かしちゃおかないよ!」
ゴン! とルフィの頭に金棒が落としたが、手に伝わる感触に違和感ある。
どういう事かとアルビダは、にぃと笑うルフィを見た。
「効かないねえっ! ゴムだから」
「そんなバカな! アタシの金棒が……な!」
アルビダも海賊達もコビーもルフィの右腕が伸びている事に驚いた。
「ゴムゴムの “銃” ピストル!」
ドウン!
ルフィはゴムの伸縮による力で、アルビダの顔面を殴り飛ばす。
地面にひっくり返って倒れるアルビダは意識を失い倒れた。
一撃で金棒のアルビダを倒したルフィ。
「手が伸びたぞ!」
「お頭!」
「アルビダ様が負けた! 化け物だ!」
駆けつけて、叫ぶ海賊達にルフィは言い放つ。
「コビーに一隻、小舟をやれ! こいつは海軍に入るんだ。 黙って行かせろ!」
「は……はい」
海賊達は汗をかき焦った様子で何度も頷いて返事をする。
「ルフィさん……」
「しししし!」
感謝の気持ちが溢れて、涙を流すコビーに、ルフィは小舟を手に入れたと満足気に笑った。
大渦から無事なことは理解したものの、これからどうしようかと考え始めていた矢先、ゴロゴロと転がされ、目が回りそうだった。
「な、なんだ、なんだ!?」
抜け出そうと、樽の中で腕を動かし、やっとのとこで蓋を手で押すが出れない。
「ミコト……がっちり閉めすぎじゃねェのか?」
一言漏らし、本当にどうにかならないのかと動かせない首を捻ったところで、樽が立てられたようだった。
そして、外が騒がしいことに耳をすませた。
すると蓋がギシギシと音を立てながら開き始める。
「やったぞ! 誰だか分かんねェけど、早く開けてくれ……!」
ルフィは手足を伸ばす準備をする。
光がサーッと差し込むと、後は自分で開けられると、思いっきり体を突っ張り伸ばした。
叫んで樽の周囲を 「ん?」 と見回すルフィの目の前には、驚いて口を開けるコビーと睨む海賊達。
「だれだ、お前ら」
「「「てめェが誰だ!」」」
海賊達の揃ったツッコミの直後、飛んでき来たのはアルビダの金棒と怒鳴り声。
「さぼってんじゃないよ!」
ドゴォン!
酒蔵が大破した勢いにルフィは樽ごと飛ばされ、森を転がっていった。
ドスドスと歩くアルビダは青ざめた顔をするヘッポコ達を睨む。
「このアタシにたてつこうってのかい?」
「え!? と、とんでもない……何の事だか!」
ペッポコは知らないとブンブンと首を振った。
「船まで聞こえる大声で、 “よく寝た” って叫びやがったのはどいつだい!?」
アルビダに聞かれたポッポコはそっちかと、 「は!」 と思いつく。
「お頭っ! 侵入者です!」
「そう!」 と頷くのはヘッポコでルフィと、ここにいないコビーのせいにする。
「コビーの奴が変なヤツを連れて来やがって……!」
「何……? まさかアタシの首を狙った賞金稼ぎじゃないだろうねェ……? コビーめ! あのガキ、裏切りやがったね!」
金棒を握り込むアルビダにペッポコが髪を掻きながら話す。
「しかし、この辺りで名を聞く賞金稼ぎといやあ」
「バカな! あの男は今、海軍に捕まってると聞いたぞ!」
名前を言うのも聞くのも恐ろしいとヘッポコが否定すると、アルビダが真っ赤な唇を上げた。
「本物なら逃げだすくらいわけないさ。 あの悪名高いロロノア・ゾロならね!」
アルビダ達の話をコビーは草むらに隠れて聞いていた。
怖くて震える手と足を抑えて、森の中へと行った。
(あの人は大丈夫かな……)
◇◆◇
鳥の声がする森で、ルフィが入った樽が転がっていた。
「ここどこだ?」
見回していると、コビーが歩いて来た。
「あの……大丈夫ですか? 怪我は? ずいぶん吹き飛ばされちゃいましたけど」
「はははは! ああ、大丈夫。 なんか、びっくりしたけどな。 おれはルフィ、ここはどこだ?」
「ここは――」 とコビーが現在地と自己紹介をしている間に、ルフィは樽から抜け出た。
「ふーん、そうか。 実はどうでもいいんだけどな、そんなこと」
ルフィの人の話を聞かない様子に、コビーは怒るよりも諦めたように 「はあ……」 と応じる。
長い間海賊の下で雑用していて、反抗しない事が身についてしまっている。
「小船とかねェかな。 おれのやつは渦巻にのまれちゃって」
「渦巻に遭ったんですか!?」
(まさか、あの大渦!?)
驚くコビーにルフィは腕を組んで溜息をついた。
「あー、あれはびっくりしたよ。 仲間ともはぐれてよー」
「え、それは……」
コビーは何て声を掛けていいのか分からない。
大渦に巻き込まれたなら、もう命は――と気の毒で顔を俯かせていると、ルフィは 「ミコトは生きてるぞ」 と言う。
「……いや、でも」
「ミコトは無事だ! 大丈夫って言ってたしな」
自信満々のルフィにコビーはつい口から本音が零れてしまう。
「ふつう、死ぬんですけどね……」
「おれは生きてるぞ」
話が微妙に噛み合ってない事にコビーは話題を変える。
「ま、まあ、そうみたいですね。 それで、小船ですが――」
「持ってんのか!?」
喜ぶルフィに、コビーは 「ない事もないですが……」 と森の奥に案内した。
しばらく行くと、辿り着いた場所には一目で手作りと分かる小船とオールがあった。
「なんだこりゃ、棺桶か?」
ルフィがそう聞いても仕方ないくらい壊れそうでボロボロだ。
これでミコトを探しに行けるかと 「うーん」 と見ていると、コビーが弱々しく笑い、少しずつ材料や道具を集めて作った小船に触れる。
「一応、ぼくが造った船です。 二年掛かってコツコツ……」
「二年かけて? で……いらねェのか?」
尋ねるルフィにコビーは首を横に振った。
「はい……いりません。 この船はここから逃げ出したくて、造ったんですが……結局、ぼくにはそんな勇気ないし、どうせ一生雑用の運命なんです。 一応……本当はやりたい事もあるんですけど」
「じゃ、逃げればいいじゃねェか、これで」
「ムリ、ムリです!」
ブンブンと激しく首を振って否定するコビー。
「もし、アルビダ様に見つかったらって考えると、足がすくんで……!」
怖くてとてもじゃないが無理が過ぎる。
コビーは初めてアルビダに会った恐ろしい日を思い出して声が震えた。
「ぼくはただ、釣りに行こうとしただけなのに、間違って乗り込んでしまったのが、なんと海賊船! あれから二年。 殺さないかわりに航海士兼雑用係として働けと……!」
「お前、ドジでバカだなーっ。 そのうえ、根性なさそうだしなー。 おれ、お前、キライだなー」
笑ってダメ出しするルフィに、コビーは (そんなハッキリ……) とガクリと肩を落とす。
「え…へへへへ……! でも、その通りです……。 ぼくにも樽で海を漂流するくらいの度胸があれば……」
情けないやら悲しいやらで笑うコビーをルフィはジッと見ながら、小船の縁に腰かける。
「…………」
「あの……ルフィさんはそこまでして、海に出て何をするんですか?」
「おれはさ、海賊王になるんだ!」
ルフィはにぃっとコビーに夢を言って笑う。
「え……! か、海賊王ってゆうのは、この世の全てを手に入れた者の称号ですよ! つまり富と名声と力の “ひとつなぎの大秘宝” ……あの “ワンピース” を目指すって事です!?」
信じられないと叫ぶコビーは笑っているルフィが心配になった。
「死にますよ!? 世界中の海賊がその宝を狙ってるんです!?」
「おれも狙う」
当然という態度のルフィに、コビーは頭がおかしいとムリムリと頭を振った。
「無理に決まってますよ! 海賊王なんて、この大航海時代の頂点に立つなんて、出来るわけないですよ! ムリムリっ!」
ムリムリ大王となったコビーの額をルフィはガツーン! と殴って転がした。
「痛いっ! どうして殴るんですか!」
「なんとなくだ!」
言い切るルフィにコビーは文句を言い返さないで立ち上がる。
「でも、いいや……慣れてるから。 えへへへ……」
自虐めいて笑うコビーからルフィは視線を外して、被る麦わら帽子を掴む。
七歳の時に仲間を集めて、海賊王になると言って、シャンクスから預かった大切な帽子だ。
「おれは死んでもいい」
「え?」
「おれがなるって決めたんだから、その為に戦って、死ぬんなら、別にいい」
ルフィの覚悟の強さにコビーはハッ! として目を見開いて呟いた。
「……死んでもいい!?」
「それに、おれはやれそうな気がするんだけどなー。 もう、仲間は一人いんだけどなー。 やっぱ、難しいのかなー」
帽子を被り直すルフィをコビーは見つめた。
アルビダに殺されるかもしれないと思っていたけど、死んでもいいなんて考えた事なかった。
ずっと自分の不幸に甘えてたのかもしれない。
「ぼくにもやれるでしょうか……! し、死ぬ気なら……」
コビーの目から涙が勝手に出てきて、声が震える。
「ん? 何が?」 と振り返るルフィにコビーは問いかける。
「ぼくでも海軍に入れるでしょうか……!」
「海軍?」
「ルフィさんとは敵ですけど! 海軍に入って、偉くなって、悪い奴を取り締まるのが、ぼくの夢なんです! 小さい頃からの! やれるでしょうか!?」
「そんなの知らねェよ!」
素っ気ないルフィの答えだが、コビーは気にならなかった。
(自分が決めたんならいいんだ!)
「やりますよ!」
目を輝かせるコビーはルフィが目に入っていないのか、両手を握り込み足に力を入れる。
「どうせ、このまま雑用で一生を終えるくらいなら! 海軍に入る為、命を懸けて、ここから逃げ出すんです! そして、アルビダ様……アルビダだって、捕まえてやるんです!」
叫んだ瞬間、怒号と金棒がコビーを襲う。
「誰を捕まえるって!? コビー!」
「うわあ!」
寸でのところで避けたが、小船は突如現れたアルビダの金棒でドカン! と木っ端微塵にされた。
「ぼくの船……」
「このアタシから逃げられると思ってんのかい!?」
アルビダの恐ろしさに、さっきまでのコビーのやる気が消沈していく。
(あ……)
立ち向かおうと顔を上げれば、アルビダと大勢の海賊達がコビーとルフィを囲おうとしていた。
「そいつかい、お前の雇った賞金稼ぎってのは……ロロノア・ゾロじゃなさそうだねェ」
完全に勘違いしているアルビダの言葉にルフィは反応した。
「ぞろ?」 という疑問には誰も答えない。
アルビダはコビーを見下ろし、機会をやると圧を掛けて問いかける。
「最後に聞いてやろうか……この海で一番美しいものは何だい? コビー!」
「え…へへ、それは……」
恐怖で固まるコビーはいつもの様に笑って答えようとしたが、先にルフィが指差して尋ねた。
「誰だ、このイカついおばさん」
ずどーん! と言ってはいけない言葉に、その場の空気が張り詰める。
アルビダの目が怒りで血走り、眉が吊り上がった。
このままでは見境なしに暴れて、あの金棒で殴られてしまうと海賊達は慌てた。
「こいつ、何て事を!」
コビーはルフィの肩を掴む。
「ルフィさん! 訂正して下さい! この方はこの海で一番——」
言いかけた言葉をルフィの目を見て飲み込んだ。
ついさっき、何て言ってたのか過ぎって、歯を食いしばって大声で叫んだ。
「一番イカついクソババアですっ!」
森に響く声にコビーは 「は!」 と我に返り、怒れるアルビダを見た。
海賊達がコビーは死んだと思った瞬間、ルフィの笑い声。
「あっはっはっはっはっ!」
「このガキャーっ!」
アルビダの怒声にコビーは声にならない叫び声を上げた。
「っアアアアーっ!」
(悔いはない! 悔いはない! ぼくは言ったんだ! 戦った! 夢の為に戦ったんだ!)
「よく言った。 下がってなコビー!」
「ルフィさん……!」
ルフィがコビーを背に庇い、金棒を振り上げるアルビダの前に出る。
「同じ事さ! 二人共……生かしちゃおかないよ!」
ゴン! とルフィの頭に金棒が落としたが、手に伝わる感触に違和感ある。
どういう事かとアルビダは、にぃと笑うルフィを見た。
「効かないねえっ! ゴムだから」
「そんなバカな! アタシの金棒が……な!」
アルビダも海賊達もコビーもルフィの右腕が伸びている事に驚いた。
「ゴムゴムの “銃” ピストル!」
ドウン!
ルフィはゴムの伸縮による力で、アルビダの顔面を殴り飛ばす。
地面にひっくり返って倒れるアルビダは意識を失い倒れた。
一撃で金棒のアルビダを倒したルフィ。
「手が伸びたぞ!」
「お頭!」
「アルビダ様が負けた! 化け物だ!」
駆けつけて、叫ぶ海賊達にルフィは言い放つ。
「コビーに一隻、小舟をやれ! こいつは海軍に入るんだ。 黙って行かせろ!」
「は……はい」
海賊達は汗をかき焦った様子で何度も頷いて返事をする。
「ルフィさん……」
「しししし!」
感謝の気持ちが溢れて、涙を流すコビーに、ルフィは小舟を手に入れたと満足気に笑った。