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“依頼~前編”
ドフラミンゴと初めて会ってから一年が経っていた。
俺も十二になっていた。
あれから奴とはもう二度と会う事はないと思っていたが、俺の期待を余所に奴はいつも突然やって来た。
最近はその事に慣れてきている自分が怖ェとか思っちまう。
そして奴はまた来た。
俺の新しい気に入りの場所に――
見渡す周囲には低い家屋だけで、ポツンとある五階建ての屋上。
拾ってきた穴だらけの赤白のデカいパラソルは真黒く塗り替えて屋上に置いた。
その下で、ペンギンとシャチっていう仲間二人と一緒にいた。
二週間前に南地区の奴らに俺が一人でいたところを襲撃されてから、常にどっちかが俺といる。
今日は二人一緒だ。
二人は俺よりも年上っぽい。
正直、ここに住むガキは正確な年齢は分からねェ。
あまり歳に興味もねェから聞きもしねェけどな。
ペンギンは敵対する北との抗争中に、シャチはアジトに盗みに入られて時に捕まえた。
その後、俺は北地区を制圧した。
今は南に手ェ出してるから襲われたわけだ。
二人を仲間にしたのは俺だが、最近いつもだいたい一緒で、邪魔じゃないけど、何だか嫌だった。
止めろっと言っても心配だからと、こそこそ後をついて来られた日には逆に目障りになった。
だったら、もういいと側にいる事を許した。
読書に飽きた俺はナイフで床を削って作ったマス目を盤に、不揃いのチェスの駒と白と黒の石で代用してペンギンと遊んでる。
数日前、二人にチェスのルールを教えたら、説明の途中でシャチは 「うわあああー!」 と突如叫んで、頭を抱えて床に転がった。
どうやら、シャチには無理らしいと溜息をつけば、ペンギンは顎に指をやって呻っていた。
こいつも駄目かと思ったら、面白そうだなと口端をあげた。
「やるか?」 と尋ねれば、 「やる」 と短く返された。
最初のうちは俺がずっと勝っていた。
そのうちペンギンも分かってきたみたいで、今じゃ三回に一回はこいつに負ける。
頭がいい奴だ。
チェスが出来ないシャチは寝転んで俺の読み飽きた戯曲の本のページをペラペラと捲っていた。
こいつ、キスシーンだけ読んでんな。
今日は風が吹いていて、陽気も上々だったが、一瞬で最悪に変わった。
招待もしてもいないのに来たピンクの大男のせいだ。
バサバサ……と羽ばたき音に、随分デカイ鳥がいるなと視線を向けた途端に現れた奴。
「よう、ロー。 久しぶりだな……フッフッフッ」
「!?」
さすがに驚いた。
ここは五階の屋上で、人が笑って飛んでこれる場所じゃない。
なのに奴は目の前にいた。
この屋上に来るには、外壁にある錆びた階段でしか来れない。
何なんだ!? いったい! ムカツクな……!
俺の左右には奴が来てからペンギンとシャチが素早く構える。
奴に初めて会った場合、腰抜かしてたりする奴らが多いが、こいつらは違うようだ。
シャチはしっかり奴を見てるし、ペンギンに至っては不快そうに眉を寄せていた。
警戒する俺達と違って奴は楽しそうだった。
「……フッフフ、これまたいい場所だな? ロー」
「ああ、いいだろ」
奴の笑い方はどうも嫌な感じしかしねェ。
眉をひそめる俺に奴は首を傾けた。
「良さそうな部下も出来たみてェだしな?」
「部下じゃねェよ。仲間だ」
「フフッ……そうか」
チラリと床を見て、二ィと笑う奴。
「屋上でチェスとは、なかなか高尚じゃねェか」
どこがだ? と思った。
盤もねぇし、半分も揃ってない駒だぞ。
答えないで無言で返す俺を奴は気にしない。
「本は読んでんねェのか?」
尋ねられて、仕方ねェから床に置きっぱなしの本を手に取って見せた。
「戯曲か……それなら俺も読んだ事がある。 女の怒りが燃え上がって、恨んで男を刺すところが俺は好きだな」
「ふーん」
相槌をうってやったが、俺はお前の感想なんて聞いてない。
今日は何しに来た?
最初は俺の顔を見に来たとか言っていた。
その次は寄ってみた。
次は……思い出すのは無駄だな。
今回は何だ?
こんなガキの俺の所に何度も来て何が楽しいんだ?
「何の用だよ?」
「フッフッフッ……話が早くていいねェ」
含み笑いをする奴が、何か話そうとした時、錆びた階段の崩れて落ちる音がした。
まさか!?
急いで振り返れば、そこには一年前に奴の後ろにいたサングラスの男がいた。
頬に何故か食べかけのウインナーが張り付いていた。
どういう食い方したら付くのか聞きてェ……が見なかった事にする。
あんまり関わりたくないからだ。
それよりもと俺は階段を見に駆け寄った。
土埃が舞う真下を覗いて、壊れて崩れ落ちた錆びた階段に眉をひそめた。
クソッ! やってくれた……!
後ろでは奴がおっさんに話し掛けていた。
「ヴェルゴ、遅ェな」
「すまないドフィ。 三階の階段が突然壊れ落ちて……少々、手間取った」
何してくれんだよ、このおっさん!?
百歩譲って、来るのは構わねェが、壊してくんじゃねェ。
錆びた階段には、わざと切れ込みが入れてあって、俺一人の体重がぎりぎり支えらる事が出来るようにしていた。
上り下りにはコツがあって、その場所を静かに避けて、いつも屋上に来ていた。
ペンギンとシャチは上から落とすロープでいつも上がってくる。
五階までロープで上るのはかなり疲れるのか、ぶつぶつ文句をたれてたが、勝手についてきて離れねェのは二人だ。
ロープを下ろしてやるだけでもありがたいと思え。
それよりも仕掛けてある罠を見事におっさんに壊された事に、どうしてくれんだと苦笑する奴を見た。
「フッフフ……悪ィな」
察しのいい奴は俺の作った罠に気付いたようで、人の悪い笑み付きで謝られた。
「……いいさ。 また別のトコを探す」
「そうか、本当に悪ィな」
「いい……」
しつこく謝んな!
悪いなんてこれっぽっちも思ってねェのは分かってるし、鬱陶しいんだよ。
このピンク野郎っ!
無口な俺に、奴はピンクの羽コートのポケットの中から一冊の本を手にして笑う。
「俺が今読んでる本を詫びにやる」
仕方なく受け取る本は――ナビディの航海記という表紙。
少し面白そうだと思ったのは秘密だ。
「それで用は?」
「ああ、そうだったな。 頼みがある」
訝しんで見上げれば奴は淡々と語った。
「一か月前に俺の手下がこっちに逃げた。 始末してェが、部下が探しても見つらねェ」
成程な。
どうりでここ最近大人の出入りが激しいはずだと納得した。
関わるとヤバそうな匂いがして、手ェ出すなと言っておいて正解だった。
「ここはお前の縄張りだ。 頼んだ方が早ェと思ったわけだ……コイツだ」
手渡された写真。
俺には見覚えはねェ――が、写真の男らしい情報を同じ頃に聞いたのを思い出した。
これで野望でもあれば、奴に近づくチャンスとばかりに喜んで教えてやるんだろうが、俺は奴と関わり合いたくなかった。
「知らねェな」
答えてから、ペンギンとシャチに写真を見せながら、目で合図して首を横に振らせた。
残念だったな……と言って返そうとしたら、奴の笑みが消えていた。
「見つけろ」
……こいつ!
「それぐらい出来るだろ? それとも、てめェの縄張りにいる隠れた鼠も見つけられないのか?」
安い挑発だが無能呼ばわりされるの嫌だった。
ムッとして見つめる俺に奴は口端で笑う。
「フフッ……報酬は出す。 十……でどうだ?」
十万ベリー……奴にははした金でも俺達には大金だった。
「三日……三日以内に見つけてやるから倍だ」
「フッフッフッ……いいぜ、出そう。 そうだな……捕まえてくれたら三倍出してもいい」
「それは断る。 見つけるだけだ。 追い詰められた鼠に俺の仲間を怪我させたくねェ。 見張りは出すが、手下の始末はあんたが自分でつけろよ」
「ああ、そうする」
何だか知らないが機嫌のいい様子の奴に、もう帰れと言おうとしたら、おっさんの低い静かな声に振り返る。
「ガキ……が、調子に乗るな。 ドフィはこの島のボスであり、お前よりも立場が上だ。 口の利き方に気をつけろ」
何言ってやがる。
俺が出向いたならともかく、そっちが勝手に来てんじゃねェか!
気に入りの場所は壊されるし、頭にきてんのはこっちだ!
何で礼を通さなくちゃいけねェんだよ!
頼まれ事は黙って受けてやんだから……とっとと帰れ!
……と、すげー言い返してェ。
――が、ペンギンの冷静な目の色が見えて我慢した。
けど、謝ったりとかはしねェ。
俺に落ち度はねぇし、奴の支配下の島にいても手下じゃねェ。
それでもこいつらより確実に弱い俺は生きる為に耐える。
ああ……苛つく!
「気をつける」
「……“さん”をつけて呼べ」
「……分かった」
絶対ェに呼びたくねェ!
ふん! 名前なんて呼ばなくても話は出来る。
頷く俺に納得したのかおっさんは俺から視線をはずして奴を見た。
つい、俺もつられて奴を見てしまった。
悔しいけど、奴はここの誰よりも絶対的な存在感があった。
「フフフ……じゃ、二日後の同じ時間にな。 場所は……ここは無理だな。 前に会ったところでいいか?」
黙って頷く俺を確認するように奴は 「じゃあな」 と笑って踵を返した。
翻るピンクのコートの後ろについていくおっさん。
奴は屋上の端につくと、バサッとピンクの羽が広がり両手を左右に広げて落ちた。
おっさんも構わず飛ぶ。
きっと、こいつらなら平気でこの高さを飛んで着地出来んだろうな。
ペンギンとシャチが建物の端に駆け寄って、飛び下りた奴とおっさんを覗き見ていた。
俺も気になって真下を見に行ったら、奴が見上げて笑っていた。
フフフ……と聞こえた感じがして、嫌悪で眉を寄せた。
ドフラミンゴと初めて会ってから一年が経っていた。
俺も十二になっていた。
あれから奴とはもう二度と会う事はないと思っていたが、俺の期待を余所に奴はいつも突然やって来た。
最近はその事に慣れてきている自分が怖ェとか思っちまう。
そして奴はまた来た。
俺の新しい気に入りの場所に――
◇◆◇
見渡す周囲には低い家屋だけで、ポツンとある五階建ての屋上。
拾ってきた穴だらけの赤白のデカいパラソルは真黒く塗り替えて屋上に置いた。
その下で、ペンギンとシャチっていう仲間二人と一緒にいた。
二週間前に南地区の奴らに俺が一人でいたところを襲撃されてから、常にどっちかが俺といる。
今日は二人一緒だ。
二人は俺よりも年上っぽい。
正直、ここに住むガキは正確な年齢は分からねェ。
あまり歳に興味もねェから聞きもしねェけどな。
ペンギンは敵対する北との抗争中に、シャチはアジトに盗みに入られて時に捕まえた。
その後、俺は北地区を制圧した。
今は南に手ェ出してるから襲われたわけだ。
二人を仲間にしたのは俺だが、最近いつもだいたい一緒で、邪魔じゃないけど、何だか嫌だった。
止めろっと言っても心配だからと、こそこそ後をついて来られた日には逆に目障りになった。
だったら、もういいと側にいる事を許した。
読書に飽きた俺はナイフで床を削って作ったマス目を盤に、不揃いのチェスの駒と白と黒の石で代用してペンギンと遊んでる。
数日前、二人にチェスのルールを教えたら、説明の途中でシャチは 「うわあああー!」 と突如叫んで、頭を抱えて床に転がった。
どうやら、シャチには無理らしいと溜息をつけば、ペンギンは顎に指をやって呻っていた。
こいつも駄目かと思ったら、面白そうだなと口端をあげた。
「やるか?」 と尋ねれば、 「やる」 と短く返された。
最初のうちは俺がずっと勝っていた。
そのうちペンギンも分かってきたみたいで、今じゃ三回に一回はこいつに負ける。
頭がいい奴だ。
チェスが出来ないシャチは寝転んで俺の読み飽きた戯曲の本のページをペラペラと捲っていた。
こいつ、キスシーンだけ読んでんな。
今日は風が吹いていて、陽気も上々だったが、一瞬で最悪に変わった。
招待もしてもいないのに来たピンクの大男のせいだ。
バサバサ……と羽ばたき音に、随分デカイ鳥がいるなと視線を向けた途端に現れた奴。
「よう、ロー。 久しぶりだな……フッフッフッ」
「!?」
さすがに驚いた。
ここは五階の屋上で、人が笑って飛んでこれる場所じゃない。
なのに奴は目の前にいた。
この屋上に来るには、外壁にある錆びた階段でしか来れない。
何なんだ!? いったい! ムカツクな……!
俺の左右には奴が来てからペンギンとシャチが素早く構える。
奴に初めて会った場合、腰抜かしてたりする奴らが多いが、こいつらは違うようだ。
シャチはしっかり奴を見てるし、ペンギンに至っては不快そうに眉を寄せていた。
警戒する俺達と違って奴は楽しそうだった。
「……フッフフ、これまたいい場所だな? ロー」
「ああ、いいだろ」
奴の笑い方はどうも嫌な感じしかしねェ。
眉をひそめる俺に奴は首を傾けた。
「良さそうな部下も出来たみてェだしな?」
「部下じゃねェよ。仲間だ」
「フフッ……そうか」
チラリと床を見て、二ィと笑う奴。
「屋上でチェスとは、なかなか高尚じゃねェか」
どこがだ? と思った。
盤もねぇし、半分も揃ってない駒だぞ。
答えないで無言で返す俺を奴は気にしない。
「本は読んでんねェのか?」
尋ねられて、仕方ねェから床に置きっぱなしの本を手に取って見せた。
「戯曲か……それなら俺も読んだ事がある。 女の怒りが燃え上がって、恨んで男を刺すところが俺は好きだな」
「ふーん」
相槌をうってやったが、俺はお前の感想なんて聞いてない。
今日は何しに来た?
最初は俺の顔を見に来たとか言っていた。
その次は寄ってみた。
次は……思い出すのは無駄だな。
今回は何だ?
こんなガキの俺の所に何度も来て何が楽しいんだ?
「何の用だよ?」
「フッフッフッ……話が早くていいねェ」
含み笑いをする奴が、何か話そうとした時、錆びた階段の崩れて落ちる音がした。
まさか!?
急いで振り返れば、そこには一年前に奴の後ろにいたサングラスの男がいた。
頬に何故か食べかけのウインナーが張り付いていた。
どういう食い方したら付くのか聞きてェ……が見なかった事にする。
あんまり関わりたくないからだ。
それよりもと俺は階段を見に駆け寄った。
土埃が舞う真下を覗いて、壊れて崩れ落ちた錆びた階段に眉をひそめた。
クソッ! やってくれた……!
後ろでは奴がおっさんに話し掛けていた。
「ヴェルゴ、遅ェな」
「すまないドフィ。 三階の階段が突然壊れ落ちて……少々、手間取った」
何してくれんだよ、このおっさん!?
百歩譲って、来るのは構わねェが、壊してくんじゃねェ。
錆びた階段には、わざと切れ込みが入れてあって、俺一人の体重がぎりぎり支えらる事が出来るようにしていた。
上り下りにはコツがあって、その場所を静かに避けて、いつも屋上に来ていた。
ペンギンとシャチは上から落とすロープでいつも上がってくる。
五階までロープで上るのはかなり疲れるのか、ぶつぶつ文句をたれてたが、勝手についてきて離れねェのは二人だ。
ロープを下ろしてやるだけでもありがたいと思え。
それよりも仕掛けてある罠を見事におっさんに壊された事に、どうしてくれんだと苦笑する奴を見た。
「フッフフ……悪ィな」
察しのいい奴は俺の作った罠に気付いたようで、人の悪い笑み付きで謝られた。
「……いいさ。 また別のトコを探す」
「そうか、本当に悪ィな」
「いい……」
しつこく謝んな!
悪いなんてこれっぽっちも思ってねェのは分かってるし、鬱陶しいんだよ。
このピンク野郎っ!
無口な俺に、奴はピンクの羽コートのポケットの中から一冊の本を手にして笑う。
「俺が今読んでる本を詫びにやる」
仕方なく受け取る本は――ナビディの航海記という表紙。
少し面白そうだと思ったのは秘密だ。
「それで用は?」
「ああ、そうだったな。 頼みがある」
訝しんで見上げれば奴は淡々と語った。
「一か月前に俺の手下がこっちに逃げた。 始末してェが、部下が探しても見つらねェ」
成程な。
どうりでここ最近大人の出入りが激しいはずだと納得した。
関わるとヤバそうな匂いがして、手ェ出すなと言っておいて正解だった。
「ここはお前の縄張りだ。 頼んだ方が早ェと思ったわけだ……コイツだ」
手渡された写真。
俺には見覚えはねェ――が、写真の男らしい情報を同じ頃に聞いたのを思い出した。
これで野望でもあれば、奴に近づくチャンスとばかりに喜んで教えてやるんだろうが、俺は奴と関わり合いたくなかった。
「知らねェな」
答えてから、ペンギンとシャチに写真を見せながら、目で合図して首を横に振らせた。
残念だったな……と言って返そうとしたら、奴の笑みが消えていた。
「見つけろ」
……こいつ!
「それぐらい出来るだろ? それとも、てめェの縄張りにいる隠れた鼠も見つけられないのか?」
安い挑発だが無能呼ばわりされるの嫌だった。
ムッとして見つめる俺に奴は口端で笑う。
「フフッ……報酬は出す。 十……でどうだ?」
十万ベリー……奴にははした金でも俺達には大金だった。
「三日……三日以内に見つけてやるから倍だ」
「フッフッフッ……いいぜ、出そう。 そうだな……捕まえてくれたら三倍出してもいい」
「それは断る。 見つけるだけだ。 追い詰められた鼠に俺の仲間を怪我させたくねェ。 見張りは出すが、手下の始末はあんたが自分でつけろよ」
「ああ、そうする」
何だか知らないが機嫌のいい様子の奴に、もう帰れと言おうとしたら、おっさんの低い静かな声に振り返る。
「ガキ……が、調子に乗るな。 ドフィはこの島のボスであり、お前よりも立場が上だ。 口の利き方に気をつけろ」
何言ってやがる。
俺が出向いたならともかく、そっちが勝手に来てんじゃねェか!
気に入りの場所は壊されるし、頭にきてんのはこっちだ!
何で礼を通さなくちゃいけねェんだよ!
頼まれ事は黙って受けてやんだから……とっとと帰れ!
……と、すげー言い返してェ。
――が、ペンギンの冷静な目の色が見えて我慢した。
けど、謝ったりとかはしねェ。
俺に落ち度はねぇし、奴の支配下の島にいても手下じゃねェ。
それでもこいつらより確実に弱い俺は生きる為に耐える。
ああ……苛つく!
「気をつける」
「……“さん”をつけて呼べ」
「……分かった」
絶対ェに呼びたくねェ!
ふん! 名前なんて呼ばなくても話は出来る。
頷く俺に納得したのかおっさんは俺から視線をはずして奴を見た。
つい、俺もつられて奴を見てしまった。
悔しいけど、奴はここの誰よりも絶対的な存在感があった。
「フフフ……じゃ、二日後の同じ時間にな。 場所は……ここは無理だな。 前に会ったところでいいか?」
黙って頷く俺を確認するように奴は 「じゃあな」 と笑って踵を返した。
翻るピンクのコートの後ろについていくおっさん。
奴は屋上の端につくと、バサッとピンクの羽が広がり両手を左右に広げて落ちた。
おっさんも構わず飛ぶ。
きっと、こいつらなら平気でこの高さを飛んで着地出来んだろうな。
ペンギンとシャチが建物の端に駆け寄って、飛び下りた奴とおっさんを覗き見ていた。
俺も気になって真下を見に行ったら、奴が見上げて笑っていた。
フフフ……と聞こえた感じがして、嫌悪で眉を寄せた。