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“prologue”
この世に生を受けて十一年――
生きるために最初にしたのは盗みと奪い合い。
酒、煙草、女……から始まったヤバイ遊びは、道徳という概念もない欲望と堕落と廃退しかないこの町で覚えた。
北の海――とある島の唯一の町は子供を捨てる場所としては定番だ。
町の娼婦、海賊、生活苦の親……と大人達の身勝手な理由で、そのまま町の片隅に置き去りにされるか、小舟に乗せられて海岸に流されて捨てられる。
だからか親の顔を知っている奴なんていやしねェし、いる奴がいても思い出す事もねェ。
俺もそのうちの一人だ。
いつ来たのか思い出したくはない……が、気付けばどんよりした重い雲の下の海岸にいた。
生きる方が死ぬより辛い場所に来た事だけは分かった。
背後の迫る冷気と波は死を誘った。
けど、死にたくなかった。
だから、過去の自分を殺した。
両手の指に刻む “DEATH” の文字。
ここからは違う俺だ。
この町は東西南北と四つの地区に分けられる。
それぞれの地区にボスがいて、その上に何年か前に来た海賊がこの島を仕切っていた。
東には港があり、つねに海賊と闇の人間が年中入りびたり、非合法な取引と交易をしていた。
流れる金はとんでもない額だ。
海軍なんて来やしない島は娼館と酒場が大部分を占める無法地帯。
男女の嬌声と争う声は絶える事なく、町のあちこちで聞こえた。
弱く捨てられたばかりの子供はたいてい追いやられるように港から一番離れた西地区に行かざるおえない。
西地区の先は年中山頂に雪が降る山が聳え連なっていた。
他に行く場所もないから自然に集まる狭く寒い場所。
東を除いた地区にもキッズグループの縄張りがあり、それをまとめるキッズのボスもいたりいる。
赤ん坊から十六ぐらいの子供しかいない五から十五人ぐらいが集まるキッズグループがいくつもあり、その中でこの町の子供は育つ。
十六、十七ぐらいになるとキッズから自然に抜けていく。
それ以上は大人だって事だ。
グループに入る入らないは本人達の自由で、一人でいるよりは生存確率が少しあがるという程度だ。
生き抜く術はここで学んで出て行く。
覚えるのは盗みとケンカぐらいだけどな。
子供だけだろうが弱肉強食はあるから弱ェ奴はすぐにくたばる。
――強くねェと生き残れない。
行き場のない灰色の世界。
建物の間を通る細い路地には、山からの冷たい風が吹き抜ける。
カーテンの隙間から陽の光が射し込み、俺は眩しさに目を細めて体を起こした。
朝か……。
今いる部屋は二階で、昨日……俺のモンになった。
軋むベッドの隣に寝る年上の女は、新たなボスになったばかりのガキの俺に抱かれにきた女。
一年前、何をするにも飽きて思いつきで始めた遊び――
あるキッズグループのリーダーになってみるか……と気紛れがきっかけ。
その時のリーダーは十五才で俺よりもデカいし、力も強かったが頭の悪い奴だった。
あっさり俺の誘いにつられて、首をナイフで切り裂いてやった。
その時点で俺はグループのリーダーとなった。
強いのが全てだから、歳も何も関係ねェ。
それから、俺は西地区の数あるキッズのグループを制覇しようと考えた。
そして、昨日ボスをあっさり倒し、俺が新しくボスになったわけだ。
思いのほか時間が掛かった。
暇つぶしにはなったけどな。
今日から何しようか?
どうせなら他の地区のグループでも制圧してみるか?
息をついた時、部屋の端に埃まみれの机が目に入った。
昨日は気付かなかった。
何か置いてあるな……。
他にする事もねェから、ジーンズを穿いて向かった。
何だ、これ絵本か?
―― “嘘つきノーランド”
初めて見た。
ノーランドの話だけなら何度も聞いた事はあった。
嘘つき男の話で面白くもなんともなかった……が、読んだ事ねェな。
絵本についた埃を払い、椅子を窓際まで引き摺って腰かけた。
丸顔のアホづらした男の絵が描かれている表紙を開いた。
今から四百年前の物語――
国王に嘘をついたノーランドが処刑されておしまいの話。
やっぱり……詰まらねェ話だ。
けど、海賊王の言う財宝もノーランドの言う黄金も偉大なる海に行けば分かるのは確かだ。
海か……。
こんな狭い町とは比べられねェぐらい広い海。
視界にある窓の外は壊れかけた薄汚ェ建物だけだ。
立てつけの悪い窓をガタガタと音を鳴らして強引に開けて、こもった空気を出す。
海から遠いこの地区には潮風なんかこねェ。
匂ってくるのは何もかもが腐ったような嗅ぎ慣れたモンだ。
いつか……ここから出て行きてェな。
風が入って、ベッドにいる女が毛布に潜るように寝返りをうった。
起きたら面倒だな……。
顔を合わせるのが嫌で、絵本を机に戻すと女を置いて部屋を出た。
廊下に出て、一階に続く螺旋階段を下りながら俺は決めた。
――必ず海に出てやる。
この世に生を受けて十一年――
生きるために最初にしたのは盗みと奪い合い。
酒、煙草、女……から始まったヤバイ遊びは、道徳という概念もない欲望と堕落と廃退しかないこの町で覚えた。
◇◆◇
北の海――とある島の唯一の町は子供を捨てる場所としては定番だ。
町の娼婦、海賊、生活苦の親……と大人達の身勝手な理由で、そのまま町の片隅に置き去りにされるか、小舟に乗せられて海岸に流されて捨てられる。
だからか親の顔を知っている奴なんていやしねェし、いる奴がいても思い出す事もねェ。
俺もそのうちの一人だ。
いつ来たのか思い出したくはない……が、気付けばどんよりした重い雲の下の海岸にいた。
生きる方が死ぬより辛い場所に来た事だけは分かった。
背後の迫る冷気と波は死を誘った。
けど、死にたくなかった。
だから、過去の自分を殺した。
両手の指に刻む “DEATH” の文字。
ここからは違う俺だ。
この町は東西南北と四つの地区に分けられる。
それぞれの地区にボスがいて、その上に何年か前に来た海賊がこの島を仕切っていた。
東には港があり、つねに海賊と闇の人間が年中入りびたり、非合法な取引と交易をしていた。
流れる金はとんでもない額だ。
海軍なんて来やしない島は娼館と酒場が大部分を占める無法地帯。
男女の嬌声と争う声は絶える事なく、町のあちこちで聞こえた。
弱く捨てられたばかりの子供はたいてい追いやられるように港から一番離れた西地区に行かざるおえない。
西地区の先は年中山頂に雪が降る山が聳え連なっていた。
他に行く場所もないから自然に集まる狭く寒い場所。
東を除いた地区にもキッズグループの縄張りがあり、それをまとめるキッズのボスもいたりいる。
赤ん坊から十六ぐらいの子供しかいない五から十五人ぐらいが集まるキッズグループがいくつもあり、その中でこの町の子供は育つ。
十六、十七ぐらいになるとキッズから自然に抜けていく。
それ以上は大人だって事だ。
グループに入る入らないは本人達の自由で、一人でいるよりは生存確率が少しあがるという程度だ。
生き抜く術はここで学んで出て行く。
覚えるのは盗みとケンカぐらいだけどな。
子供だけだろうが弱肉強食はあるから弱ェ奴はすぐにくたばる。
――強くねェと生き残れない。
◇◆◇
行き場のない灰色の世界。
建物の間を通る細い路地には、山からの冷たい風が吹き抜ける。
カーテンの隙間から陽の光が射し込み、俺は眩しさに目を細めて体を起こした。
朝か……。
今いる部屋は二階で、昨日……俺のモンになった。
軋むベッドの隣に寝る年上の女は、新たなボスになったばかりのガキの俺に抱かれにきた女。
一年前、何をするにも飽きて思いつきで始めた遊び――
あるキッズグループのリーダーになってみるか……と気紛れがきっかけ。
その時のリーダーは十五才で俺よりもデカいし、力も強かったが頭の悪い奴だった。
あっさり俺の誘いにつられて、首をナイフで切り裂いてやった。
その時点で俺はグループのリーダーとなった。
強いのが全てだから、歳も何も関係ねェ。
それから、俺は西地区の数あるキッズのグループを制覇しようと考えた。
そして、昨日ボスをあっさり倒し、俺が新しくボスになったわけだ。
思いのほか時間が掛かった。
暇つぶしにはなったけどな。
今日から何しようか?
どうせなら他の地区のグループでも制圧してみるか?
息をついた時、部屋の端に埃まみれの机が目に入った。
昨日は気付かなかった。
何か置いてあるな……。
他にする事もねェから、ジーンズを穿いて向かった。
何だ、これ絵本か?
―― “嘘つきノーランド”
初めて見た。
ノーランドの話だけなら何度も聞いた事はあった。
嘘つき男の話で面白くもなんともなかった……が、読んだ事ねェな。
絵本についた埃を払い、椅子を窓際まで引き摺って腰かけた。
丸顔のアホづらした男の絵が描かれている表紙を開いた。
今から四百年前の物語――
国王に嘘をついたノーランドが処刑されておしまいの話。
やっぱり……詰まらねェ話だ。
けど、海賊王の言う財宝もノーランドの言う黄金も偉大なる海に行けば分かるのは確かだ。
海か……。
こんな狭い町とは比べられねェぐらい広い海。
視界にある窓の外は壊れかけた薄汚ェ建物だけだ。
立てつけの悪い窓をガタガタと音を鳴らして強引に開けて、こもった空気を出す。
海から遠いこの地区には潮風なんかこねェ。
匂ってくるのは何もかもが腐ったような嗅ぎ慣れたモンだ。
いつか……ここから出て行きてェな。
風が入って、ベッドにいる女が毛布に潜るように寝返りをうった。
起きたら面倒だな……。
顔を合わせるのが嫌で、絵本を机に戻すと女を置いて部屋を出た。
廊下に出て、一階に続く螺旋階段を下りながら俺は決めた。
――必ず海に出てやる。