逃げる彼女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
え?
ええ~っ!?
心の中で叫ぶ私を女が邪魔された怒りも露わに睨みつけている。
その周りには酔いも吹っ飛んだ様子の仲間が、さっさと早く行けとばかりに手を振っていた。
何が起きてるの?。
どうしてこうなってるの?
酒場の扉をローが開ける瞬間にペンギンとシャチが合流してきた。
二人は細かい雑用を済ませてから来る事になっていた。
「あれ? 船長、もう帰るんスか?」
黒のサングラスが不思議そうに光る。
「ああ。 用は済んだからな」
いつも通りに頷くローに、ペンギンは薄い唇の端をあげた。
何、その笑い……。
私とローの事、ペンギンは知ってたの?
浮かぶ疑問はすぐに確信に変わる。
ふっ……と私を見て洩れる含み笑い。
信じられない!? と私はペンギンを見つめた。
一方、シャチは何も知らないみたいで、ご機嫌な足取りでずんずんと酒場の奥にいる仲間のところへと向かう。
女を抑える仲間達の姿をシャチは何故か見て笑う。
「楽しそうに盛りあがってんじゃん! やーっと飲めるぞ~! おーい、ペンギン!」
どこをどう見たら楽しそうに見えるのか私には分からない。
大声で呼ぶシャチに、ペンギンは手を上げて、ローと私に視線を向ける。
「それじゃあ、飲んできます」
「おい――」
微笑するペンギンをローが引き止めて、私には聞こえない声で何やら二人でこそこそ話してる。
訝しむ私をペンギンがちらりと見てから、さっきから私を睨む女を見た。
「……いいですけど、気乗りしませんね」
「お前の好みだろ?」
「否定しませんが……」
「頼んだぞ」
「……分かりました」
ローの強引さに仕方ない……と諦めた様子でペンギンは溜息をつくと、呼ばれるシャチのもとに行った。
なんだか分からないままの私の手はさっきからローに繋がれたままだ。
引っ張られた事で気付いたようにつられて足も動いて店から出る。
「行くぞ」
『待って……』
「遅ェ」
『歩くの早い……!』
思わず出た文句にローに怒鳴られると思ったらされなかった。
けど、チッ……と舌打ちされた瞬間、歩く速度が遅くなった事に驚いた。
合わせてくれてるの?
ローが私に?
嬉しい……と感じて、恐る恐るローの顔を窺った。
端正な横顔にドキリと心臓が鳴る。
視線に気付いたローが私を見てくれる。
「何だ?」
『……何でもない』
「見惚れたか?」
『!?』
図星を刺されて顔を赤くする私に、ローは追い討ちをかけるように顔を近づけてくる。
ちょっ……止めて。
確かにローとは寝たけど、好きな人の近づく気配にはどうしても緊張するし慣れない。
しかも、ここは通りなんだし……恥ずかしいから止めて。
逃げるように顔を背ければ、耳元で囁かれた。
「逃げるな」
う……。
そんなの無理。
「きっちり話つけるからな」
何の? と顔をあげた途端に触れるだけのキスをされた。
照れて何も言えなくなる私は俯く顔のままローと一緒に船へと戻った。
ローの部屋に連れられた私は促されるままにソファーに腰掛ける。
話をつけると言ったわりに何も話さないローは隣で足を組んでいる。
どうしていいのか分からない。
どこから何を話していいのか……。
考えて浮かんだのは何でローがあんな見せつけるような真似をしたのかという疑問。
聞いてみたいけど、なかなか聞けない私は情けなさで溜息を洩らしてしまう。
『……はあ~』
途端にローが私を見た。
目が合って逃げられない。
「どうした?」
『…………』
どうした? ……って、それは私が聞きたいよ。
黙ってれば、ローは見つめているだけで何も言ってくれない。
今日のローは……なんかおかしい。
目を逸らしてついさっきの酒場での事が思い出されて文句が口から出てしまった。
『なんで、あんな事したの?』
「分かんねェのか?」
『分かんないよ』
「本当に?」
覗きこまれる目に捕まって吸い込まれそうになる。
心臓が鳴ってローをまともに見れない。
『あ、困る……』
「何が?」
『だって……』
戸惑う私にローは意地悪いあの笑みを見せて耳に近づいて囁いた。
「お前が嫉妬すんのが見たかった」
『な……!?』
瞬間、信じられないと手を震わせる私にローは満足そうに笑う。
泣くほどとはな……とその目が語っていて、何も言えなくなる。
だからって、あんなキスとかしなくても……!
抗議して睨み返すと、ふん……と平然とした表情で見られた。
「お前もさっさと素直に嫌だって言えば良かっただろうが」
な、なんでそうなるの!?
私の気持ちも知っていて、そういう事が出来る神経が信じられない。
つい無言になってしまう私にローは溜息を零した。
「だんまりはなしだ。 言いたい事はちゃんと言え」
そんな……と情けない目でローを見上げた。
私はローみたいに自分に自信がない。
どう言っていいのか分からない。
「●●……」
『だって……ローは私の事分かってるみたいだけど、私にはローの気持ちが分からない……』
「分からねェのか」
頷く私にローは 「やっぱりそうか……」 と呟いた。
『初めての時から何も言ってくれないもん。 分からないよ……』
「お前が言う前に逃げたからだろ」
『それは怖くて聞けないよ。 ……嫌われたくない』
「嫌いな女を俺が抱くわけねェだろ」
『嘘……さんざん女と遊んでるくせに、説得力ないよ』
「…………」
私の指摘にローが珍しく黙り込んだ事に、私の走り出した言葉と気持ちは止まらない。
『私もそのうちの一人かなって……。 それでもローの事好きで、だから、私……っ!』
思わず口から出てしまった本音に、しまったと気付いて口元を手で抑えた。
視線を泳がせて、誤魔化そうとして失敗して俯いてしまう。
ど、どうしよう……。
冗談とか、嘘とか言って取り消そうか……と考える私の頭上からローの声が響いた。
「好きだ」
『え……?』
聞こえた言葉に信じられないと見上げた。
ローの真剣な表情に息を呑む。
私だけを映す瞳。
今、何が起きてるの?
現実を受け入れられない私の髪をローは掬うように触れる。
「●●が好きだ。 だから、おれからもう逃げるな」
ああ……。
ローの声はなんで私の心に浸み込むのだろう。
『本当に?』
「ああ……」
『夢とかじゃない?』
どうしても疑ってしまう私。
見つめるローの口元は緩んでフッ……と微笑した。
意地悪そうな光が少し瞳に射す。
な、何?
やっぱり……からかってたとか?
そういうオチなの?
な、泣きそう……。
ローは不安に襲われる私の両肩に腕をのせて、頭の後ろで絡ませた。
逃げられない私に顔を寄せてくる。
何を言われるのかと緊張で心臓が痛い。
怖い……。
耐えられなくて上擦った声が出た。
『ロー?』
「俺はお前に惚れてる。 嫉妬させて泣かせたいぐらいにな」
囁かれた理由に驚いて見開いてしまう。
一気に熱が顔に集まる。
『…………』
見つめる事しか出来ない私に、ローはニッと笑う口元を引き結ぶ。
「なあ」
『何?』
「お前の気持ちをちゃんと聞かせろ」
『さっき言ったよ……』
「あれは言ったうちに入らねェ」
私の心を聞き出そうとするローの目は私を求めて願うもので視線をはずせない。
そんな目……ずるいよ。
『……好き。 すごく好き』
絞り出すような声で伝えた。
告げて初めて実感する。
そう、私はローが好き。
目の前のどこまでも私を魅入らせるこの海賊が好きなのだ。
そして、ローも私を好きだと言ってくれた。
同じ思いを持ってる事に嬉しくてローに抱きついた。
『……他の人とか、もう嫌だからね』
「しねェよ、お前だけだ」
『うん……』
頷く私をローは包み込むように優しく抱きしめてくれる。
このままずっといたいぐらい幸せで、ローの温もりを感じた。
夢見心地の私がうっとりと目を閉じた瞬間、耳元の囁きに目が覚めて途端に逃げ出したくなった。
「今夜は思う存分可愛がってやる」
ニッと蠱惑的に上がる口端。
魅入る私がローの瞳に映っている。
思わず怖くなって腰を浮かせば、ローに引き寄せらる。
「逃がさねェ。 ●●が欲しい」
『……あ……っ…‥』
一瞬息を呑む私の呟く声ごとローに塞がれた。
熱いと感じる舌に蕩ける。
甘く溶かすように体に触れる手に私は委ねて夢に落ちた――
次の日、私が目覚めたらローはすでに起きていた。
寝顔を見られていた事に恥ずかしくなって、背を向けて布団の中に隠れようとして失敗した。
先にローに抱き締められてしまったからだ。
『……起こしてくれればいいのに』
「いつも見れなかったからな」
微笑のままの唇が額に触れる。
そんな優しい目で言われたら何も言えない。
慣れない私はすぐに起きようとしたら、ローに止められた。
包まれる腕は暖かくて気持ちがいい。
つい誘惑に負けてしまう。
じっとしてると、じわじわとローに好きと言われた事を思い出して顔が赤くなる。
今の状況は昨日までとは違い過ぎて戸惑ったし、急に不安になった。
気持ちを告げて両思いだけど……と。
『ロー?』
「何だ?」
耳元で返してくれる優しい声音。
『あの……』
言いだしにくい私はそこから言えなくなって黙ってしまう。
どうしよう……。
恋人だよね? なんて確認するのおかしいかな。
やっぱり今さらな感じもする。
でも……。
自信のない私は確認したくても聞けなかった。
何でこうも上手く言えないの。
黙り込む私をローはきっと変だと思ってる。
何か言わなきゃと口を開こうとする前に、ローに頬を包まれて見つめられてしまった。
「言いたい事は言えって、昨日も言っただろ」
『……うん』
「どうした?」
『私達って……恋人になるんだよね』
思い切って尋ねた私。
一瞬の間は気まずい空気が流れた。
窺う目が合い途端にローに盛大に溜息つかれた。
「呆れるな」
う……呆れられた。
そんな事言ったって……。
目を逸らそうとする私にローは触れるだけのキスをくれた。
そして、指先で私の体をゆっくりとなぞりはじめた。
辿っては止まり唇を寄せられ吸われる。
何で急にこんな事をするのか分からないと浮かぶ疑問ごとローは私を溶かす。
胸元で囁かれる声に熱が上がった。
「分からねェようなら……分かるまで抱く」
繰り返される行為に私の体は熱くなって息があがる。
『……んっ……ぁん……』
洩れてしまう声がいやでも甘くなる。
顔をあげるローと目が合って恥ずかしくなった。
でも、見つめられる真剣な目から逸らせない。
――分かったか……?
目で尋ねられた私は懸命に何度も頷いた。
私の自信がないという思いはローの向けられる気持ちも疑う事と同じだ。
私を好きだと告げるローを信じられないなんて、なんて私は馬鹿なのだろう。
『……ごめんなさい』
「謝って欲しいわけじゃねェ」
『でも……』
「分かったなら、それでいい」
『うん』
「●●……俺から離れんな」
紡がれる言葉に嬉しくて涙が滲む。
「俺だけ見てろ」
『……見てる。ローだけ……』
零れる雫をローに舐められた。
「しょっぱいな」
『なら、舐めないでよ』
「嫌だね……舐められたくねェなら、早く泣き止めよ」
逃げようとする私の頬を包んでローは舌で涙を掬う。
それはもう楽しそうに……。
いつしか止まった私の涙。
名残惜しそうに目蓋に口付けされて、優しい目で見つめられた。
くれる微笑と与えられるキスに胸が幸せでいっぱいになった。
抱き締められて、優しさに浸る私だけど、やっぱり長くは続かない。
何故なら、ローの手が再び動き出したからだ。
『ちょ……っと! 待って、何してるの?』
「何って続きに決まってんだろ」
『や、ヤダ!』
「却下。 俺はしたい。 諦めろ」
『ダメ!』
昨日はローの言葉通りの夜で、今も体のあちこちに力が上手く入らない。
頑張って突っ張る手にローは軽く眉をあげたかと思うと、ニィと口端をあげた。
「俺の事好きなんだろ」
『それとこれとは別!』
「残念……気が合わねェな。 俺は同じだ。 好きだからやりてェし、途中で止める気はねェ。 ……●●を抱きてェ」
『…………』
どうして、ローはこういう事を真顔で言えるの?
私は照れて何も言えなくなる。
ローの言葉だけで私は溶けてしまう。
目を伏せる私の耳元でローが囁く。
「……うんと気持ち良くしてやる」
『……っ、や……』
上がる声は耳朶を舐められて甘えたものになってしまう。
逃げられない私はローがくれる快感に流される。
初めて迎えたローとの朝。
ベッドから離れる事が出来たのは、いい加減お腹が空きすぎた私の鳴らす音のおかげ。
遅い朝食とも早い昼食ともいえるローとの食事の後の珈琲はいつもより甘い香りだった。
ええ~っ!?
心の中で叫ぶ私を女が邪魔された怒りも露わに睨みつけている。
その周りには酔いも吹っ飛んだ様子の仲間が、さっさと早く行けとばかりに手を振っていた。
何が起きてるの?。
どうしてこうなってるの?
酒場の扉をローが開ける瞬間にペンギンとシャチが合流してきた。
二人は細かい雑用を済ませてから来る事になっていた。
「あれ? 船長、もう帰るんスか?」
黒のサングラスが不思議そうに光る。
「ああ。 用は済んだからな」
いつも通りに頷くローに、ペンギンは薄い唇の端をあげた。
何、その笑い……。
私とローの事、ペンギンは知ってたの?
浮かぶ疑問はすぐに確信に変わる。
ふっ……と私を見て洩れる含み笑い。
信じられない!? と私はペンギンを見つめた。
一方、シャチは何も知らないみたいで、ご機嫌な足取りでずんずんと酒場の奥にいる仲間のところへと向かう。
女を抑える仲間達の姿をシャチは何故か見て笑う。
「楽しそうに盛りあがってんじゃん! やーっと飲めるぞ~! おーい、ペンギン!」
どこをどう見たら楽しそうに見えるのか私には分からない。
大声で呼ぶシャチに、ペンギンは手を上げて、ローと私に視線を向ける。
「それじゃあ、飲んできます」
「おい――」
微笑するペンギンをローが引き止めて、私には聞こえない声で何やら二人でこそこそ話してる。
訝しむ私をペンギンがちらりと見てから、さっきから私を睨む女を見た。
「……いいですけど、気乗りしませんね」
「お前の好みだろ?」
「否定しませんが……」
「頼んだぞ」
「……分かりました」
ローの強引さに仕方ない……と諦めた様子でペンギンは溜息をつくと、呼ばれるシャチのもとに行った。
なんだか分からないままの私の手はさっきからローに繋がれたままだ。
引っ張られた事で気付いたようにつられて足も動いて店から出る。
「行くぞ」
『待って……』
「遅ェ」
『歩くの早い……!』
思わず出た文句にローに怒鳴られると思ったらされなかった。
けど、チッ……と舌打ちされた瞬間、歩く速度が遅くなった事に驚いた。
合わせてくれてるの?
ローが私に?
嬉しい……と感じて、恐る恐るローの顔を窺った。
端正な横顔にドキリと心臓が鳴る。
視線に気付いたローが私を見てくれる。
「何だ?」
『……何でもない』
「見惚れたか?」
『!?』
図星を刺されて顔を赤くする私に、ローは追い討ちをかけるように顔を近づけてくる。
ちょっ……止めて。
確かにローとは寝たけど、好きな人の近づく気配にはどうしても緊張するし慣れない。
しかも、ここは通りなんだし……恥ずかしいから止めて。
逃げるように顔を背ければ、耳元で囁かれた。
「逃げるな」
う……。
そんなの無理。
「きっちり話つけるからな」
何の? と顔をあげた途端に触れるだけのキスをされた。
照れて何も言えなくなる私は俯く顔のままローと一緒に船へと戻った。
ローの部屋に連れられた私は促されるままにソファーに腰掛ける。
話をつけると言ったわりに何も話さないローは隣で足を組んでいる。
どうしていいのか分からない。
どこから何を話していいのか……。
考えて浮かんだのは何でローがあんな見せつけるような真似をしたのかという疑問。
聞いてみたいけど、なかなか聞けない私は情けなさで溜息を洩らしてしまう。
『……はあ~』
途端にローが私を見た。
目が合って逃げられない。
「どうした?」
『…………』
どうした? ……って、それは私が聞きたいよ。
黙ってれば、ローは見つめているだけで何も言ってくれない。
今日のローは……なんかおかしい。
目を逸らしてついさっきの酒場での事が思い出されて文句が口から出てしまった。
『なんで、あんな事したの?』
「分かんねェのか?」
『分かんないよ』
「本当に?」
覗きこまれる目に捕まって吸い込まれそうになる。
心臓が鳴ってローをまともに見れない。
『あ、困る……』
「何が?」
『だって……』
戸惑う私にローは意地悪いあの笑みを見せて耳に近づいて囁いた。
「お前が嫉妬すんのが見たかった」
『な……!?』
瞬間、信じられないと手を震わせる私にローは満足そうに笑う。
泣くほどとはな……とその目が語っていて、何も言えなくなる。
だからって、あんなキスとかしなくても……!
抗議して睨み返すと、ふん……と平然とした表情で見られた。
「お前もさっさと素直に嫌だって言えば良かっただろうが」
な、なんでそうなるの!?
私の気持ちも知っていて、そういう事が出来る神経が信じられない。
つい無言になってしまう私にローは溜息を零した。
「だんまりはなしだ。 言いたい事はちゃんと言え」
そんな……と情けない目でローを見上げた。
私はローみたいに自分に自信がない。
どう言っていいのか分からない。
「●●……」
『だって……ローは私の事分かってるみたいだけど、私にはローの気持ちが分からない……』
「分からねェのか」
頷く私にローは 「やっぱりそうか……」 と呟いた。
『初めての時から何も言ってくれないもん。 分からないよ……』
「お前が言う前に逃げたからだろ」
『それは怖くて聞けないよ。 ……嫌われたくない』
「嫌いな女を俺が抱くわけねェだろ」
『嘘……さんざん女と遊んでるくせに、説得力ないよ』
「…………」
私の指摘にローが珍しく黙り込んだ事に、私の走り出した言葉と気持ちは止まらない。
『私もそのうちの一人かなって……。 それでもローの事好きで、だから、私……っ!』
思わず口から出てしまった本音に、しまったと気付いて口元を手で抑えた。
視線を泳がせて、誤魔化そうとして失敗して俯いてしまう。
ど、どうしよう……。
冗談とか、嘘とか言って取り消そうか……と考える私の頭上からローの声が響いた。
「好きだ」
『え……?』
聞こえた言葉に信じられないと見上げた。
ローの真剣な表情に息を呑む。
私だけを映す瞳。
今、何が起きてるの?
現実を受け入れられない私の髪をローは掬うように触れる。
「●●が好きだ。 だから、おれからもう逃げるな」
ああ……。
ローの声はなんで私の心に浸み込むのだろう。
『本当に?』
「ああ……」
『夢とかじゃない?』
どうしても疑ってしまう私。
見つめるローの口元は緩んでフッ……と微笑した。
意地悪そうな光が少し瞳に射す。
な、何?
やっぱり……からかってたとか?
そういうオチなの?
な、泣きそう……。
ローは不安に襲われる私の両肩に腕をのせて、頭の後ろで絡ませた。
逃げられない私に顔を寄せてくる。
何を言われるのかと緊張で心臓が痛い。
怖い……。
耐えられなくて上擦った声が出た。
『ロー?』
「俺はお前に惚れてる。 嫉妬させて泣かせたいぐらいにな」
囁かれた理由に驚いて見開いてしまう。
一気に熱が顔に集まる。
『…………』
見つめる事しか出来ない私に、ローはニッと笑う口元を引き結ぶ。
「なあ」
『何?』
「お前の気持ちをちゃんと聞かせろ」
『さっき言ったよ……』
「あれは言ったうちに入らねェ」
私の心を聞き出そうとするローの目は私を求めて願うもので視線をはずせない。
そんな目……ずるいよ。
『……好き。 すごく好き』
絞り出すような声で伝えた。
告げて初めて実感する。
そう、私はローが好き。
目の前のどこまでも私を魅入らせるこの海賊が好きなのだ。
そして、ローも私を好きだと言ってくれた。
同じ思いを持ってる事に嬉しくてローに抱きついた。
『……他の人とか、もう嫌だからね』
「しねェよ、お前だけだ」
『うん……』
頷く私をローは包み込むように優しく抱きしめてくれる。
このままずっといたいぐらい幸せで、ローの温もりを感じた。
夢見心地の私がうっとりと目を閉じた瞬間、耳元の囁きに目が覚めて途端に逃げ出したくなった。
「今夜は思う存分可愛がってやる」
ニッと蠱惑的に上がる口端。
魅入る私がローの瞳に映っている。
思わず怖くなって腰を浮かせば、ローに引き寄せらる。
「逃がさねェ。 ●●が欲しい」
『……あ……っ…‥』
一瞬息を呑む私の呟く声ごとローに塞がれた。
熱いと感じる舌に蕩ける。
甘く溶かすように体に触れる手に私は委ねて夢に落ちた――
次の日、私が目覚めたらローはすでに起きていた。
寝顔を見られていた事に恥ずかしくなって、背を向けて布団の中に隠れようとして失敗した。
先にローに抱き締められてしまったからだ。
『……起こしてくれればいいのに』
「いつも見れなかったからな」
微笑のままの唇が額に触れる。
そんな優しい目で言われたら何も言えない。
慣れない私はすぐに起きようとしたら、ローに止められた。
包まれる腕は暖かくて気持ちがいい。
つい誘惑に負けてしまう。
じっとしてると、じわじわとローに好きと言われた事を思い出して顔が赤くなる。
今の状況は昨日までとは違い過ぎて戸惑ったし、急に不安になった。
気持ちを告げて両思いだけど……と。
『ロー?』
「何だ?」
耳元で返してくれる優しい声音。
『あの……』
言いだしにくい私はそこから言えなくなって黙ってしまう。
どうしよう……。
恋人だよね? なんて確認するのおかしいかな。
やっぱり今さらな感じもする。
でも……。
自信のない私は確認したくても聞けなかった。
何でこうも上手く言えないの。
黙り込む私をローはきっと変だと思ってる。
何か言わなきゃと口を開こうとする前に、ローに頬を包まれて見つめられてしまった。
「言いたい事は言えって、昨日も言っただろ」
『……うん』
「どうした?」
『私達って……恋人になるんだよね』
思い切って尋ねた私。
一瞬の間は気まずい空気が流れた。
窺う目が合い途端にローに盛大に溜息つかれた。
「呆れるな」
う……呆れられた。
そんな事言ったって……。
目を逸らそうとする私にローは触れるだけのキスをくれた。
そして、指先で私の体をゆっくりとなぞりはじめた。
辿っては止まり唇を寄せられ吸われる。
何で急にこんな事をするのか分からないと浮かぶ疑問ごとローは私を溶かす。
胸元で囁かれる声に熱が上がった。
「分からねェようなら……分かるまで抱く」
繰り返される行為に私の体は熱くなって息があがる。
『……んっ……ぁん……』
洩れてしまう声がいやでも甘くなる。
顔をあげるローと目が合って恥ずかしくなった。
でも、見つめられる真剣な目から逸らせない。
――分かったか……?
目で尋ねられた私は懸命に何度も頷いた。
私の自信がないという思いはローの向けられる気持ちも疑う事と同じだ。
私を好きだと告げるローを信じられないなんて、なんて私は馬鹿なのだろう。
『……ごめんなさい』
「謝って欲しいわけじゃねェ」
『でも……』
「分かったなら、それでいい」
『うん』
「●●……俺から離れんな」
紡がれる言葉に嬉しくて涙が滲む。
「俺だけ見てろ」
『……見てる。ローだけ……』
零れる雫をローに舐められた。
「しょっぱいな」
『なら、舐めないでよ』
「嫌だね……舐められたくねェなら、早く泣き止めよ」
逃げようとする私の頬を包んでローは舌で涙を掬う。
それはもう楽しそうに……。
いつしか止まった私の涙。
名残惜しそうに目蓋に口付けされて、優しい目で見つめられた。
くれる微笑と与えられるキスに胸が幸せでいっぱいになった。
抱き締められて、優しさに浸る私だけど、やっぱり長くは続かない。
何故なら、ローの手が再び動き出したからだ。
『ちょ……っと! 待って、何してるの?』
「何って続きに決まってんだろ」
『や、ヤダ!』
「却下。 俺はしたい。 諦めろ」
『ダメ!』
昨日はローの言葉通りの夜で、今も体のあちこちに力が上手く入らない。
頑張って突っ張る手にローは軽く眉をあげたかと思うと、ニィと口端をあげた。
「俺の事好きなんだろ」
『それとこれとは別!』
「残念……気が合わねェな。 俺は同じだ。 好きだからやりてェし、途中で止める気はねェ。 ……●●を抱きてェ」
『…………』
どうして、ローはこういう事を真顔で言えるの?
私は照れて何も言えなくなる。
ローの言葉だけで私は溶けてしまう。
目を伏せる私の耳元でローが囁く。
「……うんと気持ち良くしてやる」
『……っ、や……』
上がる声は耳朶を舐められて甘えたものになってしまう。
逃げられない私はローがくれる快感に流される。
初めて迎えたローとの朝。
ベッドから離れる事が出来たのは、いい加減お腹が空きすぎた私の鳴らす音のおかげ。
遅い朝食とも早い昼食ともいえるローとの食事の後の珈琲はいつもより甘い香りだった。
おしまい。