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次の日の早朝。
ベッドに座って、いまいちはっきりしない頭が嫌で髪を掻き上げる。
昨日の白熊は――と部屋を出たら、ペンギンとシャチはすでに起きていた。
「おはよーさん!」
「ああ」
軽い声はシャチで白熊に飯をやっていた。
「コイツが腹減ったーっ! て言うから、ペンギンを起こして作ってもらった。 今、食わしてるトコだ」
それは見れば分かる。
ペンギンはシャチの向かいに座っているが、起こされた事を気にしている様子はないようだ。
「飯にするか?」
「…………」
いつも感じる事だが、起きてすぐというのは食べる気しねェ。
――が、シャチは腹が減ってるようだ。
「コイツに飯やっててくれよ。 俺、ペンギンの朝飯作るの手伝うからさ!」
俺の答えを聞かずに、シャチは白熊を押し付けてきて、ペンギンを連れてキッチンに行った。
残る俺は何で俺がと思ったが――見上げる白熊の黒い目と合った。
口を開けて待つ白熊。
まだ、一晩しかいねェのに慣れ過ぎじゃねェのか。
シャチの奴が甘やかしてるせいだな。
ひたすら俺を待つ白熊に、仕方ねェ……と粥をやろうとしたが手を止めた。
人の言葉が分かるなら聞いてみるか。
「欲しいか?」
「ガウ」
揺れる瞳と口から出た声。
どうやら、本当に理解しているようだ。
それならば――
「 “ガウ” じゃねェ “ハイ” だ」
見つめる瞳は考えているんだろう。
口を動かし、なんとか言おうとしているが、どれも “ガウ” としか出ない。
「…………」
ま、いい。
話せる確証はねェんだ。
こっちの言ってる事が分かってるならそれでいい。
息をついて、白熊の口に粥を掬ったスプーンを近づけた瞬間――
「ガイ!」
「違う」
俺の一言に白熊の首はカクン……と項垂れた。
気落ちした白熊の頭を撫でて、励ましてやる。
「すぐに出来るわけねェだろ。 そのうち、言えるようになれ」
顔を上げた白熊は目を輝かせて 「ガイ!」 と返した口に俺は粥を上げた。
朝飯を終わる頃には俺の頭もはっきりしていた。
昨日の雪は止んでいた。
診療所に行く前に、いつもの空き地でペンギンとシャチを相手に鍛錬する。
雨だろうが雪だろうが時間は決まってるから、一緒に住む前のペンギンも俺の所に泊まらないシャチも必ず来た。
滑る雪の中でやるのは怪我のもとではあるが、海賊になれば戦う場所なんて選べねェ。
だから、天候が悪かろうが鍛錬は日課だ。
今日から白熊もいる。
そういえば、シャチに昨晩のペンギンとの話をしたら、予想通りの反応に笑っちまった。
「スゲー! じゃ、俺が教えてやっからな!」
「ガイ!」
喜んで話し掛けるシャチに白熊は覚えた返事を返すと、可愛いヤツ! とシャチは頭を撫でていた。
まあ、白熊は体力が戻ったら始めればいいさ。
鍛錬が終わった後、いつもならペンギンは一旦戻り、シャチはどこかに行くはずが今日は違った。
「俺、部屋でコイツと留守番してっから」
シャチの言う事に今さらだが気付いた。
昼間、俺とペンギンは仕事でいないから、あの部屋には誰もいねェって事で、白熊だけになる。
「飯の作り方もさっきペンギンに教えてもらったしな」
「そうか」
「おお! だから、安心しろよ!」
「任せる」
笑顔のシャチに、俺は頼むと診療所へと行った。
汗が滲む体は診療所のシャワーを借りて流す。
モートはこれを嫌がっているのを知っているが無視していた。
診療所が開く前に終わらせてるんだから、文句は言わせねェ。
勢いよく出るシャワーの熱い湯を受けながら、今頃シャチと白熊は何やってんだろうなと考えた。
真っ先に浮かぶのはソファで一緒に昼寝してる姿と飯を食ってるところだ。
後は何してんだ? と考えて、口元が緩む。
俺の疑問は夜、家に帰れば分かる事だと、シャワーを止めた。
そして現在、帰って来た直後の俺は玄関で突っ立ていた。
廊下の先の部屋の奥のソファに座るシャチと白熊。
シャチは白熊を抱き、航海術の本を声に出して読んでいた。
楽しそうに話すシャチを白熊は聞いている。
「……いいか、航海中で一番気をつけなくちゃいけねェのは海に落ちねェ事だ。 船はすぐに止まらねェし、凶暴な海の生物がすぐに襲ってくるしな。 落ちたら死んだと思え。 だから、お前は落ちんなよ」
「ガイ!」
「そうか! 分かったか! 頭いいなぁ~、お前!」
シャチに撫でられる白熊は嬉しそうだった。
何だ……この俺の家での、ほのぼの風景。
佇む俺の背後からペンギンが帰ってきた。
「今日は先だったようだな」
「おい」
「はい?」
「あれは何だ?」
「何だと言われても、シャチと白熊だが……どうかしたのか?」
どうかも何も、こいつはあれを見て何も感じないのか?
俺の疑問は顔に出ていたんだろう、にペンギンは苦笑した。
「あの後、家に帰ってから、ずっとあの調子だったからな」
「ふーん」
としか返せない俺にシャチは気付いて笑う。
「お! ロー、ペンギンおかえり!」
片手を上げるシャチを真似て、白熊も上げて 「ガウ!」 と言った。
ペンギンはというとシャチと白熊に微笑すると、白熊の頭を撫でていた。
「ただいま。 腹減っただろ? すぐ作ってやる」
慣れた調子で白熊はペンギンに 「ガウガウ!」 と答える様子に、俺は信じられないと見ていた。
たった一日で馴染みすぎだろ。
言葉が分かるせいだろうが、獣の癖に警戒心がなさ過ぎる。
「…………」
無言で椅子に座る俺に、シャチが白熊を抱いて来た。
こいつは何でいちいち抱いてるんだ。
朝も食ってたし、白熊はもう歩けるだろ。
こういう厳しく出来ない所がシャチのダメな所だ。
女を甘やかしてるのも見て、一度聞いたら、シャチからしたら自分が甘えてるらしい。
俺には理解出来ねェ。
ペンギンはしっかりしてるせいで、優しいと勘違いされるが、冷たい所がある。
まあ、仲間に甘い所はシャチと同じか。
シャチに任された白熊を見た。
「ガウ?」
この白熊は俺が連れてくと決めたから、シャチとペンギンからしたら仲間だ。
慣れて当然で、二人と白熊の順応性の早さに俺は口端が上がる。
そうでないと海賊なんて出来ねェ。
夕飯を食い終わると、シャチが 「なあ」 と話し掛けて来た。
「何だ?」
「こいつの名前つけてやろうぜ!」
シャチの提案にペンギンは 「そういえばそうだな」 と呟いて頷いた。
「ローがつけてやればいいだろ」
ペンギン、シャチがどうするんだと俺を見た。
そして、白熊も意味が分かっているのか期待する目で見ている。
「…………」
考えてみるが名前なんて思い浮かばねェな。
「シャチがつけろ」
「俺がつけていいのか?」
「つけてェから聞いてきたんだろ」
「分かってた?」
「ああ」
頷く俺にシャチは 「よっしゃー!」 と叫び、聞いてくれと言わんばかりの目で話す。
「本読んでて思いついたんだけどさ」
シャチが言うにはBay・湾とPort・港の頭文字をつけて “バポ” にしようと言ってきた。
何か違うな、それに――
「それじゃあ、バカでアホっぽいな」
冷静なペンギンの言葉と白熊の不満そうな顔にシャチは項垂れた。
「駄目か~?」
「ガイ」
意外にも自己主張も出来る白熊のようだ。
面白ェな。
黙って見ている俺に再び視線が集まった。
何だよ?
俺に何を期待してんだ?
「…………」
俺がつけねェといけねェのか。
……仕方ねェな。
「――なら、発音でとって “ベポ” でどうだ?」
シン……と静まる部屋。
お前ら……俺に言わせたんだ、なんか反応しろよ。
内心、ムッとする俺と白熊の目が合った。
「ガイ!」
何が気に入ったのか知らねェが、白熊は機嫌良く返事をした。
ペンギンが息をついて微笑した。
「決まりだな」
「そうだな」
シャチはという笑顔を見せて、白熊を抱き上げた。
「ローにつけてもらって良かったなー! 今からお前は “ベポ” だぞ!」
「ガイガイ!」
「何だ、その返事!」
「わははは!」
楽しそうに笑うシャチと嬉しそうなベポ。
見守るペンギンの柔らかい微笑につられて俺の口端が上がる。
こんな日も悪くねェと思った。
こいつらと海に出るのが楽しみだ――と。
――フッフッフッ……!
一瞬、遠くで奴の含み笑いが聞こえた気がした。
聞こえるわけもないのにだ。
忍び寄るような奴の黒い含み笑い。
何度も聞いているが慣れないし嫌悪と不快感が走る。
眉をひそめる俺にペンギンが気付いて訝しんだ。
「どうした?」
「……何でもねェ」
答える俺にペンギンはそ「そうか……」 と呟くが納得してないようだったから、大丈夫だと俺は笑った。
ベッドに座って、いまいちはっきりしない頭が嫌で髪を掻き上げる。
昨日の白熊は――と部屋を出たら、ペンギンとシャチはすでに起きていた。
「おはよーさん!」
「ああ」
軽い声はシャチで白熊に飯をやっていた。
「コイツが腹減ったーっ! て言うから、ペンギンを起こして作ってもらった。 今、食わしてるトコだ」
それは見れば分かる。
ペンギンはシャチの向かいに座っているが、起こされた事を気にしている様子はないようだ。
「飯にするか?」
「…………」
いつも感じる事だが、起きてすぐというのは食べる気しねェ。
――が、シャチは腹が減ってるようだ。
「コイツに飯やっててくれよ。 俺、ペンギンの朝飯作るの手伝うからさ!」
俺の答えを聞かずに、シャチは白熊を押し付けてきて、ペンギンを連れてキッチンに行った。
残る俺は何で俺がと思ったが――見上げる白熊の黒い目と合った。
口を開けて待つ白熊。
まだ、一晩しかいねェのに慣れ過ぎじゃねェのか。
シャチの奴が甘やかしてるせいだな。
ひたすら俺を待つ白熊に、仕方ねェ……と粥をやろうとしたが手を止めた。
人の言葉が分かるなら聞いてみるか。
「欲しいか?」
「ガウ」
揺れる瞳と口から出た声。
どうやら、本当に理解しているようだ。
それならば――
「 “ガウ” じゃねェ “ハイ” だ」
見つめる瞳は考えているんだろう。
口を動かし、なんとか言おうとしているが、どれも “ガウ” としか出ない。
「…………」
ま、いい。
話せる確証はねェんだ。
こっちの言ってる事が分かってるならそれでいい。
息をついて、白熊の口に粥を掬ったスプーンを近づけた瞬間――
「ガイ!」
「違う」
俺の一言に白熊の首はカクン……と項垂れた。
気落ちした白熊の頭を撫でて、励ましてやる。
「すぐに出来るわけねェだろ。 そのうち、言えるようになれ」
顔を上げた白熊は目を輝かせて 「ガイ!」 と返した口に俺は粥を上げた。
朝飯を終わる頃には俺の頭もはっきりしていた。
昨日の雪は止んでいた。
診療所に行く前に、いつもの空き地でペンギンとシャチを相手に鍛錬する。
雨だろうが雪だろうが時間は決まってるから、一緒に住む前のペンギンも俺の所に泊まらないシャチも必ず来た。
滑る雪の中でやるのは怪我のもとではあるが、海賊になれば戦う場所なんて選べねェ。
だから、天候が悪かろうが鍛錬は日課だ。
今日から白熊もいる。
そういえば、シャチに昨晩のペンギンとの話をしたら、予想通りの反応に笑っちまった。
「スゲー! じゃ、俺が教えてやっからな!」
「ガイ!」
喜んで話し掛けるシャチに白熊は覚えた返事を返すと、可愛いヤツ! とシャチは頭を撫でていた。
まあ、白熊は体力が戻ったら始めればいいさ。
鍛錬が終わった後、いつもならペンギンは一旦戻り、シャチはどこかに行くはずが今日は違った。
「俺、部屋でコイツと留守番してっから」
シャチの言う事に今さらだが気付いた。
昼間、俺とペンギンは仕事でいないから、あの部屋には誰もいねェって事で、白熊だけになる。
「飯の作り方もさっきペンギンに教えてもらったしな」
「そうか」
「おお! だから、安心しろよ!」
「任せる」
笑顔のシャチに、俺は頼むと診療所へと行った。
汗が滲む体は診療所のシャワーを借りて流す。
モートはこれを嫌がっているのを知っているが無視していた。
診療所が開く前に終わらせてるんだから、文句は言わせねェ。
勢いよく出るシャワーの熱い湯を受けながら、今頃シャチと白熊は何やってんだろうなと考えた。
真っ先に浮かぶのはソファで一緒に昼寝してる姿と飯を食ってるところだ。
後は何してんだ? と考えて、口元が緩む。
俺の疑問は夜、家に帰れば分かる事だと、シャワーを止めた。
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そして現在、帰って来た直後の俺は玄関で突っ立ていた。
廊下の先の部屋の奥のソファに座るシャチと白熊。
シャチは白熊を抱き、航海術の本を声に出して読んでいた。
楽しそうに話すシャチを白熊は聞いている。
「……いいか、航海中で一番気をつけなくちゃいけねェのは海に落ちねェ事だ。 船はすぐに止まらねェし、凶暴な海の生物がすぐに襲ってくるしな。 落ちたら死んだと思え。 だから、お前は落ちんなよ」
「ガイ!」
「そうか! 分かったか! 頭いいなぁ~、お前!」
シャチに撫でられる白熊は嬉しそうだった。
何だ……この俺の家での、ほのぼの風景。
佇む俺の背後からペンギンが帰ってきた。
「今日は先だったようだな」
「おい」
「はい?」
「あれは何だ?」
「何だと言われても、シャチと白熊だが……どうかしたのか?」
どうかも何も、こいつはあれを見て何も感じないのか?
俺の疑問は顔に出ていたんだろう、にペンギンは苦笑した。
「あの後、家に帰ってから、ずっとあの調子だったからな」
「ふーん」
としか返せない俺にシャチは気付いて笑う。
「お! ロー、ペンギンおかえり!」
片手を上げるシャチを真似て、白熊も上げて 「ガウ!」 と言った。
ペンギンはというとシャチと白熊に微笑すると、白熊の頭を撫でていた。
「ただいま。 腹減っただろ? すぐ作ってやる」
慣れた調子で白熊はペンギンに 「ガウガウ!」 と答える様子に、俺は信じられないと見ていた。
たった一日で馴染みすぎだろ。
言葉が分かるせいだろうが、獣の癖に警戒心がなさ過ぎる。
「…………」
無言で椅子に座る俺に、シャチが白熊を抱いて来た。
こいつは何でいちいち抱いてるんだ。
朝も食ってたし、白熊はもう歩けるだろ。
こういう厳しく出来ない所がシャチのダメな所だ。
女を甘やかしてるのも見て、一度聞いたら、シャチからしたら自分が甘えてるらしい。
俺には理解出来ねェ。
ペンギンはしっかりしてるせいで、優しいと勘違いされるが、冷たい所がある。
まあ、仲間に甘い所はシャチと同じか。
シャチに任された白熊を見た。
「ガウ?」
この白熊は俺が連れてくと決めたから、シャチとペンギンからしたら仲間だ。
慣れて当然で、二人と白熊の順応性の早さに俺は口端が上がる。
そうでないと海賊なんて出来ねェ。
夕飯を食い終わると、シャチが 「なあ」 と話し掛けて来た。
「何だ?」
「こいつの名前つけてやろうぜ!」
シャチの提案にペンギンは 「そういえばそうだな」 と呟いて頷いた。
「ローがつけてやればいいだろ」
ペンギン、シャチがどうするんだと俺を見た。
そして、白熊も意味が分かっているのか期待する目で見ている。
「…………」
考えてみるが名前なんて思い浮かばねェな。
「シャチがつけろ」
「俺がつけていいのか?」
「つけてェから聞いてきたんだろ」
「分かってた?」
「ああ」
頷く俺にシャチは 「よっしゃー!」 と叫び、聞いてくれと言わんばかりの目で話す。
「本読んでて思いついたんだけどさ」
シャチが言うにはBay・湾とPort・港の頭文字をつけて “バポ” にしようと言ってきた。
何か違うな、それに――
「それじゃあ、バカでアホっぽいな」
冷静なペンギンの言葉と白熊の不満そうな顔にシャチは項垂れた。
「駄目か~?」
「ガイ」
意外にも自己主張も出来る白熊のようだ。
面白ェな。
黙って見ている俺に再び視線が集まった。
何だよ?
俺に何を期待してんだ?
「…………」
俺がつけねェといけねェのか。
……仕方ねェな。
「――なら、発音でとって “ベポ” でどうだ?」
シン……と静まる部屋。
お前ら……俺に言わせたんだ、なんか反応しろよ。
内心、ムッとする俺と白熊の目が合った。
「ガイ!」
何が気に入ったのか知らねェが、白熊は機嫌良く返事をした。
ペンギンが息をついて微笑した。
「決まりだな」
「そうだな」
シャチはという笑顔を見せて、白熊を抱き上げた。
「ローにつけてもらって良かったなー! 今からお前は “ベポ” だぞ!」
「ガイガイ!」
「何だ、その返事!」
「わははは!」
楽しそうに笑うシャチと嬉しそうなベポ。
見守るペンギンの柔らかい微笑につられて俺の口端が上がる。
こんな日も悪くねェと思った。
こいつらと海に出るのが楽しみだ――と。
――フッフッフッ……!
一瞬、遠くで奴の含み笑いが聞こえた気がした。
聞こえるわけもないのにだ。
忍び寄るような奴の黒い含み笑い。
何度も聞いているが慣れないし嫌悪と不快感が走る。
眉をひそめる俺にペンギンが気付いて訝しんだ。
「どうした?」
「……何でもねェ」
答える俺にペンギンはそ「そうか……」 と呟くが納得してないようだったから、大丈夫だと俺は笑った。