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“黒い影~前編”
俺の青白い光が瞬時に広がりドームとなった。
直後、倒れていたシャチが黒い影を払い飛ばした。
宙に浮いた黒い影を俺はすかさずナイフで一閃する。
真っ二つに斬れた体は獣の声をあげ、積もる雪へと落ちた。
蠢く黒い影は動いた分だけ雪に沈む。
その側でシャチは立ち上がると、落ちたキャスケット帽を拾い、体を庇う様子もなく雪を払っていた。
シャチの左腕は服が破れてはいたが、それほど血は滲ませてない。
大した事なさそうだ……と、安堵の息をついた。
しかし、何がシャチを襲ったんだと気になった。
俺達の見下ろした先には中型の犬ぐらいの黒い生き物が足をバタバタとさせている。
何だ、この生き物……。
俺と同じ様にペンギンも眺めていたが、シャチは何やら好奇心で目を輝かせている。
「何、こいつ?」
しゃがむとシャチは無警戒にも上半身と思われる方に手を伸ばした。
「おい! 止めろ、シャチ!」
即座にペンギンが叫び、シャチの手が止まった瞬間、謎の生き物が口を開けた。
小さいが白く鋭い牙がシャチの指先を狙う。
「ガウッ!」
声と噛みつく音と同時に、すぐにシャチは引っ込めた。
「あっぶね……!」
当たり前だ……アホ。
ペンギンの 「何やってんだ……」 と呟く声と溜息が聞こえた。
「……で、これどうしますか?」
それを俺に聞くのか……ペンギン。
こんな珍妙で凶暴そうな生き物を連れてなんか帰らねェぞ。
部屋に入れたくねェし、なんか臭いし匂うぞ……こいつ。
「放っておけ」
帰ろうと踵を返そうとする俺をシャチが煩く止めて来た。
「ええーっ! 面白そうじゃん! 連れてこうぜ!」
ええーっ! じゃねェし、冗談じゃねェ。
「お前、襲われたうえに怪我して、よくそんなもん連れてく気になるな」
「ん~別に大した事ねェし。 それより、これきっと噂の怪物だぞ!?」
「だから何だ? 俺は興味ねェ」
「なんだよ、いいじゃんか……なー?」
なー? ……お前は一体誰に同意を求めてんだ。
なんとかしろ! とペンギンを見たら、溜息で分かりましたと答えた。
「シャチ、そんなもの……」
ペンギンが、しゃがんで生き物を見つめるシャチの肩に手を置いた。
その時、シャチが小さく 「あ……」 と漏らした。
どうしたと見れば、そいつは動かなくなっていた。
能力でいくら斬ろうと死なねェのに何でだ? と見ていれば、シャチがそいつの体を不用意に揺すった。
こいつ……平気で触りやがって。
本当に懲りないというか、考えてねェな。
知らねェぞ、また噛みつかれてもと思ったが、そいつは動かない。
死んだかと見ていれば、そいつは弱々しく口を開けただけだった。
何だ、生きてんじゃねェか。
なんか、今にも死にそうだけどな。
さっきまで、ばたばたと動かしていた足はもう動いてねェ。
冷たい雪に沈んでいた。
放っておいたら、朝には死んでそうだ。
弱っていくそいつが、だんだん憐れに見えてきた。
目の前で死んでいく奴なんて、何度も見てきたはずなのに――
動物が弱って死ぬ姿は人とは違う感じがした。
その日、その時の生と死しか見てない。
そいつの瞼が開いて俺を見上げてきた。
瞳は黒かったが、噂のように不気味に光ってなどいない。
生きたい――と伝える目は純粋で汚れてなかった。
言葉なんて、こいつに分かるわけないのに尋ねた。
「生きたいか?」
そいつは黒い瞳を揺らした。
「襲わねェと約束するなら、俺が生かしてやる――来るか?」
この時、俺は何こいつに問いかけてると思った。
半分可笑しいぞと言う俺と、聞いてやれと言う俺。
そいつはゆらりと顔をあげて返事をした。
開いた口は形を作り言葉を伝える――行く……と。
実際は消え入りそうな 「ガウッ……」 だったけどな。
俺には “行く” と聞こえた。
「シャチ、体をつけてそいつを連れて来い」
「ああ!」
シャチはそいつの体を喜んで拾い、「良かったなー!」 とか言いながらくっつけていた。
大人しくシャチに抱えられたそいつは約束通り、襲う事はなかった。
俺の青白い光が瞬時に広がりドームとなった。
直後、倒れていたシャチが黒い影を払い飛ばした。
宙に浮いた黒い影を俺はすかさずナイフで一閃する。
真っ二つに斬れた体は獣の声をあげ、積もる雪へと落ちた。
蠢く黒い影は動いた分だけ雪に沈む。
その側でシャチは立ち上がると、落ちたキャスケット帽を拾い、体を庇う様子もなく雪を払っていた。
シャチの左腕は服が破れてはいたが、それほど血は滲ませてない。
大した事なさそうだ……と、安堵の息をついた。
しかし、何がシャチを襲ったんだと気になった。
俺達の見下ろした先には中型の犬ぐらいの黒い生き物が足をバタバタとさせている。
何だ、この生き物……。
俺と同じ様にペンギンも眺めていたが、シャチは何やら好奇心で目を輝かせている。
「何、こいつ?」
しゃがむとシャチは無警戒にも上半身と思われる方に手を伸ばした。
「おい! 止めろ、シャチ!」
即座にペンギンが叫び、シャチの手が止まった瞬間、謎の生き物が口を開けた。
小さいが白く鋭い牙がシャチの指先を狙う。
「ガウッ!」
声と噛みつく音と同時に、すぐにシャチは引っ込めた。
「あっぶね……!」
当たり前だ……アホ。
ペンギンの 「何やってんだ……」 と呟く声と溜息が聞こえた。
「……で、これどうしますか?」
それを俺に聞くのか……ペンギン。
こんな珍妙で凶暴そうな生き物を連れてなんか帰らねェぞ。
部屋に入れたくねェし、なんか臭いし匂うぞ……こいつ。
「放っておけ」
帰ろうと踵を返そうとする俺をシャチが煩く止めて来た。
「ええーっ! 面白そうじゃん! 連れてこうぜ!」
ええーっ! じゃねェし、冗談じゃねェ。
「お前、襲われたうえに怪我して、よくそんなもん連れてく気になるな」
「ん~別に大した事ねェし。 それより、これきっと噂の怪物だぞ!?」
「だから何だ? 俺は興味ねェ」
「なんだよ、いいじゃんか……なー?」
なー? ……お前は一体誰に同意を求めてんだ。
なんとかしろ! とペンギンを見たら、溜息で分かりましたと答えた。
「シャチ、そんなもの……」
ペンギンが、しゃがんで生き物を見つめるシャチの肩に手を置いた。
その時、シャチが小さく 「あ……」 と漏らした。
どうしたと見れば、そいつは動かなくなっていた。
能力でいくら斬ろうと死なねェのに何でだ? と見ていれば、シャチがそいつの体を不用意に揺すった。
こいつ……平気で触りやがって。
本当に懲りないというか、考えてねェな。
知らねェぞ、また噛みつかれてもと思ったが、そいつは動かない。
死んだかと見ていれば、そいつは弱々しく口を開けただけだった。
何だ、生きてんじゃねェか。
なんか、今にも死にそうだけどな。
さっきまで、ばたばたと動かしていた足はもう動いてねェ。
冷たい雪に沈んでいた。
放っておいたら、朝には死んでそうだ。
弱っていくそいつが、だんだん憐れに見えてきた。
目の前で死んでいく奴なんて、何度も見てきたはずなのに――
動物が弱って死ぬ姿は人とは違う感じがした。
その日、その時の生と死しか見てない。
そいつの瞼が開いて俺を見上げてきた。
瞳は黒かったが、噂のように不気味に光ってなどいない。
生きたい――と伝える目は純粋で汚れてなかった。
言葉なんて、こいつに分かるわけないのに尋ねた。
「生きたいか?」
そいつは黒い瞳を揺らした。
「襲わねェと約束するなら、俺が生かしてやる――来るか?」
この時、俺は何こいつに問いかけてると思った。
半分可笑しいぞと言う俺と、聞いてやれと言う俺。
そいつはゆらりと顔をあげて返事をした。
開いた口は形を作り言葉を伝える――行く……と。
実際は消え入りそうな 「ガウッ……」 だったけどな。
俺には “行く” と聞こえた。
「シャチ、体をつけてそいつを連れて来い」
「ああ!」
シャチはそいつの体を喜んで拾い、「良かったなー!」 とか言いながらくっつけていた。
大人しくシャチに抱えられたそいつは約束通り、襲う事はなかった。