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“悪魔の実~後編”
こうして、天気のいい空の下を歩いていたが、出掛けなきゃよかった。
たった今、後悔している。
奴が来たからだ。
「フフフフフフ……!」
なんかいつもより “フ” が多い感じがする。
「よお……」
「何だよ」
「向こうで少し話そうじゃねェか」
奴が顎をしゃくった先の路地に俺は仕方なくついて行った。
細い路地に入り、奴と向き合う。
奴はデカいから立っているだけで路地が塞がる。
向かいの路地からの日の光は奴の背中を照らし、俺に奴の影を落とした。
今日は何だか不気味なほど機嫌がいいように見えた。
「フッフッフッ……今日はお前にいいモンを持って来た」
含み笑いをしながら奴はデカい手に奇妙な果物を見せた。
見た事はねェが何かの本で読んだ事があった。
唐草模様のような柄の果実。
「悪魔の実か?」
「そうだ」
奴の口端が 「フフ……」 とあがり、俺の目の前に実をずい……と出して見せる。
「超人系能力のオペオペの実だ。 この実を食えば改造自在人間になれる」
そう言って奴は俺に悪魔の実の図鑑を手渡す。
「栞のトコを見てみろ」
俺は好奇心に勝てなくて図鑑を開いた。
そこには――
オペオペの実:超人系悪魔の実。 改造自在人間。 ROOMというドーム状の特殊なサークルを作る事が出来る。 ROOM内では能力者が自由自在に物質、生物、全てを操り斬る事が可能。 浮遊、転移、距離、材質、大きさをROOM内で好きなように改造出来る。 斬られた肉体は痛みも出血もなく切断されたパーツとして接着出来る。 ROOM内で起きた事はROOMが喪失したり外に出てもその効果は持続する。
何だこれ……?
これが悪魔の実の能力か?
他にもいろいろあるな。
次のページを捲ろうとした途端に閉じられて奴に取られた。
一瞬、ムカッとして奴を睨む。
「フフフ……図鑑を見せに来たわけじゃねェ」
「じゃ、何だよ?」
悪魔の実の自慢か?
そんな陳腐な自慢なんかする奴じゃないはずだ。
焦れる俺に勿体ぶったように奴は笑う。
「……フッフッフッ、こいつをお前にやろうと思ってな」
「いらねェ」
お前が持って来た、そんな胡散臭いもん口にするわけねェだろ!
「そう即答しなくてもいいじゃねェか」
ふん!
どうとでも言えばいい。
けど、俺は嫌だ。
「こいつの値段を知ってるか?」
「知らねェな」
「一億だ」
なっ……!?
一億……だと?
こんな果物が信じられねェな……。
つい聞いた値段に驚いて実を見てしまう。
「ロー、お前はガキだが頭もいいし、強い……が、もっと力が欲しいと思わねェか?」
急に何言い出すんだ……こいつ。
「これを食えば今よりも確実に強くなれる。 人にはない能力が手に入る。 こんな町でずっと一生を終える気か?」
「…………」
それはない。
この町にずっといるつもりはない。
あの時から、誰にも言ってないが海に出たいと夢見てる。
海賊になるつもりだ。
――が、てめェの手下になんのは御免だ。
それに、その実を食ったらカナヅチになんだろうがっ!
海賊が泳げなくてどうすんだよ!
ぜってーに食いたくねェな。
無言の俺に奴は含み笑いを響かせた。
「俺は実を食ってる」
「!! ……泳げねェのか?」
「ああ、沈んで死ぬな」
「…………」
「けどな、要は落ちなきゃ問題ねェんだ。 フフッ……食えば楽しいぜ? 今までと見える世界が変わるっていっても過言じゃねェな……どうする?」
俺は奴の言葉に惹かれて顔を上げた。
ニヤニヤと笑う奴の目はサングラスで見えないが、きっと細めてるに違いないと思わせるほど厭らしい。
「何で、俺なんだ?」
「お前が使えそうだからだ。 ……さっき言ったな? 一億だって。 いくら優しい俺でもタダでお前にやるつもりはねェ。 お前がそんな大金持ってねェのも知っている。 これはお前に貸す値段だ。 そう……取引だ。 一億の実をやる代わりに返すまで、俺の下でこの能力を使ってお前に働いて貰う」
「何をさせるつもりだ?」
「フフフ……いろいろさ。 図鑑を読んだんだ……分かるだろ?」
真っ先に頭に浮かぶのは臓器売買と違法手術。
この能力なら血を流さずに簡単に出来る。
「そうそう……貸すのは一億じゃなかった。 二億だ。 まあ、利息ってとこだな。 フフッ……どうする?」
「俺は二億の価値があるって事か……」
「フッフフ……まあ、そう取ってくれていいぜ」
二億の貸しをこいつに作るのは嫌だが、能力は魅力的だった。
奴の言う、見える世界が変わるという言葉。
悔しい事に心臓が鳴って気になってしようがなかった。
この先、俺がこの一億の実を手に入れるというのは現実的ではなかった。
道端で拾えるモノでもなさそうだし、買うとしても金もコネもない。
それにこの実の能力は俺の好奇心を刺激された。
どうせなら面白そうな能力がいい。
それに奴も実を食ってるという。
嘘ついても意味がねェからきっと本当だろう。
こいつは嫌いだが、その手にある力は認めざるおえない。
俺も能力を手にしたら、このピンクの大男を越えられるのか?
……いや、越えてやる!
こいつのムカツク含み笑いを止めさせてやる。
二度と俺に聞かせないように……。
今さら汚れ仕事に嫌悪も罪悪感もねェしな。
やってやる。
二億という大金はとてつもない額だが、実を手に入れる事を考えると安い買い物だ。
さっさと……という訳にはいかなくても、金を返せば自由な海が待っている。
グランドラインへと船を走らせ、海賊王のいう財宝も物語の真実も見れるし手に入れられる。
泳げねェのが気に入らないが……いいさ。
奴の言う通り海に落ちなきゃいいだけだ。
覚悟を決めて、俺は笑う奴を見据えた。
「食べる」
「フッフッフッ……! そう言ってくれると俺は思ってたぜ? ロー」
「いいから寄こせよ!」
俺は笑う奴の手から悪魔の実を奪う様に手にした。
「二億だからな」
「ああ、二億だ」
念を押す俺に奴は口端をあげて頷いた。
手にした実はリンゴぐらいの重さと大きさで、匂いとかはしなかった。
「このまま食えばいいのか?」
「そうだ」
俺は 「ふーん……」 と言って思い切ってその実にかぶり付いた瞬間、奴が笑った。
何だよ、その嫌な笑い……。
「フフフ……言い忘れた事があった」
あア!?
今さら毒とか言うんじゃねェだろうな?
疑う俺を奴は見下ろし、それは楽しそうに口元が弧を描く。
「その実、死ぬ程不味ィんだよ……フフッフフフ!」
なっ!?
このピンク野郎!
先に言えよ!
噛り付いて、歯がぶつかって、実を皮ごと口に入れた。
「……っ! ハッ……!」
不味い、なんてもんじゃねェ!
すげー吐き出してェ。
実を噛んだ汁がじわっと口に広がる不快感。
半端なく気持ち悪ィ。
「ロー、吐き出すなよ? 全部食え……でないと力が中途半端になるかもな」
「……ぅ……っ!」
本当に全部食わねェといけねェもんなのか?
後で腹壊したりしねェだろうな?
眉をひそめる俺に奴は面白がって言ってきた。
「ま、全部食わないといけないなんて話は聞いた事はねェけどな」
……くっ! 本気でムカツク奴だ!
フフフ……じゃねェ!
……ったく! 仕方ねェ……噛まないで呑み込んでやる。
そしたら、そんなに味も感じねェはずだ。
食べきった俺は口元に残る不味い果汁を袖で拭った。
奴の満足気に笑う顔が癇に障る。
「これでお前も能力者だ」
「……何も変わらねェぞ」
両手を広げて眺めても普段と変わらない。
「……だろうな――が、これに触ってみろ」
奴はピンクのコートのポケットから小さな袋を取り出した。
袋の口を下にして俺の手に見た事のないような色の石を転がした。
途端に何故か膝の力が抜けそうになった。
かろうじて立っているのがやっとで、嫌な汗が額に玉になって浮かび気分が悪い。
何だ……これ?
くらくらしながらも睨んで見上げる奴は俺の手にある石を袋越しに掴んでポケットにしまった。
「今のは海楼石ってモンだ。 海の成分を結晶化したようなものだな。 能力者の弱点だ。 これに触れると力が入らねェし能力は使えない」
だからか、そして……こいつが直接触ろうとしなかったのも。
これじゃあ、泳げねェわけだ。
「フフフ……これで能力者になったのは分かっただろ? 能力をどう使って出すかは自分でなんとかしろ。 能力の感覚は能力者によって違うからな……俺から、これって教えてやれるもんじゃねェし、自分でモノにするんだな。 ただし、鍛えなきゃ宝の持ち腐れになる。 お前が使えないようなら、即座にその頭と胴体を切り離してやるよ……フッフッフッ」
「……ああ」
頷く俺に奴は紙切れを一枚寄こした。
そこには東地区のはずれにある住所と名前が書いてあった。
「Dr.モート……こいつの下で仕事しろ。 奴には伝えとく。 報酬は月一でまとめて払う……いいな」
「分かった」
見返す俺に奴は首を傾けて覗きこんできた。
「今日この時点で、お前は俺のモンだ」
「二億の貸しを返すまでだ」
「フフッ……そうだな」
「返してやる!」
「そうか、楽しみに待ってるさ」
余裕ぶりやがって!
見てろよ、いつか笑えなくしてやるからな!
心に誓う俺の声が聞こえたわけもないくせに、奴は見透かしたように笑った。
――この日、この時から俺の手は奴の操る糸と繋がった。
不味い実を食べた俺は奴と別れた。
そして、早速試してみようと人があまりいない場所へと向かった。
図鑑で読んだ事がまず出来るのかと試す。
「ROOM……」
呟くと手から何か青白い光が円を描いてすぐに消えた。
これの事か!
範囲を広げねェと意味がなさそうだ。
どうするんだ?
奴は感覚とか言ってたな……。
俺は再度呟き青白い円が広がる事をイメージした。
すると思うように俺の周りに5メートルぐらいの円が広がった。
意識を集中させて、手にしたナイフで転がる小石を斬ってみると……スパン……! とそれはもう気持ち良く斬れた。
ついでに近くを歩く蟻も斬ったら半分になって、死なずにずっともがいていた。
面白ェ……!
もう一度、円を広げてみた。
半分の蟻を爪先で掴み石に着けてみても動いてたし、もとに戻したら何事もなかったように歩いた。
その後は辞典で読んだ事を一つずつ試していった。
夢中になり過ぎてたみたいで、気付いたら結構疲れて夕方になっていた。
どうやら集中力を使う能力のようだ。
かなり体力を消耗させられた。
なんか、体が重いな……続きは明日にするか。
人で試したいしな。
真っ先に思い浮かんだのはペンギンとシャチの顔。
「くっくく……!」
あいつら……俺が悪魔の実を食ったて聞いたら、どんな顔すんだろうな。
楽しみで仕方ない。
今朝は詰まらなかったのに、今は明日が待ち遠しぐらいだ。
確かに奴の言う通り世界が変わった。
この能力をもう少し使い慣れてから奴から貰ったDr.モートの所にでも行こう。
こうして、天気のいい空の下を歩いていたが、出掛けなきゃよかった。
たった今、後悔している。
奴が来たからだ。
「フフフフフフ……!」
なんかいつもより “フ” が多い感じがする。
「よお……」
「何だよ」
「向こうで少し話そうじゃねェか」
奴が顎をしゃくった先の路地に俺は仕方なくついて行った。
細い路地に入り、奴と向き合う。
奴はデカいから立っているだけで路地が塞がる。
向かいの路地からの日の光は奴の背中を照らし、俺に奴の影を落とした。
今日は何だか不気味なほど機嫌がいいように見えた。
「フッフッフッ……今日はお前にいいモンを持って来た」
含み笑いをしながら奴はデカい手に奇妙な果物を見せた。
見た事はねェが何かの本で読んだ事があった。
唐草模様のような柄の果実。
「悪魔の実か?」
「そうだ」
奴の口端が 「フフ……」 とあがり、俺の目の前に実をずい……と出して見せる。
「超人系能力のオペオペの実だ。 この実を食えば改造自在人間になれる」
そう言って奴は俺に悪魔の実の図鑑を手渡す。
「栞のトコを見てみろ」
俺は好奇心に勝てなくて図鑑を開いた。
そこには――
オペオペの実:超人系悪魔の実。 改造自在人間。 ROOMというドーム状の特殊なサークルを作る事が出来る。 ROOM内では能力者が自由自在に物質、生物、全てを操り斬る事が可能。 浮遊、転移、距離、材質、大きさをROOM内で好きなように改造出来る。 斬られた肉体は痛みも出血もなく切断されたパーツとして接着出来る。 ROOM内で起きた事はROOMが喪失したり外に出てもその効果は持続する。
何だこれ……?
これが悪魔の実の能力か?
他にもいろいろあるな。
次のページを捲ろうとした途端に閉じられて奴に取られた。
一瞬、ムカッとして奴を睨む。
「フフフ……図鑑を見せに来たわけじゃねェ」
「じゃ、何だよ?」
悪魔の実の自慢か?
そんな陳腐な自慢なんかする奴じゃないはずだ。
焦れる俺に勿体ぶったように奴は笑う。
「……フッフッフッ、こいつをお前にやろうと思ってな」
「いらねェ」
お前が持って来た、そんな胡散臭いもん口にするわけねェだろ!
「そう即答しなくてもいいじゃねェか」
ふん!
どうとでも言えばいい。
けど、俺は嫌だ。
「こいつの値段を知ってるか?」
「知らねェな」
「一億だ」
なっ……!?
一億……だと?
こんな果物が信じられねェな……。
つい聞いた値段に驚いて実を見てしまう。
「ロー、お前はガキだが頭もいいし、強い……が、もっと力が欲しいと思わねェか?」
急に何言い出すんだ……こいつ。
「これを食えば今よりも確実に強くなれる。 人にはない能力が手に入る。 こんな町でずっと一生を終える気か?」
「…………」
それはない。
この町にずっといるつもりはない。
あの時から、誰にも言ってないが海に出たいと夢見てる。
海賊になるつもりだ。
――が、てめェの手下になんのは御免だ。
それに、その実を食ったらカナヅチになんだろうがっ!
海賊が泳げなくてどうすんだよ!
ぜってーに食いたくねェな。
無言の俺に奴は含み笑いを響かせた。
「俺は実を食ってる」
「!! ……泳げねェのか?」
「ああ、沈んで死ぬな」
「…………」
「けどな、要は落ちなきゃ問題ねェんだ。 フフッ……食えば楽しいぜ? 今までと見える世界が変わるっていっても過言じゃねェな……どうする?」
俺は奴の言葉に惹かれて顔を上げた。
ニヤニヤと笑う奴の目はサングラスで見えないが、きっと細めてるに違いないと思わせるほど厭らしい。
「何で、俺なんだ?」
「お前が使えそうだからだ。 ……さっき言ったな? 一億だって。 いくら優しい俺でもタダでお前にやるつもりはねェ。 お前がそんな大金持ってねェのも知っている。 これはお前に貸す値段だ。 そう……取引だ。 一億の実をやる代わりに返すまで、俺の下でこの能力を使ってお前に働いて貰う」
「何をさせるつもりだ?」
「フフフ……いろいろさ。 図鑑を読んだんだ……分かるだろ?」
真っ先に頭に浮かぶのは臓器売買と違法手術。
この能力なら血を流さずに簡単に出来る。
「そうそう……貸すのは一億じゃなかった。 二億だ。 まあ、利息ってとこだな。 フフッ……どうする?」
「俺は二億の価値があるって事か……」
「フッフフ……まあ、そう取ってくれていいぜ」
二億の貸しをこいつに作るのは嫌だが、能力は魅力的だった。
奴の言う、見える世界が変わるという言葉。
悔しい事に心臓が鳴って気になってしようがなかった。
この先、俺がこの一億の実を手に入れるというのは現実的ではなかった。
道端で拾えるモノでもなさそうだし、買うとしても金もコネもない。
それにこの実の能力は俺の好奇心を刺激された。
どうせなら面白そうな能力がいい。
それに奴も実を食ってるという。
嘘ついても意味がねェからきっと本当だろう。
こいつは嫌いだが、その手にある力は認めざるおえない。
俺も能力を手にしたら、このピンクの大男を越えられるのか?
……いや、越えてやる!
こいつのムカツク含み笑いを止めさせてやる。
二度と俺に聞かせないように……。
今さら汚れ仕事に嫌悪も罪悪感もねェしな。
やってやる。
二億という大金はとてつもない額だが、実を手に入れる事を考えると安い買い物だ。
さっさと……という訳にはいかなくても、金を返せば自由な海が待っている。
グランドラインへと船を走らせ、海賊王のいう財宝も物語の真実も見れるし手に入れられる。
泳げねェのが気に入らないが……いいさ。
奴の言う通り海に落ちなきゃいいだけだ。
覚悟を決めて、俺は笑う奴を見据えた。
「食べる」
「フッフッフッ……! そう言ってくれると俺は思ってたぜ? ロー」
「いいから寄こせよ!」
俺は笑う奴の手から悪魔の実を奪う様に手にした。
「二億だからな」
「ああ、二億だ」
念を押す俺に奴は口端をあげて頷いた。
手にした実はリンゴぐらいの重さと大きさで、匂いとかはしなかった。
「このまま食えばいいのか?」
「そうだ」
俺は 「ふーん……」 と言って思い切ってその実にかぶり付いた瞬間、奴が笑った。
何だよ、その嫌な笑い……。
「フフフ……言い忘れた事があった」
あア!?
今さら毒とか言うんじゃねェだろうな?
疑う俺を奴は見下ろし、それは楽しそうに口元が弧を描く。
「その実、死ぬ程不味ィんだよ……フフッフフフ!」
なっ!?
このピンク野郎!
先に言えよ!
噛り付いて、歯がぶつかって、実を皮ごと口に入れた。
「……っ! ハッ……!」
不味い、なんてもんじゃねェ!
すげー吐き出してェ。
実を噛んだ汁がじわっと口に広がる不快感。
半端なく気持ち悪ィ。
「ロー、吐き出すなよ? 全部食え……でないと力が中途半端になるかもな」
「……ぅ……っ!」
本当に全部食わねェといけねェもんなのか?
後で腹壊したりしねェだろうな?
眉をひそめる俺に奴は面白がって言ってきた。
「ま、全部食わないといけないなんて話は聞いた事はねェけどな」
……くっ! 本気でムカツク奴だ!
フフフ……じゃねェ!
……ったく! 仕方ねェ……噛まないで呑み込んでやる。
そしたら、そんなに味も感じねェはずだ。
食べきった俺は口元に残る不味い果汁を袖で拭った。
奴の満足気に笑う顔が癇に障る。
「これでお前も能力者だ」
「……何も変わらねェぞ」
両手を広げて眺めても普段と変わらない。
「……だろうな――が、これに触ってみろ」
奴はピンクのコートのポケットから小さな袋を取り出した。
袋の口を下にして俺の手に見た事のないような色の石を転がした。
途端に何故か膝の力が抜けそうになった。
かろうじて立っているのがやっとで、嫌な汗が額に玉になって浮かび気分が悪い。
何だ……これ?
くらくらしながらも睨んで見上げる奴は俺の手にある石を袋越しに掴んでポケットにしまった。
「今のは海楼石ってモンだ。 海の成分を結晶化したようなものだな。 能力者の弱点だ。 これに触れると力が入らねェし能力は使えない」
だからか、そして……こいつが直接触ろうとしなかったのも。
これじゃあ、泳げねェわけだ。
「フフフ……これで能力者になったのは分かっただろ? 能力をどう使って出すかは自分でなんとかしろ。 能力の感覚は能力者によって違うからな……俺から、これって教えてやれるもんじゃねェし、自分でモノにするんだな。 ただし、鍛えなきゃ宝の持ち腐れになる。 お前が使えないようなら、即座にその頭と胴体を切り離してやるよ……フッフッフッ」
「……ああ」
頷く俺に奴は紙切れを一枚寄こした。
そこには東地区のはずれにある住所と名前が書いてあった。
「Dr.モート……こいつの下で仕事しろ。 奴には伝えとく。 報酬は月一でまとめて払う……いいな」
「分かった」
見返す俺に奴は首を傾けて覗きこんできた。
「今日この時点で、お前は俺のモンだ」
「二億の貸しを返すまでだ」
「フフッ……そうだな」
「返してやる!」
「そうか、楽しみに待ってるさ」
余裕ぶりやがって!
見てろよ、いつか笑えなくしてやるからな!
心に誓う俺の声が聞こえたわけもないくせに、奴は見透かしたように笑った。
――この日、この時から俺の手は奴の操る糸と繋がった。
◇◆◇
不味い実を食べた俺は奴と別れた。
そして、早速試してみようと人があまりいない場所へと向かった。
図鑑で読んだ事がまず出来るのかと試す。
「ROOM……」
呟くと手から何か青白い光が円を描いてすぐに消えた。
これの事か!
範囲を広げねェと意味がなさそうだ。
どうするんだ?
奴は感覚とか言ってたな……。
俺は再度呟き青白い円が広がる事をイメージした。
すると思うように俺の周りに5メートルぐらいの円が広がった。
意識を集中させて、手にしたナイフで転がる小石を斬ってみると……スパン……! とそれはもう気持ち良く斬れた。
ついでに近くを歩く蟻も斬ったら半分になって、死なずにずっともがいていた。
面白ェ……!
もう一度、円を広げてみた。
半分の蟻を爪先で掴み石に着けてみても動いてたし、もとに戻したら何事もなかったように歩いた。
その後は辞典で読んだ事を一つずつ試していった。
夢中になり過ぎてたみたいで、気付いたら結構疲れて夕方になっていた。
どうやら集中力を使う能力のようだ。
かなり体力を消耗させられた。
なんか、体が重いな……続きは明日にするか。
人で試したいしな。
真っ先に思い浮かんだのはペンギンとシャチの顔。
「くっくく……!」
あいつら……俺が悪魔の実を食ったて聞いたら、どんな顔すんだろうな。
楽しみで仕方ない。
今朝は詰まらなかったのに、今は明日が待ち遠しぐらいだ。
確かに奴の言う通り世界が変わった。
この能力をもう少し使い慣れてから奴から貰ったDr.モートの所にでも行こう。