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“シャチ” side:Shachi
愛し合った後、抱き合うのっていいよな。
ああ……女の胸って、ふわふわで柔らかくて気持ちいい。
肌はスベスベでいい匂いだし……ローの奴、これがメンドクサイなんてお子様だよな。
まあ、好きな女限定だけどな?
好きな女の体ほど蕩けて気持ちいいもんはねェのに。
ずっとこうしていてェぐらいだし。
あいつ、女に惚れた事とかあんのかな?
……なさそっ!
まっ……十二じゃな。
そういう俺も十五だけど……。
ペンギンはこの町出身で、年が分からねェって言ってたな。
俺と変わらなさそうな感じだけどやけに落ち着いてるんだよなあいつ。
ぎゅっ……と彼女を抱きしめて、もっとと温もりを味わう。
息が詰まるハッ……とした声が聞こえて力を緩めた。
「悪ィ……きつかった?」
「ううん……」
首を横に振る年上の彼女は可愛いらしい微笑をくれる。
ちゅ……とリップ音をさせて、今度は優しく抱きしめた。
――雨の音が聞こえる。
湿った空気に少し纏わりつくような熱。
夏が近いな。
雨か……そういえば、俺がこの島に来た時も降ってたな――
俺は漁師やってるオヤジに捨てられた。
六人兄弟の末っ子の俺が八才の頃だ。
漁に連れて来られて、そのまま流された。
食うのに困ってるのは知ってた。
腹一杯食った事なんて一度もなかったから。
小舟には申し訳程度の食料と水を持たされ、親父に泣きながら謝られた。
悪い悪い……って何度も。
だから笑った。
笑うしかなかったから……。
「俺……一度、一人で船を漕いでみたかったんだ」
「……そうか」
「ああ……じゃあ、行って来る」
親父の見開いた目が印象的だった。
これでもうお別れで二度と会う事もない。
抱きしめられて、気をつけろよ……と言われた。
瞬間、頭に血が上ったし殺意が走った。
そんな事言うならどうして俺を捨てんだよっ!
殴り掛かって叫びたかった。
けど、出来ない。
体が全く動かない。
カッ! と上がった熱は一瞬で音も無く降る雨で冷めていった。
どんどん冷たくなる俺の体と心。
俺を抱きしめて熱を伝える男の体温が気持ち悪い。
雨で濡れる体がじとり……と温い水が浸みこむ感じに吐き気がした。
もう、この目の前の男は俺の親父じゃない。
俺がこいつを捨てるんだ。
自分のガキを捨てて生きる事しか出来ない奴。
俺の生きる世界でいらないのは俺じゃなくてこいつ。
――俺に親はいねェ。
何故か今さら離れようとしない奴を無理に剥がして、俺は小舟に乗り込む。
何か言ってたけど、振り向かなかった。
捨てたモノだ。
それから、海流にのって海岸に着いた。
この島の話はガキの俺でも知っていた。
とりあえずどうするかな……とボーッとしてたら、待ち伏せ組に襲われて食いモンが奪われた。
奴らは海流に流されて来たばかりの何も知らない捨てられた子供から盗む連中だ。
たいてい俺みてェに少なからず食いモンか金を持たされてる事が多いから、狙うには丁度いい獲物って事だな。
お約束とばかりに洗礼にあっちまった俺。
……まあ、今思えば怪我もなかったし、ケツ掘られなかっただけマシだったかな。
そんな感じで、俺はこの町での生活が始まった。
死にたくねェし、頑張るしかねェからな。
それから六年とちょっと――俺はあちこち歩いてた。
まあ、主に南地区をいつもプラプラしてたけどな。
グループとかあったけどツルむのは好きじゃねェし、一人で空き巣をメインに盗みをしていた。
なんか売れそうなモンを手に入れて金に換える。
すばしっこさには自信があったし、性に合ってた。
噂で西と東のキッズ同士がやりあってるって聞いていたが、俺には関係なくてどうでもいい。
けど、チャンスだとは思っていた。
ケンカしてるって事はどさくさ紛れで空き巣すんのには都合がいいからな。
――で、侵入して物色してたのがローのアジトだった。
「ここ……本しかねェじゃん」
本はあまり金にならないうえに、持っていくには重いし……がさばる。
「チッ! ハズレだ」
舌打ちして二階を物色に行こうとしたら背後にある扉から声がした。
「何がハズレだ?」
ゆっくり振り向いたら、扉を塞ぐように年下っぽいパーカー着た奴が立っていた。
「あ? 知り合いの家と間違えた~みてェな?」
「俺の本を持ってか?」
「これお前のなの?」
「ああ」
「悪ィ悪ィ、ちょっと手に取っちゃただけだ」
俺は本を元の位置に戻して両手を上げた。
「ほらな? これで元通りだろ? ……んじゃ、邪魔したな」
パーカー君の方へゆっくりした歩調で二歩いったところで、つま先で切り返して開け放した窓へと駆けた。
俺はいつも入る時必ず窓を開けとく。
万が一があって逃げれるように――そう、今みてェに見つかっちまった時の為にな。
ベーッ! と不機嫌顔のパーカー君にざまあみろっ! と舌出した。
「じゃあな……って! がはっ!」
窓から突然、人が現れてデコピンくらった。
驚いたのと痛さで、ついしゃがみ込んじまった。
「イテーッ! なっんだよ!」
「それはお前だ。 空き巣が!」
ぜってー、赤いし後で腫れそうだ。
……っきしょー、地味に痛ェ。
こいつ、デコピンで人殺せんじゃねェの。
窓際に立つ奴を睨んだ。
額を擦って座り込む俺の背後に冷たい空気が上からのしかかった。
う……っ!
これってヤバイ?
「お前……」
「……はい?」
デコピンの痛さに涙目の俺は後ろのパーカー君を見上げた。
「…… “通り風” か?」
「はァ?」
「知らないのか?」
「何が?」
意味分かんねェ……。
首を傾げていると窓際君が呆れた目つきで溜息ついた。
何だよ……。
「お前は空き巣専門の泥棒のシャチだろ? 自分が “通り風” って呼ばれてる事知らないのか? 盗むのも逃げるのも通り風のようだって言われている」
「………?」
何それ?
俺、そんな有名だったのかよっ!
すげーっ!
ヤバッ! ちょっと嬉しいかも……。
顔が緩んじまう。
「マジ?」
「ああ」
嬉しそうな俺とは反対に窓際君は仏頂面で頷いた。
そして、いい気分な俺を突き落すのはパーカー君の声だ。
「俺に捕まったけどな」
ムカッ! 何だよこいつ……!
「だから、何だってんだよ? 俺の事やんのか?」
俺はその場で立ちあがって、カーゴパンツの後ろポケットからスルリ……とナイフを出して右手で回して構えた。
腰を低くして刃で威嚇しながら笑ってやった。
やるなら相手になってやる。
「悪ィけど、そう簡単にはやられる気ねェから! 怪我ぐらいはしてもらうぜ?」
「怪我はしたくねェな」
「だよな、俺も……って、ぐわっ!」
喋ってる隙をパーカー君に狙われた。
一瞬で踏みこまれたあげくに首を掴まれた。
「……がっ、はっ!」
苦し……っ!
こいつ、女みてェに細そうなのに……んだよ!
「……俺の仲間になるか?」
はあ?
イテッ! 締めんなよ!
睨んでれば窓際君の落ち着いた声がした。
「ローは西地区のボスで、今は北半分も手に入れてる」
ハッ……マジかよ?
俺より年下そうなこのガキがっ!?
「ならないなら、このまま首の骨を折る」
「………っ……」
「どうする?」
「……!」
「ロー……それじゃあ、答えられないと思うが」
その通りだよ!
窓際君の言うとおりっ……離せよ!
ナイフを持ってない手でローの腕を叩いた。
首に回る手を緩めてくれた事で俺はゆっくりと深呼吸した。
「なってやるよ!」
ローは俺の答えに笑って手を離した――チャンス!
脅されて仲間になんか入るわけねェだろ!
バーカっ!
蹴りを入れたけど、腕で防御された――が、構うもんか!
その隙に逃げてやる。
腰を低くして駆けだす俺は誰もいない扉に向かう。
――が、背中を蹴られて息が止まった。
「……ハッ……!」
地面に叩きつけられて背中にのっかられ押さえつけられた。
「言っただろ、俺が捕まえたって。もう、お前は逃げられねェんだよ」
「クソッ!」
「なるか、ならないかだ! ……二度はねェ」
ムカツクな!
負けたよっ!
「なるよ! てめーの仲間にっ!」
「嘘じゃねェな」
「ああ、お前の方が強いしな。 逃げるの諦めました!」
「……プッ、何だそれ!」
「うっせーよ! 重いからどけよ!」
ローは笑いながらすぐにどいて、俺に手を差し伸べた。
「ナイフ使うのなかなかだな」
「あ? そうか……他に武器っつう武器もねェだろ? 持つのに邪魔じゃねェし」
立ち上がる俺の側にいつの間にか窓際君がいた。
「あんたの名前は?」
「俺はペンギン」
「そっか」
俺はローとペンギンにニカッと笑って両手を出した。
「俺はシャチ、よろしくな!」
面食らったような表情の二人は戸惑って手を出さないから、強引に引っ張り出して握手した。
若干、ローとペンギンが引いている様子にどうしたんだろう? と思った。
仲間になったんだから握手とか普通じゃねェ? 違うのか?
「何? なんかおかしいのか?」
「……いや」
「お前……軽い奴だな」
「そっかー? 今、生きてんだからいいじゃん! それよりさ~腹減った! 食いモンとかねェの? それと、俺は今日からここで寝ていいんかな? なあ……聞いてる?」
「…………」
ローは呆れたという感じで黙り込んでいた。
何だよ?
そんな黙っちゃうほどか?
聞いても駄目そうだったから、ペンギンを見た。
なんか、こいつ次に偉そうだしな。
「俺、グループとか入った事ねぇし、よく分からねェんだよ。 どうすんの?」
「ルールは後で話そう。 とりあえず部屋は二階の俺の部屋と一緒でいいか?」
「ん、いいぜ。 で、女は連れこんでもOK?」
「構わないが、前もって言えよ? 最中に鉢合わせはしたくないからな」
「分かった……んじゃ、よろしくな!」
「ああ」
――こうして、俺はローとペンギンに捕まって仲間になった。
呆気にとられるローとペンギンのこん時の顔は今でも思い出すと笑っちまう。
グループのルール的なもんの話は聞いたけど、適当にやってる。
分からなかったら、聞けばいいしな。
ローとペンギンと一緒にいるのは面白ェし、楽しんでる。
何より、屋根があるとこに寝れんのは最高だ!
地べたは痛ェし寒ィからな。
雪も雨も冷てェ……。
……忘れよ。
今だ今っ!
そう! 今は可愛い彼女も出来て、抱きしめて、幸せ満喫中。
ああ……人生、諦めなければ幸せがぜってーくるよな!
愛し合った後、抱き合うのっていいよな。
ああ……女の胸って、ふわふわで柔らかくて気持ちいい。
肌はスベスベでいい匂いだし……ローの奴、これがメンドクサイなんてお子様だよな。
まあ、好きな女限定だけどな?
好きな女の体ほど蕩けて気持ちいいもんはねェのに。
ずっとこうしていてェぐらいだし。
あいつ、女に惚れた事とかあんのかな?
……なさそっ!
まっ……十二じゃな。
そういう俺も十五だけど……。
ペンギンはこの町出身で、年が分からねェって言ってたな。
俺と変わらなさそうな感じだけどやけに落ち着いてるんだよなあいつ。
ぎゅっ……と彼女を抱きしめて、もっとと温もりを味わう。
息が詰まるハッ……とした声が聞こえて力を緩めた。
「悪ィ……きつかった?」
「ううん……」
首を横に振る年上の彼女は可愛いらしい微笑をくれる。
ちゅ……とリップ音をさせて、今度は優しく抱きしめた。
――雨の音が聞こえる。
湿った空気に少し纏わりつくような熱。
夏が近いな。
雨か……そういえば、俺がこの島に来た時も降ってたな――
俺は漁師やってるオヤジに捨てられた。
六人兄弟の末っ子の俺が八才の頃だ。
漁に連れて来られて、そのまま流された。
食うのに困ってるのは知ってた。
腹一杯食った事なんて一度もなかったから。
小舟には申し訳程度の食料と水を持たされ、親父に泣きながら謝られた。
悪い悪い……って何度も。
だから笑った。
笑うしかなかったから……。
「俺……一度、一人で船を漕いでみたかったんだ」
「……そうか」
「ああ……じゃあ、行って来る」
親父の見開いた目が印象的だった。
これでもうお別れで二度と会う事もない。
抱きしめられて、気をつけろよ……と言われた。
瞬間、頭に血が上ったし殺意が走った。
そんな事言うならどうして俺を捨てんだよっ!
殴り掛かって叫びたかった。
けど、出来ない。
体が全く動かない。
カッ! と上がった熱は一瞬で音も無く降る雨で冷めていった。
どんどん冷たくなる俺の体と心。
俺を抱きしめて熱を伝える男の体温が気持ち悪い。
雨で濡れる体がじとり……と温い水が浸みこむ感じに吐き気がした。
もう、この目の前の男は俺の親父じゃない。
俺がこいつを捨てるんだ。
自分のガキを捨てて生きる事しか出来ない奴。
俺の生きる世界でいらないのは俺じゃなくてこいつ。
――俺に親はいねェ。
何故か今さら離れようとしない奴を無理に剥がして、俺は小舟に乗り込む。
何か言ってたけど、振り向かなかった。
捨てたモノだ。
それから、海流にのって海岸に着いた。
この島の話はガキの俺でも知っていた。
とりあえずどうするかな……とボーッとしてたら、待ち伏せ組に襲われて食いモンが奪われた。
奴らは海流に流されて来たばかりの何も知らない捨てられた子供から盗む連中だ。
たいてい俺みてェに少なからず食いモンか金を持たされてる事が多いから、狙うには丁度いい獲物って事だな。
お約束とばかりに洗礼にあっちまった俺。
……まあ、今思えば怪我もなかったし、ケツ掘られなかっただけマシだったかな。
そんな感じで、俺はこの町での生活が始まった。
死にたくねェし、頑張るしかねェからな。
◇◆◇
それから六年とちょっと――俺はあちこち歩いてた。
まあ、主に南地区をいつもプラプラしてたけどな。
グループとかあったけどツルむのは好きじゃねェし、一人で空き巣をメインに盗みをしていた。
なんか売れそうなモンを手に入れて金に換える。
すばしっこさには自信があったし、性に合ってた。
噂で西と東のキッズ同士がやりあってるって聞いていたが、俺には関係なくてどうでもいい。
けど、チャンスだとは思っていた。
ケンカしてるって事はどさくさ紛れで空き巣すんのには都合がいいからな。
――で、侵入して物色してたのがローのアジトだった。
「ここ……本しかねェじゃん」
本はあまり金にならないうえに、持っていくには重いし……がさばる。
「チッ! ハズレだ」
舌打ちして二階を物色に行こうとしたら背後にある扉から声がした。
「何がハズレだ?」
ゆっくり振り向いたら、扉を塞ぐように年下っぽいパーカー着た奴が立っていた。
「あ? 知り合いの家と間違えた~みてェな?」
「俺の本を持ってか?」
「これお前のなの?」
「ああ」
「悪ィ悪ィ、ちょっと手に取っちゃただけだ」
俺は本を元の位置に戻して両手を上げた。
「ほらな? これで元通りだろ? ……んじゃ、邪魔したな」
パーカー君の方へゆっくりした歩調で二歩いったところで、つま先で切り返して開け放した窓へと駆けた。
俺はいつも入る時必ず窓を開けとく。
万が一があって逃げれるように――そう、今みてェに見つかっちまった時の為にな。
ベーッ! と不機嫌顔のパーカー君にざまあみろっ! と舌出した。
「じゃあな……って! がはっ!」
窓から突然、人が現れてデコピンくらった。
驚いたのと痛さで、ついしゃがみ込んじまった。
「イテーッ! なっんだよ!」
「それはお前だ。 空き巣が!」
ぜってー、赤いし後で腫れそうだ。
……っきしょー、地味に痛ェ。
こいつ、デコピンで人殺せんじゃねェの。
窓際に立つ奴を睨んだ。
額を擦って座り込む俺の背後に冷たい空気が上からのしかかった。
う……っ!
これってヤバイ?
「お前……」
「……はい?」
デコピンの痛さに涙目の俺は後ろのパーカー君を見上げた。
「…… “通り風” か?」
「はァ?」
「知らないのか?」
「何が?」
意味分かんねェ……。
首を傾げていると窓際君が呆れた目つきで溜息ついた。
何だよ……。
「お前は空き巣専門の泥棒のシャチだろ? 自分が “通り風” って呼ばれてる事知らないのか? 盗むのも逃げるのも通り風のようだって言われている」
「………?」
何それ?
俺、そんな有名だったのかよっ!
すげーっ!
ヤバッ! ちょっと嬉しいかも……。
顔が緩んじまう。
「マジ?」
「ああ」
嬉しそうな俺とは反対に窓際君は仏頂面で頷いた。
そして、いい気分な俺を突き落すのはパーカー君の声だ。
「俺に捕まったけどな」
ムカッ! 何だよこいつ……!
「だから、何だってんだよ? 俺の事やんのか?」
俺はその場で立ちあがって、カーゴパンツの後ろポケットからスルリ……とナイフを出して右手で回して構えた。
腰を低くして刃で威嚇しながら笑ってやった。
やるなら相手になってやる。
「悪ィけど、そう簡単にはやられる気ねェから! 怪我ぐらいはしてもらうぜ?」
「怪我はしたくねェな」
「だよな、俺も……って、ぐわっ!」
喋ってる隙をパーカー君に狙われた。
一瞬で踏みこまれたあげくに首を掴まれた。
「……がっ、はっ!」
苦し……っ!
こいつ、女みてェに細そうなのに……んだよ!
「……俺の仲間になるか?」
はあ?
イテッ! 締めんなよ!
睨んでれば窓際君の落ち着いた声がした。
「ローは西地区のボスで、今は北半分も手に入れてる」
ハッ……マジかよ?
俺より年下そうなこのガキがっ!?
「ならないなら、このまま首の骨を折る」
「………っ……」
「どうする?」
「……!」
「ロー……それじゃあ、答えられないと思うが」
その通りだよ!
窓際君の言うとおりっ……離せよ!
ナイフを持ってない手でローの腕を叩いた。
首に回る手を緩めてくれた事で俺はゆっくりと深呼吸した。
「なってやるよ!」
ローは俺の答えに笑って手を離した――チャンス!
脅されて仲間になんか入るわけねェだろ!
バーカっ!
蹴りを入れたけど、腕で防御された――が、構うもんか!
その隙に逃げてやる。
腰を低くして駆けだす俺は誰もいない扉に向かう。
――が、背中を蹴られて息が止まった。
「……ハッ……!」
地面に叩きつけられて背中にのっかられ押さえつけられた。
「言っただろ、俺が捕まえたって。もう、お前は逃げられねェんだよ」
「クソッ!」
「なるか、ならないかだ! ……二度はねェ」
ムカツクな!
負けたよっ!
「なるよ! てめーの仲間にっ!」
「嘘じゃねェな」
「ああ、お前の方が強いしな。 逃げるの諦めました!」
「……プッ、何だそれ!」
「うっせーよ! 重いからどけよ!」
ローは笑いながらすぐにどいて、俺に手を差し伸べた。
「ナイフ使うのなかなかだな」
「あ? そうか……他に武器っつう武器もねェだろ? 持つのに邪魔じゃねェし」
立ち上がる俺の側にいつの間にか窓際君がいた。
「あんたの名前は?」
「俺はペンギン」
「そっか」
俺はローとペンギンにニカッと笑って両手を出した。
「俺はシャチ、よろしくな!」
面食らったような表情の二人は戸惑って手を出さないから、強引に引っ張り出して握手した。
若干、ローとペンギンが引いている様子にどうしたんだろう? と思った。
仲間になったんだから握手とか普通じゃねェ? 違うのか?
「何? なんかおかしいのか?」
「……いや」
「お前……軽い奴だな」
「そっかー? 今、生きてんだからいいじゃん! それよりさ~腹減った! 食いモンとかねェの? それと、俺は今日からここで寝ていいんかな? なあ……聞いてる?」
「…………」
ローは呆れたという感じで黙り込んでいた。
何だよ?
そんな黙っちゃうほどか?
聞いても駄目そうだったから、ペンギンを見た。
なんか、こいつ次に偉そうだしな。
「俺、グループとか入った事ねぇし、よく分からねェんだよ。 どうすんの?」
「ルールは後で話そう。 とりあえず部屋は二階の俺の部屋と一緒でいいか?」
「ん、いいぜ。 で、女は連れこんでもOK?」
「構わないが、前もって言えよ? 最中に鉢合わせはしたくないからな」
「分かった……んじゃ、よろしくな!」
「ああ」
――こうして、俺はローとペンギンに捕まって仲間になった。
呆気にとられるローとペンギンのこん時の顔は今でも思い出すと笑っちまう。
グループのルール的なもんの話は聞いたけど、適当にやってる。
分からなかったら、聞けばいいしな。
ローとペンギンと一緒にいるのは面白ェし、楽しんでる。
何より、屋根があるとこに寝れんのは最高だ!
地べたは痛ェし寒ィからな。
雪も雨も冷てェ……。
……忘れよ。
今だ今っ!
そう! 今は可愛い彼女も出来て、抱きしめて、幸せ満喫中。
ああ……人生、諦めなければ幸せがぜってーくるよな!