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“ペンギン” side:Penguin
雨が降っていた。
シャチは最近出来た新しい女のトコに行ってる。
五日ぐらい前に、別れた……と気落ちしてたが、案外すぐに次の恋を見つけたようだ。
あいつは毎日が楽しそうで、こんなスラムでも恋なんて出来るんだなとかシャチを見てると思う。
一方、特定の女なんていない俺とローはどこにも行かずにアジトの一階でくつろいでいた。
目の前のローはカバーが半分剥がれたソファに座って本を読んでいた。
先日、ピンクの大男に貰った本のようだ。
ローが桃色と交流があるのは俺がローの仲間になって初めて知った。
何度か来ているらしいと話は聞いていたが、俺がいる時には桃色は来なかった。
そして、この前初めて会ったわけだ。
はぁ……あの含み笑いには吐き気がした。
厭らしいし、サングラスの下は何を考えてるのか分からない。
何の目的で来てるのか?
ローが言うには勝手に来て、勝手に話して、勝手に去って行くという事らしい。
何だ!? その胡散臭さ満点な感じは!
ロー自身も嫌がってはいるものの、現状どうにもならない。
相手はあのドンキホーテ・ドフラミンゴだからだ。
俺達ガキの集団でどうにか出来るわけもないし、どうにもならない。
とりあえず、このままという感じだ。
桃色とローは長い付き合いになりそうな予感がしてならない俺は心配で仕方なかった。
しかし、俺の心配などどこ吹く風なのは俺のボスであるローだ。
そういえば……。
初めて会った時は敵でケンカの真っ最中だった――
あれは、そう……ちょうど半年前ぐらいに戻る。
西地区のローとかいう新しいボスが北に手を出してきていた。
西は狭くて寒いし人もあまり寄りつかない地区だ。
たまに縄張り越えていざこざはあるが、地区を越えてグループに手を出す事は俺の知る話の限りでは聞いた事はない。
俺は北スラムのナンバー三ぐらいの位置にいて、ボスの下についていた。
再三、何とかしろ! とボスに警告しても聞く耳ないようだった。
グループが削られれば縄張りも減り、金だって集まらないし入らなくなる。
そうやって今、お気に入りと遊んでいる事も出来なくなる。
ボスはもうそろろキッズから抜ける年齢だ。
そうなれば、一番下っ端でこんな遊んではいられない。
だからか……どうせ居なくなるのだからと、後は知らないと腰が重い。
チッ……!
こんな奴、さっさといなくなればいいとさえ最近思う。
出会った頃はイイ奴で友だったが、ここ一年で落ちた。
あいつが来てからだ。
ボスに媚び、たかるハエのような金髪の美少年に骨抜きにされた。
そんな奴の下で俺がまだ残るのは自分を慕ってついてくる仲間がいるからだ。
「……ペンギンさん、どうしましょう?」
「どうもこうもない……これ以上はグループを削られるわけにはいかない」
西からの襲撃には俺が一人で対応せざるおえなかった。
少しずつ削られていくのは気分が悪かった。
人数も規模もこっちが上なのだから、一度でも痛い思いをさせれば襲わないだろうと思っていた。
人を集めて一気に攻めようと言ってもボスは聞かない。
俺が集めるには所詮限度がある。
それでも集められるだけ集めて三十人。
ローって奴は頭がいい。
少数精鋭で一気に襲い去って行く。
なら……囮のグループでおびき寄せて囲って叩き潰してやる。
俺の作戦は成功して勝った。
まんまと罠にはまったローが送ってきたグループを倒してやった。
――が、それでも次の日も、また次の日も、ローは襲ってきた。
毎回返り討ちにするが、何度目かの勝ちの時におかしいと感じた。
一度目は完膚なまでの勝利だったが、二度目からは違かった。
今回もそうだ。
負けが決まるとなるとさっさと逃げる。
仲間は俺達の強さにビビって逃げてると喜んでいたが最近違和感があった。
……なんかおかしい。
やられすぎじゃないか?
負け癖がついたとか?
だったらもう襲ってこないだろう。
今だって懲りずに襲ってきてローのグループは逃げようとしていた。
何か嫌な感じがする……疑いは濃くなり急いで叫んだ。
「もう、止めろ! 引け!」
周囲では剣がぶつかりあい、殴る蹴るのケンカの中で俺の声は掻き消える。
興奮して仲間は聞こえてない。
また、勝てると。
逃げる兎を仕留めるとばかりに追いかける。
嫌な予感は確信に変わる。
逃げるローのグループに調子に乗った仲間が追いかけ回した。
これじゃあ、逆に罠にはめられる。
同じ事を返されるなんて冗談じゃない!
「止めろっ!」
力一杯大きな叫び声をあげた。
さすがに聞こえたみたいで周囲の奴らも追いかけていた奴もすぐに止まった。
とりあえずまだ聞けるだけの余裕があって良かった……。
よし、と安心した瞬間、ローのグループのどうやら逃げ遅れたらしい紺のパーカーを着る少年が目の前で転んだ。
焦って慌てて逃げようとするが、ビビって立てないみたいだった。
フードを被って怯えている様子は哀れに見えた。
仲間の一人が面白がって近づいた。
「腰が抜けて立てねェのかよ? 情けねェガキだな……北に来るか? かわいがっ……!」
迂闊に手を伸ばした仲間はじゃべれなくなった。
転んだ少年が立ち上がろうとした瞬間、仲間はナイフで首を刺された。
首から突き出る刃先が横に捩じられ一気に引き裂かれ肉の欠片が遠くに飛んだ。
「……っガ、ハッ……!」
血飛沫が吹き出し辺りを赤く染め、彼岸花のように仲間の血が飛び散っていた。
仲間は少年に覆い被さるようにガクン……と膝が地面に落ちて倒れた。
起きた事は理解出来たが、頭も体も目の前の少年に釘付けになった。
その場の誰もが見ていた。
面倒臭そうに真っ赤な死体となった仲間をずらして立ち上がる。
口に血が入ったのだろう、ペッと地面に吐き捨てていた。
血が浸みこむフードが邪魔だと脱いで見えたその顔は血で半分汚れた黒髪の少年。
光る双眸と目が合ってニタリ……と微笑した。
ゾクッ……と背筋が震えた。
――こいつがローだ!
恐怖とかじゃなくて――魅せられた。
ローの 「やれ!」 という一言で一気に囲まれ襲われた。
眼前で微笑するローに俺も仲間も呑まれた。
形勢逆転され反抗する暇もなくやられた。
ナイフ一本でローは鮮やかに立ち回る。
血が舞う中を楽しそうに戦っていた。
俺達は止む事のない波状攻撃に押されて、いつしか俺の周りには立っている仲間は一人もいなかった。
気付いたら膝を着いて座り込む俺の目の前にローが佇んでいた。
「お前がペンギンか?」
「……そうだ」
「おれのトコに来いよ」
「何言って……」
見上げてみればローは口端をあげて笑っていた。
「ガキに入れあげた奴の下より、俺のトコに来た方が楽しいぜ」
「……お前もガキだろ」
「ハッ! そうだな、どうする? 来ないならここでお前の人生しまいだ……」
ローは俺の眉間に仲間を切り裂いた赤く濡れる刃先をつけた。
まだ乾いていない血が刃から鼻を伝う。
地面に落ちた一滴の血。
俺を慕ってた仲間はもうここにはいない……いなくなった。
未練はない。
……生きるための答えは出てる。
「……お前についてくよ」
俺の答えにローのニッと笑った顔は少年のものだった。
「俺はトラファルガー・ローだ……」
「ああ……これから、世話になる」
ローから差し出された手を握って、俺は立ち上がった。
――こうして、俺はローと出会った。
俺の新しいボスになったローは黙ってると本当にただの読書好きの少年に見えた。
争いごととは無縁な感じだ。
――が、俺の出会った中で誰よりも退屈を嫌い、勝つ事に執着していた。
俺がジッと見ていたらローが顔を上げた。
「何だよ?」
「いや別に」
「見てただろ」
クッ……! こういう所は年相応っていうか……子供だ。
「オイ!」
「……くくっははっ!」
俺もだけどな……。
「何が可笑しいっ!?」
「はははっ……何でもない」
「ないわけねェだろ!」
「ホントに何でも――って! ……うわっ!」
ローに読んでいたぶ厚い本を投げつけられた。
ギリギリで避けれた……はあ、危ないところだった……もう少しで顔面直撃コースだ。
「それは凶器ですって!」
「煩ェっ! いつまでも笑ってるからだ!」
怒鳴るローの声が部屋に響き、ローの手には次に投げられる雑誌がある。
避けながら思う。
――いつか……どうして俺をあの場でやらないで、残して仲間にしようとしたかローに聞いてみようと。
おまけのロー君から一言。
お前に一回、作戦で負けたのが悔しいから仲間にした……なんて絶対ェに言わねェからな!
雨が降っていた。
シャチは最近出来た新しい女のトコに行ってる。
五日ぐらい前に、別れた……と気落ちしてたが、案外すぐに次の恋を見つけたようだ。
あいつは毎日が楽しそうで、こんなスラムでも恋なんて出来るんだなとかシャチを見てると思う。
一方、特定の女なんていない俺とローはどこにも行かずにアジトの一階でくつろいでいた。
目の前のローはカバーが半分剥がれたソファに座って本を読んでいた。
先日、ピンクの大男に貰った本のようだ。
ローが桃色と交流があるのは俺がローの仲間になって初めて知った。
何度か来ているらしいと話は聞いていたが、俺がいる時には桃色は来なかった。
そして、この前初めて会ったわけだ。
はぁ……あの含み笑いには吐き気がした。
厭らしいし、サングラスの下は何を考えてるのか分からない。
何の目的で来てるのか?
ローが言うには勝手に来て、勝手に話して、勝手に去って行くという事らしい。
何だ!? その胡散臭さ満点な感じは!
ロー自身も嫌がってはいるものの、現状どうにもならない。
相手はあのドンキホーテ・ドフラミンゴだからだ。
俺達ガキの集団でどうにか出来るわけもないし、どうにもならない。
とりあえず、このままという感じだ。
桃色とローは長い付き合いになりそうな予感がしてならない俺は心配で仕方なかった。
しかし、俺の心配などどこ吹く風なのは俺のボスであるローだ。
そういえば……。
初めて会った時は敵でケンカの真っ最中だった――
あれは、そう……ちょうど半年前ぐらいに戻る。
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西地区のローとかいう新しいボスが北に手を出してきていた。
西は狭くて寒いし人もあまり寄りつかない地区だ。
たまに縄張り越えていざこざはあるが、地区を越えてグループに手を出す事は俺の知る話の限りでは聞いた事はない。
俺は北スラムのナンバー三ぐらいの位置にいて、ボスの下についていた。
再三、何とかしろ! とボスに警告しても聞く耳ないようだった。
グループが削られれば縄張りも減り、金だって集まらないし入らなくなる。
そうやって今、お気に入りと遊んでいる事も出来なくなる。
ボスはもうそろろキッズから抜ける年齢だ。
そうなれば、一番下っ端でこんな遊んではいられない。
だからか……どうせ居なくなるのだからと、後は知らないと腰が重い。
チッ……!
こんな奴、さっさといなくなればいいとさえ最近思う。
出会った頃はイイ奴で友だったが、ここ一年で落ちた。
あいつが来てからだ。
ボスに媚び、たかるハエのような金髪の美少年に骨抜きにされた。
そんな奴の下で俺がまだ残るのは自分を慕ってついてくる仲間がいるからだ。
「……ペンギンさん、どうしましょう?」
「どうもこうもない……これ以上はグループを削られるわけにはいかない」
西からの襲撃には俺が一人で対応せざるおえなかった。
少しずつ削られていくのは気分が悪かった。
人数も規模もこっちが上なのだから、一度でも痛い思いをさせれば襲わないだろうと思っていた。
人を集めて一気に攻めようと言ってもボスは聞かない。
俺が集めるには所詮限度がある。
それでも集められるだけ集めて三十人。
ローって奴は頭がいい。
少数精鋭で一気に襲い去って行く。
なら……囮のグループでおびき寄せて囲って叩き潰してやる。
俺の作戦は成功して勝った。
まんまと罠にはまったローが送ってきたグループを倒してやった。
――が、それでも次の日も、また次の日も、ローは襲ってきた。
毎回返り討ちにするが、何度目かの勝ちの時におかしいと感じた。
一度目は完膚なまでの勝利だったが、二度目からは違かった。
今回もそうだ。
負けが決まるとなるとさっさと逃げる。
仲間は俺達の強さにビビって逃げてると喜んでいたが最近違和感があった。
……なんかおかしい。
やられすぎじゃないか?
負け癖がついたとか?
だったらもう襲ってこないだろう。
今だって懲りずに襲ってきてローのグループは逃げようとしていた。
何か嫌な感じがする……疑いは濃くなり急いで叫んだ。
「もう、止めろ! 引け!」
周囲では剣がぶつかりあい、殴る蹴るのケンカの中で俺の声は掻き消える。
興奮して仲間は聞こえてない。
また、勝てると。
逃げる兎を仕留めるとばかりに追いかける。
嫌な予感は確信に変わる。
逃げるローのグループに調子に乗った仲間が追いかけ回した。
これじゃあ、逆に罠にはめられる。
同じ事を返されるなんて冗談じゃない!
「止めろっ!」
力一杯大きな叫び声をあげた。
さすがに聞こえたみたいで周囲の奴らも追いかけていた奴もすぐに止まった。
とりあえずまだ聞けるだけの余裕があって良かった……。
よし、と安心した瞬間、ローのグループのどうやら逃げ遅れたらしい紺のパーカーを着る少年が目の前で転んだ。
焦って慌てて逃げようとするが、ビビって立てないみたいだった。
フードを被って怯えている様子は哀れに見えた。
仲間の一人が面白がって近づいた。
「腰が抜けて立てねェのかよ? 情けねェガキだな……北に来るか? かわいがっ……!」
迂闊に手を伸ばした仲間はじゃべれなくなった。
転んだ少年が立ち上がろうとした瞬間、仲間はナイフで首を刺された。
首から突き出る刃先が横に捩じられ一気に引き裂かれ肉の欠片が遠くに飛んだ。
「……っガ、ハッ……!」
血飛沫が吹き出し辺りを赤く染め、彼岸花のように仲間の血が飛び散っていた。
仲間は少年に覆い被さるようにガクン……と膝が地面に落ちて倒れた。
起きた事は理解出来たが、頭も体も目の前の少年に釘付けになった。
その場の誰もが見ていた。
面倒臭そうに真っ赤な死体となった仲間をずらして立ち上がる。
口に血が入ったのだろう、ペッと地面に吐き捨てていた。
血が浸みこむフードが邪魔だと脱いで見えたその顔は血で半分汚れた黒髪の少年。
光る双眸と目が合ってニタリ……と微笑した。
ゾクッ……と背筋が震えた。
――こいつがローだ!
恐怖とかじゃなくて――魅せられた。
ローの 「やれ!」 という一言で一気に囲まれ襲われた。
眼前で微笑するローに俺も仲間も呑まれた。
形勢逆転され反抗する暇もなくやられた。
ナイフ一本でローは鮮やかに立ち回る。
血が舞う中を楽しそうに戦っていた。
俺達は止む事のない波状攻撃に押されて、いつしか俺の周りには立っている仲間は一人もいなかった。
気付いたら膝を着いて座り込む俺の目の前にローが佇んでいた。
「お前がペンギンか?」
「……そうだ」
「おれのトコに来いよ」
「何言って……」
見上げてみればローは口端をあげて笑っていた。
「ガキに入れあげた奴の下より、俺のトコに来た方が楽しいぜ」
「……お前もガキだろ」
「ハッ! そうだな、どうする? 来ないならここでお前の人生しまいだ……」
ローは俺の眉間に仲間を切り裂いた赤く濡れる刃先をつけた。
まだ乾いていない血が刃から鼻を伝う。
地面に落ちた一滴の血。
俺を慕ってた仲間はもうここにはいない……いなくなった。
未練はない。
……生きるための答えは出てる。
「……お前についてくよ」
俺の答えにローのニッと笑った顔は少年のものだった。
「俺はトラファルガー・ローだ……」
「ああ……これから、世話になる」
ローから差し出された手を握って、俺は立ち上がった。
――こうして、俺はローと出会った。
◇◆◇
俺の新しいボスになったローは黙ってると本当にただの読書好きの少年に見えた。
争いごととは無縁な感じだ。
――が、俺の出会った中で誰よりも退屈を嫌い、勝つ事に執着していた。
俺がジッと見ていたらローが顔を上げた。
「何だよ?」
「いや別に」
「見てただろ」
クッ……! こういう所は年相応っていうか……子供だ。
「オイ!」
「……くくっははっ!」
俺もだけどな……。
「何が可笑しいっ!?」
「はははっ……何でもない」
「ないわけねェだろ!」
「ホントに何でも――って! ……うわっ!」
ローに読んでいたぶ厚い本を投げつけられた。
ギリギリで避けれた……はあ、危ないところだった……もう少しで顔面直撃コースだ。
「それは凶器ですって!」
「煩ェっ! いつまでも笑ってるからだ!」
怒鳴るローの声が部屋に響き、ローの手には次に投げられる雑誌がある。
避けながら思う。
――いつか……どうして俺をあの場でやらないで、残して仲間にしようとしたかローに聞いてみようと。
◇◆◇
おまけのロー君から一言。
お前に一回、作戦で負けたのが悔しいから仲間にした……なんて絶対ェに言わねェからな!