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1. ハウスキーパー開始

 しめしめ、野菜入りハンバーグをもりもり食べてるッスね、と眺めてたら家主と視線があった。目が合ったのに何も言わないのは気まずいから、どうですか、と聞いてみる。この食べっぷりを見る限りでは、悪い答えは返ってこないに違いない。
「予想より美味い」
「お口にあって何よりです。味噌汁の濃さもそのくらいで平気ですか」
 思わずニンマリと笑いながら尋ねたら、驚いた表情をした家主だったが一口飲んで頷いた。それにホッと胸を撫で下ろす。これはいける。第一試験を突破できる、とオレは確信した。
 文句も言わずに完食した家主に食後のデザートを出しながら、オレは話を切り出した。
「あの、さっきも途中だったんですけど、ここでの仕事について確認したいんですが」
 途中どころか自己紹介もさせて貰えなかったけどな!
 でもそこからするとまた遮られそうだから省いて、まずは仕事の確認をすることにした。さっきみたいに金額で迷うのも面倒だし、やり忘れがあって文句言われるのも面倒くさい。サクサクっと仕事をこなしてオレは勉強もしないといけないから。
「三食付きの住み込みバイトのほかに何かあるか」
「……残念ながらありますね。オレの一ヶ月の給料は学園の方から聞いてるんで平気ですけど、ここで暮らす上でのルールとか一ヶ月に使う食費の額、洗濯・掃除のこだわりなんかもあればなお良いです」
 そう伝えれば、ニヤリと悪い表情を浮かべた家主が言う。
「ルールはオレが嫌なことはするな」
「無理です」
 即答した。それはどう考えても無理だろ。だって、起きたくないって言われても起こさないと遅刻するだろうし、野菜食いたくないって言われてもバランス良い食事を提供しろって雇い主から言われてるし。
 でも即答したのが悪かったのか、ビタンビタンと尻尾で椅子を叩くすごい音が聞こえてくる。尻尾が感情豊かで良いですね、なんてもんじゃない。これは少しまずいかもしれない。
「無理じゃなくてしろ」
 きつく睨まれ圧力をかけられるが、オレの雇用主は目の前のレオナ・キングスカラーではない。彼の実家が雇い主だ。
「申し訳ないんですが、オレの雇用主との契約ではあなたに規則正しく健康的な生活をさせ、授業に出るよう促し卒業させることとなっているので。それに反するものには従うことができません」
 これは仕方がない。暇さえあれば寝ていて授業に出ないため、留年しているという家主をどうにか更生させたいのだろう。金銭的には問題なくても、大学に入ったまま戻ってこないのは世間体というより本人のためにならないということか。
 ったく、これだから金持ちは。良いご身分ですね。
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読んだよ!