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1. ハウスキーパー開始

 料理はばあちゃんが料理してるとこを見るのも好きだったし、手伝うのはいつものことだったから自然と覚えた。
 食材が少なすぎて仲間内でも持ち寄ってよく料理していたけど、味付けなどのひと工夫で旨く食べる方法をばあちゃんは知っていたから皆持ってきて賑やかだった。
 皆で食卓を囲むのも楽しかったなと数日前のことを思い出していると、視線を感じて顔を上げる。するとそこには何をしても起きなかった家主が、起き上がり大欠伸をしている姿があった。視線だけはしっかりとオレの方を向いている。
 え、なんかしたっけ? 勝手に料理してるけど、なんか駄目だった?
 とりあえず、そのまま無言なのは印象悪いと思ったから声をかける。
「もう少しでできるんで待っててくださいね」
 その言葉に小さく頷き、再び横になろうとした家主だったけど、すんと辺りを嗅ぐ動作をすると低く唸る。
「野菜はいらねぇ」
「もう調理済みなんですけど」
「お前が食えばいい」
「……健康管理もオレの役目なんで、食べてもらわないと困ります」
「いらねぇ」
 子供かよ、と胸の内でツッコミを入れながら先程の調理過程を思い出す。
 一緒に食べていた中に子供も多かったから、野菜克服のために小さく刻んだり味をごまかす工夫をしていた。食料も少ないのに好き嫌いなどしていられない。食べられれば御の字だ。
 今も無意識に食べやすいように調理してたから大丈夫だろう。
「まずは食べてみてくださいよ。ハンバーグ焼けましたし」
 皿に盛り付け、上にはあらかじめ作っておいたデミグラスソースをかける。サラダを盛り付けようと思ったが、嫌だというのに野菜をそのまんま出したらへそを曲げられそうだ。とりあえず冷蔵庫にしまっておいて後で考えよう。
 残りは白米と味噌汁をよそってテーブルに並べた。スープにしようとも思ったけど、やめておいて良かった。野菜スープにしかならなかったし。
 他にもおかずがあったけど、野菜の形が残ってるものは今回は諦めた。オレはまず第一試験を突破しなくてはならない。
 もうボリュームのあるハンバーグができたし良しとしたい。
 ちらりと視線を向ければ、オレの手元を確認している家主がいた。野菜入れないかどうか見てんのか、あれ。そんなに嫌いなのか。前途多難だ。
「ハンバーグ定食できました。どうぞ召し上がれ」
 そう言えば、のそりとテーブルにつき静かに食べ始める。口にハンバーグを運ぶ瞬間、オレは一番緊張した。確実に野菜が入っているものだし。これでバレたら何言われるかわかんないしな。
 でも首を少し傾げたものの、たいして気にならなかったのか食べている。 オレは心の中でガッツポーズを取った。
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