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レオラギ短編

「レオナさん、今度のキャンプの用意ってしてるんスか?」

 怠そうに耳だけを背後にいるラギーに向け、レオナはベッドに寝転がったまま欠伸をする。レオナはやる気がないというよりも、そもそもこの合同合宿自体に興味がない。行かなくていいなら行かないつもりでいたが、ラギーは参加する気でいるのかしつこくレオナに問いかける。

「キャンプとは名ばかりのサバイバル合同合宿って、何が必要なんスかねー」
「勝手に言い出したやつが用意するだろ」
「それはキャンプするのに必要なものだけじゃ……服とか身の回りのものは自分たちで用意するんでしょーが。レオナさん、三日間汚れた同じ服着れるんスか?」
「……参加しねぇという手がある」

 ラギーが呆れたようにため息を吐くと、不愉快そうにレオナの尻尾が床を叩いた。しかし、そんな仕草にも慣れているラギーは、気にせずに言葉を紡ぐ。

「多分、不参加は無理ッスよ。あのバルガス先生のことだから、来ない奴らのとこ押しかけて強制参加くらい簡単にさせるんじゃねーッスか?」

 その言葉にレオナも思うところがあったのか、激しく床を打ち付けていた尻尾を落とす。
 面倒くせぇ、とレオナから吐き出された言葉は、バルガスに対してかそれともラギーに対してなのか。
 ため息を吐きながら、レオナはラギーに財布を投げる。見ないで投げているのに、その財布は魔法でもかけられていたのかラギーの手元にしっかり落ちた。

「必要なもん、それで揃えてこい。俺とお前のな」
「シッシッシッ、了解ッス!」

 ラギーはレオナの財布を握ると、機嫌よく部屋を飛び出していった。



 ラギーがレオナに財布を預けられたのは午前中のことだったが、レオナの部屋に戻ったのは夜になってからだった。
 大荷物を抱えて戻ってきたラギーの表情は満足気で、やり切ったという達成感にあふれていた。満面の笑みを浮かべるラギーを前に、たかが買い物一つで何だこいつは、とレオナは眉間にシワを寄せる。そして、ラギーから渡されたものを見たレオナの眉間のシワがさらに深く刻まれた。

「……ラギー、これは間違いなく俺のか?」
「そーッスよ」

 オレのはこれ、とラギーは嬉しそうに床に戦利品を並べだす。買ってもらったという気持ちからか、買ってきたものを見せたいのだろう。やりたいことは分かったが、レオナは自分の手にした服にもう一度視線を向ける。
 他のものはともかくとして、レオナに渡された服の中にヒョウ柄のものがあった。ライオンにヒョウ柄を渡してくるなんて嫌味かなんかか、とレオナは思ったが、レオナにしては珍しく、まずはラギーの話を聞いてみようと袋の中に掴みかけた服を突っ込んだ。楽しそうにしているラギーを見ているのが微笑ましかったからだが、顔には出ていないので本人に気付かれてはいない。

「これ、ちょっと値段高かったけど値切ったらいけたんスよねー。五千マドルってふっかけてきて千マドルまで粘ってオッケーもらったんスけど、そこまで下げる気あるなら時間の無駄なんで、初めからその値段にしてて欲しいッス。でも、あの値切って値切って値切りまくって、ギリギリまで落とさせたときの表情がたまらないから止められないんスけど」

 悪趣味だな、と相づちを打ちつつ、ラギーの買ってきたもの値切り自慢を聞く。
 そして、話が落ち着いた頃合いを見計らい、レオナはラギーの目の前にヒョウ柄の服を差し出した。

「あっ、それ! 今日のオレの中で、一番の出来!」

 何がだ、と心の中でツッコミを入れながら、レオナはキラキラとした表情を浮かべるラギーを眺める。

「ラギー、俺はなんだ?」
「レオナさん?」
「そうだが、そういうことじゃねぇ。お前はハイエナ、俺は?」
「オレはハイエナで、レオナさんはライオン?」
「そうだ。なんで俺にヒョウ柄を買ってきた」

 こてん、と首を傾げるラギーにレオナは溜息を吐きながら、いつものふてぶてしい態度とはまるで違うその可愛さに頭を抱えた。ラギーが相手にダメージを与えようとする時は、もっとえげつないやり方でやってくる。これは本当に悪意無く買ってきたヤツだ、とレオナは思う。

「あー、ヒョウ柄っていえばヒョウ柄なんスけど、オレ的には……」

 そこで口籠もり、明後日の方向を眺めるラギーの頬を両手で挟み、レオナは自分の方を向かせた。珍しく口を滑らせたのを、そのままにはしたくなかった。

「続きを言え」
「なんでもないッス!」
「お前の今日の買物の中で一番の出来なんだろ、これは」
「き、気のせいッス」

 とぼけようとする姿勢に苛立ちを覚えたレオナは、目の前にある両頬をつねりながら先程のラギーの言葉を反復する。

「ヒョウ柄っていえばヒョウ柄……」

 呟きながらラギーの言いたかったことにレオナは気が付く。そういうことか、とレオナは人の悪い笑みを浮かべた。ヒョウ柄とハイエナのブチ柄は似ていると言えなくもない。
 くつくつと喉の奥で笑いながら、レオナはラギーを見つめる瞳に甘さを交え視線を合わせる。

「そんなに俺のことが好きか」
「なんのことッスか」
「ずいぶんと可愛らしいことをするもんだなと思って感心した」
「何言ってんのかわかんねーッスよ」
「独占欲強かったんだな」
「だから、なんのことかっ……んっ」

 反論しようとするラギーの唇を、レオナは己のそれで塞ぐ。唇をぺろりと舐め上げ離せば、ラギーが驚いた顔でレオナを見つめた。

「最初は気に入らなかったが着てやる。お前の柄なんだろ」
「だ、誰もそんなことっ……!」

 またしても反論する言葉を口腔内に閉じ込めるキスをされ、ラギーは唸る。レオナが言っていることは正しいのだが、それを認めてしまうのは恥ずかしい。しかし、抗おうにも言葉を続けさせてくれないためそれも難しかった。口を開こうとするたびに、レオナに唇を塞がれてしまうのだ。
 何度目か分からないキスで力の抜けたラギーは、いつものようにレオナにベッドに引きずり込まれる。ふんわりとレオナの香りに包まれたラギーは、無意識に安堵のため息を吐く。慣れた香りが心地よかった。

「キャンプ楽しみッスねー」
「……だりぃな」

 そう言いつつも、思わぬところでラギーの思いを垣間見たレオナは、機嫌良く腕の中の人物の腰に尻尾を巻きつける。
 楽しいショッピングを終えたラギーは今日もレオナに抱き枕にされ、朝を迎えることになるのだった。
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