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0. プロローグ

 青空はこんなにも高く、太陽は燦々と世界を照らしていて明るいのに、オレの心は朝からどんよりと沈んでいた。
 なぜこんなにも気が滅入っているのかと言えば、受かった高校の寮に入る予定がパーになったからだ。あまり裕福な出ではないから、特待生になれば授業料も寮費もすべて学校持ちっていうところに惹かれてあの学園を狙ったのにあんまりだ。
 そんなに急に寮が無くなるはずがないと思うだろうけど、オレもそう思う。でも寮は消えた。よりにもよってオレが入る前に火事で全焼とか笑えない。本当に笑えない。知らず知らずのうちに耳も垂れる。
 大学付属校でお坊ちゃまたちが多いから、寮っていっても入っている人はほとんど居なかったらしい。だからなくなってもそんなに問題にはならなかったって、オレが現に困ってるんだけどどういうことだ、ふざけんな。
 学園で代わりの場所を探してくれているらしいが、余り期待できないみたいだ。
 深い溜息を一つ吐き、オレは天を仰ぎ見る。
 今更他のとこなんて授業料的にも時期的にも無理だし、ここに行くしかないんだけど。住むところがないとどうにもならない。寝ることができさえすれば文句は言わない。でも先立つものがない。
 どっちにしろ禁止されててもバイトをする予定だったから、住み込みのバイトが良いんじゃないかと目を付けた。
 住み込みのバイトってなにがあるんだろ、とコンビニに無料で置いてある求人冊子をぱらぱらと眺める。
 ここはもう新聞配達か。でも朝早いと夜のバイトまで体力気力が持つかどうかあやしい。その前に掛け持ちできるんだろうか。あと勉強する時間が無いとダメだろ。オレ、特待生だし成績は落とせない。
 特大の溜息をもう一度吐き、オレはばあちゃんのことを思う。まだ寮が全焼したことは言ってない。まあ、ニュースかなんかで出たらバレるけど。お金のことでもオレのことでも心配かけたくないし、この危機をなんとか乗り越えたい。
 学園側でなんとかしてくんねーかなー、と学校に丸投げしたい。住み込みのバイトでいいから探して欲しいと言ってみるだけ言ってみよう。学園側にバイトを認めさせるのにも丁度良いし。
 オレはさっそく学園に電話をかけ、住み込みのバイトの件を相談したのだった。

 数日後、学園から連絡が来て住み込みのバイトが見つかったという。
 やったーと喜んでみたものの、あまりにも展開が早すぎる。全焼したと言ってきて寮に代わるところを探すって時はしばらく音沙汰がなかったのに、今回こんなに早いのはおかしい。なんか裏があるのではないかと勘ぐるが、学園側はいい話があったのでとしか言わない。なんとも胡散臭い。
 それでも、住むところが見つかったのはありがたかった。学園に通えれば何でも良い。住み込みのバイトはハウスキーパーということだったから、勉強の時間もとれるに違いない。同居する相手は、培ってきた対人スキルでどうとでもなるはずだ。多分。
 学園に相手側に挨拶に行った方がいいかと尋ねてみるが、入寮予定日だった日にそこへ向かえば良いと言われる。
 本当にそれでいいのか不安になるが、相手も了承しているなら余計なことをしてわざわざ機嫌を損ねることもないだろう。
 これで悩みは解消されたし、ようやくばあちゃんにも本当のことが言える。もうバレてるかもしれないけど、自分の口で言うことに意味があるはずだ。
 オレはそのことを伝えるべく、意気揚々とばあちゃんの元へと向かった。
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